【コラム】「何となくわかりづらい言葉”男女共同参画”」と市川市の「ウィズレター」に書いてありました~男女共同参画と男女平等の違いとは?~

コラム

市川市には「男女共同参画センター」というものがあり、愛称を「ウィズ」といいます。ご存知ですか?

そのウィズの活動などを発信するレターが数か月に1回発行されており、その名前を「ウィズレター」といい、「男女共同参画であなたもわたしもハッピーに」というサブタイトルが付けられています。

10年前の2013年9月に創刊号が発行され、2023年11月(今月)、55号が発行されたばかりです。10年間発行され続けているのですね。読んだことはありますか?Webでも読めますよ。

市川市公式Webサイト
ウィズレター(男女共同参画情報紙。最新号とバックナンバーへのリンク)
https://www.city.ichikawa.lg.jp/gen05/1111000055.html

出所:市川市の「ウィズレター」創刊号(2013年9月)より
出所:市川市の「ウィズレター」55号(2023年11月)より

この「ウィズレター」の最新55号に、「何となくわかりづらい言葉”男女共同参画”」と書かれています。

男女共同参画さんかく――どういう意味かわかりますか?

内閣府に、男女共同参画局という組織があります。

出所:内閣府「男女共同参画局」公式Webサイト

上の画像を見てください。日本語で「男女共同参画局」と書いてある下には、英語でこのように書かれています。

Gender Equality Bureau Cabinet Office

“Gender Equality Bureau” は男女共同参画局に、”Cabinet Office” は内閣府に対応しています。”Bureauビューロー“は「局」です。というわけで、「ウィズレター」に、「わかりづらい言葉」と書かれた「男女共同参画」は、英語では”Gender Equality”と書くわけですね。

“Gender Equality” は、「ジェンダー平等」と訳すのが適当だと思います。「男女共同参画局」は、「わかりづらい言葉」である「男女共同参画」という語を用いず、「ジェンダー平等局」という名称にすれば、わかりやすいと思います。

さて、内閣府男女共同参画局のWebページでは、「男女共同参画社会」というものについて、次のように説明されています。

男女共同参画社会とは、「男女が、社会の対等な構成員として、自らの意思によって社会のあらゆる分野における活動に参画する機会が確保され、もって男女が均等に政治的、経済的、社会的及び文化的利益を享受することができ、かつ、共に責任を担うべき社会」です。(男女共同参画社会基本法第2条)

出所:内閣府男女共同参画局「『男女共同参画社会』って何だろう?」https://www.gender.go.jp/about_danjo/society/index.html、2023年11月16日閲覧、(赤色文字、赤色太字、黒色太字は筆者による強調)

「わかりづらい言葉」である「男女共同参画」に「社会」をつけた「男女共同参画社会」の説明がこれです。

それにしても、微妙な言い回しをしていますね。「対等な構成員」とあります。また、「男女が均等に」とあります。「男女が平等に」ではなく。あるいは、「ジェンダーによらずに平等に」でもなく。

周到に、注意深く、「平等」という語を使わないようにして書かれた文章のように思えます。

ちなみに、男女共同参画のWebページ内で、”男女平等”という語を検索すると、2,689件がヒットしました(検索日:2023年11月16日)。

「平等」という日本語を用いたくない理由があるのでしょうか。

ということを、私は前にも書きました。

このコラムでは、市川市にかつて存在した条例と、それを廃止して制定した新しい条例を比較しており、次のようなことを綴りました。

「市川市男女平等基本条例」を廃止して、新たに「市川市男女共同参画社会基本条例」を制定したわけですから、その目的も変更されています。元の条例では、社会には男女不平等な局面があることを前提としており、男女平等な社会の実現を阻害する要因をなくしていこう、と謳っています。変更後は、そのあたりが消えています。わざわざ消しているということは、新しい条例は、この社会には男女不平等なことがないということを前提にしているか、あるいは、不平等はあるものの、それを是正して男女平等な社会を目指すことを目的にはしない、うがった見方をするならば、現存する男女不平等は温存されたままであってもよく、男女共同参画社会を実現しさえすればよい、という思想が見え隠れします。

出所:特定非営利活動法人フリースタイル市川公式Webサイト「【コラム】『市川市男女平等基本条例』と『市川市男女共同参画社会基本条例』の違い」(公開日2023年5月18日、更新日2023年7月23日)https://fs-ichikawa.org/gender_equality_20230518/、2023年11月16日閲覧(太字は筆者による強調)

本稿の表題に、「男女共同参画と男女平等の違いとは?」とあります。英語ではほぼ同じです(Genderを「男女」とするか「ジェンダー」とするかを問わなければなりませんが、本稿では言及しません)。

内閣府の男女共同参画局の説明によると、「男女共同参画」には、

  • 活動への参画機会:男女が対等な社会構成員として活動に参画できる機会が確保されている
  • 各種の利益の享受:男女が均等に各種利益を享受できる
  • 担うべき責任:男女が共に責任を担う

という意味があるようです。

「男女共同参画社会の実現」と、「男女平等社会の実現」は異なります。「男女平等社会の実現」には、「男女平等な社会の実現を阻害する要因をなくす」ことが必要ですが、「男女共同参画社会の実現」を目指す上では、「男女平等な社会の実現を阻害する要因」を直視する必要がありません。

「市川市男女共同参画社会基本条例」の中身をじっくり(?)読もうと試みたコラムもあるので、このモヤモヤするような問題について、もう少し記事を読んでみたいという人は、こちらのコラムも読んでみてください。

「市川市男女共同参画社会基本条例」の内容をけしからんと思っている人は少なくなく、このコラムでも引用しましたが、2年前に行われた「市川市男女共同参画推進審議会」の第1回会合で、「古い(価値観)」と指摘されています。

市川市男女共同参画基本条例の中で、男性、女性と性別による役割分担を認める箇所がいくつか見うけられるので、条例見直しということを考えていただきたいということ。それから、市川市男女共同参画基本計画が非常に長いスパンのものです。他の市と比べてみても古い。国などが先に進んでいることで、ここに出てくる基本の項目との整合性が取れていない、このあたりの見直しも是非考えていただきたいと思います。

出所:「令和3年度 第1回市川市男女共同参画推進審議会」(開催日2021年7月16日)、会議録、https://www.city.ichikawa.lg.jp/common/gen05/file/0000376223.pdf、2023年5月19日閲覧(太字は筆者による強調)

上で引用した箇所では「市川市男女共同参画基本条例」とありますが、正確には「市川市男女共同参画社会基本条例」です。それはさておき、市川市のこの条例は時代遅れ、時代錯誤、アップデートされていないもの、ということを、多分、本稿を読んでいるような人であれば、感じるのではないかと思います。

そして、本稿を興味深いと思って読んでいただいている人であれば、下で紹介するいくつかの記事も楽しめる(語弊があるかもしれませんが)と思います。楽しむというよりも考えながら読んでもらえるカナート思います。

それでは、また、お目にかかりましょう。 See ya !

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執筆日 2023年11月16日
公開日 2023年12月2日