【コラム】小学校、中学校で使われる名簿は、男女混合名簿?男女別名簿?

コラム

執筆日 2023年4月14日
公開日 2023年4月15日

2023年4月上旬、市川市立のある小学校で、学校側から児童とその保護者向けに配布された「おたより」に、次のようなことが記されていました。

市川市では、
 ・すべての人の人権が尊重される社会を目指している
 ・誰もが、性的指向、性自認によらず、自分らしく生きられる社会を目指している
このことを踏まえて、本校では今年度から、名簿を「男女混合名簿」に変更する。

この説明から、次のようなことが読み取れます。

これまで使われていた「男女別名簿」は、
 ・すべての人の人権が尊重される社会を目指す、という市川市の考え方にそぐわない
 ・性的指向や性自認によらず自分らしく生きられる社会を目指す、という市川市の考え方にそぐわない

(私のこの理解は、曲解でしょうか?少し自信がないので、上の赤い文字で記した私の認識に違和感があるという方は、ご意見をお聞かせいただければ幸いです)

ところで、以下の自治体では、全ての公立の小学校、中学校で、「男女混合名簿」が用いられています(2022年3月時点)

  • 東京都23区中の13区(千代田区、港区、新宿区、文京区、江東区、品川区、目黒区、世田谷区、渋谷区、中野区、豊島区、足立区、江戸川区)
  • 横浜市
  • 川崎市
  • 相模原市
  • 横須賀市
  • さいたま市
  • 川越市
  • 越谷市
  • 柏市
  • 水戸市
  • 宇都宮市
  • 前橋市
  • 高崎市

情報出所:東京新聞公式Webサイト、「『男子が先』の刷り込みに配慮を 男女混合出席簿の導入進む 首都圏の小学校は9割超え 中学は25%が『男女別』」(2022年3月20日)、https://www.tokyo-np.co.jp/article/166670、2023年4月14日閲覧

市川市ではどうかというと、

  • 市立小学校38校のうち、男女混合名簿が16校(42.1%)、男女別名簿が22校(57.9%)
  • 市立中学校15校のうち、男女混合名簿が1校(6.7%)、男女別名簿が14校(93.3%)

となっていました。
情報出所:令和3年度 第3回市川市多様性社会推進協議会における資料21「公立小中学校・公共施設調査」(2021年8月4日)

市川市立の小学校、中学校では、男女混合名簿の導入は道半ばといったところですね。自治体によって、これほど差があるのはなぜか気になります。

変えていこうという動きがあっても、それが進まないのは、本気でそれを進める気がないからか、反対する人が多いからなのか、なぜでしょう?

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ところで、「なぜ、『男女別名簿』を使っちゃいけないの?」、「なぜ『男女混合名簿』を使う方が良いの?」と疑問をお持ちの方もいるでしょう。

さきほど、公立学校での「男女混合名簿」の導入率100%の自治体を紹介しましたが、引用元の東京新聞公式Webサイトの記事のタイトルに、「『男子が先』の刷り込みに配慮を」という表現があります。

男子が先に記載されている「男女別名簿」を日々使うことで、生徒は「『男子が先』が当たり前」、「『男子が先』が自然な事」だと思い込んでしまう、それを避けるためにも「男女混合名簿」の使用が望ましいということですね。

1996年――ポケモンが誕生し、たまごっちが発売され、長嶋茂雄監督がメイクドラマと言い、コギャルが増え、アムラーが流行、さんピンCAMPが開催され、PUFFYやTMレボリューション、SPEEDがデビューし、イエモン、ジュディマリ、ウルフルズ、スピッツなどが人気を博し、TK黄金期で、ノスタルジー鈴木がウッズ氏と利根運河の畔(ほとり)で出会い、沖縄県にある米軍の普天間飛行場を5~7年以内に全面返還することで日米両政府が合意した年――に出版された、朴木佳緒留氏の『総合学習への提言2――教科をクロスする授業――「ジェンダー文化と学習」理論と方法』(明治図書)という本には、次のように書かれています。

小学校から高校まで、男女別に名簿がつくられ、多くの場合は男子が先で、女子が後に記載され、たとえば出席をとる場合には、常に男子が先によばれる体制がとられている。これに対して、「男子は常に女子より先にあるもの」というイメージを固定化するというのが、男女別名簿に対する批判の主旨である。

出所:朴木佳緒留、1996年9月、『総合学習への提言2――教科をクロスする授業――「ジェンダー文化と学習」理論と方法』、明治図書、69ページ。太字は筆者による

少なくとも27年前の本には、「男女別名簿」の問題点が書かれていたのです。そして、多くの自治体では効率の小学校、中学校で「男女混合名簿」を使うようになっています。

しかし、市川市では、市立小学校の6割弱、市立中学校の9割強で、「男女別名簿」が使用されていました(前出2021年の調査結果より)。ちなみに、前出2022年3月20日の東京新聞公式Webサイトの記事によれば、船橋市では、市立中学の98%、市立中学の100%が「男女別名簿」を使用していたとのことです。同じ千葉県でも、柏市では全ての市立小学校、中学校で「男女混合名簿」が使われいるので、市川市や船橋市でも早く全ての公立学校で混合方式になってほしいものですね。

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