【コラム】子ども・若者の意見を政策に反映している自治体の先進的な取り組み/最も守られなくてはならない子どもたちの生きる権利

コラム

昨日、このコラムを公開しました。

本稿は、このコラムの続きとも言うべきものです。こども・若者の意見を聴取する機会を設けている自治体の取り組みを一般化したもの(わかりづらいですか?でも大丈夫です。読んでいただければ一般化とは何かわかるはずなので)を見ていきます。

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こども・若者の意見を聴取する機会を設けている自治体の取り組み

「こども政策決定過程におけるこどもの意見反映プロセスの在り方に関する検討委員会(第3回)」(2022年12月16日、14~17時)の会議資料「【国内先進事例調査】調査報告書」(株式会社NTTデータ経営研究所)に、こども・若者の意見を聴取する機会を設けている自治体の取り組み実態が掲載されています。

この調査は、対面またはオンラインによるヒアリング調査、および有識者からの情報提供で、2022年9月~10月に行われました。調査対象は、ニセコ町、石巻市、遊佐町、千葉市、豊島区、世田谷区、町田市、立川市、八王子市、川崎市、新城市、名古屋市、奈良市、尼崎市、東京都、滋賀県です。

市川市において、こども・若者の意見を政策に反映するための取り組みが進み、このような調査を行う際の対象となれば、胸を張って「市川市は、こども・若者の意見を政策に反映させる動きが進んでいるのです」と言えますね。

「【国内先進事例調査】調査報告書」より、次の8項目について、ほぼ引用の形で紹介します。
調査報告書:https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/ikenhanei_process/dai3/siryou1.pdf

  1. 意見聴取機会の確保方策
  2. 意見聴取を実施するに至った経緯・背景
  3. 参画するこども・若者の選び方
  4. 参画するこどもや若者の年齢や発達段階に応じた聴く体制のあり方
  5. 参画するこども・若者の年齢や発達段階に応じた配慮事項
  6. 声をあげにくいこどもから意見を聴く工夫
  7. 聴いた意見の政策への反映方法
  8. 参画するこども・若者へのフィードバック

では、1から順に8までを見ていきます(私は、(7)「聴いた意見の政策への反映方法」の新城市、奈良市の取り組みは、これぞ先進的な自治体だと感心しました)。市川市にとって参考になることが満載です。

(1)意見聴取機会の確保方策

  • 対面形式の定員制の会議体をこどもの意見聴取のベースとしている自治体が多い。ニセコ町、石巻市、遊佐町、千葉市、豊島区等では、こども議会・委員会・会議等を開催している
  • こども議会等の会議体について、3~5回程度の限られた場で一定の意見形成をするものから、年間を通じて定例的に会議を毎月複数回開催するものまで開催頻度は様々
  • 会議体に加え、グループワークやアンケート(東京都や尼崎市)を実施したり、SNSを活用(世田谷区ではLINEで若者による情報発信)しているケースもある
  • グループワークなどを実施する際、初回は特に十分にアイスブレイクの時間を確保する(千葉市などでは、グループワークの専門家に委託している)
  • こどもセンターや児童館など、日常的にこどもや若者が訪れる施設を拠点とすることで活動が定期的に開催できるとともに、参加者が集まりやすい (石巻市、千葉市、町田市、尼崎市等)
  • 教育委員会等と連携し、学校における授業や学校現場での取組を通じた意見聴取機会を設けている自治体もある(千葉市や東京都)
  • 目的や対象にあわせて複数の場を複合的に組み合わせた多層的な意見聴取、表明、参加の場を設けることが理想(千葉市や町田市等では、 多層的にこどもや若者が意見を表明し社会参加する機会を提供)

(2)上記(1)を実施するに至った経緯・背景

  • こどもの意見表明や社会参加に関する計画や条例等の制定を契機に会議体等を設置(名古屋市の 「子どもの権利擁護委員条例」、千葉市の「こども・若者宣言」)
  • こどもの居場所や社会参加の拠点となる施設の新設やリニューアルを契機に会議体等を設置(尼崎市では、青少年センターをユース交流センターへ改称し、指定管理制度を活用してユースカウンシル事業等を開始)
  • 意見聴取機会の設置の目的は複数みられた。まず、政策や事業へこどもの意見を反映すること。次に、こどもの成長を促す体験機会、地域や社会への参画機会を提供すること。さらに、こどもの権利を守ること。そのため、必ずしも聴取した意見を政策や事業へ反映することを意図しない事業も多くみられた

(3)参画するこども・若者の選び方

  • 定員枠がある会議体等でこどもや若者を選別する場合、原則として公平性を重視しつつ、学齢、地域や経験有無のバランスを考慮している
  • グループワーク等で開催回数が少なかったり、オンラインで開催する場合、近い学齢でグループ分けをしたり、学校単位でグループ分けする等の工夫をしないと意見が十分に出ない恐れがある

(4)参画するこどもや若者の年齢や発達段階に応じた聴く体制のあり方

  • 規模が大きい自治体やこども参画の事業を複数行う自治体では、こども会議等の会議体の運営やワークショップの運営などにおいて、地域のNPO法人や大学関係者など、こどもの意見聴取に関する専門的知識を有する組織や人材に委託していることが多い(千葉市はワークショップを地域の大学の先生に委託)
  • こどもの意見聴取や参加を促す専門的な知識を有するスタッフを体制を含めることで、日常的により意見を表明しにくいこどもから意見を聴取できる機会が増える
  • ファシリテーター向けに研修やマニュアルの提供を行う

(5)参画するこども・若者の年齢や発達段階に応じた配慮事項

  • 年齢や発達段階に応じたこどもの能力差は、こども同士の協力で解消できることもある
  • こどもや若者が気軽に無理なく発言できる環境や場を作ることが肝要(町田市では、大人はあくまでこどもが実現したいことを支援するサポーターとして、必要最低限のサポートを遂行することとしており、こどものライフスタイルに配慮して年齢ごとに段階的なステップを構築している)

(6)声をあげにくいこどもから意見を聴く工夫

  • 声をあげにくいこどもがどういう児童・生徒となるか、地域によっても異なる。例えば、海外ルーツで日本語が不得手なこどもがいたり、不登校や障害がある児童・生徒の意見を聴取しづらいおそれがある
  • 声をあげにくいこどもは、特定の国籍、障害の有無、不登校の有無などに限らないため、日常的にこどもから意見を聴取 (石巻市、町田市、尼崎市等)
  • こどもセンターや児童館など、日常的にこどもや若者が訪れる施設を拠点とすることで、声をあげにくいこどもの意見を聴取する機会となっている自治体がみられる (町田市、名古屋市等)
  • オンライン、アンケート、SNSを活用し、より手軽に、より匿名性を高めて意見を聴取することで、こどもが声をあげやすい環境をつくる (名古屋市、世田谷区)

(7)聴いた意見の政策への反映方法

  • こどもが意見表明を行う会議体等に予算や権限を付与し、意見反映の実現性を高める取組がみられる(新城市では、若者議会を市長の附属機関に位置付け、1千万円を上限とする予算提案権を付与)
  • こども支援課等、こどもの意見聴取を推進する部署が、庁内の関係部署に対するインナーマーケティングを行うことで、より広い政策へ反映される可能性が拡がる(千葉市は庁内の職員向けの研修を実施している。名古屋市は、こどもの権利に関する条例を制定することで、庁内でこどもの意見を重要と考える認識が浸透した)
  • 年度内に実施が予定されている具体的な事業を検討対象とすることで、より迅速にこどもの意見を反映することが可能となる(奈良市では、子ども会議のワークテーマをこどものあそび場づくりとし、8月に検討した結果を10月に実際に反映した。早い!)

(8)参画するこども・若者へのフィードバック

  • こども議会等の対面形式の会議体において、首長、教育長、議会等が参画することで、こどもや若者が自分たちの意見がしっかり伝わっていると感じる(成果の発表の場に市長、町長が参加し、こどもや若者と具体的な意見交換を行う)
  • こどもの意見の実現、反映の状況についてこどもにフィードバックすることが肝要(奈良市では、こどもの意見のうち、反映できたものとできなかったものの状況をこどもたちに伝える機会を設けている。東京都は、施策の方向性、実現に向けた課題、所管部署の回答、検討プロセス等を対面、メール、HP等で公開している)

今、参照した「【国内先進事例調査】調査報告書」は140ページに上る超重量級の資料です。こども・若者の意見を聴取し、自治体の取り組みに取り込むことなどに関心を持つ人は是非読んでみてください。この種の業務に従事している自治体の職員の方であれば、既に読んでいるかもしれませんね。この報告書は、以下のWebページ内「第3回 令和4年12月16日(金)」(の資料)に含まれています。

こども政策決定過程におけるこどもの意見反映プロセスの在り方に関する検討委員会
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/ikenhanei_process/index.html

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「最も守られなくてはならない子どもたちの生きる権利さえ葬り去られようとしている」神奈川県二宮町

話は急に変わります。

神奈川県二宮町の2023年12月議会における議員提出議案、「パレスチナ・ガザ地区における即時停戦を強く求める意見書」より引用します。

ガザ地区ではジェノサイドとも言える状況が生まれ、一時休戦前で、すでに 1 万 5,000 人を超える民間人がいのちを失い、そのうち4割が子どもとされる。
いかなる理由があろうとも、民間人が無差別に攻撃されることは国際法上も許されない。そして、何よりも現状は、最も守られなくてはならない子どもたちの生きる権利さえ葬り去られようとしている。
「平和都市宣言」をしているわが議会としても、看過できない局面であるところに来たとの認識に至った。

出所:神奈川県二宮町、2023年12月議会、議員提出議案第2号「パレスチナ・ガザ地区における即時停戦を強く求める意見書」https://www.town.ninomiya.kanagawa.jp/gikai/cmsfiles/contents/0000001/1709/2023.12giinteisyutu.pdf、赤色太字は筆者による強調

パレスチナ自治区ガザ地区では、イスラエル軍による攻撃が続いており、多くの子ども・若者が命を失っています。生き延びている人の中にも重傷を負っている人が実に多い状況です。全国の地方議会で二宮町のように意見書が提出され、前科一致で可決しているケースも少なくありません。

市川市議会では、2023年12月の定例会の最終日、12月18日に、発議第14号「国にイスラエル・パレスチナ紛争の即時停戦に向けた外交努力を求める意見書の提出について」が、賛成少数、反対多数となり、否決されました(市川市議会議員は42人で、議長を除いた41人が表決権を持っており、賛成が14人、反対が27人でした)。残念です。

二宮町は「平和都市宣言」をしていますが、市川市も、世界の恒久平和確立のため1984年11月15日に「核兵器廃絶平和都市宣言」を行っています。にもかかわらず…誰が賛成し、だれが反対したか、こちらの記事で確認しているので、私たち市川市民の代表として、私たちの代理人として議会を構成している市川市議会議員41名(議長を除く人数)の賛否をしっかりと確認することをお勧めします。

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ガザの子どもたちの未来がガザの未来です。その未来が今まさにズタズタに破壊されているのです。日本は、そして、市川市は、停戦を求める声明を出さないままでしょうか。引き続き、子どもが大事であると常日頃から言っている私たちの代理・代表である、市川市議会議員や千葉県議会議員、国会議員、政府などが、どのような発言や行動をしているか、あるいは、していないかを、ウォッチしていきます。

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執筆日 2024年1月5日
公開日 2024年1月6日