【フードバンク】メディアは共助を呼び掛ける「だけ」で良いのか?(いや、良いはずはない)

フードバンク

子どもたちにとっては、待ちに待った夏休みですね。

と、書きましたが、待っていなかった夏休み、来てほしくなかった夏休み、そんな子どもも、たくさんいます。

――実は、この2文、ちょうど1年前の2022年7月29日(これを書いているのが2023年7月29日)に綴ったものと全く同じなのです。

2文は、この記事内の「夏休みの子どもの居場所」というパートに今も掲載されています。

夏休みに、学校ではなく家で過ごすのが辛い子どもたちがいる、ということが、ここ数年、夏休みが始まる頃に報じられてい(る気がし)ます。子どもたちが夏休みが辛いと感じる理由は様々ですが、その中のひとつが、学校がある日は、昼食として給食を食べることができるのに対し、家では十分に昼食を取れない、というものがあります。

先日、NHKのWebサイトで、夏休みに給食がないため、フードバンクに対する支援の要請が増えている、という記事が公開されました。

NHK公式Webサイト(2023年7月19日)
給食ない夏休み 支援要請が増加 フードバンク 食料確保に苦心
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230719/k10014135531000.html

今、この記事を読んでいる人で、必要な食品の入手に困っているという方は、地域で「フードバンク」の活動をしているところに連絡をしてみてください。市川市、または、その近隣で、お困りの場合は、毎月第2土曜日(2023年7月現在)に、食品を無償でおすそ分けする「フードパントリー」を実施しているので、それの利用をご検討ください。

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さて、当サイトも「メディア」の一種です。そして、先ほどリンクを張ったNHK公式Webサイトも、もちろん「メディア」です。

NHKの記事は、全国フードバンク推進協議会・米山廣明代表理事の、こんな呼びかけの言葉でしめくくられています。

「特に夏休みにかけて、小さい子どもがいる家庭では給食がなくなるので食費が日頃よりかかる時期になる。そもそも十分な食事をとることができるのが給食だけの家庭もあるので、困窮世帯の子どもにとっては集中的にサポートするのが非常に大事な時期でもある。食品や資金的な寄付を含めて、全国のフードバンクを支えていただきたい」

出所:NHK公式Webサイト「給食ない夏休み 支援要請が増加 フードバンク 食料確保に苦心」(2023年7月19日)https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230719/k10014135531000.html、2023年7月29日閲覧

米山代表理事は、共助を呼び掛けているわけですね。共助は、支援できる人がする、無理のない範囲で、できる人がする、できない時は無理をしない、という性質のものです。まだフードバンクの存在を知らない人が少なくありませんので、地域にあるフードバンクに食品を寄贈できる人はしましょう、と、メディアを通じて呼びかけることの意味は大変大きいと思います。家庭に、食べられることなく眠っている食品(缶詰、頂きもの、お菓子…)は少なからずあり、これらがやがて捨てられてしまう、その一方で地域内には食品が足りず、買うことが難しく、困っている人もいる、というわけです。それならば、賞味期限内の余剰食品をフードバンクが集めて、これを管理した上で、足りていないところ(個人や団体など)に渡していこう――これが、フードバンクの基本的な役割です。

フリースタイル市川の場合は、これを「まちづくり」という観点で編み直しているところがユニークな点だと思いますが、フードバンクそれ自体のコアとなる役割は上で述べたことと相違ありません。

米山代表理事の呼びかけは全くもって正しいことで、メディアが拡声器となって、呼びかけを広く届けることもまた、正しいことです。

しかし、メディアの発信としては、それだけでは足りないのも事実です。

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NHKの記事は、読者ひとりひとりに、フードバンクに寄贈できる食品があれば、是非寄贈してほしい、と訴えています。足りなくなってきている共助を、少しでも厚くしようというねらいがあります。

他方、政治や行政に対する訴えはありません。もしかすると、別の記事政治、行政に対して意見を述べているのかもしれませんが、共助を厚く、と訴える記事の中で、政治、行政への意見を書くべきだと私は思います。

共助は大事だよ、との意見を発信するだけでなく、共助は大事だが、それも足りなくなってきている、そんな状況なのだから、セーフティネットとして公助を手厚くすべきだ、という意見を述べるべきではないかと思います。

ここで、

  • 自助
  • 共助
  • 公助

について、確認しましょう。市川市の資料の中でも説明されていました。

 地域福祉は、地域に住む一人ひとりが自立するための努力(自助)、地域に住む人が協力して行う日常的な生活援助活動(互助・共助)、行政が責任をもつ公的福祉サービス・支援等の取組(公助)がそれぞれの役割を分担し、互いに連動しながら全体としてまとまった機能を発揮させることにより、はじめて実現することができます。

出所:市川市「第4期市川市地域福祉計画【平成30~35年度】(2018~2023 年度)」(平成30年3月)https://www.city.ichikawa.lg.jp/common/000280039.pdf、2023年7月29日閲覧、赤色太字は筆者による強調

なお、互助は共助と概ね同じような意味で、互いに支え合うことを指しています。

この、「自助・共助・公助」という語は、前の総理大臣である、菅義偉さんの言葉として記憶している人が大野ではないでしょうか。

 私が目指す社会像、それは、自助・共助・公助、そして絆であります。まずは自分でやってみる。そして家族、地域でお互いに助け合う。その上で政府がセーフティーネットでお守りをする。こうした国民から信頼される政府を目指していきたいと思います。

出所:菅義偉総理大臣(当時)の2020年9月16日の記者会見での発言。赤色太字は筆者による強調

ちょうど、コロナ禍に、安倍晋三さんからバトンタッチされるかたちで総理となっていた菅さんが発したこの言葉は、

  1. まずは自分で
  2. そして家族や地域で
  3. その上で政府が

とい「順番」を伴っていました。公助が最後なのだ、という意味に捉えた人が多かったですね。私もそう認識し、唖然としました。

まずは自分でどうにかしたいが、それが難しい人が増えている、そういう人がフードバンクという共助によって成り立っているものを頼る、そういう構図があります。今、自助ではどうしようもない人が増えており、共助であるフードバンクに対する需要が大きくなり、食品の供給量は十分ではなくなってきているのです。共助では支えきれなくなっています。そこで、NHKは、読者に対して、共助を厚く!と呼びかけました。それ自体は、繰り返しますが、問題ないと思います。問題なのは、政治や行政に対して鋭く公助が足りないから、何とかしてほしいと言わないことです。むしろ、それを連日言い続けるべきではないでしょうか。

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先日、高校野球の夏の千葉予選大会が行われ、市川市の千葉商科大学付属高等学校の野球部がノーシードから勝利を重ねて、ベスト4まで進みました。

1980年 ベスト8
1987年 ベスト8
1990年 ベスト4
1993年 ベスト8
1999年 ベスト8
2015年 ベスト8
2018年 ベスト8
2023年 ベスト4

おめでとうございます!選手の皆さんのプレイは素晴らしいものです!

そして、千葉日報さんのような県内メディアでは、各高校の試合結果を報じ、健闘を称えます。

一方で、各メディアでは、連日の猛暑に注意するように呼び掛けてもいます。不要な外出は避けましょう、と。

では、この炎天下でベースボールの試合をすることは、果たして健康に悪いことではないのでしょうか――という問題提起を、メディアはしているかというと、あまり目にすることはありません。

大手メディアでも同じです。

先程、NHKの報道を例に、共助が足りない、もっと共助を、と呼びかける一方で、公助を手厚く、とは書かない、と、批判しました。

高校野球を巡っても、試合結果や選手の活躍、汗と涙の美談を報じ、同じ会社が、炎天下に出るのは危険だと日々訴えているものの、高校野球を真夏の野外に連日行うことに対する疑問を呈することは少ないです。私はこれを批判せざるを得ません。

野球というスポーツが好きでも、高校野球のシステムは良くないから批判する、ということはありうる態度です。ジャニーズのグループや曲は好きでも、ジャニー喜多川さんの性加害問題について事務所の対応などを批判する、という態度も当然それは矛盾なく成立します。

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あ、あえて書かずにいましたが、当然この種の記事は、フリースタイル市川としての意見ではなく、著者の意見です。もし、この記事に書いてあることは嫌いだな、と思ったら(私のことは嫌いになっても)、フリースタイル市川のことは、嫌いにならないでください。

これは、市川市出身の俳優で元AKB48の前田敦子さんが2011年6月(12年前、前田さんが19歳の時)に「第3回AKB48選抜総選挙」で1位になった直後に発したコメントを念頭に置いたものです。

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繰り返しになりますが、何度言っても言いすぎることはないので、改めて言います(書きます)。引用と言う形で。

ここ数年、夏休みに給食がないため子どもの昼の食事を用意する必要があるものの、金銭面で厳しい世帯が多いという報道を耳目にしますね。それをフードパントリーや子ども食堂といった、ボランティアによる共助で支えているものの、その担い手も食品も十分ではない今こそ公助が必要なはずなのです。

出所:特定非営利活動法人フリースタイル市川公式Twitter(名称変更で現在はXと呼ばれているようです)2023年7月23日、17時37分、https://twitter.com/fs_ichikawa/status/1683033701649883136、赤色文字は筆者による強調

公助が行き届かない、足りていない、こぼれ落ちてしまう人が増えている、それをボランティアによる共助で何とか支えている構図で、共助であるフードバンクの活動もキツくなっているという昨今です。
メディアには共助への支援の呼びかけだけでなく、公助が足りない、もっと増やせと言ってほしい。

出所:いちかわフードバンクbyフリスタ公式Twitter(名称変更で現在はXと呼ばれているようです)2023年7月20日2時50分、https://twitter.com/fbichikawa1/status/1681723179100930048、赤色文字は筆者による強調

さいきまこさんが書かれているように、NHKは、というかメディアは、フードバンクをサポートしようと市井の人々に呼び掛けるのならば、それと併記するかたちで、政府に対しては、今はもう、自助、そして共助では、足りない、底が抜けている、早く必要な公助を!と言い続けてほしいです。

出所:いちかわフードバンクbyフリスタ公式Twitter(名称変更で現在はXと呼ばれているようです)2023年7月20日2時56分、https://twitter.com/fbichikawa1/status/1681724726450991104、赤色文字は筆者による強調

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執筆日 2023年7月29日
公開日 2023年7月31日
※冒頭の画像出所:ユニバーサルミュージック公式Webサイト、1965年に公開されたザ・ビートルズ第2弾主演映画『ヘルプ!』DVD商品画像