【コラム】投票率が低いことは何が問題なのか

コラム

公開日 2022年6月6日
更新日 2023年4月22日

昨日(2022年6月5日)、市川市のお隣、松戸市で市長選挙が行われました。

3月に行われた市川市長選挙は、立候補者6名による争いでしたが、今回の松戸市長選挙では、9名もの候補者が立候補しました。現職の本郷谷健次氏が当選という結果でしたが、本稿では、自治体のリーダーについてではなく、選挙における投票率に注目します。

松戸市のWebサイトに掲載されている情報によれば、昨日の松戸市長選挙の投票率は37.14%でした。4割を下回っており、「有権者の6割以上が投票しなかった」ことになります。松戸市民の市政への関心が低いと言えるでしょう。

それでも、前の市長選挙の投票率(29.33%)よりは7.81パーセントポイント(以下、ppt)も高い数値でした。今回の投票率も高くありませんが、前回の投票率があまりにも低すぎたのですね。

ちなみに、冒頭のグラフは、総務省のWebサイトに掲載されていた衆議院総選挙の投票率のデータを基に、その推移を表したものです。昭和期には投票率70%超のことが多かったのですが、平成期に低下し始め、最近では55%を下回ることもあります。

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一昨日、参議院議員選挙が、今月22日に公示され、7月10日に投票および開票が行われる、との報道がありました。ここで突然ですがクイズです。前回、3年前の7月21日に行われた参議院選挙の、市川市における投票率は何%くらいだったと思いますか?

正解は…

44%でした。
(参議院選挙区選出議員選挙が44.05%、参議院比例代表選出議員選挙が44.04%)

投票率が5割を切っています。投票しなかった有権者が55%超でした。有権者の半数以上は投票していません。この数字は、国政に対する市川市民の関心度の低さ、薄さを反映していると思います。

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ここで、最近の市川市における選挙の際の投票率を確認してみましょう。

市川市における選挙の投票率は毎回低いことが知られています。投票率が低いことは良くないことだということは何となくわかりますが、どんな悪影響があるのでしょうか?

今年3月に行われた市川市長選挙の投票率は、38.75%でした。昨日の松戸市長選挙の投票率37.14%よりは高いものの、「お隣の松戸市よりも市川市の方が投票率が高い」と言えるような差はなく、残念ながら両市とも投票率が低い、どんぐりの背比べ状態にあります。

ちなみに、以前、市川市の投票率が近隣の自治体と比べても低いのかどうかを確認してみたいと思い、「平成31年4月21日執行 市川市議会議員選挙」が行われた平成31年4月21日の11日後に当たる令和元年5月2日(2019年5月2日)に、市川市に隣接する船橋市と浦安市、松戸市の三市、および、千葉市を対象として、投票率を調べたところ、この日(2019年5月2日)時点での最新の「市議会議員選挙の投票率」は、次のようになっていました(データ出所:各自治体のWebページ)。

千葉県の中でも東京都内で勤務する会社員が多い自治体では選挙の際の投票率が総じて低いようです。ここには数字がありませんが流山市の投票率はどの程度なのか、気になります。

2019年の市川市議会議員選挙の投票率は近隣自治体で近い時期に実施された市議会議員選挙と比べても低かったのですね。33.23%!

3人に1人(33.333…%)よりも少ないとは!

野球で例えると、しばしば打率3割を超えると一流と言われることがありますが、首位打者を獲得するには打率3割4分くらいは必要になります。3打数1安打だと打率は3割3分3厘で、首位打者には少し届かないですね※1。すみません、話が逸れました(素直に I’m Sorry.※2)。

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選挙の際に報じられることの1つに、投票率の低さがあります。あまりにも多くの報道に接しますが、今回は、改めて「投票率が低いと(誰にとって)どのような不利益があるのか」を確認してみます。

  • 投票率が低いと、企業・団体など組織戦を展開する自民党や、支持母体の支援を受ける公明党に有利に働くとされる(反対に投票率が高ければ、無党派層からの票の上積みが期待できる野党に有利に働く) ※4
  • 国民が選挙で自分の意思を示さなければ、政治家は世論を無視して国政を運営する。低投票率は民主主義の危機 ※5
  • 投票率が低いと、一部の人の支持だけで当選できてしまい、議員が全体ではなく一部の支持者のことを考えるようになる ※6
  • 投票率が低いと、世襲議員が多くなる ※7
  • 投票率が低いと、既得権者(後援会に推された候補者)が当選しやすくなる ※7

現状の政治に満足しているのであれば、投票に行く必要はないのかもしれません。低い投票率ということは、いつも選挙で投票する人が投票し、あまり投票に行かない人は投票しない傾向となります。新人より現職が当選しやすくなり、野党より与党が支持を集めます。これまでのやり方を踏襲した政治が選挙後も継続します。

社会を変えたい、政治を変えたいと思うのであれば、投票することが不可欠です。誰がリーダーになるか、どの政党が与党になるのか、多数派になるのか、ということは重要ですが、投票率がどの程度なのか、ということにも注目してみましょう。特に、市民の政治への関心の度合い≒投票率が低い市川市においては。

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市川市では投票率が低いのですが、このままではいけないと考える人がいます。投票率を高めたいと考える人たちです。そんな人たちを紹介します。

■若者とママの投票率向上委員会in市川
〈私たちは、政党・イデオロギー・思想に関係なく、「選挙に興味を持ってもらう」また「投票率をあげる」ために、選挙や立候補予定者・立候補者の方の情報を、若者とママが分かり易い言葉と提示方法で、公平に発信するグループです〉(Facebookページより引用)
※若者とママの投票率向上委員会in市川の皆さんは、立候補予定者・立候補者への質問と回答をわかりやすく伝えて下さっています。
Facebookページ
Twitter

■iVoters 市川市の投票率向上を目指すプロジェクト
〈i Votersは、市川市の投票率が千葉県ナンバーワンになることを目指して活動します。そのために市政に関わる様々な情報を発信し、市民の政治的関心を少しでも高め、投票行動の促進に繋げたいと考えています。投票率を向上させるためのアイデアを皆さんと一緒に考え、それを実現できるように声を上げていきます。多くの人が暮らしやすく誰もが住みたい市川市になるように​、皆さんと一緒に地域を盛り上げていきたいと考えています〉(Webサイトより引用)
Webサイト
Twitter

■市川スウィーパーズ
〈市政への関心および地域への愛着を高め、市川市の選挙の投票率向上と議会構成の正常化を目指す、市川市民による任意のボランティアです。ネット⇔リアル双方から認知→共感→具体行動を促せるプラットフォームとなれるよう、ありたい未来を掲げつつ、自分らが楽しみながら活動をして参ります〉(Twitterより引用)
Twitter

■市川子どもわくわくネットワーク、市川子ども文化ステーション、いちかわ子育てネットワーク、市川子どもの外遊びの会
市長選挙の際に、立候補予定者の方々に「子ども・子育てに関する政策」などの質問をし、回答を公開している4団体です。投票率を高めることを目的として活動しているわけではないと思いますが、市民の選挙への関心を醸成する活動を通じて、投票率向上に貢献するものになっています。
2022年3月の市川市長選挙の立候補者への質問と回答

市川市内で、市民の政治への関心を高める活動、投票率向上につながるような活動をしている方は他にもいらっしゃると思います。ご存知の方は是非教えてください。

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評論家の荻上チキ氏による、投票率(投票行動、選挙離れ等)に関連する記事を紹介します。

以下は、「荻上チキが『どうすれば選挙で投票する?』の回答を見て思ったこと」(2021.10.12)https://gendai.ismedia.jp/articles/-/88214 の内容です。

  • 現代の若年が、特に低投票であるのは確か。「若者の選挙離れ」は存在すると言える
  • 「若者の選挙離れ」の理由を「若者が無関心になったから」とするのは妥当とは言えない(かもしれない)
  • そもそも「選挙離れ」は年齢に関わらず全世代の集団的な現象だ
  • 「若者の選挙離れ」の改善より先に「有権者の選挙離れ」を改善するための議論が必要だ
  • 投票率低下の大きな要因として「小選挙区制の導入による死票の増加」、「政党再編が続く中での無党派層の激増」、「組織動員の機会減少」などが指摘されている

荻上チキ氏は、「投票率の低さを問題視するのであれば、本来は選挙制度そのものを、改めて大きく見直すことも必要だ」として、以下のような研究知見を紹介しています。

  • 近所に投票所がある人は、投票所が遠くにある人よりも、投票率が高い(徒歩での平均時間が1分長くなると、投票率が0.4%ポイント下がる。横浜市のデータを用いた研究より)
  • 1万人あたりの投票所を1箇所増やせば、投票率が0.17%上昇するという研究成果もある(1950年代には、有権者一万人あたりの投票所数は8つだったが、2010年代には5つにまで減少している。この20年ほどでも、全国で4000以上の投票所が削減された)
  • 投票時間が2時間短縮されると、投票率が0.9%ポイント下落する(現在では17,000超の投票所=全体の3分の1以上が閉鎖時間を繰上げている。投票可能な時間が減少すれば、その分だけ投票に行けなくなる人も多くなる)
  • 期日前投票の投票所数を増やすほど期日前投票参加率は上昇し、さらには投票率そのものも上昇する(期日前投票の利用率はこの10年間で増加傾向)

また、同氏は、投票率を高めるには、

  • 投票所の数を増やす
  • 投票所の開所時間を伸ばす
  • 期日前投票の機会を増やす

ということに加え、

  • 投票所以外での投票手段を増やす

ことを検討することも必要だとして、〈「平日9時~17時」の働き方を前提としない人をはじめ、既存の投票手段では選挙参加が難しい人に対して、郵便投票やネット投票など、投票アクセス権を拡充するような制度整備が必要〉だと主張しています。

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上で、昨日の松戸市長選挙の投票率は37.14%で、「有権者の6割以上が投票しなかった」ということを指摘しました。それでも、前の市長選挙の投票率(29.33%)よりは7.81ppt高い結果でした。市川市でも、例えば千葉県知事選挙、衆議院小選挙区選出議員選挙、市川市長選挙の投票率を見てみると(下表参照)、少しずつ投票率が高くなっていることがわかります。

いずれも低い水準とはいえ、投票率が増加(上昇)していることがわかります。

上で紹介したように、市川市内では低い投票率が問題だと考える人たちが、投票率の向上につながるような活動をしています。こうした活動の効果もあってか、少しずつ投票率が高くなっているのかもしれません。

自治体における政治は住民の生活に直結しているものです。時折、投票率が高いとか低いとか、そんなことに興味がないという人に会いますが、「投票率が高い」ということは、「自分が住む地域の将来に関心がある人が多い」ということです。

もし、「政治家には期待していない」のであれば、「今までの政治家には期待しない」=「現職でなく新人に投票する」という行動をとることで、期待できない政治からの脱却に自分の選挙権を行使してはどうでしょうか。

また、「投票したいと思える候補者がいない」場合、それを理由に投票しないのではなく、「この候補者には当選してほしくない」「この人に政治を任せるのはゴメンだ」ということを理由に、いわば消去法で、候補者の中で最もマシな人に投票してはどうでしょうか。ベストな候補者を選んで投票する、ということが難しいのであれば、当選してほしくないワーストな候補者以外に投票するのです。

市川市議会とは全く関係ありませんが、フリースタイル市川が京葉ガス様の「てらす」と共催している月次イヴェントの『いちカイギ』というものがあります。『いちカイギ』には、「人と出会って、街をすきになる」というキャッチコピーが添えられています。自分が生活をする街(地域)を好きになる、興味を持つ、関心を高めるということと、投票行動を起こすことは非常に近いことです。

というわけで、投票する機会があれば(直近では参議院選挙が7月にあります)投票をしましょう!

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2023年4月22日、追記

ラッパーで、映画『劇場版センキョナンデス』では、プチ鹿島さんとともに監督と出演をしてもいる、ダースレイダーさんが、以前、選挙に行かず「投票をしていない人」は、「現状維持に対する支持を表明している」、または、「他者が決めたことに黙って従うことを表明している」というようなことを言って(書いて)いました。重要なことなので、紹介します。

 民主主義なので、自分が主となって自分のために決めていくと。ちなみに、投票に行くことが無駄だと思っている人も、実は参加してしまっています。今のまま変わらなくていいという「現状維持」、あるいはみんなが決めたことに黙って従うことに投票しています。決断をしていないのではなく、決断しないという決断です。

 つまり、2021年10月31日に行われる衆議院選挙について「私は自分で考えずに人に任せる決断をした」という記録が自分に残ってしまうわけです。実はどの行動をとっても、それは選択の結果になります。無関心であるということも政治的な立場になってしまうわけです。

 僕は、自分で国会議員を選べるという今の社会が維持されているうちは自分で選んだほうがいいと思います。もちろん、選んでも自分が投票した候補者が当選しない結果もあります。それでも、「自分はこの人を選んだ」という事実ができます。

出所:Biz SPA! フレッシュ、「衆院選『無駄だから投票しない』という人が入れている“1票”/ラッパー・ダースレイダー」(2021年10月30日)、https://bizspa.jp/post-526733/4/、2023寝4月2日閲覧、太字は筆者

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〈注釈〉
※1:日本のプロ野球における首位打者の打率に関する私の認識は誤っていました。最近10年間のセントラルおよびパシフィック・リーグの首位打者20名の打率は下表の通りです。

2012年度から2021年度までの10年間のセントラル・リーグおよびパシフィック・リーグの首位打者と打率、および、この期間の首位打者20名の打率の平均、最低、最高打率。


※2:軽くお詫びをする際に私が用いる『素直にI’m sorry』という一節(フレイズ)は、「日本最後のロックンロール・バンド」※3こと、チェッカーズの楽曲名で、1988年10月21日に発売されたかれらの18枚目のシングルです。同日発売のシングルには、以下のようなものがあります。中島みゆき『涙 -Made in tears-』(23枚目)、爆風スランプ『Runner』(13枚目)、プリンセス・プリンセス『GET CRAZY!』(6枚目)、谷村有美『Boy Friend』(3枚目)。
※3:スージー鈴木『チェッカーズとその時代』(ブックマン社)より。
※4:「投票率 低いと与党、高いと野党有利? 議席数への影響どうなる」毎日新聞 2021.10.30 https://mainichi.jp/articles/20211029/k00/00m/010/327000c
※5:「『低投票率は民主主義の危機』対策求める署名に2万人 茨城の獣医師が呼び掛け」東京新聞 2021.12.5 https://www.tokyo-np.co.jp/article/146700
※6:「衆院選 投票率を考える」NHK解説委員室 2021.10.27 https://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/700/456234.html
※7:「【出口治明との質疑応答15】なぜ、日本だけ、世界でも突出して世襲議員が多いのか?」※8 ダイヤモンドオンライン 2019.11.15 https://diamond.jp/articles/-/215786
※8:この記事には重要なことが書かれているので、少し引用します。〈だから投票率が低いと何が起こるかといえば、新しい血が政治の世界に入らず、世襲議員ばかりになってしまうのです。現にわが国の政治家の5割以上が世襲議員だといわれています。これほど世襲議員の多い国は世界中で日本だけのようです。ほとんどの先進国は、たとえばG7で見ると、国会議員の中での世襲議員の割合は1割以下だといわれています。だから、なぜわが国の社会が変わりにくいかといえば、投票率という数字できれいに説明できる。一般論でいえば、既得権を持つ後援会に推されて当選した人が既得権を壊すことはできません。どこの国であれ現在の政権与党にとって一番都合がいいのは、選挙ってアホらしい、政治家ってロクなもんじゃないと国民に思わせることなのです。そうしたら誰も投票に行かない。投票率が下がれば下がるほど、既得権者、つまり後援会に推された候補者が当選しやすくなる。だから昔、ある総理大臣経験者が、「若い人は投票なんか行かなくていい。家で寝てくれ」といったのは、とんでもない暴言だといわれましたけれど、それは違うのです。本音を正直にいっただけなのです〉