市川市の毎月定例の記者発表が、今月(2024年3月。令和5年度の最終月とも言います)も行われました。その時に配布された資料に、市川駅の北口に、「Ichikawa駅前ミュージアム」なるものがオープンすることが記載されていました。
本市では、学習交流施設市本として使用した施設を、市内在住の芸術家の作品や活動を発表する場とすることで、駅前の好立地を活かし、市民の皆さまに気軽に文化・芸術に親しんでいただける“駅前ミュージアム”として試行することとしました。
出所:市川市公式Webサイト、市川市管財部管財課「Ichikawa 駅前ミュージアム『新作家展』の開催について」(2024年3月5日)https://www.city.ichikawa.lg.jp/new01/0000448486.html、2024年3月14日閲覧、太字は筆者
こうした取組みは、文教都市いちかわの更なる魅力を創出できるものと考えております。
Ichikawa駅前ミュージアムのオープンに伴い、本稿公開日である、2024年3月14日(木)から、同年同月20日(水)までの1週間、「新作家展」と題された展示会が催されるとのことです。行かなくちゃ!行くっきゃ騎士!
「新作家展」では、若手芸術家作品を展示するそうですよ。作品を展示する芸術家の名前と、ジャンルは、下の通りです(情報出所は市川市管財部管財課「Ichikawa 駅前ミュージアム『新作家展』の開催について」)。
- 吾妻朋美 氏 ・・・平面
- 龍野りさ 氏 ・・・立体
- 吉田武 氏 ・・・陶芸
- 渡邉直美 氏 ・・・伝統工芸
会期中に行ってみます。若手芸術家の作品に興味があることはもちろん、ミュージアムの内装は「市本」時代から変化があるのかなど、気になることもありますしね。
ところで、ミュージアムが開設された建物に以前存在した――2023年3月31日に活動終了(施設閉鎖)となってしまった――学習交流施設「市本」とは、どのような施設だったのか、ご存知ですか?
ちなみに冒頭の写真は、市本の在りし日の姿です。
かつて市川市は、市本について次のように説明していました。
主に社会人や大学生の方を対象に、本を介した学びと交流を促進し、働きながらも学び続けていける環境の醸成や新たな交流の機会創出を目的とした施設です。気になる本を読んだり本に関するイベントに参加するなどの新たな学びと交流の機会を提供します。
出所:市川市公式Webサイト、「市川市学習交流施設 市本(いちぼん)」(2023年3月1日更新)、https://www.city.ichikawa.lg.jp/edu12/0000377465.html、2023年3月22日閲覧
市本がオープンした直後の2021年12月23日に市本を利用した際のことを綴ったコラムもあるので、よかったら是非読んでみてください。
この市本、運営を民間企業に委託していました。2022年2月22日の市川市議会定例会における永田生涯学習部長の答弁によると、令和4年度当初予算に3,000万円を計上していたといい、その内訳は、施設の日々の運営を行う施設運営業務として約1,820万円、毎月のテーマの決定や本の選書、本を介して利用者同士がつながる仕掛けとしてのイベントの企画や広報活動を行う企画制作業務が約1,130万円、これらに加えて施設の清掃費等の経費が約50万円ということでした。年間3,000万円かかるということは、1日当たり8万円超ですから、高コストだとも思えますね。
実際、市川市議会議員の中には、市本の存在意義を問い、この費用の高さにも言及している方がいました。
市の直営であるけれども、直営ではない、図書館でもない、集会室でもない、喫茶店でもない。一体、学習交流施設とは何なのか、ちょっと中途半端な施設と思います。先順位者の方は隠れ家的存在とおっしゃっていましたけれども、市が年間3,000万円をかける意義があるのか、甚だ疑問です。(略)
市本ですけれども、市川駅を利用している人は分かるかもしれません。先ほど言いましたけれども、市本の前で待ち合わせしても通り過ぎちゃったりする人もいるわけです。バスを利用している方は市本の前は通りませんので、分からないかもしれません。本八幡や行徳方面の方も知らない方が多いのではないでしょうか。わざわざ市川駅にまで来ないのではないかというふうに思います。ごく一部の人しか使わない施設に毎年3,000万円の予算。本当に必要な施設なのか、市民のニーズに合ったものなのか、ぜひ考え直してほしいというふうに要望いたしまして、私の一般質問を終わります。
出所:市川市公式Webサイト、市川市議会会議録(2022年2月22日分)、日本共産党の代表質問における清水みな子議員の質問、https://www.city.ichikawa.lg.jp/cou01/kaigiroku0000405079.html、2024年3月14日閲覧
私自身、市本の存在意義、存在価値はあると信じていましたが、同時に、運営費が高いとも思いました。施設を突然閉めると発言した田中市長は、「魅力的な取り組みだったが、市内には図書館もあるのでご理解をいただきたい。今後は、市民生活に直結する施設を作りたい」※と説明しました。
※発言の出所は、NHK WEB(千葉 NEWS WEB)、「千葉 市川市 本を通じた学びの施設『市本』 1年余で廃止へ」(2023年2月9日)、https://www3.nhk.or.jp/lnews/chiba/20230209/1080019937.html、2023年3月22日閲覧
それまでに、市民の利用が思うように増えないという課題があり、それに対して具体的な取り組みをして課題解消のために努めたものの、奏功しなかったので、残念ながら施設を閉じる、ということであれば、市本利用者もあ類程度納得したのだと思いますが、「青天の霹靂」ともいえる閉鎖宣言に、驚くしかありませんでした。いきなりやめてしまうのではなく、予算を半減させ、その予算の中で運営するようにするなど、「やりよう」はなかったのでしょうか。
市本はなくなりましたが、市本が生んだ文化の萌芽は色々なかたちで成長していると思われます。近いうち、美しい花を咲かせたり、美味しい実をつけることでしょう!
市本の閉鎖から約1年がたち、あの場所にオープンしたのが、Ichikawa駅前ミュージアムなので、このミュージアムが、市長の言う「市民生活に直結する施設」だということなのでしょうね。もっとも、この言葉も曖昧で、市本だって(利用した)市民(の)生活に直結する施設だったとは言えます。市長が、多くの市民の生活(例えば、年間で延べ3万人が利用するなど)に直結する施設を、あの場所には置きたい、開きたいと考えているのであれば、集客力のあるコンテンツは何なのかを議論、検討することが当然必要です。きっと、そうした検討過程を経て決まったのが、駅前にミュージアムを置くことだったのだと想像します。
しばしば、ご自身の経済人として経歴に言及し、経済人だからできる政治があるという市長は、費用対効果について、例えばICHICOの導入によって市外に流出していたはずのマネー○○円が、市内で使われた、というように、お金に換算しやすい施策を好んで講じるのかもしれません。文化的なものって、そう簡単にお金では測れないものですしね。
ところで、市川市は、その究極の目標として「文化都市」というものを掲げています。ということを知っている身からすると、駅前ミュージアムが「文教都市いちかわの更なる魅力を創出できる」という、市川市の言葉は、「文化都市いちかわの更なる魅力を創出できる」にすべきだったのではないかな、と思ってしまいます。文教都市は、大学が複数ある都市というイメージで、文化都市は、成熟した文化があったり、常に新たな文化が誕生していたり、世界的なカルチャー界のスターを輩出していたりする都市をイメージします。
おっと、変な姿勢で記事を書いていたら腰椎が痛み始めたので、突然(といっても「市本やめます!宣言」ほど突然ではないはず)ですが、このあたりで執筆を終えます。
またお会いしましょう!See Ya!
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執筆日 2024年3月14日
公開日 2024年3月14日