【国会】フードバンク、フードパントリー、子ども食堂などへの行政支援について

フードバンク

公開日 2022年7月1日
更新日 2023年1月4日

こんにちは。今日から7月、下半期のスタートです。

突然ですが、「国会会議録検索システム」をご存じでしょうか。

国会会議録検索システム

私たちの代表である国会議員たちがどのような議論をしているのかを調べたいときに大変便利なツールです。いうまでもなく税金を使って作られたシステムです。積極的に活用しましょう!(画像はキャプチャしたものです)

この検索システムを使うと、ご自身が興味を持っている事項が国会で取り上げられているかどうか、どのような議論がおこなわれているか、というようなことを、容易に調べることができます。

それでは、さっそく使ってみましょう。

今回はキーワード検索をしてみました。

「フードバンク」という語を入力して検索すると、この語を含む議事録のリストが、このようにずらっと表示されます。

該当会議録は133件あり、最新のものは、約1か月前の2022年5月24日、第208回国会の参議院内閣委員会のものでした※1(なお、「フードバンク」で検索すると、第208回国会では、衆議院で11件、参議院で9件、ヒットしました)

5月24日の第208回国会、参議院内閣委員会の議事録をみてみました。Webページ内検索で「フードバンク」が登場する箇所を確認した結果、登場するのは1箇所で、立憲民主党の宮沢由香議員のこの発言においてでした。

、第208回国会の参議院内閣委員会における、立憲民主党の宮沢由香議員による発言(国会会議録)。この画像は、フードバンクという語でWebページ内検索をした結果をキャプチャしたものです。

この、宮沢議員の発言内容は大変興味深いのですが、「ところが、このコロナ禍において子供食堂もできない中で、フードパントリー事業が全国で大変増えました」以降の問題提起と、それに対する政府の回答は、私たちのフードバンクの今後の活動を考える上でも、そして、6月25日に開催した「フードバンク・シンポジウム」(レポートはこちら)にご参加いただいた、子ども食堂の運営などを行う団体、福祉団体、地域の各企業、そして、市川市(行政)の皆さんが今後の展望を描く際にも、大いに関係する内容だと思います。

長くなりますが、重要なことなので、宮沢由香議員の質問と、それに対する政府参考人、内閣官房こども家庭庁設置法案等準備室長 谷内 繁 氏の回答を紹介します。

まずは、宮沢議員の発言です。

ところが、このコロナ禍において子供食堂もできない中で、フードパントリー事業が全国で大変増えました。食料を直接取りに来ていただいて、そこで渡す。そういったときに、利用者さんとフェース・ツー・フェースで会うことができた。そこで、お母様方、また外国人の方、学生から、こんなに困っている、こんなに大変な状況だということがフードパントリーに寄せられるようになった。

そして、その中で、特に子供に関しては、実はDVを受けている又は貧困で大変な状況にある、また子供が障害があるということで、まさにフードパントリーで活動しているNPOなどの皆様が窓口になってしっかりと、今までそういった方々の中では、わざわざ市役所、市町村役場へ行って窮状を訴えるということさえも気付かない方々、大変困窮している方々が、食料を受け取るというきっかけで、自らの大変な状態を言葉にしてそういった支援の方々にお伝えすることができるようになった。

これ大変大きな事例でございまして、こういった活動を行政としても政府としてもしっかり後押ししなければならない状況の中で、まだまだ手弁当で皆様がやっているのを、ただただ近所の子供食堂に行ってください、近くのNPOにお尋ねくださいという状況ではいけないと思います。しっかりとこういった地域活動を支えていく、また支援していく、そして予算を立てていくということも大変重要であると思います。

出所:「第208回国会 参議院 内閣委員会 第18号 令和4年5月24日」、宮沢由佳 参議院議員(立憲民主党)の発言、 https://kokkai.ndl.go.jp/#/detail?minId=120814889X01820220524 (太字は筆者)

全国の「子ども食堂」(会議録中では「子供食堂」)では、2020年の春先に始まった新型コロナウイルスの感染拡大によって、利用者さんが集まってテーブルで食事を摂る方法での開催ができなくなりました。宮沢議員は、この形式に代わって、まとまった量の食材を各利用者に渡す、「フードパントリー」を実施した「子ども食堂」が多かった、ということに言及した上で、次のように言っています。

  • 「フードパントリー」のスタッフの方々が、その利用者さんたちと対話することで、各地で具体的に困っている状況を把握することができた
  • 困りごとが集まる窓口として「フードパントリー」が重要な役割を果たす
  • 行政は、NPOなどの民間に任せるだけでなく、「しっかりとこういった地域活動を支えていく、また支援していく、そして予算を立てていくということも大変重要である」

ちなみに、先日の「フードバンク・シンポジウム」では、「子ども食堂」が「フードパントリー」形式に切り替えたところ、利用者さんの待ち行列が長くなると、待たせるわけにはいかなくなり、1人1人と対話することもままならず、交流の機会を持ちづらいことがあった、との報告がありました。各「フードパントリー」で状況は様々であることがよくわかりますね。

さて、この宮沢議員の発言を受け、政府参考人として、内閣官房こども家庭庁設置法案等準備室長 谷内 繁 氏が、次のように答えました(こども家庭庁は来春の開始を目指して準備中です)

NPOを始めとする様々な民間団体でございますけれども、今議員が御指摘になりましたように、支援が必要な子供の存在を知るために非常に活動されておりますし、さらに、地域における子供や若者、子育て家庭に対する支援の重要な担い手であるというふうに認識しております。その取組を支援するとともに、ネットワークを強化していくことが重要だというふうに考えているところでございます。

このため、例えば、これまでも市区町村のファミリー・サポート・センター事業に対して内閣府から補助を行っており、運営をNPO等へ委託する場合にも活用いただいております。また、議員御指摘の子供食堂やフードパントリーに対しては、例えば、内閣府におきまして、子供食堂等の居場所づくりを行う自治体に対する地域子供の未来応援交付金によりまして、子供食堂を始めとする支援団体と関係行政機関等との地域ネットワークの形成支援を行うとともに、個人や企業などの寄附を原資とした子供の未来応援基金などを通じまして、支援団体を直接支援し、運営基盤の強化に取り組むなど、その活動を後押ししているところでございます。 

こども家庭庁が創設された暁には、今後ともこれらの取組を通じまして、子供の健やかな成長や子育て家庭を支援するNPO等の民間団体を当然後押ししてまいりますとともに、積極的なNPO等との、民間団体との対話、連携、協働を図ってまいりたいというふうに考えております。

出所:「第208回国会 参議院 内閣委員会 第18号 令和4年5月24日」、谷内 繁 内閣官房こども家庭庁設置法案等準備室長 の発言、 https://kokkai.ndl.go.jp/#/detail?minId=120814889X01820220524 (太字は筆者)

谷内氏の回答は、「しっかり支援します」ということに尽きますね。

フードバンク、フードパントリー、子ども食堂などは、NPOなどの民間団体が、ほぼボランティアで行っている、いわゆる「共助」と呼ばれるものです。

行政が直接手掛ける「公助」では行き届かない、あるいは、今のところ税金を使う優先順位が相対的に高くないとみなされている領域を、補うように、いわば、行政によるセーフティ・ネット(公助)の網の目から零れ落ちてしまう小さな一粒一粒を、取りこぼさないように、フードバンク、フードパントリー、子ども食堂など(共助)が、各地(それは、「地域」と呼ぶよりも、むしろ、「近隣所(きんりんじょ)」「隣近所(となりきんじょ)」※3と呼ぶ方が相応しいかもしれません)に根差した活動をしています。

行政が「共助」の実態を把握したうえで、適切な支援をすることが大事――という、「共助」に関わっている人たちの多くが、そうあるべき、と考えているであろうことを、国会の場で確認したことに意義がありますね。それを当然と考える人がいる一方で、(当然ではないと考えている、ということではなく)実態を把握していないために、そうあるべきとは考えもしていない、そもそも取り組むべき事項かどうか、優先順位検討の議論の俎上に載ってさえいないことも、あるかもしれません。

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議会で話題に上ることもあれば、上らないこともあります。市川市議会でも、国会と同じように議事録を閲覧することができるので、ご自身が興味を持っている話題が、議会での質問・答弁の中に登場しているかを確認してみると、自分たちの代表・代理人である議員が、議論してほしいと思う事象を取り上げてくれているかがわかります。また、ご自身が関心を持つ話題を取り上げることが多い議員が誰なのかを知ることも重要です。次の選挙の際に、どの候補に投票するかを考える上で、参考になるからです。

ちなみに、市川市は選挙における投票率が低い自治体です。下の記事は、投票率が低いと、どのような問題があるのかを整理したものです。7月10日には参議院選挙の投開票が行われます。すでに期日前投票を行った人も多いと思います。ところで、前回の参議院選挙(3年前、2019年7月)の市川市における投票率は、何パーセントだったと思いますか?答えは下の記事の中にあるので、是非チェックしてみてください(その前に、下の注釈もご覧ください)

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〈注釈〉

※0:冒頭の画像は、CDアルバム(日本のミュージシャンによるビートルズのカバー曲を集めたオムニバス・アルバム)『Apple Of Her Eye りんごの子守唄』の赤盤、青盤のジャケットです(画:100%オレンジ)。

『Apple Of Her Eye りんごの子守唄 赤盤』収録曲

  1. Here Comes The Sun / 畠山 美由紀
  2. Across The Universe / chie
  3. Julia /イノトモ
  4. Yesterday / アン・サリー
  5. I Will / 原田 郁子
  6. Sun King / noon
  7. In My Life – インストゥルメンタル
  8. Ask Me Why / ボファーナ
  9. Dear Prudence / 中納良恵
  10. Honey Pie / 首里フジコ
  11. Because / 湯川潮音
  12. I’ll Follow The Sun – インストゥルメンタル
  13. Goodnight / アン・サリー

『Apple Of His Eye りんごの子守唄 青盤』収録曲

  1. Black Bird / ハナレグミ
  2. If I Needed Someone / Caravan
  3. All Together Now / 小池龍平( Hands of creation ・ Bophana )
  4. If I Fell / Saigenji
  5. Norwegian Wood (This Bird Has Flown) / 青柳拓次( Kama Aina・Little Creatures・ Double Famous)
  6. I’m So Tired / 曽我部恵一
  7. Here,There and Everywhere – インストゥルメンタル
  8. Two of Us / 蔡 忠浩(bonobos)
  9. Mother Nature’s Son / おおはた雄一
  10. Free As A Bird / キセル
  11. She’s Leaving Home – インストゥルメンタル
  12. Good Night / 細野晴臣

※1:「国会会議録検索システム」で「フードバンク」という語を検索してヒットした、古い(最古のものではありませんが、現在用いられているものと同じ意味の「フードバンク」が含まれている)会議録より、国会議員と国家公務員のやり取りを紹介します。

私は、ちょっと聞き慣れない言葉がありました。これは新聞にも出ておるんですが、フードバンキング、どういうことかなと思いまして聞いてみましたら、フードバンキングというのは、安全に食べられるのに包装や発注のミスなどで大量に廃棄されることになった食品を企業から受け取って、食べ物を確保できない団体、家庭に配分する活動であると。

アメリカではかなり定着していると、こう言われているんだそうでございますけれど、結局、例えばケーキでも何でもいいんですけれど、やっぱり見た目というのを日本は非常に重要視しますから、実は新しくて安全なのに包み方が悪かったとか、そんなことだけで商品価値がないというので廃棄する、捨てるということが間々あるんだそうです。しかし、これはもう安全性何ら問題ない。

そこで、NPOの活動の方々はそれを引き受けまして、引き取りまして、そしてホームレス支援のためにそうしたものをお配りさせていただいていると。そういう製造業者から寄附をいただいたり、商店から寄附をいただいたりしてそうしたホームレスの方に食べていただけるようにつないでいるんだと、こういうことなんですね。

こういう活動、いわゆるフードバンキングと言うらしいんですが、日本の言葉で言ったらどういう言葉が適当かなと、こうは思いますが、確かに日本では小売段階で外箱のちょっとした破損などでも、ちょっと何だ、中が大丈夫かなんてそこから展開していってみたり、賞味期限は大幅に残っていてもまた新しいものと。私も、夜買い物に行きますと、並んでいる牛乳でも飲み物でも、並んで前面に出ているところは大体賞味期限切れ三日か四日しかなくて、後ろに手をやると大体一週間あるっていうので、それを取り出してやっているわけでございます。そんなことの傾向があるんで、すごくこれはよく分かるなと自分でも思うんですが。

そうしますと、そういうやっぱり傾向が特に強いということになりますと、結果として、安全で十分食べられるんです、しかし捨ててしまうと、こういうことになります。こういう大量廃棄を防ぐ取組も大切なんですが、廃棄される食品が出てしまった場合、食品のリユースとも言える仕組みをつくったり活用すると、こういうことが重要だと思いますが、環境省、どのようにお聞きになりますか。

引用:「第166回国会 参議院 環境委員会 第12号 平成19年6月5日」、荒井広幸 参議院議員の発言、https://kokkai.ndl.go.jp/#/detail?minId=116614006X01220070605&current=3 (太字は筆者)

平成19年、と言われても、今は令和4年で、何年前かすぐにはわかりませんね。平成19年は西暦2007年、今年が2022年なので、上の発言は、15年前の国会における、荒井広幸衆議院議員によるものです。15年前、新聞に載っていたフードバンキングという聞き慣れない語の意味を確認した荒井議員が、国会で環境省に質問をしたということですね。せっかくなので、環境省の回答も紹介します。

品質上の問題はなく、単に外箱が毀損したなどの理由によりまして製造加工業者に返品された加工食品などを廃棄せずに施設等へ提供する行為、いわゆる今御説明のございましたフードバンキングの取組といいますのは、こうした食品を食用に供することにより廃棄物としての発生を防ぐものであります。したがいまして、こうしたフードバンクの取組は、食品リサイクル法では再生利用に比べ優先的に取り組まれるべき発生抑制として位置付けられるものであります。

政府としましても、こうした取組を食品リサイクル法の促進に関する優良事例としまして情報提供をすることなどによりまして、このような取組を促進をしてまいりたいというふうに考えております。

引用:「第166回国会 参議院 環境委員会 第12号 平成19年6月5日」、環境大臣官房廃棄物・リサイクル対策部長 由田 秀人 氏の発言、https://kokkai.ndl.go.jp/#/detail?minId=116614006X01220070605&current=3 (太字は筆者)

食品ロスの発生を抑制するための手段として、フードバンクは、再生利用よりも優先的に取り組まれるべきものという位置づけだと説明されています。15年前にこのような質疑が国会であったのですが、市川市では、この11年後の2018年5月に社会福祉法人市川市社会福祉協議会(いちかわ社協)が初のフードバンクを開始し、2021年6月には私たち(特定非営利活動法人フリースタイル市川)が2つ目のフードバンク活動を始動させた、ということで、政府が優先順位が高い取り組みだと国会で答弁してから15年が経ちますが、フードバンクの取り組みはまだ十分ではありません。私たちも実際にフードバンクを始めてみて、この活動が重要であることは痛感していますが、一方で、安定的な運営を継続するためには、資金面※2・人材面ともに不足している点は否めません。

※2:「いちかわフードバンクbyフリスタ」では、設備維持費や輸送費、スタッフの交通費、備品の費用などを、皆様からのご寄付でまかなっています。寄付金に関する説明は下記ページをご覧ください。

※3:「近隣所」「隣近所(となりきんじょ)」という言葉を知ったのは、荒井裕樹『まとまらない言葉を生きる』(柏書房)を読んだ時でした。「第五話 『地域』で生きたいわけじゃない」に、脳性麻痺者で「青い芝の会」で活動した障害者運動家の横田弘さんの発した、「『地域』じゃない。『隣近所』だ」※4という一言が登場します。

2022年5月31日に閉店した「ときわ書房本八幡店」で、4月13日に購入した荒井裕樹『まとまらない言葉を生きる』。売場を見ながら店内を歩いている時に目に留まって手に取った一冊です。

世の中全体が障害者の地域生活を自然に受け止めているかと言うと、残念ながらそうとは言えない。仮に「地域」という言葉を「隣近所」に置き換えてみてほしい。「『地域生活』には賛成だけど、でも、うちの『隣近所』はちょっと……」という反応は、やっぱり出てくると思う。

「地域」という言葉は、使い方次第では結構あやうい。例えば、「この施設は夏祭りとクリスマスに地域住民と交流しているので、地域との交流に取り組んでいる」と言い方もできなくはない。でも、夏祭りとクリスマスにしか交流がなかったら、それは「住み分け」だ。

あるいは、グループホームが街中にあれば「地域生活になるかといえばあ、そうとも限らない。入居者への管理が厳しくて自由に外出できなかったり、福祉関係者以外と付き合う機会がなかったりすれば、それはやっぱり「地域生活」じゃない。

出所:荒井裕樹『まとまらない言葉を生きる』(柏書房、2021年)

※4:ローカル・アクティビストの小松理虔さんがTwitterで、今年の5月2日に、〈地方についてではなく、「地域」について書きたい〉、〈「地域」よりも範囲の狭い「現場域」みたいなものについて書きたい〉〈「わたしと地域の接続」みたいなと書いていました。