【市川市政】田中甲市長の施政方針から10項目をピックアップしてみた

コラム

2024年2月14日に、市川市議会令和6年2月定例会がスタートしました。初日である2月14日に、田中甲市長が、令和6年度、すなわち、今年の4月から来年の3月まで(2024年4月1日~2025年3月30日)の施政方針について演説したことも記憶に新しいことでしょう。

施政方針とは、言わば、市長がどのように市政を進めていこうと思っているかを示したものです。

本稿では、施政方針のうち、私(フリースタイル市川の鈴木雄高 a.k.a. ノスタルジー鈴木)が、これは、と思うものを、直感でチョイス/抜粋し、紹介します。施政方針は、原稿の文字数をカウントすると、「約10,300字」もありますし、公開されているYouTube動画だと「30分程度」あるので、全部だきしめて!※1と言われても、よほどの包容力がないと、全体を把握することは容易ではありません。

そこで、私が独断で抜粋した「10項目、918字」を、以下で紹介します。読んでいただければ、施政方針が「どんな感じであるか」を掴むことはできるカナート※2思います。

以下、「* * * * *」で挟まれた太字の文は、市川市の田中甲市長による「令和6年度 施政方針」
https://www.city.ichikawa.lg.jp/common/new02/file/0000447565.pdf からの引用です(アルファベットは筆者による加筆であり、施政方針に登場する順番とは必ずしも一致していません)

* * * * *

A
今、本市が抱えている大きな課題の一つは「格差」ではないでしょうか。 困難を抱えている方々に寄り添い、この課題に真正面から向き合い、誰一人取り残すことのない持続可能な社会を目指してまいります。

B
生活にお困りの方や、社会的に弱い立場とされる方、また、動物や植物まですべての命を大切にし、誰もが住み続けたいと思える市川市を目指してまいります。

C
市として必要な事業を進めるうえにおいて、貴重な樹木の生命を軽々しく扱うことがあってはなりません。樹木の伐採が必要となる事業計画は、慎重に見極めて進めていくと同時に、必要があれば計画の見直しも行ってまいります。

D
南部に残された貴重な海に、梨農家や市民団体の協力を得て、梨の剪定枝を活用した海洋生物が繁殖できる「ボサ漁」の場づくりを計画し、里山と里海を持つ市川市ならではの取り組みを進めてまいります。

E
レジャーとして楽しみながらスポーツに触れられる機会を増やすため、市川市の海に面するオーシャンビューの立地を生かした(仮称)塩浜マリンパークの検討を進めてまいります。

F
本八幡駅北口駅前地区は、交通の利便性が高い地域となっています。再開発事業では、駅前にふさわしい区画の再編や周辺との回遊性を高めるネットワークの構築、オープンスペースの整備などにより、商店街の賑わいや地域の新たな魅力を創出し、市街地にふさわしい都市拠点となるよう、地域の方々とともに事業を進めてまいります。

G
行徳地域の伝統文化を次世代へ継承するため、行徳まつりや神社めぐりでの神輿や獅子頭の一般公開を通じて「神輿のまち行徳」を一層盛り上げるとともに、行徳の神輿文化を、市の無形民俗文化財に指定することを検討してまいります。

H
文教都市の新しいシンボルの一つとして美術館開設に向けた調査・研究を継続していくことと併せ、21年前に策定した本市の文化振興に関する基本的な理念や方針を定めた「文化振興ビジョン」の見直しを進め、美術館構想を具体的に示した計画としてまいります。

I
国府台公園野球場は、令和7年4月のオープンを目指し着実に整備するなど、各種スポーツ施設の充実を図ってまいります。

J
令和6年4月から、市役所第1庁舎2階に「こども家庭センター」を設置いたします。

* * * * *

以上、1,000字弱(X,旧Twitterで言えば、7本の投稿分に相当)の分量でしたが、どうでしょうか。他にも重要なことに言及していますが、ここで挙げた10個の項目も、かなり重要なものばかりだと思います。

* * * * *

Aについて――

市長が、今の市川市における大きな課題の一つは「格差」だと認識している点は、非常に重要です。格差を解消するために、様々な施策を講じていくことになるでしょう。所得格差の解消、教育の格差解消、情報格差の解消。

* * * * *

Eについて――

塩浜マリンパーク(仮)がどのようなものになるかわかりませんが(現在の市民プールに代わる、レジャープールを塩浜につくるという話を小耳にはさんだことがあります)、市川市のベイエリアで音楽フェス、野外フェスをやったら楽しそうじゃない?!というような記事を書いたことがあります。

* * * * *

Hについて――

美術館を開設する構えがある、という発言がありますね。ご存知でしたか?ちなみに、私は県立美術館、市立美術館に行くのが好きで、2020年~2023年に訪問した館を思い出してみると――

  • 千葉県立美術館
  • 青森県立美術館
  • 弘前市立美術館
  • 長野県立美術館
  • 山梨県立美術館
  • 姫路市立美術館

と、少なくとも6館を訪れています。

ライターの浦島茂世氏が選んだ、2021年の「ベスト美術展」(10展)には、地方の美術館で催された展覧会が多く含まれています。ユニークな企画でアートファンなどを魅了する地方美術館の数々!

1位『豊田市美術館「ホー・ツーニェン 百鬼夜行」』
2位『東京都現代美術館「マーク・マンダースの不在」』
3位『三菱一号館美術館「イスラエル博物館所蔵 印象派・光の系譜 展」』
同率5位『東京都現代美術館 愛知県美術館「横尾忠則 GENKYO」』
6位『世田谷美術館「塔本シスコ展」』
7位『千葉市美術館「福田美蘭展」』
8位『練馬区立美術館「電線絵画展 小林清親から山口晃まで」』
9位『島根県立石見美術館「美男におわす展」』
10位『東京シティビュー「サンリオ展 ニッポンのカワイイ文化60年史」』

出所:TBSラジオ公式Webサイト「2021年のベスト美術展は? 浦島茂世×宇多丸×宇垣美里が語る」(2021年12月7日)https://www.tbsradio.jp/articles/48473/、2024年2月16日閲覧

魅力的な地方美術館は多いので、市川市に美術館を新設するのであれば、上で紹介したようなランキングで上位に入るような魅力的な展示をしてもらいたいですね!

* * * * *

Fについて――

本八幡駅北口駅前地区の再開発についても、言及されています。再開発を通じて、実現したい地区の姿、すなわち、新しくどのような空間を整備したいのか、ということが述べられています。

一方で、再開発により、今そこにある場所※3(つまり、昔からある場所※4)が、なくなってしまうという、再開発に伴う、負の側面、影の部分に対する言及はありません。限られた時間で話す内容の中に、そのへんを盛り込むのは難しいことは理解します。が、再開発の前と後(before and after)では、地区の景観が全くと言ってよいほど別のものになってしまうことが、しばしばあります。例えば、市川駅の南口のアイリンクは、再開発前のその地区の姿をほとんど残していません。それはなぜかといえば、「今そこにある場所(昔からある場所)」のもつ風情、景観、街並みは、捨て去ってよいという意思決定がなされたからです。

というようなことを考える人も、少なからずいることでしょう。

アイリンクの計画段階の資料に掲載されていた「ペデストリアンデッキ(イメージ)」は、現在の姿とはまるで違います。また、その資料に記された文には、

  • 緑豊かな景観
  • 自然との出会いを演出した憩いの空間

と書かれていますが、今のアイリンクは、この計画とは乖離したものだと言わざるを得ません。

出所:市川駅南口再開発事業 タウン・コンセプトI-LinkCity「駅前交流都市を目指して」
https://www.city.ichikawa.lg.jp/common/000013926.pdf

本八幡駅北口で行われる再開発が、どのように進められていくのか、多くの人が(例えば、市川市在住の中学2年生Xさんが)関心を持っています。計画段階で示されたビジョンに沿って工事を進めてほしいですね。

本八幡駅北口駅前地区の再開発について、これまでに何度かコラム類を書いているので、気になる人は読んでみてください。

* * * * *

Iについて――

国府台球場は、現在、建て直し工事中ですが、貴重な遺跡が発見されたこともあり、工事はストップしています。工期が伸びると工事にかかる費用は増えていきますが、歴史的にみて貴重な遺跡がまだ埋まっている可能性があるわけですから、急いでスタジアム(ボールパーク?)を完成させるのではなく、遺跡発掘優先でお願いします!

国府台球場では、かつてプロ野球1軍公式戦が行われたことがあります(1950年と1954年に計7試合)。文字通り「伝説の選手たち」がプレイしたのです。どんな選手が出場したのか、ということについて、以下の記事から引用します。

【一塁手】
西沢道夫(初代ミスタードラゴンズ)
川上哲治(赤バット、打撃の神様、監督してV9)

【二塁手】
本堂保次
千葉茂(猛牛、ジャイアンツの背番号3、バファローズ球団の由来、カツカレー誕生のきっかけ)

【三塁手】
藤村富美男(初代ミスタータイガース)
小玉明利
杉浦清
南村不可止

【遊撃手】
鈴木武
平井正明

【右翼手】
毒島章一(三塁打の毒島)
藤井勇(プロ野球第一号ホームラン)
関口清治

【中堅手】
呉昌征(人間機関車)
青田昇(じゃじゃ馬)
坪内道典(野球名人。プロ野球初の1000試合出場、初の通算1000本安打)
別当薫(慶應ボーイ)
後藤次男

【左翼手】
山内和弘(打撃の職人、シュート打ちの名人、オールスター男、ミスターオリオンズ、かっぱえびせん)
金田正泰
杉山悟
戸倉勝城

【捕手】
土井垣武(和製ヨギ・ベラ)
野口明(野口4兄弟)

【投手】
別所毅彦(べーやん、鬼軍曹)
御園生崇男 
荒巻淳(火の玉投手)
米川泰夫
関根潤三 

* * * * *

市川市長による「所信表明」と「施政方針」の演説の原稿は、市川市公式Webサイトのホームページ(トップページ)から、
“ホーム > 市政 > 市長室 > 所信表明・施政方針”
と、辿っていったWebページ「所信表明・施政方針」 https://www.city.ichikawa.lg.jp/pla03/1111000022.html に、PDF形式で掲載されています。

2年前(2022年)の6月に、就任直後の田中市長が語った「所信表明」を読み、その内容について綴った記事はこちらです。

今回は市長の施政方針を読んだ上で、直感で、これ、これ、これ・・・これ!と、10項目をチョイスして紹介しました(A~J)。紹介していないものでも重要なものはあります。演説は30分程度なので、当ページ上部で紹介した動画(YouTube)をウォッチしてみてください。タイパ、すなわち、タイムパフォーマンスを重んじる貴方であれば、2倍速市長、否、2倍速視聴することで、15分で市長できちゃいます、否、視聴できちゃいます。お試しあれ!

それでは、またどこかでお会いしましょう。またどこかで会えるといいな!※5

* * * * *

〈注釈〉

※1:「全部だきしめて」は、吉田拓郎氏が作曲し、康珍化氏が作詞したソング『全部だきしめて』のタイトルですよね。吉田氏のライヴ『吉田拓郎 Tour’96 〜感度良好ナイト〜』で初披露され、氏のアルバム『みんな大好き』(正確には、「吉田拓郎とLOVE2 ALL STARS」名義の作品)に収録された後、1998年にKinKi Kids の4枚目のシングルとして発売されました。つまり、KinKiの4枚目のシングルはカヴァー曲だったわけです。

それではお聴きください。KinKi Kidsで「全部だきしめて」!

※2:カナートについては、小堀巌氏による説明を引用するので、これを読んでご理解ください。

横井戸による地下水道というのがカナートですが、なかなか想像しにくいものと思います。私が日本で説明するときは「カナートというのは地下鉄のようなものだ」と言っています。簡単に言えば、水のある山麓地帯に最初の深い第1井(この井戸を「母井:マダル・チャー」と呼びます)を掘り、そこの帯水層から取った水を暗渠で導水し、灌漑地の近くで地表に出すのがカナートです。暗渠で導水するのに、地下から一直線に横に掘ることができないため、多数の竪抗の井戸を続けて掘って、それらをつないでいくわけです。

ただ、この技術や形態だけをカナートと言うのではなく、カナートに支えられている集落、農地、全体を考えた水利システムがカナートであると考えます。連続した竪坑の長い列、その先に位置する集落、さらにその先の畑への灌漑など、すべてが総合技術としての水利体系となっています。

カナートはイラン高原あたりが発生の地と言われていますが、世界中に広がっています。アフガニスタンでは「カレーズ」、アルジェリアでは「フォガラ」、オマーンでは「ファラジ」と呼んでいます。意味は同じですが、国によって深さや全長は異なります。

出所:ミツカン水の文化センター機関誌『水の文化』12号「水道(みずみち)の当然(あたりまえ) 見直される乾燥地帯の水利システム貴重な水を運ぶカナート」(国際連合大学上級学術顧問 元日本沙漠学会会長の小堀巌 さんによる解説)、https://www.mizu.gr.jp/kikanshi/no12/05.html、2023年2月7日閲覧(太字は筆者)

※3:「今そこにある場所」は、1994年に公開された映画『今そこにある危機』に対するオマージュ表現です。ちなみに、私が今PCのキーボードで「imasokoniarukiki」と打って変換したところ、「今そこにある機器」になりました。マウスとか、モバイル・バッテリーとか、スマホとか、そのようなものが、「今そこにある機器」です。あ、それは、私にとっては「今ここにある機器」ですね。これを読んでいるあなたの手元、つまり、そこにあるのは何ですか?「今そこにある機器」は、何でしょうか。手で持っているのはスマホ?それとも…

※4:「昔からある場所」は、My Little Loverが1995年に発表した3枚目のシングル『Hello,Again ~昔からある場所~』を念頭に置いた記述です。

※5:「またどこかで会えるといいな!」は、1994年に発表されたMr.Childrenの5枚目のシングル『innocent world』のリリックの一部です。この曲は同年に発売された4枚目のアルバム『Atomic Heart』※6にも収録されました。両作品のジャケット画像を下掲しますが、いずれも青色が基調となっています。これは、『innocent world』のタイトルが当初は『innocent blue』だったことに由来していると言われています。

※6:アルバム『Atomic Heart』のタイトルは、 Pink Floyd 『Atom Heart Mother』からの着想だと思うのですが、どうなのでしょう。詳しい人は教えてください。