【コラム】LGBTQ+/SOGIEに関する理解促進のための講座を受けました

コラム

公開日 2023年2月8日

冒頭の画像はSabrina_Groeschkeが制作したもので、Pixabayからの引用です

市川市では2020年に「セクシャルマイノリティ(LGBT等)に関するアンケート」を実施しています。先日、ひょんなことから、このアンケート調査の結果が公表されていることを知りました。

本稿では、はじめにこの調査の結果の一部を確認します。その後、市川市の総務部多様性社会推進課が市民などを対象に提供している「LGBTQ+/SOGIEに関する理解促進のための講座」を受講しながら書き留めたメモを紹介します。

セクシャルマイノリティ(LGBT等)に関するアンケート

この調査は、2020年9月15日~10月13日に、多様な生き方を選択できる地域社会づくりのために、市川市によって実施されたもので、対象者は市川市民に限定していません。これは、広く意見を求めたかったからだそうです。回答数は1,336でした。調査方法はインターネットによる定量・定性調査で、LINE、Twitter、Facebookおよび市川市公式Webサイトを通じてフォームを配信・掲載したということです。

セクシャルマイノリティ(LGBT等)に関するアンケート調査結果
https://www.city.ichikawa.lg.jp/common/000353789.pdf

いくつかの質問に対する回答を確認してみます。

セクシャルマイノリティ(LGBT等)について、どのような考えや、イメージを持っていますか(複数回答可)

※質問への回答者数が明記されていないので、ここでは各選択肢を選んだ人数を掲載します。回答人数が多い選択肢から順に表示します。

  • 性の多様性・個人の人権として尊重すべき 1,186
  • オープンに出来ず隠している人が多いと思う 950
  • 差別や偏見を受け入れている 489
  • 自分自身や周りに当事者がいるため、身近に感じる 447
  • 芸能人など公表する人が増えてきたので、身近に感じる 385
  • からだの性を尊重すべきである 127
  • 受け入れがたい存在 40
  • その他 68

「オープンに出来ず隠している人が多いと思う」を選択した人が多いですが、実際にこのような人は多く、そのことで苦しんでいる人もいることが、この後紹介する調査結果からも見て取れます。

市川市はセクシャルマイノリティ(LGBT等)の方々にとって暮らしやすいまちだと思いますか

  • はい 4.3%
  • いいえ 14.1%
  • わからない 81.7%

「はい」と回答した主な理由
・都市部は個人への詮索が少ないから
・セクシャリティ以外の観点からも多様な人が住んでいるから

「いいえ」と回答した主な理由
・パートナーシップ制度等の導入が行われていないから
・書類に男女の明記を求められるから
・トイレが男女にしか分かれていないから
・市が支援や活動を行っていない、発信をしていないから

「わからない」と回答した主な理由
・どういったまちが暮らしやすいのか分からないから
・市の取り組みが見えてこないから
具体的な支援や差別の事例を見聞きしたことがないから

大部分の人が「わからない」と回答しています。その理由として「具体的な支援や差別の事例を見聞きしたことがないから」というものがあります。そのような人には、是非、後掲する「LGBTQ+/SOGIEに関する理解促進のための講座」を受講していただきたいです(概要説明や申し込みはこちらから)!私は受講して本当に良かったと思いました。

日常生活での困りごとについてお聞かせください(セクシャルマイノリティ当事者)

・カミングアウト(a)していない相手には、嘘をついているという罪の意識が常にあることが辛い。友人や家族等と恋人や結婚の話になると、毎回ごまかす事を考えなくてはいけないのが辛い。パートナーとの社会的な保障や繋がりが今後も一切ないことが不安。
・オールジェンダーのトイレ(b)が少ないこと
・婚姻する/しないの選択の権利がなく、生き方が制限されていること
・セクシュアリティをオープンにして働ける職場が少ないこと
・自分の気持ちを話せる安心した空間がないこと
・世の中のあらゆることが男女の枠組みを前提にしていること(性別欄などがあちこちにあるなど)
・気軽に相談に行ける場所がない(常に開いているようなスペースが欲しい)
・医療機関で親族しか立ち会えない場合に入れない
・パートナーの介護に会社の介護休暇が使えない

a カミングアウト … 自分の秘密を自分から打ち明けること。この場合、自身が性的マイノリティであると打ち明けること。
b オールジェンダーのトイレ … 性別に関わらず利用できるトイレ。

マジョリティは悩む必要がないことであっても、マイノリティの人にとってはストレスになり、場合によっては心身の不調をきたすようなこともありそうですね。マジョリティの人たちにとっては、マイノリティの人たちがどんなことで悩み、苦しむのかを知ることが大事だと改めて思いました。

LGBTQ+/SOGIEに関する理解促進のための講座

市川市では、2023年2月28日まで申し込み可能なオンライン講座を、市民などに対して提供しています。申し込むと、YouTubeで講座を受講(視聴)できます。

LGBTQ+/SOGIEに関する理解促進のための市民向け講座/企業向け講座について
https://www.city.ichikawa.lg.jp/gen05/0000416904.html

以降では、2023年1月30日に受講した私が、視聴しながら書き留めたメモを紹介します。意味不明な個所があるかもしれません。メモなので。走り書きなので。ここを読んで興味を持った人は、是非。講座を受講してもらいたいと思います。残念ながら申し込みが締め切られていた場合は、講師の長田伸也さんの推薦図書(後掲)を読んでみてください。

AB型の人に会ったことはありますか?

市川市 総務部 多様性社会推進課によるLGBTQ+SOGIEに関する理解促進のための市民向け講座は、「誰もが過ごしやすい環境の実現に向けて~LGBTQ+・SOGIEの観点から考えよう!~」と題されていました。

講師は、認定NPO法人虹色ダイバーシティの事務局長、長田伸也さん。

はじめに、LGBTQ+の説明があった後、こんな質問が投げかけられました。

  1. AB型の人と会ったことがありますか
  2. 苗字が佐藤・高橋・田中・鈴木の人(いずれか)と会ったことがありますか
  3. LGBTQ+の人と会ったことはありますか

これから受講する人もいると思いますので、この質問の意図などは敢えて書きませんが、長田さんが伝えたかったことは、LGBTQ+の人は、それほど少ないわけではない、ということです。にもかかわらず、会ったことがない、あるいは、会っていることに気づいていない人が多いのはなぜか、というと…

というところから、講座が幕を開けます。

SOGIE(ソジー)

次に、SOGIEという言葉の説明がありました。

SOGIEとは、性的志向、性自認、性表現のことで、LHBTQ+との違いは、私たち全員が当事者だということです。

SO = Sexual Orientation
好きになる相手の性別 / 性的志向

GIE = Gender Identity and gender Expression
GI:自分の性別をどう認識しているか / 性自認
GE:自分の性別をどう表現するか / 性表現(服装、言葉遣い、仕草など)

学習指導要領にLGBTQ+のことは含まれていない

2017年に学習指導要領の改訂があり、そのタイミングで、「LGBTQ+のことを学ばなければならない」という項目が追加されるチャンスだったのですが、それは果たされませんでした。

この話を聞いた時の率直な感想は、「なんで?」でした。

なんで?

追加されなかった理由を3分で調べた結果を注釈に載せておきますが、文部科学省の意見は、

「性的マイノリティ」について指導内容として扱うことは、個々の児童生徒の発達の段階に応じた指導、保護者や国民の理解、教員の適切な指導の確保などを考慮すると難しい。

出所:文部科学省 中央教育審議会 初等中等教育分科会 (平成29年4月18日)資料5-5 「学校教育法施行規則の一部を改正する省令案並びに幼稚園教育要領案、小学校学習指導要領案及び中学校学習指導要領案に対する意見公募手続き(パブリックコメント)に寄せられた御意見等について」https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/siryo/__icsFiles/afieldfile/2017/08/09/1387466_10_1.pdf(太字は筆者による強調)

というものでした。

なんで?

・個々の児童生徒の発達段階に応じた指導
・保護者や国民の理解
・教員の適切な指導の確保

これらを考慮すると、児童生徒に「性的マイノリティ」(LGBTQ+)について教えることとする、と決めることは難しいと言わざるを得ないのが現状、と言っているような、よくわからない回答です。

差別的な言葉を遣わない、属性やグループではなく個人を見よう

ここでは、長田伸也さんの話の中から、当事者ではない人に、知っておいてほしいことを中心に記述します。いずれも私のメモ書きからの抜粋と、書き足しなので、講座内容とは少し異なる部分があるかもしれません。ご注意ください。

LGBTQ+当事者が困る言葉の例として挙げられたのは、ホモ、オカマ、オネエ、レズ、バイなどで、略してレズやバイと言うのではなく、レズビアン、バイセクシャルと言ってほしいと思う当事者が多いようです。略されると軽蔑されている(差別されている)ように感じることもあるとか。

うわさ話や性別を詮索すること(例:あの人は独身で”ゲイ疑惑”がある、さっきのお客さまって男?女?どっち?)、根掘り葉掘りしつこく聞くことは、避けた方が良いとのことで、言われてみれば当然ではありますが、むき出しの好奇心でキラキラと目を輝かせながら、プライベートなことをズケズケと聞いてくる人はいますよね。自分がそうなったことがないかと言われたら、ちょっと自信がないですが。

さまざまな背景を想定して発言することが大事だということで、もし、知らない人がいたら叱るのではなくて教えてあげてください、とのことでした。先日、私が好きなバンドのメンバーが、使うべきではない語である「ホモ」を反転させてかつての業界用語のようにしてTwitterで投稿していました。これに「いいね」をつける古くからのファンがたくさんいるのですが、私はご本人に、「そういう言葉を使うべきではないですよ、当事者は傷つきますよ」と教えるべきだったのだと思います。

また、LGBTQ+のことを想定していない発言にも気をつけてほしいとのことでした。例えば以下のような発言は避けた方が良いものです。

異性間の恋愛、結婚、育児を前提にした話
・「家庭を持てば、お客様の気持ちも分かるぞ」
・「子育てしたらもっといろいろなことに気付くよ」

女らしさ・男らしさに関する決めつけ
・「女らしい」
・「男なら~~だろ」

「ジェンダーのフィルターを通すのではなく、その人、個人をみるようにしてほしい」とのことで、これにはハッとさせられました。その人の「属性やグループではなく、個を見ること」が大事だ、と。

また、「自分の『当たり前』と、隣の人の『当たり前』は違う」ということをおっしゃっていて、これも印象的なフレーズでした。

アンコンシャスバイアスとマイクロアグレッションを解消しよう

アンコンシャスバイアスとは、無意識の偏見。自分自身では気付かない偏見・先入観・考え方のこと。

マイクロアグレッションとは、意図的か否かにかからわず何気ない日常会話でおこなわれる偏見・差別・無理解からくる言動や態度のこと。

アンコンシャスバイアス、マイクロアグレッションを解消することが、誰もが過ごしやすい環境づくりにつながるということでした。それは確かにそうですね。難しそうだとも思いました。しかし、解消すべきことですね。

これらを解消するためには、どうすればよいのでしょうか。長田さんが強調していたのは、

違う属性の人の話を聞く(固定観念を振り返る)
 ↓
気付いた時に改める(固定概念に気付く)
 ↓
これを繰り返す

ということを意識することでした。繰り返すことが重要だそうです。

アライ(ALLY)

アライ(ALLY)というのは英語で同盟者のことで、LGBTQ+の課題に対して自分ごととして主体的に行動する人を意味します。

個人的には、アライの具体的な行動の説明が特に大きな学びになりました。

「知る
・LGBTQ+に関する本を読む
・インターネットで調べる
・LGBTQ+を題材にした映画、ドラマ、漫画などを見る
・アライの人から話を聞く
・当事者から話を聞く

「表明する」
・アライであることを周りに言う
・レインボーのグッズを身に付ける(ペン、ファイル、ネックストラップ)
・6色の虹のシールをスマホに貼る、小さいフラッグを会社のデスクに置く、スマホなどの壁紙をレインボーにする等
※日本では虹というと7色ですが、LGBTQ+支援のシンボルに使われるレインボー・フラッグは6色です。

「行動する」
・日頃の言葉遣いを見直す
・LGBTQ+に関してポジティブな発言をする
・LGBTQ+の人が困るような発言があったら止める(叱るのではなく伝える)
・LGBTQ+のイベントに参加する(オンライン、リアル)
・自分らしく小さな一歩を踏み出せることからアライとして行動すればよい

長田伸也さんは、「アライとしてどんな一歩を踏み出せそうですか?今日の話を聞いて感じたことを周りの人に話してみてください」と言っていました。講座を受講した直後、私はすかさずフリースタイル市川のメンバーズに、この講座は大変おすすめですよ、と連絡しました。まだ内容について話をしてはいませんが、アライとしてレインボーのグッズを身に付けるなどしたいと思っています。

長田伸也さんによる推薦図書

講師の長田さんが4冊の本・漫画を推薦していたので、挙げておきます。私も読んでみようと思っています(まずは②から)。

①包括的に学びたい人
石田仁「はじめて学ぶLGBT 基礎からトレンドまで」
https://www.natsume.co.jp/books/10694

②楽しく学びたい人
竹内佐千子「赤ちゃん本部長」(漫画)
色々なマイノリティの課題が当たり前のように登場するそうです。

③トランスジェンダーに特化して学びたい人
東優子「トランスジェンダーと職場環境ハンドブック~誰もが働きやすい職場づくり~」

④職場に特化して学びたい人
村木真紀「虹色チェンジメーカー LGBTQ視点が職場と社会を変える」

初めて書いたLGBTQ+に関する文章

2022年、私はフリースタイル市川のWebサイトに、コラムを中心に211本の記事を書きました。ジェンダーギャップに関する記事を何本か書きましたが、性的少数者(セクシャルマイノリティ、LGBTQ+)のことを扱った記事は書いたことがありませんでした。

今回、初めて性的少数者(セクシャルマイノリティ、LGBTQ+)にまつわる記事を書きました。記事と言っても、過去に実施された調査結果の紹介と、講座の受講メモで、自分で調べたり体験したことを綴ったものではありません。今後、自分なりに学んだり調べたり行動していくつもりなので、遠くない将来に、自分の行動について、本サイトで報告することができればよいと考えています。

それでは、またお会いしましょう!ごきげんよう!

* * * * *

〈注釈〉

※1:文部科学省の資料「学校教育法施行規則の一部を改正する省令案並びに幼稚園教育要領案、小学校学習指導要領案及び中学校学習指導要領案に対する意見公募手続き(パブリックコメント)に寄せられた御意見等について」を見てみました。

中央教育審議会 初等中等教育分科会 (平成29年4月18日)資料5-5
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/siryo/__icsFiles/afieldfile/2017/08/09/1387466_10_1.pdf

意見内容
・性的マイノリティについて規定し、保健体育科などの「異性への関心」を削除すべき。
・男女の体の成熟についての一般的な知見、異性への関心や性衝動に関する指導は必要であり、性的マイノリティへの配慮は指導内容ではなく、個別のカウンセリングなどで対応すべき。

(上記2つの意見に対する)回答内容
新学習指導要領においては、総則において、新たに児童生徒の発達を支える指導に関する項目を設け、「個々の児童(生徒)の多様な実態を踏まえ、一人一人が抱える課題に個別に対応した指導を行うカウンセリング」などについて規定しています。
御指摘については、文部科学省として、平成27年4月30日に「性同一性障害に係る児童生徒に対するきめ細かな対応の実施等について」(通知)を発出しており、学習指導要領の規定や同通知を踏まえ、各学校においてカウンセリングなどきめ細かな対応が行われるように指導してまいります。
なお、体育科、保健体育科においては、個人差はあるものの、心身の発育・発達に伴い、「異性への関心が芽生えること」等は思春期の主な特徴の一つとして必要な指導内容です。また、体育科・保健体育科で、上記通知で言及されているいわゆる「性的マイノリティ」について指導内容として扱うことは、個々の児童生徒の発達の段階に応じた指導、保護者や国民の理解、教員の適切な指導の確保などを考慮すると難しいと考えています。

出所:文部科学省 中央教育審議会 初等中等教育分科会 (平成29年4月18日)資料5-5 「学校教育法施行規則の一部を改正する省令案並びに幼稚園教育要領案、小学校学習指導要領案及び中学校学習指導要領案に対する意見公募手続き(パブリックコメント)に寄せられた御意見等について」https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/siryo/__icsFiles/afieldfile/2017/08/09/1387466_10_1.pdf (赤太字は筆者による強調)