公開日:2022年12月19日
更新日:2023年1月4日
市川市で閉店が相次いだ2022年
今年は、筆者個人にとって、思い入れのあるお店や、よく利用していたお店が、立て続けに閉店した1年でした。
- カレーハウスCoCo壱番屋 JR下総中山駅南口店(船橋市本中山、2022年1月10日閉店)
- Books Licotta(高石神、2022年4月24日閉店)
- ときわ書房本八幡店(八幡、2022年5月31日閉店)
- オークスブックセンター妙典店(富浜、2022年6月20日閉店)
- 福家書店市川店(鬼高、2022年7月18日閉店)
- 酒壱番(鬼高、2022年8月21日閉店閉店)
- Grandir(南八幡、2022年12月25日閉店予定)
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若宮のスーパーマーケット「かどや」が11月に閉店
そんな今年ですが、私の行動圏外でも閉店したお店があり、その中には、利用者さんに大きな衝撃が走った閉店の知らせもあったようです。
本稿のタイトルに「若宮のスーパーが閉店」と掲げていますが、若宮の商店街で営業していたスーパーマーケット「かどや」さんが、11月19日に閉店したのです。
市川にゅ~す
市川市若宮の生鮮スーパー「かどや」が11/19(土)をもって閉店
https://ichi-24.jp/archives/33957
このお店に対するGoogleクチコミを見てみると、地域住民にとっては不可欠な存在であることがわかります。
2015年ごろ、市川市に住んでいたときに、よく利用していました。駅前の大型スーパーに比べると品揃えは少ないですが、必要そうなものを選んで置いているという感じでした。日常生活で必要な食品はだいたい揃うし、徒歩で行けるので、特に不満なところはなかったかな。
出所:市川市若宮2丁目の「(有)かどや酒生鮮スーパー」のGoogleクチコミ、2022年12月19日閲覧
野菜・魚はあまり品揃えがいいとはいえないのですが、肉は行徳の広喜屋のものが並んでいるので、規模の割に品ぞろえがいいし、たまにレアな物が売ってたりします。値段も広喜屋のものだけあって安いです。
出所:市川市若宮2丁目の「(有)かどや酒生鮮スーパー」のGoogleクチコミ、2022年12月19日閲覧
地元密着型の小さなスーパーです。施設は古く品揃えは大手スーパーには負けますが、特売品でかなりお買い得な商品も結構あります。
出所:市川市若宮2丁目の「(有)かどや酒生鮮スーパー」のGoogleクチコミ、2022年12月19日閲覧
また、鮮魚の担当の方の目利きが良いのか、ここのハマチの刺身が美味しいです。何度も購入してますが、今のところハズレなしです。
地域になくてはならないお店です。
出所:市川市若宮2丁目の「(有)かどや酒生鮮スーパー」のGoogleクチコミ、2022年12月19日閲覧
店員さんも良い人たち。
Twitterでは、お肉を行徳の「広喜屋」さんから仕入れていることに言及する投稿もありました(若宮の生命線!)。
住民から求められていた「かどや」さんが先月閉店したことで、この地域には食品を購入することのできる店舗が全くなくなってしまいました。若宮の商店街は、いわゆる、「買い物不便地域」や「買い物困難地域」と呼ばれる場所になったのです。
食料品アクセス困難人口
農水省などは、「店舗まで500m以上かつ自動車利用困難な65歳以上高齢者」の人口を、「食料品アクセス困難人口」と呼んでおり、「その割合が多い場所を地図上に視覚的に表現した「食料品アクセスマップ」を作成しています。
農林水産政策研究所Webサイト
食料品アクセスマップ
https://www.maff.go.jp/primaff/seika/fsc/faccess/a_map.html
2015年における食料品アクセス困難人口は、全国で825万人と推計され、全65歳以上人口の24.6%であった。2005年との比較では全国で21.6%増加、このうち三大都市圏では44.1%、地方圏は7.4%それぞれ増加している。
出所:農林水産省プレスリリース、「食料品アクセス困難人口の推計結果の公表及び推計結果説明会の開催について」(2018年6月8日)、https://www.maff.go.jp/primaff/koho/hodo/180608.html、2022年12月19日閲覧
過疎地などで店舗が撤退することにより、食料品アクセスが困難になるケースが多いと思うかもしれません(もちろん、そのようなケースは多いのです)が、引用した農水省の文章にあるように、三大都市圏で食料品アクセス困難人口が急増しています。もちろん、市川市でも。
上図(左は65歳以上、右は75歳以上の人口に占める、各メッシュのアクセス困難人口割合)は、市境界線が見づらいですが、市川市および周辺自治体のメッシュ地図です。メッシュの色が赤に近い程、65歳以上、あるいは75歳以上に占めるアクセス困難人口の割合が高いことを表します。
市の北東地域である大町や柏井町、北西の江戸川に面した地域である国府台、南部の東京湾岸にある塩浜や本行徳などに、赤のメッシュが存在しています。赤は、凡例にある通り、そのメッシュ内の65歳以上、または75歳以上の人口の50%超が食料品アクセス困難であることを意味しています。
12月13日の市川市議会で、この問題についての質問と回答がありました。まだ議事録は公開されていませんが、動画を視聴してざっと意味を大掴みで捉えましたので、次のパートでは、市議と市職員のやりとりを掲載します。
若宮の買い物不便地域における解決策は?(市川市議会)
市川市議会令和4年12月定例会(第5日12月13日)6.市政に関する一般質問(やなぎ美智子議員)
●やなぎ美智子議員
10月に、「若宮のスーパーマーケットが11月に閉店するらしい。惣菜、野菜、果物、日用品まで何でもそろうお店だった。これから買物をどうすればよいのか困り果てている」との声が寄せられた。
空き店舗の現状と課題について問う。
●小塚経済部長
令和2年10月1日の千葉県による商店街空き店舗数調査によると、市川市の商店街には約2,100の店舗があり、そのうちの約370が空き店舗とされている。
県の調査とは別に、市としても各商店街からの聞き取り調査などを通じて、空き店舗が増加していること、住宅兼店舗のため、店舗営業は終えたが、引き続き居住しているため、店舗部分だけ貸したくないという空き店舗が多いことを認識している。
店主が高齢化しており後継者がいない、経営不振などの理由で営業をやめた空き店舗が多い。
駅に近い空き店舗には借り手がすぐにつくが、駅から離れた商店街の空き店舗は募集をかけても入る店舗がない。
●やなぎ美智子議員
若宮商店街には、数年前に閉店したスーパーマーケットの空き店舗があった。
今回の閉店で、スーパーマーケットの空き店舗が2店になった。
個人商店の空き店舗も目立つ。空き店舗活用の考えについて問う。
●小塚経済部長
日用品などの販売の他、地域コミュニティの醸成に資する等の活用が考えられる。
空き店舗の解消に向けた支援は、令和元年度から地域にやさしい商店街推進補助事業を行っている。
商店街内の空き店舗を活用する場合、施設の改修工事費や備品購入などに最大15万円を補助する。
中小企業融資制度で、商店街空き店舗等利用資金として、運転および設備資金を限度額2,000万円までの融資を行っており、融資の支払い利子の一部に対して??を行っている。
県の支援制度として、空き店舗を活用したコミュニティスペースや子育て支援スペースなどに対する補助事業がある。
これらの制度が活用されることで、空き店舗が減り、商店街のにぎわいにつながることから、制度の更なる周知に努める。
●やなぎ美智子議員
商店街としての存続自体が危ぶまれているので、支援制度のあり方も見直しがあるのではないか。
ある高齢者は、これからはタクシーを相乗りして買い物に行こうと考えている、うまくいかなかったらどうしようと不安になると話していいる。
市の対応を問う。
●立場福祉部長
市川市は都市部にあり、店舗にはある程度恵まれた環境にあるが、一部には徒歩圏内に食品や日用品を買える店舗がない、いわゆる「買い物不便地域」も存在している
令和2年4月に、大町地域のスーパーマーケットの閉店などがあり、移動販売導入に向けた調整を行い、令和2年11月に、いわゆる「買い物難民」と呼ばれる人のいる「買い物不便地域」の解消と市民の交流促進を図ることを目的に移動販売を検討していた株式会社ダイエーと、移動販売の実施に関する協定書を締結した。
令和3年1月にダイエーは市内20か所で移動販売を開始、令和4年12月現在、26か所で実施している。
移動販売は、生鮮食品、加工食品、日用品など300品目を扱っており、利用者からは、品物を見て選ぶことができるのでうれしい、外に出るきっかけになるとの声が寄せられている。
若宮のスーパーマーケットの閉店については、10月中旬頃に市川市公式Webサイトへの問い合わせや電話により把握し、11月初旬に市とダイエーで現地確認を、11月中旬に地元自治会と意見交換を行った。
来年1月中旬頃から、若宮で週1回の移動販売を行う予定。
●やなぎ美智子議員
買物難民への対応手段は移動販売だけではなく、バス路線の変更など、店舗への移動手段の確保を含め複合的に考えていく必要があると考える。今後どうするのかを問う
●立場福祉部長
移動販売は限られた時間の枠内での実施であり、場所の制約もあり、全てのニーズに応えることは難しい。
食料品などの確保に有効な手段については今後引き続き研究する。
(やなぎ市議と市職員のやりとりは、ここまでです)
このやりとりをYouTubeで視聴して、ひとまずは来月からダイエーさんの移動販売車が、若宮の商店街に、週1回やって来ることになるということを知り、ホッと胸をなでおろしました。
ちなみに、11月下旬、筆者は若宮の「かどや」さんが閉店したことに伴う、買い物困難地化(買い物不便地化、食料品アクセス困難地化)への対策について、市川市公式Webサイトの「市民の意見箱」から問い合わせをしました。これに対する回答は次の通りです。
本市では、株式会社ダイエーと協働して、買い物不便地域の解消と地域コミュニティの活性化を目的とした移動販売を実施しております。
先頃、若宮2丁目のスーパーマーケットが閉店となることを把握した地域住民の方から、市に対してご相談が寄せられたことをきっかけに、市はダイエーに情報提供を行うとともに現地を確認し、周囲に買物のできる場所がなくなってしまうという状況や、販売を実施する場合の候補地等について把握を行いました。今後は、移動販売の実施に向けた地域との調整を、市としても支援してまいりたいと考えております。
福祉部 福祉政策課
出所:筆者が「市民の意見箱」より送信した質問に対する市川市からの回答メール(2022年11月30日受信)
政策グループ
このメールからは、市川市側からダイエーさんに情報を提供したこと、現地で現在の状況と(移動)販売を行う場合の候補地を把握したこと、今後、移動販売実施に向けて地域とダイエーの調整を市川市が支援したいと考えていることがわかりました。が、具体的にいつから開始できそうなのか、といったことまではわからなかったので、市議会で議員から質問が出たことにより、最新状況が確認できたことは、良かったです。
関連記事 Part2 地域商業や地域経済活性化に関する記事
関連記事 Part3 空き家・空き店舗問題
「●●難民」、「●●テロ」という例え
最後に、言葉について補足します。
やなぎ議員は質問の中で、「買い物難民」という語を用いていました。立場福祉部長も「いわゆる」という言葉を添えて、この語を使っていました。この、「難民」というのは、もちろん例えで、実際の難民ではありません。例えとして「難民」という語を用いている語に、昼ご飯を食べることのできる店が混雑していたる等の理由で、食べ損ねた人を指す「ランチ難民」などがあります。最近では、「難民」という本来の語が持つ意味合いを無視してカジュアルな例えとして使うことに対する批判も目に付くようになりました。経済産業省では、「買い物難民」ではなく、「買い物弱者」という語を使っているようです。
「難民」の他にも、「テロ」という、当事者にとっては悲惨で過酷な状況でしかない事象を、カジュアルな例えとして使う用法(「飯テロ」など)に対しても、使用を止めるべきとの意見を目にします。
使う人は悪気なく使っている、ランチ難民、買い物難民、ネットカフェ難民、飯テロ。無邪気にこの種の例えをしてしまうことは、裏返せば、現代日本で生活をしていると、難民問題やテロなどの問題は、遠い海の向こうの話であって、身近な事象ではない、と感じていることの表れかもしれません。
しかし、実はそれほど縁遠い話ではないかもしれません。
市川市にも難民、避難民の方がいらっしゃいます。
新型コロナウイルス感染拡大は、ラマダン(断食月)を迎えたイスラム教徒たちの生活にも暗い影を落とす。ミャンマーから日本に逃れてきたロヒンギャの一家は、故郷での迫害に、ウイルスの脅威も加わり苦しみが重なる。「この暮らしがいつまで続くのか」。神への祈りを静かに捧げながら、不安な日々を過ごしている。
10日午後6時38分。日没を迎えた市川市行徳駅前の民家で、モハメッド・サリムさん(45)の一家は、顔の前に両手を広げて祈りを捧げた。すでに食卓にはスパイスの効いたひよこ豆のフライやパスタ、ココナツのクレープに色鮮やかなフルーツが並んでいる。イフタール(日没後の食事会)の始まりだ。
「私たちにとって大切な時間なので、やっぱり寂しいです」。サリムさんは、そうこぼす。例年は友人たちと近くのモスク(礼拝所)に集い、にぎやかに食事を囲む。迫害を受けながらも、モスクに行けないラマダンは人生で一度もなかった。今年はウイルス感染を避けるために、家族と自宅で静かに食事をする。
出所:朝日新聞デジタル、「迫害うけ来日のロヒンギャ家族、収入や学びにコロナの影」(2020年5月11日)、https://www.asahi.com/articles/ASN5B73K6N4ZUDCB002.html、2022年11月17日閲覧(太字は筆者)
千葉県社会人サッカーリーグ1部に所属する市川サッカークラブ(市川SC)は、本日、ウクライナ国籍のコブザール・ダニール選手(20歳)が加入したことをリリースしました。
ダニール選手はウクライナの名門、FCシャフタール・ドネツクの下部組織出身。戦禍を逃れた避難民として、ウクライナから他国を経由し8月上旬に来日、前所属チームであるウクライナのFC U.C.S.Aより市川SCへの国際移籍手続きが完了し、全ての公式戦への出場が可能になりました。
戦禍により日常でなくなったウクライナでのサッカー選手としての生活を日本で取り戻して、彼にとってサッカーが日常になることを願って、市川SCは業務提携しているFC市川GUNNERSと共に、グランド使用や練習参加など、ダニール選手にできるだけのサポートをしていくつもりです。
(中略)
●ダニール選手コメント
出所:FC市川GUNNERS公式Webサイト、「ウクライナ避難民 コブザール・ダニール選手が市川SCに加入」(2022年8月18日)、https://fcichikawagunners.jp/jp/danil/、2022年11月17日閲覧(太字は筆者)
「市川SCに加入できて嬉しいです。この機会を与えてくれたチームに感謝します。 チーム一丸となって、高い目標を達成していきたいと思います」
「多文化共生社会」を目指す「国際都市」市川市
筆者は最近、佐々涼子さんの著作『ボーダー 移民と難民』(2022年11月25日発売)を読んでいます。自分が移民や難民について、あまりにも無知だと痛感します。
ウクライナ難民で始まった話ではない。
出所:集英社Webサイト、『ボーダー 移民と難民』Webページ、https://www.shueisha.co.jp/books/items/contents.html?isbn=978-4-7976-7402-6、2022年12月19日閲覧
ミャンマー、スリランカ、イラン、アフガニスタン、そしてアフリカの国々から……。
命からがら、日本にたどり着いた人たちを、
私たちは、どう受け入れてきたのか?
「多文化共生社会」を目指す「国際都市」市川市に住む者として、この本のようなノンフィクションを読み、日本における移民や難民がどのような仕打ちを受けてきたかを知ることには、大きな意義があると思っています。
市川市は、市民の約30人に1人、17,621人もの外国人住民が暮らしており、国籍数も106か国・地域という多文化で国際的な都市です(令和4年11月末現在)。出入国管理庁によると、外国人の人口が全国で20番目となっています(令和3年6月現在)。
出所:市川市公式Webサイト、「多文化共生推進事業『世界の食卓から』」(2022年12月8日更新)、https://www.city.ichikawa.lg.jp/pla05/0000391892.html、2022年12月19日閲覧(太字は筆者)
国際都市・市川市では、言語・文化・習慣の違いを互いに寛容し、すべての市民が地域社会の一員として共に生きていく「多文化共生社会」となることを目指し、様々な取り組みを行っています。
また、フィクションの作品ですが、映画『マイスモールランド』は、クルド人が多く住む埼玉県川口市(荒川を挟んだ対岸は東京都北区赤羽)が舞台で、日本で生活する移民が置かれた特殊な状況を理解する上で助けになる1本だと思います。
最後に、一言だけ(先ほども、最後に、と書いた気がしますが、今度こそ最後です)綴ります。
上で引用した、市川市公式Webサイト「多文化共生推進事業『世界の食卓から』」では、〈外国にルーツをもつ皆さんに、日本の食文化の代表とも言える「お弁当」を通して、海外のランチを紹介してもら〉(引用)っており、動画や文字情報での各国料理の紹介や、普段、市川市で生活していて感じていること(食生活に関することで驚いたことや不便を感じていることなど)が掲載されています。とても読み応え、見応えのある内容なので、当サイトで来年早々にでも取り上げてみたいと思います。
それでは、ごきげんよう!