執筆日 2023年5月20日
公開日 2023年5月24日
昨年(2022年)、市川市若宮で営業していたスーパーマーケット「かどや」さんが閉店してしまい、その近隣に住む人たちが食品を買うお店がなくなってしまった、という事態が発生しました。その後、市川市議会でも問題として取り上げられ、今年(2023年)1月からはコルトンプラザの「ダイエー」さんの移動販売車が、若宮の公園にやって来ることになり、そして6月16日には、「まいばすけっと」さんが「かどや」さん跡地に出店することになりました。
この件については、稿を改めて言葉を紡ごうと思いますが、以前にも当サイトで取り上げたことがあります。
この記事の中で、私は、こんなことを書いていました。
やなぎ議員は質問の中で、「買い物難民」という語を用いていました。立場福祉部長も「いわゆる」という言葉を添えて、この語を使っていました。この、「難民」というのは、もちろん例えで、実際の難民ではありません。例えとして「難民」という語を用いている語に、昼ご飯を食べることのできる店が混雑していたる等の理由で、食べ損ねた人を指す「ランチ難民」などがあります。最近では、「難民」という本来の語が持つ意味合いを無視してカジュアルな例えとして使うことに対する批判も目に付くようになりました。経済産業省では、「買い物難民」ではなく、「買い物弱者」という語を使っているようです。
「難民」の他にも、「テロ」という、当事者にとっては悲惨で過酷な状況でしかない事象を、カジュアルな例えとして使う用法(「飯テロ」など)に対しても、使用を止めるべきとの意見を目にします。
使う人は悪気なく使っている、ランチ難民、買い物難民、ネットカフェ難民、飯テロ。無邪気にこの種の例えをしてしまうことは、裏返せば、現代日本で生活をしていると、難民問題やテロなどの問題は、遠い海の向こうの話であって、身近な事象ではない、と感じていることの表れかもしれません。
しかし、実はそれほど縁遠い話ではないかもしれません。
市川市にも難民、避難民の方がいらっしゃいます。
出所:特定非営利活動法人フリースタイル市川公式Webサイト、「【コラム】若宮のスーパーが閉店!買い物不便地域の解消策は?」(公開日2022年12月19日、更新日2023年1月4日)、https://fs-ichikawa.org/food_desert_20221219/、2023年5月20日閲覧、黒色及び赤色の太字は筆者による強調
こんなことを書いた後、2つの記事を紹介しました。再度、紹介します。
新型コロナウイルス感染拡大は、ラマダン(断食月)を迎えたイスラム教徒たちの生活にも暗い影を落とす。ミャンマーから日本に逃れてきたロヒンギャの一家は、故郷での迫害に、ウイルスの脅威も加わり苦しみが重なる。「この暮らしがいつまで続くのか」。神への祈りを静かに捧げながら、不安な日々を過ごしている。
10日午後6時38分。日没を迎えた市川市行徳駅前の民家で、モハメッド・サリムさん(45)の一家は、顔の前に両手を広げて祈りを捧げた。すでに食卓にはスパイスの効いたひよこ豆のフライやパスタ、ココナツのクレープに色鮮やかなフルーツが並んでいる。イフタール(日没後の食事会)の始まりだ。
「私たちにとって大切な時間なので、やっぱり寂しいです」。サリムさんは、そうこぼす。例年は友人たちと近くのモスク(礼拝所)に集い、にぎやかに食事を囲む。迫害を受けながらも、モスクに行けないラマダンは人生で一度もなかった。今年はウイルス感染を避けるために、家族と自宅で静かに食事をする。
出所:朝日新聞デジタル、「迫害うけ来日のロヒンギャ家族、収入や学びにコロナの影」(2020年5月11日)、https://www.asahi.com/articles/ASN5B73K6N4ZUDCB002.html、2022年11月17日閲覧、太字は筆者
千葉県社会人サッカーリーグ1部に所属する市川サッカークラブ(市川SC)は、本日、ウクライナ国籍のコブザール・ダニール選手(20歳)が加入したことをリリースしました。
ダニール選手はウクライナの名門、FCシャフタール・ドネツクの下部組織出身。戦禍を逃れた避難民として、ウクライナから他国を経由し8月上旬に来日、前所属チームであるウクライナのFC U.C.S.Aより市川SCへの国際移籍手続きが完了し、全ての公式戦への出場が可能になりました。
戦禍により日常でなくなったウクライナでのサッカー選手としての生活を日本で取り戻して、彼にとってサッカーが日常になることを願って、市川SCは業務提携しているFC市川GUNNERSと共に、グランド使用や練習参加など、ダニール選手にできるだけのサポートをしていくつもりです。
(中略)
●ダニール選手コメント
出所:FC市川GUNNERS公式Webサイト、「ウクライナ避難民 コブザール・ダニール選手が市川SCに加入」(2022年8月18日)、https://fcichikawagunners.jp/jp/danil/、2022年11月17日閲覧、太字は筆者
「市川SCに加入できて嬉しいです。この機会を与えてくれたチームに感謝します。 チーム一丸となって、高い目標を達成していきたいと思います」
ご存知でしたか?そこ(元いた国)にいると身の危険があるなどの理由で、日本に逃れてきて、市川市に住んでいる人がいることを。
今、紹介した、2つの記事のうち、上の方の記事に登場した一家は、ロヒンギャの人たちです。他にもロヒンギャの家族が市川市には住んでいます。こちらの記事をご覧ください。
市川市に住むサイド・アハメドさん(75)は、ミャンマー西部ラカイン州出身のロヒンギャだ。仏教徒が多いミャンマーでは、イスラム教徒のロヒンギャは「不法移民」などとみなされ、国籍がない。
サイド・アハメドさんが住んでいた村では、当局がロヒンギャを監視し、家に押し入ったり、財産を奪ったりしていたという。
軍事政権だった1990年、小学校の校長として、生徒たちに民主主義の大切さを説いた後、当局に拘束された。2008年にも理由がわからず、逮捕された。16年には、警察署の逮捕者リストに自分の名前が張り出されていると聞き、妻らと隣国に逃げた。
長男(46)は10代で民主化運動に参加し、身の危険を感じて国外に逃げ、03年に来日していた。その長男を頼り、妻らと17年に来日した。母国のような身の危険を感じないが、不安定な生活が続く。
日本では、難民認定を受けると、定住者として5年間の在留資格や就労、国民健康保険の加入が認められる。一方、多くのロヒンギャは国籍がないため、正規の旅券で入国できず、退去強制の対象となる場合が多い。
サイド・アハメドさんは来日後、17年に難民認定を申請したが、まだ結果が出ていない。その後、収容を一時的に解く「仮放免」という措置となった。仮放免は、就労ができず、原則県外への移動も認められず、国民健康保険に加入できない。子ども4人を抱えた長男一家と暮らすが、レストランなどを経営する長男の収入に頼るしかない。
今年3月には、肺炎になり入院した。退院後も病院に通うが、国民健康保険に入れないため、医療費は全額負担。同じく仮放免である妻(63)は、白内障で2年近く、片目が見えない。新型コロナウイルスの影響で、通訳を入れた手術ができなかったが、来月ようやく手術ができる見通しだ。だが、その手術費用も全額負担だ。長男は、今後も増えると見込まれる両親の医療費に頭を抱えている。
出所:朝日新聞デジタル、「帰れぬロヒンギャ 難民認定に壁、不安定な生活強いられ」(2021年8月2日)、https://www.asahi.com/articles/ASP816WVWP7YUDCB002.html、2023年5月20日閲覧、太字は筆者
この記事の中に登場した、「難民認定」、「仮放免」という言葉ですが、最近、メディアなどを通じて耳目にする機会が増えたと感じるかもしれません。
言葉の意味を確認しておきます。
「難民」とは
人種、宗教、国籍、特定の社会的集団の構成員であること又は政治的意見を理由として迫害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖を有するために国籍国の外にいる者であって、その国籍国の保護を受けることができないか又はそれを望まない者。
「難民認定手続」とは
外国人がこの難民の地位に該当するかどうかを審査し決定する手続き。
「仮放免制度」とは
入管収容施設の被収容者について、請求により又は職権で、一時的に収容を停止し、一定の条件を付して、身柄の拘束を仮に解く制度。
出所:出入国在留管理庁公式Webサイト、「難民認定制度」、https://www.moj.go.jp/isa/applications/procedures/nanmin_00001.html、および、「収容、面会・差入れ、仮放免」、https://www.moj.go.jp/isa/applications/procedures/tetuduki_taikyo_syuuyou_00001.html、2023年5月20日閲覧
難民を巡る問題として、今現在大きな注目を集めているのは、「入管法改定」ですね。本稿では、政府の改定案については言及しませんが、私のTwitter個人アカウントでは触れているので、気になる人はチェックしてみてください。
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さて、本日(記事の公開日ではなく執筆日)、2023年5月20日(土)、小雨が散る中、私は坊を伴って「第3回 難民・移民フェス(Refugee & Migrant Festival)」に参加するため、平成つつじ公園(練馬区)に足を運びました。
このイヴェントは、「日本に住む難民と移民を知る・関わる・応援するチャリティフェス」で、2022年6月4日、同年11月23日に、第1回、2回が行われ、今日が第3回でした。
たくさんの飲食販売ブース、服や雑貨、本の販売ブース、無料でお茶をふるまっているブースがあり、会場の奥に設営されたステージでは、音楽の演奏やトークショーが行われていました。
フェスの会場には、大勢の人が来場して、大層盛り上がっていました!
ステージで行われた、大澤優真さんと安田浩一さんによるトークショーを見ること(聴くこと)ができたのは良かったです。所要時間は約30分でしたが、大いに刺激を受けました。それでこんな記事を書いているのです。
トークショーでお話をしていた大澤優真さんがインタビューに答えているミニ連載記事(全3回)があり、是非読んでいただきたいと思うのですが、ここでは一部をご紹介します。
——入管施設に収容されたり、さらに仮放免になったりするのはどんな背景の人たちなのでしょうか?
大澤優真さん(以下、大澤):一つが難民と呼ばれる状態の方たちで、紛争などから逃れてきた人たちです。日本は難民認定率がとても低いので、難民申請をしても難民として認められないケースがほとんど。結果としてオーバーステイ(在留資格期限切れ)になって、入管に収容され、その後仮放免になります。
もう一つは、難民ではないんだけれど、日本にとても長くいるという人たちです。最初は働きに来たりして、その後日本で結婚をして家庭もあって子供がいたり、長年日本に定住していて母国に帰れない、帰ると生活できないという人たちがいます。親が外国人でも、自分は日本で生まれ育ったので、在留資格はなくても実質日本が母国という人たちもいます。
——帰国すると命の危険があったり、拘束される可能性がある人たちもいますよね。
大澤:日本に来たくて来たという人もいますけれど、多くの人はたまたま日本に来ているんです。例えば、アフリカの出身者の話では、母国がとても危ない状況で、軍がどんどん人を拉致監禁したり殺害していくんだそうです。家族も殺されたのか連れ去られたのか、次第にいなくなってしまって、周りがもう危ない、逃げろと言ってきた。彼は数カ国にビザの申請をしていて、たまたま最初に日本のビザが出て次にフランスのビザが出たそうです。母語がフランス語の方だったので本当はフランスのほうがよかったのでしょうが、本当に一刻を争う状況だったので、家や土地を売ってチケット代にして、小さい荷物とサンダルだけで日本に逃げてきました。
その頃ワールドカップ・カタール大会の開催期間中で、日本人がロッカーの清掃を行っていたという情報がアフリカのSNSでも出回っていたそうで、日本は親切な国だ、人権の国だという印象を持っていて。「日本に行けるなら、これでお前も生きていけるな」と周囲から祝福されて送り出されたんだそうです。だから、日本に着いてたまたま私たちに繋がり、最初お会いした時はすごく嬉しそうだったんです。でも日本では難民認定はほとんどされないという事実を伝えると、絶望していました。その時の顔を今でも覚えています。
出所:mi-mollet(ミモレ)、「ただ生きのびるために日本に逃れてくる外国人を知って欲しい【入管法改正・仮放免の現実】第一回」(2023年4月28日)、https://mi-mollet.com/articles/-/42231、2023年5月20日閲覧、太字やマーカーは筆者による強調
mi-mollet(ミモレ)
- 「ただ生きのびるために日本に逃れてくる外国人を知って欲しい【入管法改正・仮放免の現実】第一回」(2023年4月28日)、https://mi-mollet.com/articles/-/42231
- 「収入を絶たれ困窮するだけではない。働く尊厳を奪われる外国人の声【入管法改正・仮放免の現実】第二回」(2023年4月28日)、https://mi-mollet.com/articles/-/42232
- 「自分が断ったら、この人は死んでしまうかもしれない。公的制度の空白を埋める現場の限界【入管法改正・仮放免の現実】第三回」(2023年4月28日)、https://mi-mollet.com/articles/-/42233
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日本における難民を巡る問題について、2022年に劇場公開された映画『マイスモールランド』で正面から取り上げています。作中、川口市に住むクルド人の主人公の家族が難民申請を却下される場面があります。一人でも多くの人に見ていただきたい作品です。
こちらの動画でも、仮放免中の人が「難民認定申請」を却下される場面があります。必見です!
【全編】入管法改正の問題点は【報道特集】|TBS NEWS DIG (2023年4月23日)
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今日参加した「難民・移民フェス」でブースを構えていた外国人の方々には、仮放免中の人もいらっしゃるそうです。仮放免中の人は、働くことができない(!!)など、多くの行動制約があります。自由がないのです。映画『マイスモールランド』や上の TBS NEWS DIG の動画でも、そのことが描かれていますよ。
100を超える国・地域の人が住む市川市は、小さな地球とも言われています(言っているのは他ならぬ私ですが)。市川市(役所)は、本市は国際都市であるという認識を持っており、「多文化共生社会」を目指しています。「共生」とは、「共に生きること」です。
同じ地域で共に生きている外国人の方々の相談を受け、サポートをしている、行政書士の藤岡みち子さんには、約1年前の2022年5月28日に『第18回いちカイギ~リアルだよ!全員集合!~』にご登壇いただきました。
フリースタイル市川が、「多文化共生社会」をつくることに資するような活動をしているか、と言われると、Yes!とは答えづらいのですが、しかし、パートナーが外国にルーツを持っている、というメンバーが複数名いることもあり、日本に住む外国人を巡る問題には、フリスタ一同、関心を持っているのです。
遠くない将来、また、この話題を取り上げる構えです。