【コラム】112か国・約1万8千人の外国籍の方が暮らす市川市が「多文化共生社会」を目指すのは自然なこと

コラム

半年ほど前、「広報いちかわ」(2023年6月17日号)の「市内に広がる『国際化』」という特集記事で、今年(2023年)の3月末時点の市川市で暮らしている外国籍の方の人数と、その方が他の国籍数が公表されていました。

本市には、112カ国・17,913人(2023年3月末現在)の外国籍の方が暮らしています。人口の3.6パーセントを占め、28人に1人が外国籍の方です。
また、法務省の在留外国人統計(2022年6月末時点)によると、全国市区町村の中で、本市は33番目に外国籍の方が多い市です。

出所:「広報いちかわ」2023年6月17日号

市川市には外国にルーツを持つ人が多く住んでいるということを、当サイトではこれまでに何度も取り上げてきました。

本稿は、これらの記事と同じく、市川市で暮らす外国籍の方の人数がどのように推移しているか等を見ていきたいと思います。要は、「市川市で暮らす外国籍の人たち」に関する最新情報の確認ですね。

まず、市川市の外国人数の推移を確認すると、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で帰国する人が増えたのか、2020年と2021年は前年よりも減少しましたが、その後は増加を続けています(もっとも、2022年9月の次が1年後でなく半年後の2023年3月の数値であるため、数字を見る際は注意が必要です)。

出所:市川市公式Webサイトおよび広報いちかわ(2023年6月17日号)掲載情報より作成

国別の人数では、中国人が最も多く、他国に大差を付けてトップを走っています。6,000人以上の中国籍の方が市川市で暮らしています。

出所:市川市公式Webサイトおよび広報いちかわ(2023年6月17日号)掲載情報より作成

続いて、2023年3月現在の人数が2位から5位までの4か国について、2018年以降の人数の推移を見てみます。ベトナム人の数が2020年までの数年間で大幅に増えていること、昨年(2022年)以降、ネパール人の数が急激に増加していることがわかります。フィリピン人の数は横ばい、韓国人又は朝鮮人の数は徐々に減少しています。

出所:市川市公式Webサイトおよび広報いちかわ(2023年6月17日号)掲載情報より作成

さて、冒頭で引用した「広報いちかわ」(2023年6月17日号)の文章には、〈全国市区町村の中で、本市は33番目に外国籍の方が多い市です〉と記されていましたが、これは、2022年6月末時点のデータです。出入国在留管理庁の「在留外国人統計」は半年に1回発表されており、現時点では、2022年12月末時点のデータを確認することができます。この最新データによると、市川市は、全国の市区町村の中で22番目に外国籍の方が多いということでした。

出所:出入国在留管理庁「在留外国人統計」(2022年12月末、市区町村別 国籍・地域別 在留外国人)より作成
1893市区町村は外国人が1人以上の自治体数

千葉県の自治体では、千葉市の外国籍人口が31,265人とトップですが、市区町村レベルでデータを見ており、政令指定都市の千葉市は、区単位で集計した数字を評価対象としているので、上のグラフには含まれていません。千葉県の自治体で1位なのは船橋市で19,685人(全国16位)、2位は松戸市の18,194 人(同21位)、3位が市川市の17,959人(同22位)でした。

市川市で暮らす外国人の総数は全市区町村の中で22位ですが、ネパール人だけで見ると全国10位、タイ人は6位です。

出所:出入国在留管理庁「在留外国人統計」(2022年12月末、市区町村別 国籍・地域別 在留外国人)より作成
1893市区町村は外国人が1人以上の自治体数
出所:出入国在留管理庁「在留外国人統計」(2022年12月末、市区町村別 国籍・地域別 在留外国人)より作成
1893市区町村は外国人が1人以上の自治体数

外国人が1万8千人近くも住んでいる市川市ですが、2023年3月時点で112か国の人が暮らしているという国籍の多様さも特徴的です。最近、いろいろな所で耳目にする「多文化共生社会」の実現を市川市が目指すことは自然なことだと思います。

* * * * *

ところで、本稿ではパーマリンク(パーマネントリンクの略)に

intercultural_society_2023winter

という文字列を用いています。”_2023winter”は、「2023年の冬」という意味で、この記事が公開された時期で、”intercultural_society”は、「多文化共生社会」を意味します。

“intercultural society”という語と出会ったのは、自治体国際化協会のWebサイト内のコラムを読んだ時でした。大変興味深いコラムです。

一般財団法人自治体国際化協会 多文化共生ポータルサイト(2020年11月25日)
コラム 第30回 「多文化共生」の英訳はどうしたらよいか
https://www.clair.or.jp/tabunka/portal/column/contents/114785.php

ちなみに、市川市では、「多文化共生推進事業」を実施していますが、これを英語では、”Multicultural coexistence promotion project”と表記しています。例えば、市川市公式Webサイト内の「多文化共生推進事業『世界の食卓から』」(https://www.city.ichikawa.lg.jp/pla05/0000391892.html)には、こう書かれています。

多文化共生推進事業「世界の食卓から」について/What is the Multicultural coexistence promotion project “From dining tables of the world”?/せかいの しょくたく(ごはんを たべるための てーぶる)から について
※太字は協調のために私が施した装飾です

ところが、上で紹介した自治体国際化協会のコラムでは、”multicultural coexistence” は、”multicultural symbiosis”と共に、ほぼ日本国内でのみ用いられている和製英語に近いもので、英語話者にとっては意味がわかりにくいと説明されています。更に、次のような記述もあります。

 例えば、国連の専門機関である国際移住機関(IOM)のホームページには、人の移住に関する70語余りの基本用語の定義が示されていますが、そこには、 “coexistence” も “symbiosis” も含まれていません。”coexistence” は、日本語では「共存」にあたる言葉で、ものや人の集団が同じ場所に存在することを指しているので、人々が同じ社会で共に生きる「共生」とはニュアンスが異なります。

出所:一般財団法人自治体国際化協会 多文化共生ポータルサイト「コラム 第30回 『多文化共生』の英訳はどうしたらよいか」(2020年11月25日)https://www.clair.or.jp/tabunka/portal/column/contents/114785.php、2023年11月22日閲覧

その上で、ヨーロッパで始まった「インターカルチュラルシティ・プログラム(Intercultural City Programme)」が、平等(equality)、多様性(diversity)、インターアクション(interaction)を中核の理念としており、文化背景の異なる人たちの間の接触、交流、混交を特に重視していると述べています。

というわけで、このコラムの影響を受け、”intercultural society”をパーマリンクに用いたのでした。

ところで、冒頭の画像は、行徳公民館で行われた「国際交流イベント」の様子(以下の動画からのキャプチャです。市川市公式YouTubeチャンネル「【市川市の広報番組】いちにゅ〜 No.004 広がる国際交流〜多文化共生社会に向けて〜」(2023年5月27日)https://www.youtube.com/watch?v=d__ky5a6pQUです。何十年も続いている、この「国際交流イベント」は、まさに、文化背景の異なる人たちの間の接触、交流、混交を重視したものですね。intercultural society を成立させるために欠かせない取り組みだと思います。

調べてみると、日本全国で、多文化共生イベントなどが開かれていることがわかります。最近(2023年11月、12月)だけでみても、例えば、

  • 東京都江戸川区
  • 群馬県伊勢崎市
  • 北海道恵庭市
  • 北海道北広島市
  • 埼玉県川口市
  • 神奈川県横浜市保土ヶ谷区

でイベントやワークショップが開催されます/ました。2022年12月末の時点で、外国人の人数が特に多い自治体もあります(川口市は2位、江戸川区は3位、伊勢崎市は28位)が、必ずしもそういうところばかりでもありません。人数が多いところだけでなく、そうでなくても、同じ地域に住む日本以外の国籍の人たちが、不便を感じたり、不安を覚えたりすることがないようにしようという活動(多文化共生のまちづくり)に力を入れる自治体が増えることは望ましいことですね。

ところで、東京都江戸川区といえば、市川市とは江戸川を挟んで隣り合う自治体です。その江戸川区の西葛西で、2023年12月10日(日)に「えどイン フェス’23 江戸川区」なるイヴェントが開かれます(本稿が公開される予定の日には既に終了しているはずです)。私はそれに参加する予定です。外国人数が日本で3番目に多い自治体、江戸川区で新たに始まる多文化共生のフェスがどんなものなのか、興味津々!行った暁には報告しますね。

* * * * *

〈参考記事〉

参考までに、「難民・移民フェス」に行ったことを綴った記事を紹介します。

「第3回 難民・移民フェス」平成つつじ公園/東京都練馬区(2023年5月20日開催)

「第4回 難民・移民フェス」柏の宮公園/東京都杉並区(2023年11月4日開催)

* * * * *

〈余談〉

本稿で見てみたように、外国人が多く住んでおり、近年、その人数が増加に転じている市川市ですが、その市川市の中でも、特に外国人の多い行徳地域で政治活動をする人が、自身のYouTubeチャンネルで、移民が増えていることを語る動画を、日本があぶない、という題を冠して公開したことがありました(2022年2月18日)。当時、この方は政治家ではなかったのですが、現在は市川市議会議員です。この動画は今では非公開になっているので、内容を確認することはできませんが、移民が多く住んでいること、増えることと、日本があぶないということが関連するかのような情報発信は、なされるべきではない――特に政治家は、すべきではない――と考えます(念のために申し上げますが、あくまでも私個人の考えです)。

* * * * *

執筆日 2023年11月22日、12月4日
公開日 2023年12月11日