執筆日 2023年4月16日
公開日 2023年4月20日
先程、市川市公式Webサイトで、「子どもの居場所づくり事業」のWebページを見ていました。
市川市公式Webサイト
子どもの居場所づくり事業(放課後子ども教室
https://www.city.ichikawa.lg.jp/edu11/1111000005.html
ん?
と思った方、鋭いです!実に鋭い!
子どもの居場所づくり事業(放課後子ども教室
じゃなくて、
子どもの居場所づくり事業(放課後子ども教室)
とすべきなんじゃないの?
そう思いましたよね?私もそう思います。そう、思いました。
カッコは、”「~~~~~」”と、”「”と”」”がペアで使われるものですが、後ろの方のカッコがありません。これは私の付け忘れではなく、下の画像をご覧いただければお分かりの通り、当該Webページの表記がこのようになっているのです。
それはさておき、記事のタイトルに注目してください。
「安全・安心」か、それとも、「安心・安全」か。あるいは…
上のWebページに、次のような記述があります。
放課後子ども教室は、市立小学校の空き教室等を使用して、子どもたちへ安全安心な居場所を提供するとともに、工作や外遊び、体験活動等、様々な活動を実施する事業です。
出所:市川市公式Webサイト、「子どもの居場所づくり事業(放課後子ども教室」(2023年4月3日更新)、https://www.city.ichikawa.lg.jp/edu11/1111000005.html、2023年4月16日閲覧、赤太字は筆者による強調
「安全安心」という表記ですね。
ちなみに、市川市公式Webサイト内の別のWebページには、大洲防災公園について、「くらしの安全・安心を支える憩いと交流の公園です」という説明がありました。こちらは「・」が間に入っています。
「社会資本総合整備計画(社会資本整備総合交付金事業)」(更新日:2023年4月10日、https://www.city.ichikawa.lg.jp/cit01/1111000061.html、2023年4月16日閲覧)には、次のような名称の整備計画が載っていました。
・市川市における安心・安全で快適な魅力あるまちの実現、令和3年度~令和6年度
・安心・安全で快適な魅力ある公園づくり、令和2年度~令和6年度
今度は、「安心」が先にありますね。
- 安全・安心
- 安全安心
- 安心・安全
- 安心安全
この4つのどれが一番しっくりきますか?あるいは、どれも自然と感じるか、それとも、全部おかしい表現だと思いますか?
実は、この「問題」について、以前(2022年12月5日公開の記事)に取り上げたことがあります。
この記事から、丸ごとバナナします。ではなく、丸ごと引用します。この「問題」について取り上げた箇所を。
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(引用ここから)
最近、耳目にする機会が多い表現、「安全・安心」ですが、この使い方は誤っていると指摘していた人がいます。それも、15年前に。
「安全」と「安心」をつないで、「安全・安心」と連語にして使うのは間違っている。「安全」は食なり、住なり、エネルギーなりの事業を行っている当事者が確保するべきものであり、行政は指導監督責任がある。その体制が全体としてまっとうに動いて安全が確保されているのを見て、安心するのは安全の受益者(潜在的被害者)である私たちである。立場が違い、概念が違う。「安心」は、安全確保を怠れば被害を与える側が、被害の潜在的受け手に向かって安易に口にすべき言葉ではない。
出所:Aquarian’s Memorandum、「おかしいぞ、『安全・安心』という連語」(2007年10月2日)、http://aquarian.cocolog-nifty.com/masaqua/2007/10/post_8bae.html、2022年11月28日閲覧(太字は筆者)
また、8年前にも、この表現を使う人を批判している人(まちづくりに携わっている人)がいました。
「安全」は主に安全を確保すべき側の客観的な面をとらえるのに対し、「安心」は受け手側の主観的な面をとらえることばではないでしょうか。これを「・(中点)」でつないで使ったときどういう意味になるのか、私にはさっぱりわかりません。使っている人でもはっきり答えられる人は少ないのではないでしょうか。
出所:伊深まちづくり協議会公式Webサイト、「もうやめてほしい。“安全・安心”の連語」(2014年4月23日)、http://ibukamachi.com/index.php?QBlog-20140423-1、2022年11月28日閲覧(太字は筆者)
わざわざ「誤っている」と目くじらを立てて怒ることもないじゃないか、むしろ滑稽に映るよ、私の目には、と思う人もいることでしょう。間違っていることを指摘する、何か変だと思うことを指摘する、それをし続ける人がいる。あきらめない人がいるということは、私に希望を抱かせてくれます。
現在、「言葉」の使われ方に、あるいは、「言葉」の使い手に注目し、ツッコミを入れている人といえば、ライターの武田砂鉄氏です。
わざわざ言わなくても、と思うかもしれないけれど、これ、わざわざ言わないと大変なことになる。
出所:武田砂鉄『今日拾った言葉たち』単行本(暮らしの手帖社)の帯より。https://store.kurashi-no-techo.co.jp/products/1202
(引用ここまで)
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意味することが何であるかを考えずに安易に使えてしまう便利な表現、「安全・安心」(中黒の無いものや前後逆転版も含む)。
提供者が提供する「安全」と受益者が感じる「安心」をひとつにまとめることはできない、という上の2つの説明を聞くと(読むと)、あぁ、そうだよな、そうですよね、と、腑に落ちます。落ちましたか?腑に。
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ちなみに(その1)、
「腑に落ちる」ことを「腹落ちする」と言う人――主に、ビジネス・パースンーーがいますね。
ちなみに(その2)、
「アンデスメロン」の「アンデス」は、山脈で知られるアンデスではなく、「安心です」の意味だそうです。
ちなみに(その3)、
かつて「星安出寿(ほしあんです)」という四股名の、アルゼンチンのブエノスアイレス出身の力士がいました。
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話が逸れました。
と言っても、私の場合、話が逸れることは、特段珍しいことではありません。殊更に言及するようなことでもないですね。
コースを逸れたこの乗り物を、再びコースに戻す必要が、私にはもはや感じられないので、この辺りの見晴らしの良い草原で運転をやめたいと思います。東の低い空には三日月が出てきました。風が吹いてきました。少し肌寒いですね。
というわけで、たまにはこんなコラムも良いと思っていただけたら幸いです。またお目にかかりましょう!