【市川ちょっと話】行徳富士に登った人がいます

コラム

2023年6月29日から96日ぶりとなる、通算17回目の「市川ちょっとばなし」でございます。

シリーズ『市川ちょっと話』
https://onl.tw/1RrQhva

今回取り上げるのは、行徳富士ぎょうとくふじです。といっても、「行徳富士」とは何か、どんな問題があるのか、過去から現在に至る経緯はどうなっているのか、ということを端正な筆致で綴るわけではありません。

「登山の日」に「行徳富士」について綴る

なぜ、今回、というか、今日、2023年10月3日(公開日。執筆日はこの前日です)、「行徳富士」に関する記事を公開しようと思ったかというと、それは、10月3日が、「登山の日」だからです。「10.3ざんの日」というわけです。

え?でも、「行徳富士」って登れるの?登っちゃって良いの?

そんな疑問が山のように高くそびえ立つかもしれませんね、賢明な読者諸氏の心の中に広がる平地に。まるで「行徳富士」のように。

はい、登れるのです。というか、普段は登ってはいけないのですが、登ることを許可されて登った人たちがいたのです。

というわけで、「登山の日」の今日、2023年10月3日、かつて「行徳富士」に登った人がいましたよ、ということを綴りたいと思います。

「行徳富士」を「行徳名物」と呼びたい?

その前に、「行徳富士」を気に入っているという人の文章を紹介します。大山顕さん(団地研究などで有名な方です)の想いが伝わる熱い文章です。

チューボーと同様、すごいすごいとはしゃぐとちょっと不謹慎かもしれない。というのはこの残土の山、いわゆる不法投棄なのだそうだ。昔から付近住民の方々の間で問題になってきたいわくつきの山なのだ。

ぼくが子どもの頃からあるのでずいぶん長い間この状態だ。木とか生えちゃってるし。事情を知らない人が見たらふつうの山だと思うだろう。

と、いろいろ難しいことがあるが、ぼくはこの風景がかなり気に入っている。あえて「行徳名物」と呼びたい。

出所:デイリーポータルZ「チューボーと行徳富士 / 大山顕」(2009年6月19日)https://dailyportalz.jp/b/2009/06/19/b/2.htm
、2023年10月2日閲覧(太字は筆者)

いかがですか?

想い入れがあるのですね、「行徳富士」に。「行徳名物」と呼びたいとまで言う人は大山さんくらいかもしれませんが、しかし、大山さんにとっては少年時代から慣れ親しんだ景観なのですよね。さすれば、想い出と共に「今もそこにある小山」である「行徳富士」を「名物」と呼びたくなる気持ちも理解できます。

もっとも、一般的には、「行徳名物」といえば、

  • 行徳神輿
  • 常夜灯
  • 寺町の景観
  • 外国人の多い土地柄
  • 鳥獣保護区

などを挙げる人が多いと思われます。

愛称で親しまれるのは偉大な証

ところで、「行徳富士」というのは通称で、つまり、正式な名称ではないので「いわゆる行徳富士」なのですが、

  • ジーコ
  • ベーブ・ルース
  • マルコ・ファンヴァステン
  • ブーマー
  • 飛鳥涼(ASKA)
  • チャゲ(CHAGE)
  • 江戸川乱歩

が、本名ではなく、愛称であり、愛称で親しまれている一方、本名を知っている人は、ほとんどいないわけで、本当の名前以上に愛称が広く流通している「行徳富士」は、上で挙げた早々たる人物に肩を並べる存在といっても過言ではありません。

と、書きましたが、さすがに過言でした。言い過ぎでした。素直にI’mSorry。

しかし、好まれているか疎まれているか憎まれているか無視されているのかはわかりませんが、「行徳の地に不法投棄された残土や産業廃棄物の山の表面を覆うようにして鬱蒼と草木が生えた山のようなもの」を、「行徳富士」と呼ぶセンスはユニークなものですね。

その土地における高い山を富士山に見立てて、●●富士と呼ぶことがありますが、本物の富士山は、単に日本で一番標高が高い山であるということにとどまらず、そのフォルムの美しさからも、カリスマ的な存在として、古くから称えられてきました。陰と陽でいえば陽、正か負かでいえば正、聖か邪かでいえば聖。それが富士山です。

ちなみに、富士山は、音楽の世界でも、「FUNK FUJIYAMA」(米米CLUB)や、「富士山」(電気グルーヴ)といったソングで重要なモチーフになっています。

陽キャで、正キャ、そして、聖キャ、それが、本家「富士山」です。

一方、「行徳富士」は、陰であり負であり邪である、そんなイメージを抱いている人が多いのではないかと思います。どうですか?

市川市議会における「行徳富士」への言及(1999年9月以降)

ここで、「行徳富士」が在る千葉県市川市の議会で、「行徳富士」に言及があった回数を調べてみたいと思います。急ではありますが。

市川市公式Webサイトでは、1999年9月以降の市議会の会議録の中身を検索し、読むことができます。とても便利な機能です。

今回は、ズバリ、「行徳富士」という語で検索して見ました。

出所:市川市公式Webサイトより作成。1999年9月以降の議会の会議録より。

1999年9月以降の各年の議会で、「行徳富士」への言及があった回数は、次の通りです。

  • 1999年 1
  • 2000年 2
  • 2001年 4
  • 2002年 2
  • 2003年 3
  • 2004年 0
  • 2005年 1
  • 2006年 0
  • 2007年 1
  • 2008年 1
  • 2009年 2
  • 2010年 1
  • 2011年 0
  • 2012年 1
  • 2013年 0
  • 2014年 0
  • 2015年 1
  • 2016年~2023年6月 0

1999年9月から2023年6月までの議会で、通算20回、「行徳富士」という語が登場しています。そのうち12回は、2003年までに発せられたものです。最も新しい発言は、8年前、2015年9月25日のものなので、ここ8年間は「行徳富士」が議会で話題に上ることはありません。

最近、テレビ番組で言及された「行徳富士」

ちなみに、メディアでは取り上げられることがないわけではありません。昨年、2022年の夏に、フジテレビの『イット!』という夕方のニュース番組で言及されたようです。

千葉県市川市の通称行徳富士は残土で盛り上げた山で、広さは5万平方メートルに及び高さは37メートルである。問題は残土だけでなく周辺に家庭ごみから粗大ゴミが捨てられており、担当者は昭和48年に江戸川終末処理場の建設予定地であったが東京の残土処分業者が勝手に積んでしまったと話す。市川市は業者に対し何度も是正勧告や原状回復するよう警告したが業者は応じなかった。千葉県は今後土地を下水処理場として使う予定で、残土はその建設に活用するとしている。

出所:TVでた蔵「困惑 『迷惑残土』高さ人の2倍超 ”山”の処分費用に1億円 所有者死亡で”放置”」(2022年7月6日放送 16:42 – 16:49 フジテレビ『イット!』より)、https://datazoo.jp/n/%E5%9B%B0%E6%83%91+%E3%80%8C%E8%BF%B7%E6%83%91%E6%AE%8B%E5%9C%9F%E3%80%8D%E9%AB%98%E3%81%95%E4%BA%BA%E3%81%AE2%E5%80%8D%E8%B6%85+%E2%80%9D%E5%B1%B1%E2%80%9D%E3%81%AE%E5%87%A6%E5%88%86%E8%B2%BB%E7%94%A8%E3%81%AB1%E5%84%84%E5%86%86+%E6%89%80%E6%9C%89%E8%80%85%E6%AD%BB%E4%BA%A1%E3%81%A7%E2%80%9D%E6%94%BE%E7%BD%AE%E2%80%9D/20116387、2023年10月2日閲覧(太字は筆者)

今、「行徳富士」があるその土地には、下水処理場が建設され、残土をそれに活用するということです。確か、それに関する説明を、千葉県公式Webサイトで見たような記憶があります。

2007年末、「行徳富士登山隊」が登頂に成功!?

「富士登山隊」ならぬ「行徳富士登山隊」というのは、私が勝手にそう呼んでいるだけなのですが、2007年の末に、「行徳富士」に登った人たちがおり、地元紙で報じられてもいます。

妙典中ブロック・コミュニティ・クラブが、児童・生徒と保護者を対象に「行徳富士ミニ登山」を開き、約100人が参加したとのことです(情報出所:市川よみうり「わが町の“富士”を知る 妙典中CCミニ登山に100人」(2008年1月1日)、http://www.ichiyomi.co.jp/head/0801a.html、2023年10月2日閲覧)

 参加者は、市行徳臨海対策課から行徳富士がなぜできたのか、いまなぜ撤去されようとしているのか、これからどういったまちづくりが行われるのかを聞き、地域の歴史と未来を学んだ。
 ボランティアで参加した同市立妙典中バレー部男子生徒の先導で山頂まで約10分の道のりを歩いた児童や男性は、「よく、こんなにも残土を運び込めたものだ」「行徳の負の歴史として残してもよいのでは」「ススキや実のなっている木など残土とはいえ自然が豊富」と感じていた。
 頂上では、望遠鏡を使って行徳のまちや遠く富士山や筑波山、東京タワー、六本木ヒルズなどを見て楽しんだ。携帯電話で友人に電話をかけ、手を振って合図を送る人もいた。
 登山を終えた児童は「山登りは簡単でワクワクして楽しかった」「自然と触れ合えた」、親子3人で参加した保護者は「いつか登りたいと思っていた。もっと汚いと思っていたがそうでもなかった」と話していた。

出所:市川よみうり「わが町の“富士”を知る 妙典中CCミニ登山に100人」(2008年1月1日)、http://www.ichiyomi.co.jp/head/0801a.html、2023年10月2日閲覧(太字は筆者)

「市川よみうり」の記事によれば、「行徳富士」を成す残土は、1982年頃から行政の指導を無視して違法にこの地に運び込まれたものだそうです。ちなみに、残土がたい積された面積は、東京ドームとほぼ同じ4.3ヘクタールで、高さは37メートル(東京ドームは56メートル)とのことです。

この登山が行われたのは26年前のことですが、それ以降、公式行事(市民向けイヴェントなど)として、登山が行われたことはなかったのでしょうか。もし、行われていないとすれば、2007年末に登った人たちは、実に稀な経験をしたということになりますね。

事実を明らかにし、記録し、公開すべきです

この場所が、現状どうなっているのか、千葉県から(あるいは市川市から)情報公開が積極的になされているわけではないので、よくわかりません。

下水処理場を建設するということは、「行徳富士」はいずれその姿を消すものと思われます。上で引用した、「行徳富士」に登った人のコメントにある通り、「負の歴史として残してもよい」という考え方を私は支持します。が、それはなされぬことでしょうね。こういうことを、暗部として、触れてはならぬものアンタッチャブルとして扱うことには賛成できないので、事実を明らかにし、記録に残し、人々に公開するということを、千葉県や市川市は考えていただきたいと思います(考えており、既に何らかの手を打っているかもしれません)。

(おまけ)画像生成AIで「行徳富士」を画像にしてみました

さて、最後に、文字情報を元にAIで画像を生成してくれる、clipdropというWebサーヴィス
https://clipdrop.co/ja/stable-diffusion
を使って、「行徳富士」を画像化してみたいと思います。と、言っても、入力すべき文字は英語なので、

A considerably high mound of excavation debris, now covered with lush vegetation on the surface.

という語を入力することとします。

出力された画像を8枚、掲載します。上から順に、画像の「Style」は、

  • Photographic
  • Analog Film
  • Cinematic
  • Digital Art
  • Fantasy Art
  • Anime
  • Low Poly
  • Comic Book

です。

Photographic な行徳富士(を思わせるもの)

Analog Film 的な行徳富士(を思わせるもの)

Cinematic な行徳富士(を思わせるもの)

Digital Art 的な行徳富士(を思わせるもの)

Fantasy Art 的な行徳富士(を思わせるもの)

クリスチャン・ラッセンの作品を彷彿とさせる世界観の「行徳富士」?

Anime 的な行徳富士(を思わせるもの)

あの山の奥に、こんな文化が築かれていたとしたら…

Low Poly な行徳富士(を思わせるもの)

Comic Book 的な行徳富士(を思わせるもの)

おわりに~『京山』の和菓子を思い出しながら~

というわけで、「登山の日」に、登山できない山だと思われている、通称「行徳富士」に実際に登った人がいるという事実を取り上げました。

湾岸道路を行き交う車の窓から、あるいは、JR京葉線の車窓から、見える小高い丘。『キン肉マン』の超人がここで試合をしそうな雰囲気もありますが、いずれなくなると思うと、寂しいような、安堵するような、不思議な気持ちになります。

そういえば、行徳には、登山ならぬ、「京山きょうざん」という和菓子の名店が――名店中の名店が――ありますよね。私はかつて妙典の駅の近くに住んでいましたが、その頃はしばしば「京山 妙典店」で最高品質の和菓子を購入したものです。

久しぶりに、「京山」の和菓子をいただきたくなりました。

* * * * *

執筆日 2023年10月2日
公開日 2023年10月3日(10.3の日)