2025年2月26日に公開した記事で、JR下総中山駅南口の6段の階段が利用者の利便性や安全性を損なっていること、そして、バリアフリー化を求める声が地域住民から上がっていること、地元の議会でも問題として取り上げられていること、「JR下総中山駅南口のバリアフリー化早期実現をめざす会」という活動体があることなどを紹介しました。
JR下総中山駅南口のバリアフリー化早期実現をめざす会 公式note
https://note.com/simousanakayama
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今週、令和7年6月市川市議会定例会が終わったのですが、市川市議会では、近年、下総中山駅南口のバリアフリー化についての質問が議員からなされています。今回の議会でも質問がありました。
- 2019年6月27日(一般質問、国松ひろき議員)
- 2022年2月18日(代表質問、国松ひろき議員/創生市川)
- 2023年6月20日(一般質問、やなぎ美智子議員)
- 2023年12月11日(一般質問、国松ひろき議員)
- 2024年9月25日(一般質問、国松ひろき議員)
- 2025年3月10日(一般質問、やなぎ美智子議員)
- 2025年6月12日(代表質問、国松ひろき議員/未来市川)
他にもあるかもしれませんが、私が近年の議事録や動画を確認できたのはこれらでした。
最も新しいものは、16日前、令和7年6月市川市議会定例会(第5日、6月12日)における、国松ひろき議員(未来市川)による代表質問「JR下総中山駅南口のバリアフリー化の現状及び課題について」ですね。
このように、市川市議会では、ほぼ毎年、JR総武線の下総中山駅南口のバリアフリー化に向けた要望を含む質問が議員からなされており、それらに対して、道路交通部長が丁寧に回答しています。ここでは、各議員の質問部分は省略して、道路交通部長がこの件について、どのような説明をしてきたかを見てみます(重複している内容もあえて記します)。
※以下は、「JR下総中山駅南口のバリアフリー化早期実現をめざす会」公式noteの記事から引用および一部改変したものです。
- 「JR下総中山駅南口の問題は市川市議会でどのように取り上げられてきたか?」2025年2月14日
- 「市川市議会におけるJR下総中山駅南口のバリアフリー化に関する質疑(2025年3月10日、やなぎ美智子議員)」2025年4月9日
- 「市川市議会におけるJR下総中山駅南口のバリアフリー化に関する質疑(2025年6月12日、国松ひろき議員)」2025年6月13日
- 横地眞美惠道路交通部長(2019年6月27日、国松ひろき議員の質問への回答)
- 藤田泰博道路交通部長(2022年2月18日、国松ひろき議員の質問に対する回答)
- 岩井忠良道路交通部長(2023年6月20日、やなぎ美智子議員の質問に対する回答)
- 岩井忠良道路交通部長(2023年12月11日、国松ひろき議員の質問に対する回答)
- 米崎勝則道路交通部長(2024年9月25日、国松ひろき議員の質問に対する回答)
- 米崎勝則道路交通部長(2025年3月10日、やなぎ美智子議員の質問に対する回答)
- 米崎勝則道路交通部長(2025年6月12日、国松ひろき議員の質問に対する回答)
- 下総中山駅は市川市と船橋市の市境に近い駅
- 近年、市川市議会で当該の問題を取り上げているのは国松・やなぎ両議員(のみ?)
- せめて南北自由通路の設置を希望します(それでは十分ではないにしても)
- 記事の執筆者・執筆日・公開日など
横地眞美惠道路交通部長(2019年6月27日、国松ひろき議員の質問への回答)
- これまでも南口のバリアフリー化について要望があったので、千葉県や県内市町村など約50団体で組織する千葉県JR線複線化等促進期成同盟を通じて、JR東日本に要望している
- この要望の他に、2019年1月に船橋市とともにJR東日本千葉支社を訪問し、直接、下総中山駅の南口のバリアフリー化の要望を行った
- 鉄道駅のバリアフリー化は、通常、鉄道事業者、国、市がそれぞれ3分の1ずつ費用を負担して鉄道事業者が整備を行う
- JR東日本としては、下総中山駅南口のバリアフリー化は、北口がバリアフリー化の整備済みであることから、同駅のバリアフリー化は完了しているとの認識である
- JR東日本は、南北へ通り抜けするための通路として整備する場合には、自治体が全て費用を負担して実施すべきと考えている
- 鉄道駅の出入りに伴う段差解消策としては、一般的にはスロープやエレベーターの設置が考えられるが、国が示すガイドラインによると、スロープを設置する場合においては、有効幅員120cm以上、屋外に設置する場合の勾配は20分の1以下、高さ75cm以内ごとに踊り場を設けることとなっているため、下総中山駅南口でスロープを設置することになると、延長約18mのスロープと踊り場1カ所が必要となる
- 現在の南口は、幅員約6mの船橋市道に面し、階段までのJR用地が幅約1.8mであるため、スロープやエレベーターの設置は、設置箇所の確保や費用面、利用者の安全確保等の課題があり、現状では困難な状況である
- 下総中山駅の周辺では、JRの高架下を南北に通り抜けのできる道路が駅を挟んで東西方向に約300m離れたところに1か所ずつある
- その、南北に通り抜けのできる道路と駅の間で通路を確保することについては、船橋市域となるため、今後、船橋市と協議したいと考えている
藤田泰博道路交通部長(2022年2月18日、国松ひろき議員の質問に対する回答)
- 下総中山駅南口は幅員約6mの船橋市道に面しており、駅入り口はその道路より約1.2m高くなっていることから、6段の階段等が設置されている
- 下総中山駅は船橋市域内にあるため、JR東日本とのバリアフリー化協議は船橋市が主体となり行われているが、市川市においても市川市民の利用者が多いことから、これまでも県内自治体等で構成しJR東日本に対し要望活動等を行う千葉県JR線複線化等促進期成同盟などで関係者が一堂に会した際には、船橋市と協調して要望している
- 船橋市によると、これまでの協議の中で、JR東日本は駅構内のバリアフリー化は高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律に基づく基本方針を踏まえ、1日当たりの利用者数3,000人以上の駅について、順次進めている方針であるとのこと
- 下総中山駅のように、北口ではバリアフリー経路が1経路整備されている場合であっても、今後需要があるものについては2経路目も検討していく必要性は考えられるが、現在はホームドアの整備を進めていることから、これらと同時にはできないので、優先順位をつけて行っていきたいとの回答も得ているとのこと
- このような状況を踏まえ、市川市としては今後の動向を注視し、引き続き船橋市と協調して要望を行っていく
岩井忠良道路交通部長(2023年6月20日、やなぎ美智子議員の質問に対する回答)
- JR総武線下総中山駅は船橋市域に立地しているが、多くの市川市民が利用しており、令和3年度の1日当たりの平均乗降客数は約3万9,000人で、市川・船橋市域にあるJR総武線の7駅では、本八幡駅に次いで6番目の乗降客数となっている
- 下総中山駅のバリアフリー化の状況としては、改札内には車椅子に対応したトイレや、改札階とホーム階を結ぶエレベーター、ホーム上にはホームドアが整備されている
- 下総中山駅の改札の外の北口は駅前広場から段差なく駅構内に接続している
- 下総中山駅の南口については、道路と駅構内に約1.2mの高低差があり、階段のみが設置されている
- 下総中山駅の南側においても利用者が多く、段差解消に対する署名等による要望が市川、船橋の両市とJR東日本に提出されるなど、市川市としてもバリアフリー化の必要性を認識している
- スロープの設置については、国のガイドラインで、勾配が20分の1以下で高さ60cm以内ごとに踏み幅1.5m以上の踊り場を設けることが望ましいとされている
- 下総中山駅南口にスロープを設置するためには25m以上の長さが必要となるなど、設置箇所の確保が課題となっている
- 現状では下総中山駅南口へのスロープ設置が困難な状況と考えており、エレベーター等の昇降機による段差解消が必要と認識している
- 鉄道駅のバリアフリー化については、市川市鉄道駅バリアフリー設備整備事業補助金交付要綱に基づき補助金を交付することになるが、JR総武線下総中山駅は船橋市域の鉄道駅であることから、市川市の補助対象とはなっていない
- JR東日本に対しては、県内自治体など約50団体で組織され要望活動等を行う千葉県JR線複線化等促進期成同盟を通じて、駅の所在地である船橋市が平成22年度(2010年度)からスロープ、またはエレベーター等による段差解消を要望している
- 市川市においても、船橋市と同様にバリアフリー化が必要と考えていることから、平成29年度(2017年度)からは船橋市と連携して要望を行っている
- これらの要望活動のほか、JR東日本と船橋市、市川市の担当者が一堂に会した際には協議してきた
- JR東日本からは、下総中山駅は既にバリアフリー経路が北口に確保されており、通称バリアフリー法では基準に適合している駅となっていることや、2経路目の整備はターミナル駅など大規模な駅が対象となっていることから、優先順位は低いとの見解が示された
- 2023年2月に署名等による要望が市川、船橋の両市に提出されたのを受け、同年3月には船橋市が市川市を訪れ、両市で情報共有を行った
- 2023年5月には市川市が船橋市を訪問し、引き続き両市で連携し、要望することを確認した
- 今後は、JR東日本と船橋市、市川市の3者で協議する場を設けることとしており、2023年6月末を目標に調整を進めている
岩井忠良道路交通部長(2023年12月11日、国松ひろき議員の質問に対する回答)
- JR下総中山駅南口のバリアフリー化の協議状況としては、2023年6月に駅を管理するJR東日本千葉支社と、駅の所在地である船橋市、利用者が多い市川市の3者で協議を行った
- この協議において、JR東日本からは、北口にバリアフリー化経路を1経路確保していることから、バリアフリーに基づく省令に定められた基準に達しているとのことだった
- また、JR東日本としては、基準に達していない他の駅の整備を進めることが優先であることから、現時点では下総中山駅南口のバリアフリー化は検討していないとのことだった
- このほか、2023年11月13日には船橋市と市川市を含む県内自治体で構成している千葉県JR線複線化等促進期成同盟により、JR東日本千葉支社に要望を行った
- 今後、市川市は、引き続き船橋市と連携しJR東日本への要望を行うとともに、駅舎外へのバリアフリールートの整備等の他の方策についてもJR東日本と協議していきたいとと考えている
米崎勝則道路交通部長(2024年9月25日、国松ひろき議員の質問に対する回答)
- 下総中山駅南口のバリアフリー化については、駅が所在している船橋市と市川市、JR東日本の3者で協議しており、直近では2024年8月に協議している
- 下総中山駅南口は、駅舎の床と前面道路との間に約1mの高低差があるため、高齢者以外にも車椅子やベビーカー利用者への対応が必要であることは認識している
- 高低差が生じている箇所のバリアフリー化の一般的な手法としては、スロープや昇降機の設置のほか、駅舎の床や道路の高さの変更がある
- これらの手法について、下総中山駅南口の現状を踏まえ検討してきた
- 現在の下総中山駅の駅舎の状態で南口にスロープや昇降機を設置することについては、朝の通勤・通学時間帯に大変混雑している状況にもかかわらず、昇降機の設置により階段の幅が減少してしまうことや、階段の脇や上部に線路を支える柱や梁(はり)があり、機器の設置に制約があるなどの構造上の問題があるため、早期の対応は難しいとの結果になった
- 下総中山駅の駅舎の床や駅に面する道路の高さを変更することについては、北口と南口で道路の高さが異なり、それぞれの道路の高さに合わせて周辺建物が立ち並んでいることから再開発などの周辺地区を含めた対応が必要となり、早期の対応は難しいとの結果になった
- そのため、2024年8月の協議の際には、段差の解消策とともに、高低差が少ない同駅北口と南口を行き来することができる南北通路の新設などの方策についてもJR東日本に要望した
- 今後も船橋市と連携し、JR東日本を含む3者での協議を継続する
米崎勝則道路交通部長(2025年3月10日、やなぎ美智子議員の質問に対する回答)
- 船橋市は平成22年度(2010年度)からJR東日本千葉支社に対し、スロープまたはエレベーター設置による段差解消を要望してきた
- 市川市は平成29年度(2017年度)から船橋市と連携しており、今年度(2024年度)は2024年11月に活動した
- JR東日本千葉支社、船橋市、市川市の3者協議を、令和5年(2023年)6月と、令和6年(2024年)8月に、JR東日本千葉支社にて実施した
- 駅舎の床と道路で約1mの高低差があるため、JR東日本千葉支社に対し、スロープや昇降機(エレベーター)の設置を要望してきた
- これに対し、JR東日本千葉支社は、それらの設置は構造上難しい、エレベーター設置で現在の階段の幅が減少すると、朝の通勤者の混雑に影響する
- 駅舎の床や道路の高さを変更する方法もあるが、南口と北口で道路の高さが異なり、建物も立ち並んでおり、再開発などが必要なので、難しいとのこと
- 段差解消を求めるのことに加え、昨年(2024年)には、南口と北口を行き来できる南北通路の新設などを船橋市と共にJR東日本千葉支社に要望した
- (やなぎ議員からの「その要望(船橋市と共に南北通路の新設などを求めた件)に対して、JR東日本千葉支社から回答はあったか?」との問いに対する回答)現時点(2025年3月10日)で回答はない。
- 協議日程の調整は下総中山駅がある自治体・船橋市が行っている。2025年2月3日に「JR下総中山駅南口のバリアフリー化早期実現をめざす会」から寄せられた要望書も船橋市と共有している
- JRおよび、駅があり窓口にもなっている船橋市の協議で、方向性が決まってから予算を計上する考えだ。現段階では南北通路の整備に向けた調査予算計上は考えていない
- JRによれば、下総中山駅の乗降客数から必要なバリアフリーのルートは、1つは確保されているとの認識。管内での、バリアフリーがなされていない他駅優先とのこと。船橋市域のJRの敷地の通路なので、費用は、JRか船橋市のいずれかが拠出するものだと考えている
米崎勝則道路交通部長(2025年6月12日、国松ひろき議員の質問に対する回答)
- JR下総中山駅の南口は、駅舎の床と前面道路に高さ1m程の高低差があり、高齢者、車いすやベビーカー利用者へのバリアフリー化がされていない
- JR東日本、船橋市、市川市の三者で検討してきた
- スロープや昇降機の設置は構造上の課題があること、前面道路の高さの変更は北口と南口の高低差があり建物が立ち並んでいることから困難であるとの結論に達した
- 段差解消策とともに、駅の南側から北側へ行き来できる南北通路の新設を、市川市と船橋市でJR東日本に要望している
- JR下総中山駅の高架下の空間を活用して南北通路を新設することについて、JR東日本は、ルートの確保ができるか確認するとのことだったので、今年度も船橋市と連携して、協議を継続していく
下総中山駅は市川市と船橋市の市境に近い駅
冒頭の画像(作成したのは、JR下総中山駅南口のバリアフリー化早期実現をめざす会)を見ていただくとわかると思いますが、JR総武線の下総中山駅(と、京成線の中山駅)は、所在地こそ船橋市ですが、市川市との市境(しざかい)に近接しています。
駅は、船橋市民だけでなく、多くの市川市民も利用しています。筆者(フリースタイル市川のノスタルジー鈴木)も、その一人です。幸いにも(たまたま)現在の私は、6段の階段の上り下りは苦ではありません。しかし、利用時の2回に1回くらいは、階段の昇降に苦労している方の姿を見ます。
参考記事:JR下総中山駅南口のバリアフリー化早期実現をめざす会
「皆様のご意見をうかがい、活動報告ペーパーをお渡ししました(2025年5月9日、下総中山駅前)」2025年5月11日 https://note.com/simousanakayama/n/nd31601506a62
2025年6月12日の市川市議会で、道路交通部長からの回答を聞いた国松ひろき議員は、次のようなことを述べています。
- 毎年、議会で下総中山駅南口のバリアフリー化の状況を質問している。
- 市川市の回答は、毎年同じで、引き続き協議するというもので、進むかわからない。
市川市の回答だけ読んでいると、のらりくらりとかわされているようにも感じます。もちろん、そんなことはないはずで、何とかしたい、すべきだ、との思いは市川市でも船橋市でも共有されているに違いありません。ただ、バリアフリー化を実際に決めるのはJR東日本(千葉支社)であり、JRが営利企業である以上、意思決定の優先順位があり、それは、緊急度や重要度など、様々な要素(相対的なもの)が絡み合ってなされるものであるがゆえ、自治体職員が主体的、能動的、積極的に関与することが難しいと思っているフシはあります。
近年、市川市議会で当該の問題を取り上げているのは国松・やなぎ両議員(のみ?)
2019年以降の市川市議会で、JR下総中山駅南口のバリアフリー化に向けて質問をしている議員は、私が確認できた範囲では、国松ひろき議員、やなぎ美智子議員の二人でした。確認漏れがあるかもしれません。
もちろん、この2名以外にも同じテーマに注目している議員はいるでしょう。しかし、あの議員が毎回質問しているから、あえて自分が限られた貴重な質問時間をつかって同じ質問をすることの意味は薄く、価値は低い、と判断する議員もいるでしょう。
42人(議長を除けば41人)の市川市議会議員のうち、2人もこの問題と真剣に向き合って、取り上げ、質問し、市からの回答を引き出してくれていることは(ゼロ人であることを考えれば)、良いことだとも思えますよね。
反実仮想的な思考の型
今、筆者は、「もし誰もこの問題に向き合っていなかった(ゼロ人だった)としたら、それよりは2人いる方が良い」といった、現実と異なる仮定(ゼロ人だった場合)を想定して、現実(2人いること)を評価しました。
このように、現実の状況を「別のあり得た状況(ゼロ人)」と比較して評価する考え方、考えの型(思考の型)は、反実仮想的な思考と言えます。筆者の思考の型のひとつであり、癖でもあります。良く、こういう考え方(反実仮想的な思考)をします。
せめて南北自由通路の設置を希望します(それでは十分ではないにしても)
下総中山駅の6段の階段なんて知らなかったよ、という方は、1度、駅南口を見てみてください。かなり不便、かなり危険です。エレベーターやスロープ(これらの設置は現実的ではないというのがJRの見解でした)があれば良いと思えるはずです。南口から遠くない場所に、高架下を南北に歩ける、南北自由通路が早期にできることを望んでいます。
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この記事を読んでいただいた皆さんの身の回りで実現していないバリアフリー化があれば、それについて身近な人と話してみるのもよいですね。
記事の執筆者・執筆日・公開日など
執筆者:ノスタルジー鈴木
執筆日:2025年6月28日
公開日:2025年6月28日