【コラム】知っていますか?本八幡駅北口の再開発計画を

コラム

※既視感があるかもしれませんが、それは、本稿が、「【コラム】そのベンチはインクルーシブですか?」(2022年11月28日公開)の「本八幡駅北口再開発基本構想を読んでみました」(https://fs-ichikawa.org/bench20221128/#toc5)の内容を大幅に加筆修正したものだからです。あらかじめご了承ください。

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本八幡駅北口は再開発でどのように変わるのか?

ご存知ですか?
JR本八幡駅の北口で再開発が計画されていることを。

市川市が2018年度に作成した本八幡北口再開発の基本構想は、Web上で公開されているので、誰でも見ることができます(PDFファイル)
※冒頭の画像はこの基本構想に掲載されている画像を用いて作成したものです。

本八幡駅北口再開発基本構想~歴史と未来をつなぐ行政・文化中心地の創造~(2018年度、市川市)
https://www.city.ichikawa.lg.jp/common/000315113.pdf

計画されている再開発の対象エリア(赤いラインで囲まれた地区)。画像出所:「本八幡駅北口再開発基本構想~歴史と未来をつなぐ行政・文化中心地の創造~」(2018年度、市川市)

この基本構想では、「街づくりの目標」として、次の6項目が掲げられています。

  1. 本八幡の核となり、市川ブランドを高める街づくり
  2. あらゆる世代が活動・暮らしの充実を感じる場の創出
  3. 豊かな緑のなかで街歩きを楽しめる空間づくり
  4. 快適に通行できる道路・交通機能の確保
  5. 災害に強く安心して過ごせる拠点の形成
  6. 歴史の積み重ねにより形成された街の背景を尊重する空間づくり

本八幡駅の北口、右手にある商業ビル「パティオ」の裏側の一帯には、細い路地があり、パブやスナックなども多く、実に趣があります。人の営みが見えない空気の層となって、ストリートの一角に、お店のカウンターに、蓄積しているような場所です。

パティオの裏通りの様子です。(撮影日:2022年11月26日)

一方、老朽化した建物もあり、道幅が狭いため、火災や地震が発生した際に緊急車両が入りづらいことなどが懸念されます。混沌とした雰囲気は、人によっては入りづらく危険を感じるであろうことも、想像に難くありません。緑もほとんどありません。

この一帯が、どのように再開発されるのか、市川市はどのようなビジョンを描いているのか、是非、「本八幡駅北口再開発基本構想」を見て確認してほしいと思います。

「街づくりの方針」として、「駅前の印象的な景観を創出する緑のプロムナードをはじめ、連続的な緑の配置により潤いのある都市空間となるよう、市のイメージを高める景観を誘導します」とあります。穿った見方をすると、「現在、このエリアには市のイメージを必ずしも高めないような景観がある。それを一掃し、イメージ・アップにつながるような景観をつくる」という、裏の意味があるのではないか、とも思えます。東京都の高円寺や下北沢、立石といった、独特な景観をもつ駅前の景観が、再開発に伴って一新されるという事態が、近年、相次いでいます。「本八幡駅北口再開発」により、街並みはどのように変化するのでしょうか。

基本構想の副題には、「歴史と未来をつなぐ」とあります。また、「歴史の積み重ねにより形成された街の背景を尊重する空間づくり」が、「街づくりの目標」に含まれています。「飲み屋街」の歴史は、どのように継承されるのでしょうか。

基本構想には、八幡一番街に、歌舞伎の舞台小屋のような建物が描かれているイメージ図があります(下の写真参照)。良く見てみると、「中村勘三郎」という文字が見えるような気もします。このような一番街を形成しようとしているのでしょうか。

再開発後の八幡一番街のイメージ。画像出所:「本八幡駅北口再開発基本構想~歴史と未来をつなぐ行政・文化中心地の創造~」(2018年度、市川市)

再開発によって、どんな場所に生まれ変わるにしても、これまでその場所で過ごしてきた人々がつくってきた歴史を、忘れ去り、捨ててしまうのではなく、きちんと継承していってほしいと思います(もちろん、これは、現時点における筆者個人の意見です)

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ジェントリフィケーション~新しい居場所ができると、元々いた人がいなくなるかもしれない

ところで、再開発によって、「安全・安心」な町/街が生まれた場合、暮らす人や来る人の顔ぶれが変わることが想定されます。

便利、安全、綺麗に整備されたピカピカの町/街には、タワーマンションが建つかもしれません。そうなれば、地価は上昇し、高所得層が住むようになるでしょう。そして、元々、このエリアにあったスナックやパブは激減するかもしれません。

こういった店が「自分の居場所」になっていた人たちは、この街/町からいなくなってしまうでしょう。

谷口功一氏は、図書館や公園などが「昼の公共圏」だとすると、スナックは「夜の公共圏」だと言います。そして、スナックは地方創生の鍵を握っていると力説、駅前の商店街が衰退しても社交の場として残るスナックを拠点に地域活性化を図れる、とも。

また、谷口氏によれば、スナックが、自宅と仕事場に続く、心の落ち着く第3の居場所となることで、個人が社会から孤立せず、心理的に安心できる状態(社会的包摂)となるということです。

出所:フリースタイル市川公式Webサイト、「【スナックえみり】知らない人と出会い、知らない自分と出会う夜」(2022年11月13日)、https://fs-ichikawa.org/snack_emiri20221118/、2022年11月28日閲覧(太字は筆者が今、施しました)

このように、再開発によって都市が富裕化・高級化することを、「ジェントリフィケーション」と呼びます。

便利、安全、綺麗に整備された、新しい街/町は、これまでそこにいなかったような高所得層や、幼い子を連れた若いカップルなどを引き寄せるでしょう。

一方、これまでそこにいた人たちを排除する可能性があります。他に行く場所があるのか、新しい場所は探せるのか。長年、その町/街の、その店に通ってきていた常連さんは、どこに行くのか。働いていた人たちは、どうなってしまうのでしょうか(東京オリンピックの開催に伴う再開発で、住んでいた居住地を去ることになった人は、どこにいったのでしょうか)

1つの家屋や商店などの個別の建物や、部屋などであれば、古い物の良いところは残しながら、現在、未来向けて、変えるべきところを変える、リノベーションという手法が採用できます。

フリースタイル市川が関わった市川市内の物件に、国府台の「アトリエ029」があります。この物件は、元々、お肉屋さん(精肉店)だったもので、かなり古い建築でしたが、リノベーションにより、歴史を感じられる要素をなるべ残しながら、新しい魅力を付け加えて、再生しました。

「アトリエ029」については、以下の記事をご参照ください。

古い街並み、景観は、やがて消えてしまう運命なのでしょうか。個々の建築や道路などのインフラストラクチャーの集合体である町/街の再開発を、「リノベーション的な方法」、または、「リノベーション的な思想」で、実施することはできないのでしょうか。

歴史ある街並みを歩いたり見たりするのが好きな人には、消えゆく運命にあるかもしれない、魅力的な街並みを訪問し、撮影し、丁寧な筆致で見たもの感じたことについて綴っている明里あけさとさんの素晴らしいブログ、Deepランドを定期的に訪問し、記事を読みまくることを、強く薦めたいです。

明里さんのブログ「Deepランド」
https://deepland.blog/

2022年5月6日に、「ローカルメディア漫遊記」でも取り上げました。

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「安全・安心」~生活に入り込んでいる「おかしな表現」

先ほど、「安全・安心」という語を記しました。カッコで括って。

最近、耳目じもくにする機会が多い表現、「安全・安心」ですが、この使い方は誤っていると指摘していた人がいます。それも、15年前に。

「安全」と「安心」をつないで、「安全・安心」と連語にして使うのは間違っている。「安全」は食なり、住なり、エネルギーなりの事業を行っている当事者が確保するべきものであり、行政は指導監督責任がある。その体制が全体としてまっとうに動いて安全が確保されているのを見て、安心するのは安全の受益者(潜在的被害者)である私たちである。立場が違い、概念が違う。「安心」は、安全確保を怠れば被害を与える側が、被害の潜在的受け手に向かって安易に口にすべき言葉ではない。

出所:Aquarian’s Memorandum、「おかしいぞ、『安全・安心』という連語」(2007年10月2日)、http://aquarian.cocolog-nifty.com/masaqua/2007/10/post_8bae.html、2022年11月28日閲覧(太字は筆者)

また、8年前にも、この表現を使う人を批判している人(まちづくりに携わっている人)がいました。

「安全」は主に安全を確保すべき側の客観的な面をとらえるのに対し、「安心」は受け手側の主観的な面をとらえることばではないでしょうか。これを「・(中点)」でつないで使ったときどういう意味になるのか、私にはさっぱりわかりません。使っている人でもはっきり答えられる人は少ないのではないでしょうか。

出所:伊深まちづくり協議会公式Webサイト、「もうやめてほしい。“安全・安心”の連語」(2014年4月23日)、http://ibukamachi.com/index.php?QBlog-20140423-1、2022年11月28日閲覧(太字は筆者)

わざわざ「誤っている」と目くじらを立てて怒ることもないじゃないか、むしろ滑稽に映るよ、私の目には、と思う人もいることでしょう。間違っていることを指摘する、何か変だと思うことを指摘する、それをし続ける人がいる。あきらめない人がいるということは、私に希望を抱かせてくれます。

現在、「言葉」の使われ方に、あるいは、「言葉」の使い手に注目し、ツッコミを入れている人といえば、ライターの武田砂鉄氏です。

わざわざ言わなくても、と思うかもしれないけれど、これ、わざわざ言わないと大変なことになる。

出所:武田砂鉄『今日拾った言葉たち』単行本(暮らしの手帖社)の帯より。https://store.kurashi-no-techo.co.jp/products/1202

武田砂鉄氏がパーソナリティを務めるラジオ番組「アシタノカレッジ」(TBSラジオ、毎週金曜日22時~23時55分。https://www.tbsradio.jp/ashitano/のオープニング・トークは、このツッコミりょくが存分に発揮された十数分です。

本稿で、本八幡駅北口再開発計画の内容にわざわざツッコミ(とはいえ、それはぬるく、にぶいのですが)を入れたわけですが、問題提起というほど大袈裟なものではなく、しかし、ちょっと変な感じがする、という、今感じている違和感を、流し去ってしまわず、ここに書き残しておこうという、小さな試みです。

本八幡駅北口は再開発でどのように変わるのか?(reprise)

さて、改めて、「本八幡駅北口再開発基本構想~歴史と未来をつなぐ行政・文化中心地の創造~」(2018年度、市川市)の内容を確認します。下図は、この基本構想に掲載されている図を少し加工したものです。

本八幡駅北口のロータリーから、国道14号線と交差し、京成八幡駅へと続く道路は、「A.緑のプロムナード」となり、本八幡北口と葛飾八幡宮をつなぐ道路は「C.参道のプロムナード」として整備されるようです。サイゼリヤの1号店の跡地が記念館として残されていることでも知られる八幡一番街ですが、基本構想では、ここには「B.八幡一番街の空間継承」と書かれています。

画像出所:「本八幡駅北口再開発基本構想~歴史と未来をつなぐ行政・文化中心地の創造~」(2018年度、市川市)の4ページに掲載されている図を加工。

画像出所:「本八幡駅北口再開発基本構想~歴史と未来をつなぐ行政・文化中心地の創造~」(2018年度、市川市)の4ページに掲載されているイメージ画像を加工。

ひとつだけ確かなのは、A、B、Cのイメージにあるような景観ができあがると、それは、現在の本八幡駅北口とは、全く別の街並みだ、ということでしょう。

ここで、上に書いた言葉を、色を変えて再掲します。

基本構想の副題には、「歴史と未来をつなぐ」とあります。また、「歴史の積み重ねにより形成された街の背景を尊重する空間づくり」が、「街づくりの目標」に含まれています。

歴史の積み重ねにより形成された街の背景が尊重された空間をつくってほしいですね。

最後に、是非見ていただきたいWebサイトをご紹介します。

八幡一番街商店会
https://yawata1.com/

このWebサイトには「ヒストリー」というページがあり(街角情報→ヒストリー)、かつての八幡一番街の貴重な写真が掲載されていたり、エピソードが綴られています。「古い投稿」という文字(リンク)をクリックすると、より古い記事を閲覧できます(2022年12月5日現在、「ヒストリー」の最後の更新日は2015年2月22日で、「覚えてますか13:小川が流れていました」という記事が現時点で最も新しいものです)

市川市の「顔」と言っても良いであろう、本八幡駅北口でおこなわれる再開発なので、どのような計画があるのかを1人でも多くの人に知ってもらいたいと思っています。

馴染みの深い駅前で再開発が行われるということなので、少々力んだ筆致で綴ってしまいました。この件については、後日、また何か書くことになると思います。

それでは、またお会いしましょう。