【コラム】なぜ「AIR」をやるのか?理由を語ってほしい――市川市が究極の目標「文化都市」を目指すのであれば

コラム

本日、取り上げるのは、かつて市川市で行われた、アーティスト・イン・レジデンス「Nakayama AIR」です。市川市の2021年度の事業として実施されたものだと思われます。

現在(2024年2月10日)でも、Nakayama AIR の公式Webサイトは存在しています。

Nakayama AIR 公式Webサイト
https://nakayamaair.com/
※冒頭の画像は Nakayama AIR 公式Webサイトからの引用です。

Nakayama AIR とは、千葉県市川市中山エリアを舞台とするアーティスト・イン・レジデンスプログラムです。国内外のアーティストを招聘し、中山エリアでの作品制作及び展覧会を実施します。Nakayama AIRでは、アーティストの滞在制作及び展覧会を支援するとともに、ワークショップ、協働制作などの交流プログラムを開催することによって、アーティストと市民との多様な交流を図る場を設け、芸術に関わる人材の育成及び芸術文化振興の一助となることを目的としています。

主催|ICHIKAWA ART CITY実行委員会
アートディレクター|豊福亮(Office Toyofuku)

出所:Nakayama AIR 公式Webサイト、https://nakayamaair.com/、2024年2月10日閲覧

主催者は、ICHIKAWA ART CITY実行委員会です。ICHIKAWA ART CITY は、Nakayama AIR のみならず、「KUGURU展」も主催しています。

ICHIKAWA ART CITY 公式Webサイト
https://www.ichikawaartcity.art/

画像出所:ICHIKAWA ART CITY 公式Webサイト

さて、市川市公式Webサイト内の「Nakayama AIR <中山アーティスト・イン・レジデンス>」(https://www.city.ichikawa.lg.jp/cul01/0000377075.html)のページを参考に、Nakayama AIR が、どのようなことを実施したかを確認してみます。

■「Nakayama AIR」参加アーティスト募集
期間:2021年9月18日~10月11日
応募者総数 36名
滞在制作/20名(うち7名は展覧会出品と併願)
ワークショップ/7名(うち2名は展覧会出品と併願)
展覧会出品/18名(うち7名は滞在制作と併願、2名はワークショップと併願)

■「Nakayama AIR」オープンスタジオ
日程:2021年12月1日~12月16日
参加アーティスト:大槌秀樹
場所:レジデンスアトリエ/鬼高

日程:2021年12月4日
参加アーティスト:大槌秀樹・川田龍
場所:レジデンスアトリエ/鬼高

日程:2021年12月5日
参加アーティスト:大槌秀樹・大川友希
場所:レジデンスアトリエ/鬼高(大槌)、ワークショップアトリエ/高石神(大川)

■Nakayama AIR Pre Exhibition
2022年1月11日~1月21日
場所:市川市役所第一庁舎1階 ファンクションルーム

YouTube映像あり(2024年2月10日時点のチャンネル登録者は1名)

■成果展示 Nakayama AIR Exhibition<此岸に浮かぶ筏>
日程:2022年3月12日~27日
参加アーティスト:大槌秀樹、大川友希、川田龍、東弘一郎、大塚理司、原倫太郎
場所:中山法華経寺

――以上が、(あくまでも私が確認した範囲での)Nakayama AIR の主な出来事です。年度末ギリギリに成果展示を中山法華経寺で行っていますね。

ところで、ICHIKAWA ART CITY のWebサイトには、2022年4月19日に公開された「制作用アトリエを募集しています」と題されし記事(同年5月10日更新)があり、

ICHIKAWA ART CITYは、アーティスト・イン・レジデンス「Nakayama AIR」でアーティストによる市内アトリエでの滞在制作と中山法華経寺での成果展覧会「Nakayama AIR Exhibition~此岸に浮かぶ筏~」を実施しました。

令和4年度も引き続き、アーティストが滞在制作の場として使えるアトリエを探しています。

出所:ICHIKAWA ART CITY 公式Webサイト「制作用アトリエを募集しています」(2022年4月19日公開、2022年5月19日更新)https://www.ichikawaartcity.art/post/%E5%88%B6%E4%BD%9C%E7%94%A8%E3%82%A2%E3%83%88%E3%83%AA%E3%82%A8%E3%82%92%E5%8B%9F%E9%9B%86%E3%81%97%E3%81%A6%E3%81%84%E3%81%BE%E3%81%99、2024年2月10日閲覧

――と書かれています。前年(2021年)度に引き続き、(中山エリアかどうかは不明ですが)AIR、すなわち、アーティスト・イン・レジデンスを実施する予定だったことをうかがわせる記事内容ですよね。ところが、2022年度にAIRが行われたという話は耳目にしていません。何らかの事情があり、AIRは未実施だったのだろうと思います。

私は、Nakayama AIR 実施時に、作品を見に行きたいと思っていたのですが、気がついたら展示期間が過ぎており、オープンスタジオやプレ・エキシビジョンも含め、全く見ることができなかったのです。とても残念です。

AIR2021(と便宜上呼びます)が、成功したのか失敗したのかはわかりません。市がどのようにこの事業を評価しているのかもわかりません。YouTube公式チャンネルの登録者が(あくまでも2024年2月時点の数字ですが)1名しかいないので、認知されていなかったのではないかと思っています。このような事業を広く市民に(市民以外にも)伝えることは容易ではないですよね。それはさておき、意欲的な取り組みを、1回だけで終えてしまってはもったいないです。意欲的と書きましたが、挑戦的としてもよいかもしれません。前例のないことだと思うので、華々しい成果を挙げられなかったのだとしても、部分的には良かったこともあるでしょうから、しっかりと評価をして、反省もして、次なるAIRの実施に向けて動いてほしかったです。

と、いうのも、

本市は、昭和61年度に定めた総合計画において「文化都市」を究極の目標と定めました。

出所:市川市公式Webサイト「市川市文化振興ビジョン 全文」(2019年2月18日更新)https://www.city.ichikawa.lg.jp/cul01/1221000007.html2024年2月10日閲覧

という具合に、「文化都市」(になること)が、市川市の「究極の目標」だからです。文化的なものって、そう簡単に成果が出るわけではないですよね。

常設のAIRが市内に存在するようになることを、ICHIKAWA ART CITY の皆さんは目指していたような気もします。

ちなみに、最近知ったのですが、お隣の松戸市には、「PARADISE AIR(パラダイスエア)」というものがあります。

PARADISE AIR 公式Webサイト
https://www.paradiseair.info/

パラダイスエアは、東京都心からほど近い、千葉県松戸市に位置するアーティスト・イン・レジデンスです。パチンコホール楽園(運営:株式会社浜友商事)の協力により、かつてホテルだったビルを活用して運営されています。楽園を意味する’PARADISE’、アーティスト・イン・レジデンス(Artist In Residence)の略称’AIR’からPARADISE AIRと名付け、2013年にその活動を開始しました。

アーティスト・イン・レジデンスとは、アーティストに一定期間、滞在場所と制作場所を提供し、移動と制作活動を支援する取り組みのこと。江戸時代、水戸街道の宿場町として栄えた松戸駅前は、江戸と水戸をつなぐ拠点として多くの旅人が行き交いました。地元住民の邸宅には過去に訪れた文人画人が宿泊料代わりに残した作品が今も残ると言われます。
かつての松戸宿の歴史伝統をふまえた「一宿一芸」をコンセプトとするパラダイスエアもまた、国内外のアーティスト達が行き交う文化・芸術のトランジットポイントとして新たな歴史を積み重ねています。

出所:PARADISE AIR 公式Webサイト「ABOUT」https://www.paradiseair.info/about/、2024年2月10日閲覧(赤色太字、青色太字は筆者による強調)

上の説明にありますが(そして、下のノート※1にも書かれている通り)、パラダイスエアは、「なぜ、松戸でAIRをやるのか?」という問いに対する明確な答えをしっかりと提示しています。かつて宿場町として栄えたという、まちの歴史と関連付けて語っています。物語があります。

令和5年度ふなばし市民大学校特別講座ふなばしソーシャルビジネスコース第四夜
中川寛子氏の講義を聴きながらとったメモ(筆記日:2024年2月16日)
令和5年度ふなばし市民大学校特別講座ふなばしソーシャルビジネスコース第四夜
中川寛子氏の講義を聴きながらとったメモの一部を拡大(筆記日:2024年2月16日)

上の画像、文字が読みづらいと思うので、キーボードで打ち直しますね。

「memo」
市川市で昨年?
AIRをやった
中山AIR
しかし、「なぜ?」が
伝わってこない

出所:鈴木雄高のノートブック(令和5年度ふなばし市民大学校特別講座ふなばしソーシャルビジネスコース第四夜、中川寛子氏の講義を聴きながらとったメモ。筆記日:2024年2月16日)

この、「なぜ?」に対する回答に当たる、「やる理由」は、しつこいくらいに繰り返し述べても良いくらいです。

市川市でも、AIRを再開してほしいです(前回関わった人たちにトラウマが残っていなければよいのですが)。究極の目標である「文化都市」を目指すのであれば、常設のAIRがあるべきなのではないかと思うからです。その(再開する)時には、今度こそ「やる理由」をしっかりとアピールしてくださいね!

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執筆日 2024年2月9日、10日
公開日 2024年2月10日

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〈注釈〉

※1:令和5年度「ふなばし市民大学校」特別講座「ふなばしソーシャルビジネスコース」第四夜、中川寛子氏の講義を聴きながらとったメモです(受講日:2024年2月16日)。

ふなばし市民大学校については、こちらの記事に綴っています。