公開日 2023年3月18日
更新日 2023年3月20日
冒頭の画像は、2022年9月30日時点の住民基本台帳登録データを用いて作成した、市川市の町別の人口と高齢化率(65歳以上人口の割合)の関係を表す散布図です。
本稿では、記事タイトルの通り、「松戸市における高齢化対応」の取り組みを紹介した後、「市川市の町別高齢化」の実態を確認します。
松戸市の常盤平団地における大学と連携した面白い取り組み
先日、市川市のおとなりの松戸市で、面白い取り組みが行われました。
松戸市にある常盤平団地は関東での大規模団地の一つとして1960年から住民の入居が始まりましたが、現在、団地の高齢化率は50%を超えています。
出所:NHK公式Webサイト(千葉 NEWS WEB)、「高齢化進む団地でアプリ使い住民と大学生が交流 松戸」(2023年3月16日)、https://www3.nhk.or.jp/lnews/chiba/20230316/1080020203.html、2023年3月17日閲覧 太字は筆者
団地ににぎわいを生み出そうと、市は地元の大学などと連携して若い世代と住民の交流を進めていて、16日は健康維持のためにスマートフォンのアプリを活用して団地内を散策するイベントが行われました。
住民は、アプリで歩幅を確認しながらウオーキングや大学生との会話を楽しんでいました。
69歳の住民の女性は「楽しかったです。今後も団地に来てくれるというのですごくうれしいです」と話していました。
参加した大学1年生は「活動やイベントを通して活気ある団地にしていきたいです」と話していました。
地元の大学などと連携して、とありますね。高齢化が進んでいる団地の近くに大学があるのは好条件かもしれません。大学のキャンパスがそこにある限り、常に20歳前後の学生がキャンパスに通ってくるため、団地の高齢者が抱える課題の解消のために、学生の協力を仰ぐ、という、このような取り組みは、一過性のものではなく、持続可能なものにしやすいと思います。
それでは、高齢化率が50%を超えている(住民のうち65歳以上の人が半数より多い)という、常盤平団地の場所を地図で確認してみましょう。
新京成線の常盤平駅の南に立ち並ぶ団地ですね。171棟、4800戸という大規模な団地です。
常盤平団地では、昨秋にも学生が活躍した、下記のようなイヴェントが行われ、多世代の交流が生まれたとのことです。
10月22日(土)と23日(日)の2日間、常盤平団地(千葉県松戸市)で「古本まつり」と「あそびの駄菓子屋」を開催しました。これらのイベントは、令和4年3月に聖徳大学とURが締結した連携協定に基づき開催しました。
出所:UR都市機構、「常盤平団地で聖徳大学と連携したイベントを開催しました」(2022年11月9日)、https://www.ur-net.go.jp/news/20221109_touchin_tokiwadaira.html、2023年3月17日閲覧 太字は筆者
「古本まつり」は、団地自治会の協力を得て、図書館司書を目指す聖徳大学短期大学の学生が団地にお住まいの方から不要となった本をいただき、来場された方に無料で持ち帰っていただくものです。
「あそびの駄菓子屋」は、けん玉などの昔遊びを通じて多世代の交流を図る場として開催されました。ご高齢の方がメンコに夢中になったり、子どもたちが学生から遊び方を教わったりと、さまざまな世代が触れ合い楽しむ光景が見られました。
また、市は、かなり踏み込んだ施策を講じるようです。
松戸市は15日、1695億円の一般会計当初予算案を発表した。10代~20代半ばの「Z世代」と呼ばれる若者を呼び込むため、高齢化が進む市の常盤平団地に入居する市内の大学生に引っ越し費用5万円を補助したり、Z世代のアイデアを団地の魅力づくりに反映させたりする事業費1129万円を盛り込んだ。
同団地は171棟4800戸の大規模団地。いまも入居率は高いが、65歳以上の高齢者が50%となり、自治会活動などを担う人材が不足しているという。
市内には四つの大学のキャンパスがあり、都心の大学へ通う学生も多い。市の施策では、新たに団地に入居する学生には、まちづくりの会合「まつどSDGsキャラバン」への参加を条件に引っ越し費用5万円を補助する。
若者の入居を促すとともに、Z世代の視点を生かした団地の魅力づくりや、住民の健康づくりに役立つプログラムの開発などを進めるという。
出所:朝日新聞デジタル、「松戸市、Z世代を団地へ 引っ越し5万円補助 団地の会合参加が条件」(2023年2月17日)、https://www.asahi.com/articles/ASR2J7X56R2HUDCB00W.html、2023年3月17日閲覧 太字は筆者
高齢化率の高い団地への若者の転入を促そうというのです。そのために予算を充てるとのことで、どのような成果につながるのか、注視したいと思います。
まつどSDGsキャラバン推進会議の設置について
https://www.city.matsudo.chiba.jp/shisei/keikaku-kousou/sdgs/sdgskyaraban.html
市川市にも5つの大学・短期大学のキャンパスがあり、これら5つの機関が、教育資源や機能等の活用を図りながら相互に連携協力し、教育研究の質的向上を図って地域社会の発展に資することを目的として立ち上げた「大学コンソーシアム市川」があります。地域の高齢化を解消するために、この大学コンソーシアム市川が貢献できそうなことはたくさんありそうですね。
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市川市にも高齢化率が高い町がある
市川市の高齢化率は、松戸市とほとんど変わりませんが、常盤平団地の高齢化が極めて高いのと同じように、市川市内でも地域によって高齢化率は大きく異なっています。
参考情報
2022年9月30日の住民基本台帳に基づく市川市の各町の年齢別人口データを用いて、町の人口を横軸に、高齢化率を縦軸にとった散布図をつくりました。それが冒頭の画像です。プロットされた1つ1つの点が町(例:塩浜、大町、稲越、南大野、鬼高)です。高谷新町、上妙典は、人口が少ない(順に16人と4人)なので集計対象外としています。その他、人口がゼロの町(東浜1丁目、二俣新町、千鳥町、高浜町、下妙典)も含まれません。
(2023年3月20日追記:読者の方より「湊新田」が2つある、とのご指摘がありました。元データ中に同じ町名が複数存在するケースがいくつかあり、それぞれ事情があるのですが、今回の集計では単純化のため、同一町名の人口を合算しています。湊新田は、その合算処理をしそびれたため、2つ存在しています。ご容赦ください!)
この散布図を見ると、高齢化率が20%前後の町が多いことがわかります。ちなみに、国勢調査データに基づく高齢化率と、住民基本台帳に基づくそれの間には乖離がありますが、今回は住民基本台帳データだけを見て話を進めます。
印をつけたのは、平面の右下「人口が多く高齢化率が低い町」と、左上「人口が少なく高齢化率が高い町」です。その町に高齢者が多いこと自体が問題になるというよりも(もちろん高齢者の絶対数が多いことに伴って発生する問題もありますが)、町の高齢化率が高い、つまり、非高齢者の割合が少ないことが、例えば高齢者の孤立化、孤独死といった問題につながると考えられます。
冒頭のグラフの左上で印をつけた3つの町は、大町(43.0%)、塩浜(37.2%)、奉免町(34.9%)です(カッコ内は高齢化率)。高齢化率が高い町、トップ3です。
市川市の町別の平均年齢
次に、少し趣向を変えて、市川市の各町の平均年齢を確認してみます。これも、上記同様、2022年9月30日の住民基本台帳に基づく市川市の各町の年齢別人口データを用いて算出しています(2023年3月20日追記:なお、100歳以上は全て「100歳」として計算しているため、算出した平均年齢は正確ではありません。具体的には、実際の平均年齢よりも数値が低く出ている町がある、ということです)。
先ほど挙げた高齢化率トップ3の、大町、塩浜、奉免町は、平均年齢の高い町トップ3でもあります。この3つの町は平均年齢が50歳超です。平均年齢がこれに次ぐのは、南大野です。
南大野には、1980年~1981年頃に建設された、市川グリーンハイツ、市川パークハイツがあります。1986年に完成した市川第2グリーンハイツ、1990年完成の市川大野パークホームズもあります。聞くところによると、南大野のこれらのマンション群には、若い世代も移り住んでいるということでしたが、意外にも大野町より南大野の方が平均年齢が高いのですね。
平均年齢が高い町は、塩浜や幸のような南部の町が少し含まれてはいますが、ほとんどが北部にあります。南部の町の多くは平均年齢が低いです。島尻、妙典、加藤新田の3つの町は、ヌ・アント!驚くべきことに平均年齢が30歳代です!(0歳や1歳といった非常に若い人が多ければ、平均年齢はぐっと低くなります)。
市川市の町別の「年少人口」「生産年齢人口」「老年人口」の割合
続いて、各町の人口に占める、①0~14歳(年少)人口割合、②15~64歳(生産年齢)人口割合、③65歳以上(老年)人口割合を確認します。
わかることは、若い人の割合が高い南部、高齢者の割合が高い北部、ということです。先程の平均年齢の町別傾向と、当たり前ですが、整合します。
平均年齢が低い町トップ3は、加藤新田、妙典、島尻でしたが、「0~14歳」の人口の割合でもトップ3でした。
市川市の町別の年齢10歳区分ごとの人口構成比
最後に、かなり細かいですが、年齢10歳区分ごとの人口構成比(その町の人口に占める各年齢区分の構成比)を見ていきましょう。ここでは、70を超える町のうち、率が高い町、トップ20を掲載します。
参考までに、高齢化率が高い3町、低い3町の、年齢10歳区分ごとの人口構成比を比較してみます。細かい数字は載せませんが、上の3町と下の3町では、年代別人口の分布が大きく異なることが一見してわかると思います。
加藤新田は人口の2割が9歳以下なのです。驚きですね。10代も多く、40代の割合は市内トップです。子育て世代の割合が多いということでしょう。
高齢化が進む奉免町は、近くに高等学校があります。高校生は受験勉強などで忙しく、大学生ほど自由な時間がないかもしれませんが、奉免町を盛り上げようとするならば、千葉県立市川東高等学校が何らかのアクションを起こすことが欠かせないと思います。ちなみに、奉免町は、10代の割合が1割程度あり、市内でも4位の高さなのです。
大町はどうでしょうか。例えば、千葉商科大学から大町に行くには、北総線に乗って矢切駅から大町駅に行く必要があるでしょうか。
市内で最も高齢化が進行している大町で、高齢者の孤立を防ぐために、どのような手立てが有効なのか、今行われていることは何なのか、これまでどんな施策が講じられてきたのか、など、知らないことばかりなので、調べてみたいと思います。
塩浜にはハイタウンという大規模な団地があり、高齢化が進行しています。松戸市が試みるような若年層の入居促進策にトライするのも良いかもしれませんね。
ハイタウンでは、世代間交流を図るためのイヴェントも開かれているようです。
ハイタウン塩浜で「塩浜えんがわ祭2022」を開催しました
https://www.ur-net.go.jp/news/20221011_touchin_shiohama.html
ハイタウン塩浜は、加藤新田、妙典、島尻といった、若い人の割合が高い町と、それほど離れていません。市川市全域でみれば、近い部類に属します。ハイタウンでイヴェントを行う際に、世代間交流を図るためには、イヴェントの告知を若い人に届けることが有効ですね。南行徳駅、行徳駅、妙典駅で告知する(例:これらの駅のラックに、地域情報を掲載したチラシを置いている「行徳マップ」さんを介して)、塩焼のコミュニティスペース「gate.」にチラシを置く、といったことにより、人の流れを生み出せるのではないでしょうか。
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本稿では、松戸市で行われている、高齢化が進んだ団地における取り組みを紹介した後、市川市の各町で高齢化がどの程度進んでいるのかを確認しました。ついでに、と言っては何ですが、高齢化率が低い町はどこなのか、ということも見てみました。
加藤新田の高齢化率は5.4%という低さでした。
今日の記事に何度も登場した加藤新田に、実は私、足を運んだことがないことを白状します。近いうちに歩いてみます。若い人が多いことを実感するでしょうか。加藤新田を歩いた暁には、「加藤新田散歩記」を綴り、当Webサイトで公開する構えです。お楽しみに。
それでは、皆さん、また次回、お目にかかりましょう。さようなら!