【コラム】市川市で書店が3か月連続で閉店

コラム

公開日 2022.5.23
更新日 2022.6.9

下総中山駅の近くに、小さな書店がありました。
店主が選び抜いた、こだわりの少女漫画・文学・絵本などが、所狭しと並んでおり、さながら、可愛いものを集めた宝石箱のようでした。
私はしばしば坊と訪れ、坊が欲しがるコミックを買ったものです。

本八幡に、幼い頃から、今に至るまで、長い間お世話になっている書店があります。
チェーン店でありながら、品揃えが実にユニークで、特にコミックに注がれる情熱は、売場からあふれ出して、通路にまで流出しているかの如く、ほとばしっています。
ここでは本当にたくさんのコミックに出会いました。未知の世界を教えてもらいました。

かつて住んでいた妙典の地には、駅前に書店があります。
ヨレヨレのスーツ、ボサボサのヘア、カラカラのソウルで、自動改札から放り出されるようにして街に出た私は、家路に就く前、その書店に立ち寄って、幾つかの売場を「流す」のが、ささやかな楽しみでした。

これらの書店は、全て所在地が市川市で、上から順に、

「Books Licottaリコッタ(高石神)

「ときわ書房本八幡店」(八幡)

「オークスブックセンター妙典店」(旧・流水書房妙典店、富浜)

です。いずれの書店も、私にインスピレーションを与えてくれました。

そんな3つの書店が、2022年の春に、立て続けに閉店します※1

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全国の書店数は、21世紀初頭には2万店を超えていましたが、年々減り続け、2020年には1万店強となっています(出版科学研究所Webサイトより)。
https://shuppankagaku.com/knowledge/bookstores/

日本の書店数は、この20年間で半減しています。(出版科学研究所Webサイト掲載データより作成)

紙の本を実店舗で販売する事業を取り巻く環境は厳しく、東京都内の書店が閉店することの報に接する機会は増えているようにも感じます。

最近でも、「文教堂書店赤坂店」が、6月17日に閉店することがわかると、1月31日に「ツタヤ赤坂店」、昨年3月31日に「金松堂書店」が閉店しているため、赤坂駅周辺の書店がなくなってしまうことが報じられていました。

都内では、今月(2022年5月)、「明正堂書店アトレ上野店」(2022.5.10閉店)、「三省堂書店東京駅一番街店」(2022.5.27閉店)、「リブロ東銀座店」(2022.5.31閉店)が相次いで閉店します。個人的には、この中では特に「明正堂書店アトレ上野店」が印象深く、何度も買い物をしたものです。

また、今年の2月13日には、日比谷シャンテ内の「HMV&BOOKS 日比谷コテージ店」が閉店しました。私がよく聴いているラジオ番組「アフター6ジャンクション」(TBSラジオ、月~金、18時~21時)でも話題にぼることの多かった書店で、「女性のための本屋」と銘打った特徴ある品揃えや販売方法が魅力的なお店でした。といっても、私が訪れたのは昨年12月半ばの1度だけでしたが、まさかその2ヶ月後に閉店するとは思ってもいませんでした。

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私は、本が好きなのですが、本を読むことだけでなく、書店に色々な本が並んでいるのを見ることも好きなので、実店舗の書店が減っていくことは残念でなりません。

好きな書店は、お気に入りの喫茶店と同じような存在でもあり、「自分の居場所」になっています。「サードプレイス」※4と言えるかもしれません。

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今日(2022年5月23日)を含めて、残り9日間の営業となった「ときわ書房本八幡店」は、本八幡のパティオが前身ビルだった頃から、延べ42年間営業してきました。私も、幼いころから現在に至るまで、何度も訪れ、たくさんの本と出会ってきました。
※「ときわ書房本八幡店」への皆さんからの感謝の言葉は、こちらに掲載しています。また、お店へのメッセージも募集中です(2022年5月現在)。

来月閉店するという「オークスブックスセンター妙典店」は、前身の「流水書房妙典店」だった頃に、本当によく訪れていました。疲れ果てた帰り道に立ち寄る「流水書房妙典店」は、HPを回復できる場※5でした。

1か月前(2022.4.24)に閉店した「BooksLicotta」については、私が下手な説明をするよりも、本八幡botさんの撮影による写真(掲載許可をいただいています。本八幡botさん、ありがとうございます!)をご覧いただいた方が、その世界をご理解いただけると思います。
ページの冒頭に掲載した写真も「BooksLicotta」の写真です。

下総中山駅の近く(市川市高石神)で営業していた頃の「BooksLicotta」さんの外観。撮影:本八幡botさん
「BooksLicotta」さんの棚の様子。並ぶ背表紙は、不思議な世界への入口です。撮影:本八幡botさん
「BooksLicotta」さんのオリジナル・キャラクター、リコッタちゃん。お店のイメージにぴったり合った、おとぎ話の主人公のようなキャラクターです。撮影:本八幡botさん

私は坊と共に「BooksLicotta」を訪れることが多く、お店で自分が読みたい本と、坊が欲しいという本を買った後、近くにある「Art Gallery Cafe 茶々華チャチャカ」(鬼高2丁目)で、コーヒーを飲み、ケーキを食す、という黄金コースを築いていました。買った本のページをめくりながらコーヒーを飲む時間は、至福でした。

「BooksLicotta」の店主さんとのTwitterでのやりとりを紹介します。

高石神(最寄駅は下総中山駅)の小さな書店、BooksLicottaさん。
いよいよ最終営業4月24日(日)まで残り一週間を切りました。色々な本と出会えて本当に良かったです。本当に。坊もお気に入りでした。
下総中山にお店を開いていただき、ありがとうございました。(ノスタルジー鈴木)

お子様が当店で「この本が欲しい」と主張してくださること、それを親御さんが応えてくださること。
とても嬉しい光景ですし、とても大切なことだと思っています。
お客様から学ぶこと、たくさんありました。
ありがとうございます。(Books Licotta 店主さん)

出所:ノスタルジー鈴木とBooksLicottaさんのTwitterでの会話(2022.4.18)

私と坊のやりとりを温かく見守っていてくれたことがわかります。とてもありがたいですね。このことは、ずっと忘れないと思います。

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市川市で生活をする私たちにとって、3か月連続で書店が閉店するということは大きな損失です。とんでもなく大きなものが欠損する、そんなイメージがあります。

市内には図書館がいくつもありますし、ネット通販で本を買うことができますが、予想だにしなかった本と出会える場として、「サードプレイス」として、街の書店には、図書館ともネット通販とも違う価値があります。

市川市は文教都市と呼ばれています。「市本」※6が行っているような、読者同士、本好き同士が交流するような機会が増えれば、書店を訪れる人が増え、書店減少の流れに歯止めがかかるかもしれません。図書館でも様々な工夫をして、市川市で生活する人たちと本との接点を創出してくれています。フリースタイル市川でも、「ときわ書房本八幡店ありがとう」プロジェクトを実施していることもあり、本に親しむイヴェントを実施したいと思っています。
※こんなイヴェントがあったら参加したい、というご意見、ご要望などがあれば、お気軽にメッセージをお送りください

誰でも立ち寄れる書店は、「街の文化インフラ」です。人によっては、「自分の居場所」であり、「サードプレイス」でもあります。「20年前に上京してきて本八幡に住み続ける理由の一つがときわ書房さんがあるから」という人さえいます(詳細はこちらをご覧ください)。その書店が、街から消えていくことは、「居場所」や「想い出の詰まった場所」がなくなることも意味します。街に、お気入りの「居場所」、「サードプレイス」が1つでも2つでもあることで、生活くらしは楽しくなります。書店は、その街での生活を楽しくするという価値があります。それに、その街に生きる人にとって「心のどころ」にもなります。

当コラムで、私は、書店の閉店を嘆き、悲しみ、ひたすら「書店は大事だ」と連呼し続けているだけで、気の利いた締めくくりも考えられない体たらくですが、最後に言いたいことは、やっぱり、「書店は大事だ」ということ、それに尽きます。

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〈注釈〉
※1:2022年4月24日に「Books Licotta」※2,3、5月31日に「ときわ書房本八幡店」、6月20日に「オークスブックセンター妙典店」が閉店します(この記事を書いている時点で「Books Licotta」は既に閉店)。冒頭の写真は、本八幡botさんが撮影し、Twitterに投稿した「BooksLicotta」の写真です。許可を得て使用しています。なお、本文中では、店舗名に「さん」という敬称を添えていませんが、写真のキャプション内や、他の記事では添えているものもあります。

※2:下の画像は、2022年4月24日(日)の「BooksLicotta」の最終営業日に、ノスタルジー鈴木こと私が、店主さんへのご挨拶にうかがった際に購入したものです。

2022年4月24日(日)の「BooksLicotta」さんの最終営業日にノスタルジー鈴木が購入した本、ノートブック、ポストカード。

※3:「BookLicotta」の最終営業日にお店で買い物をしていた時、あるお客さんから声を掛けられました。私のパタゴニアのリュックについていた「市川まちガチャ」の町名小判札「トーカギ」を見て、「ガチャ、やったんですか?」と。その方は「ワカミヤ」を所持しているとのことでした。「市川まちガチャ」というご当地グッズ(地元ネタ)が見知らぬ人との会話を生むことに驚くと同時に、店主の好みが強烈に反映された「好きなもの」「好きな世界観」を共有するお客同士なので、話かけても怖くないと思ったのではないか、と想像しました。

※4:「サードプレイス」について。〈「第三の場所」を意味するサードプレイスは、自宅や学校、職場とは別の居心地のいい居場所の事だ。アメリカの都市社会学者レイ・オルデンバーグが、その重要性を説いた〉 〈サードプレイスは、義務や必要性に縛られるのではなく、自らの心に従い、進んで向かう場所だ。趣味をしたり、息抜きをしたりできる、心安らぐところで、その場所は人により千差万別である。たとえば、一人で通うお気に入りの静かなカフェ、音楽の趣味を共有できる仲間たち、一緒に体を動かすグループなどもそうだ〉
(出所:「IDEAS FOR GOOD」https://ideasforgood.jp/glossary/third-place/)

※5:仕事でへとへとに疲れた後で立ち寄るお気に入りの書店には、HP回復効果があると思っています。2020年3月1日に閉店(その後、アウトレットセールを実施し、2020年3月29日に完全閉店)した、「ヴィレッジヴァンガードお茶の水店」は、2005年頃から閉店までの約15年に渡り、私の精神に栄養を与え続けてくれた、地底に広がる秘密の楽園でした。心身ともに傷を負った時、螺旋階段でこの店に降下したくなったものです。入る時はHPがほとんど残っていない状態であっても、地底に降下し、小一時間ほど回遊して買い物をした後で地上に出た時には、HPもMPも回復しており、レヴェルアップして、新しい呪文の1つや2つ、覚えていることもしばしばでした。店を出て、元気になった私は、世界で一番好きな坂道である錦華坂を上り、米米CLUB発祥の地でもある旧・文化学院の門を見てから、JRお茶の水駅、または、JR秋葉原駅まで歩くのでした。そんな、私にとってのサードプレイスだった「ヴィレッジヴァンガードお茶の水店」の在りし日の姿をごらんください。

在りし日の「ヴィレッジヴァンガードお茶の水店」さんの入口の看板。
「ヴィレッジヴァンガードお茶の水店」さんの店内に向かうアプローチ。
「ヴィレッジヴァンガードお茶の水店」さんの売場へのアプローチ。螺旋階段を降下すると、地下空間に所狭しと商品が積まれた売場が見えてきます。
「ヴィレッジヴァンガードお茶の水店」さんの螺旋階段を下りた場所から見上げると、そこには空が!この地底に広がる楽園は、天空とつながっているんだ!と思って興奮したものです。
閉店することが決まった「ヴィレッジヴァンガードお茶の水店」さんへのお客さんからのたくさんのメッセージ。皆、ヴィレヴァンのPOPの用紙に思い思いのメッセージを書いています。
「らせん階段を降りて地底に行くと光あふれるパワースポット…最も素晴らしいヴィレヴァンでした。父子でもよく来ました。いつもここで色々なことを知りました。ありがとう!」と書かれたヴィレヴァンのPOP用紙。ノスタルジー鈴木が2020年に記したものです。ここにある通り、ノスタルジー鈴木は坊と共に何度もこの店を訪れました。

※6:「市本」とは〈主に社会人や大学生の方を対象に、本を介した学びと交流を促進し、働きながらも学び続けていける環境の醸成や新たな交流の機会創出を目的とした施設です。気になる本を読んだり本に関するイベントに参加するなどの新たな学びと交流の機会を提供します〉(出所:https://www.city.ichikawa.lg.jp/edu12/0000377465.html)というものです。JR市川駅の北口にあります。下の記事に、「市本」で行われたイヴェントに参加した体験を掲載しています。

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