【市川市議会】発議「ガザ地区における即時かつ持続的な人道的停戦を求める決議について」の採決は「賛成30、反対11」で可決(2025年6月25日)

コラム

昨日、市川市議会6月定例会が終了となりました。その最終日(つまり昨日)、2025年6月25日、提出されたひとつの発議※1が賛成多数で可決されたので、それについて速報的にお伝えします。

本稿のタイトルが、その内容そのものなのですが、前段階から説明しておきたいと思います。

過去2回の発議は反対多数で否決されました(2023年、2024年)

市川市議会定例会では、一昨年(2023年12月18日)、昨年(2024年6月21日) に、以下の発議が出され、採決の結果、賛成少数反対多数で否決されています。

●市川市議会定例会(2023年12月18日)|発議第14号「国にイスラエル・パレスチナ紛争の即時停戦に向けた外交努力を求める意見書の提出について」の採決は【賛成14、反対27】で否決。

●市川市議会定例会(2024年6月21日)|発議第4号 「イスラエルに対しガザへの侵攻中止と即時停戦等を求める決議について」の採決は【賛成15、反対26】で否決。

青の議席数 > 赤の議席数

これは、つまり、反対多数 > 賛成少数 ということを表しています。1度目と2度目で全く同じ内容の発議ではないのですが、求めることは同じです。

2023年に否決された発議について、筆者(フリースタイル市川のノスタルジー鈴木)は、当時こんな記事を書いています。

今年の発議は賛成多数で可決されました!(2025年)

過去2回の発議は否決されてしまい、正直、私はがっかりしました。昨日、以下の通り、この発議は可決されました。遅い、遅すぎる、そう思いましたが、否決されなくて本当に良かったです。

●市川市議会定例会(2025年6月25日)|発議第8号「ガザ地区における即時かつ持続的な人道的停戦を求める決議について」の採決は【賛成30、反対11】で可決。

※冒頭の画像は、上の画像を加工したものです。

2025年の発議に対して賛成した議員と反対した議員の顔触れ

▼賛成した30人の議員の顔ぶれ(敬称略)

  1. 門田直人
  2. 野口じゅん
  3. 丸金ゆきこ
  4. やなぎ美智子
  5. とくたけ純平
  6. 中町けい
  7. つちや正順
  8. 清水みな子
  9. 廣田徳子
  10. 石崎ひでゆき
  11. 石原よしのり
  12. 増田好秀
  13. 太田丈之
  14. 冨家薫
  15. 越川雅史
  16. ほとだゆうな
  17. 国松ひろき
  18. つかこしたかのり
  19. 加藤圭一
  20. 大久保たかし
  21. 石原たかゆき
  22. 堀内しんご
  23. 細田伸一
  24. 青山ひろかず
  25. 石原みさ子
  26. 小泉文人
  27. 中山幸紀
  28. 竹内清海
  29. 加藤武央
  30. 岩井清郎

▼反対した11人の議員の顔ぶれ(敬称略)

  1. にしむた勲
  2. 沢田あきひと
  3. 小山田なおと
  4. 川畑いつこ
  5. 浅野さち
  6. 久保川隆志
  7. 西村敦
  8. 中村よしお
  9. 宮本均
  10. 大場諭
  11. 松永鉄兵

2023年、2024年、2025年の発議に対して賛成した議員と反対した議員の顔触れ

なぜ地方議会が国際問題に言及するのか?

最後に、「なぜ、地方議会が国際問題を扱うのか?」ということを考えてみますが、そもそも地方議会の目的、本来的な役割はどのようなものかを確認しておきます。

地方議会の目的・役割とは

地方議会は地方自治体の意思決定機関として、以下のことを行います(以下の役割を担います)。
条例の制定・改廃
予算の議決
決算の認定
地方行政に関する調査と監視(チェック機能)

また、地方議会には、地域住民の代表機関という役割があります。選挙で住民により選ばれた議員は住民の代理人です。議会は、地域課題に対する政策立案と合意形成の場です。住人全員で問題を議論して、限られた時間で合意形成することは、現在では不可能です。代理人である議員たちは、住民の意見を代弁し、行政に反映させます。

その他、行政の透明性や公正性を確保、市長(市の場合。県の場合は県知事)を監視する役割も持ちます。執行機関に対する牽制ですね。

地方自治体の人々にとって人権・平和・共生などは関心事

さて、こうした役割を担う地方議会が、時に国際問題に言及するのですが、それがたとえ重要な問題であっても、地方政治の枠を超えているのではないか、という疑問を抱く人もいることでしょう。

しかし、地方自治体(例:市川市)にとって、「人権」「平和」「共生」は無関係なことではないですよね。
昨日の市川市議会定例会で提出された発議「ガザ地区における即時かつ持続的な人道的停戦を求める決議について」の場合、パレスチナ自治区ガザの人道危機は、日本に住む市民、特にパレスチナ出身者や関係する人々にも関わる問題です。直接的な関係はない、という人であっても、「国際的な人道の問題に対し、私たちは無関心ではない」と表明することは、人権感覚を持つ地域社会づくりの一環にもなります。

こういう見方もあります。

1年前(2024年6月)、国会では、衆議院と参議院のそれぞれで「ガザ地区における人道状況の改善と速やかな停戦の実現を求める決議」が採択されました。地方議会でも、2024年12月末時点で、1788議会の23.6%に当たる422議会が、ガザ地区の即時停戦を求める決議や請願、意見書を採択しています。市川市の近くの市でも、松戸市、鎌ケ谷市、我孫子市では全会一致で採択されています。

市川市が国際人権や人道問題に対してに敏感であり、国内の他地域に先んじて声を上げ、動く自治体であるのか、それとも、鈍感でなかなか動かない自治体であろうとするのか(そのような自治体だと見なされる、見なされてよいのか?)、そんな話にもなってきます。

議会がいち早くこうした決議や請願、意見書を出して採択するような自治体なのか、そうではないのかは、単に議会の中で行われる政治の話ということではなく、住む場所を選択する場合などにもこうしたことをチェックする人はいると思います。

つまり、地方議会がこうした国際的なテーマを取り上げることは、これらの問題に敏感であることを示す意味もあり、地方自治体としてのモラル・スタンスの表明になるわけですね。政策的な直接の実効性はないとしても、公共の場での発信により、社会的な影響や価値観の共有を促します。国政が立場表明を避ける場合には、地方からの意思表示が民主主義の多層性を示す場合もあります。

今回のような発議を提出すること(それが可決されること)は、地域に暮らす外国ルーツの住民への共感・安心感を高めること、地方議員が地域住民の声を広く代弁することで民主主義が深化する、国が発言しにくい問題について、草の根からの意思表示ができる、平和教育や国際理解の文脈で子どもや若者にとっての教材にもなる、といった好影響もあるでしょう。

もちろん、最大の目的は、一刻も早い停戦により、安定、自由がもたらされることに他なりません。

しばしば、地球環境問題について考え、この問題に自分が住む地域でできることから取り組んでいこうと呼びかける際などに、

地球規模で考え、地域で行動しよう(Think globally, Act locally.)

と言ったりますが、人権問題のようなことについても同様ですね。議会で議員が発議※1を出すだけでなく、私たち(議員ではない人たち)にも、例えば、即時停戦を求めるデモを行うような行為、活動を行う自由があります。

参考音声:【特集】岡真理さんと考えるイスラエルによるガザ侵攻(岡真理)

TBSラジオ『荻上チキ・Session』ゲスト:岡真理氏(京都大学名誉教授で早稲田大学文学学術院教授)(2024年4月9日放送分の音声)

注釈

※1:発議(はつぎ)は、議会に対して議案や決議案などを提案する行為のこと。提出された議案は議会で審議され、採決されます。地方議会では、市長(知事)などの執行機関だけでなく、議員が自ら発議することができるというわけです。本稿で取り上げた発議は、議員による発議(略して議員発議ということもあります)です。

記事の執筆者・執筆日・公開日など

執筆者:ノスタルジー鈴木
執筆日:2025年6月26日
公開日:2025年6月26日