最近、市川市内でも、「期間限定店舗」、いわゆる「ポップアップストア」(あるいは「ポップアップショップ」)を目にする機会が増えています。増えています、というのは筆者の実感ですが、同じように感じている人は多いのではないでしょうか。
と、いうわけで、本稿では「ポップアップストア」の事例を約10個、紹介します。
- ポップアップストアとは何か?
- ポップアップストア発展の背景
- ザ・プレミアム・モルツ(サントリー)
- AEON TOWN POP-UP STORE!(イオンタウン)
- 「むすぶば」「たべるば」(シャポー市川)
- 余談:モノからコトへ
- 株式会社COUNTERWORKS(カウンターワークス)
- ファミリーマート×フジロックフェスティバル
- ヘラルボニー×日本橋三越本店
- COHINA 5th ANNIVERSARY THANKS TOUR (COHINA)
- 無印良品×@cosme
- JR総武線と都営新宿線の本八幡駅にもポップアップストアがあります
- YouTuberのアイテムやアニメ関連商品のポップアップストアが大人気
- おわりに~あの日、あの時、あの場所で~
ポップアップストアとは何か?
「ポップアップ」というのは、インターネット上でコンピュータ・スクリーンに現れる、あの、ポップアップウインドウの「ポップアップ」で、「突然現れる」、「飛び出す」という意味です。「ポップアップストア」は、「突然現れる店」なのですね。
今では世界中で見られるポップアップストアが、広まったきっかけには諸説あるようです。1990年代にアメリカの南カリフォルニアで人気が出て、世界に広まった、という説や、2000年前後にイギリスで人気を博して、それがヨーロッパ、アメリカなどに広まったという説があります。
SNS全盛の現代、ポップアップストアを目にした人が、こんなところに、こんな期間限定の店があったよ!という情報を、写真や動画を添えて発信するので、ポップアップストアはクチコミで広まりやすく、認知度アップに寄与するプロモーション手法と言えそうです。
ポップアップストア発展の背景
慶應大学・菊池一夫教授の「ポップアップストア研究の現状と課題」(「三田商学研究」2020年10月)によれば、ポップアップストアが発展した背景には、以下のようなことがあるといいます(内容が歪まない範囲で表現を変えています)。
①常設店舗は出店者の家賃負担が大きい
常設の店舗を構えるには大きな費用が発生します。期間限定のポップアップストアであれば、出店費用を抑制できます。常設店舗を出すのは不可能な大都会の一等地であっても、ポップアップストアであれば出店することも夢ではないかもしれません。
②不動産事業者が余剰スペースを有効活用したい
不動産事業者は、空きスペースがあるならば、家賃を安くしてでも出店してもらおうとしますが(長期契約による安定的な収入確保)、そうではなく、期間限定で貸し出すケースが増えています。長期で借りたい出店者がいないと、スペースが誰にも借りられない間、無収入になりますが、短期であれば借りたいという人に貸せば収入が得られます。
③ネット通販事業者が色々なことをしたい
ネット通販専業の事業者が、A.リアルな場で消費者との接点をもちたい、B.ネットを見ない人にもブランドの認知を高めたい、C.ネット通販につきものの、消費者が実物を確認できないことによる知覚リスク(「価格に見合った品質なのか?」「自分の好みにあう商品か?」)を低減したい etc.と言ったことをしたいと考え、ポップアップストアでそれを実現しようとしています。
また、これ以外に、
④出店者が貴重な消費者データを取得したい
場所を貸す側の設備によりますが、ポップアップストアの利用者(消費者)の行動データを取得し、それを出店者に提供するケースがあります。この場合、期間限定ではあっても、貴重な消費者の行動データ、購買データを取得でき、その後のマーケティングやCRM(コンシューマー・リレーションシップ・マネージメント)につなげることができます。
ということも、ポップアップストアが普及している背景要因の一つに挙げられます。
それでは、ポップアップストアの事例を見ていきましょう。
ザ・プレミアム・モルツ(サントリー)
サントリー株式会社は、2023年7月10日から、「ザ・プレミアム・モルツ」の新CMを放映しています。こに伴い、プロモーションの一環として、コロナ禍での利用者減により休業中の東海道新幹線ホーム上の店舗を活用して、7月10日から8月31日までポップアップショップを展開中です(東京駅、名古屋駅、新大阪駅)。新CMのイメージ・キャラクター、俳優の広瀬すずさんの写真があしらあれたショップは、一目見て「プレモル」とわかるデザインです。新幹線の中、プレモルを飲んでくつろぐシーンを想像しない方が難しいです(よ)ね!
株式会社ジェイアール東海パッセンジャーズ ニュースリリース(2023年7月10日)
東海道新幹線ホーム店舗を活用したサントリー「ザ・プレミアム・モルツ」のポップアップショップを7月10日より展開
https://www.jr-cp.co.jp/news/0710/
AEON TOWN POP-UP STORE!(イオンタウン)
イオンタウンでは、2023年7月14日に埼玉県のイオンタウン吉川美南で、オリジナルの強化段ボールコンテナを複数設置することによるポップアップストアのサービスを開始しました。店の骨組みは90%以上再生利用可能な素材の強化段ボールコンテナで、素材を無駄にしないことをアピールしています。
これまでもイオンタウン(主に住宅地にある小規模でオープン・タイプの近隣型ショッピングセンター)では、ポップアップストアの開設をしているケースがありましたが、新たに始めたサービスではコンテナを組んで売場を設営するので、設営や撤去が容易になると思われます。
イオンタウン公式Webサイト
イオンタウンではじめる、あたらしい店舗運営。AEON TOWN POP-UP STORE!
https://www.aeontown.co.jp/pop-up/
「むすぶば」「たべるば」(シャポー市川)
JR総武線市川駅直結の商業施設、シャポー市川に、2019年のリニューアルのタイミングで、マルシェや展示会など活動発信をメインとした「むすぶば」と、食をメインとした「たべるば」という、2つのコミュニティースペースを開設しました(株式会社グローカルポイントが営んでいます)。このうち、「たべるば」には、ポップアップストアが出店することも多く、市川市国府台にキャンパスを構える千葉商科大学の学生が出店したこともあります。
むすぶば たべるば
https://glocal-ichikawa.jp/
余談:モノからコトへ
イオンモールのケースや、「むすぶば」、「たべるば」のように、商業施設に、自由度が高い可変空間を設けるのは、「モノからコトへ」の潮流を表しているとも思います。その場で物販がおこなわれたとしても、ポップアップストアで買う場合は、常設店舗で購買するのとは違い、非日常性があり、単にモノを買う行為とは異なる何か(コト)が付いてきます。
株式会社COUNTERWORKS(カウンターワークス)
この会社は「SHOPCOUNTER(ショップカウンター)」という、ポップアップストアの出店場所探しのプラットフォームを運営しています。出店希望者は、このプラットフォーム上で、場所の検索、予約を行えます。利用者が増えているとのことですが、それだけ、ポップアップストアの出店は効果がある(出店期間の売上獲得、認知向上、新規顧客獲得、ファンづくりなどに資する)のでしょう。2023年3月末時点で2.7万超のブランドが利用し、利用者は、業種はアパレル、雑貨、食、生活サービスなど、多岐に渡っているそうです。
SHOPCOUNTER
https://shopcounter.jp/
ファミリーマート×フジロックフェスティバル
2023年7月28日、29日、30日の3日間、苗場スキー場で開催される「フジロックフェスティバル’23」とファミリーマートが最近注力しているPB商品のアパレル「コンビニウェア」がコラボレーションし、フジロック会場のポップアップストア内で3種類のコラボアイテムを販売するそうです。
株式会社ファミリーマート ニュースリリース(2023年7月13日)
コンビニエンスウェアと「FUJI ROCK FESTIVAL ’23」とのコラボレーションが実現!イベント会場でも役立つアイテム3種類を7月18日(火)発売!~会場にポップアップストアも出店~
https://www.family.co.jp/company/news_releases/2023/20230713_02.html
ヘラルボニー×日本橋三越本店
ヘラルボニーが日本橋三越本店に、2023年7月26日から8月8日までの14日間、ポップアップストア「異彩の百貨店2023夏」を展開します。ヘラルボニーは障害を持つアーティスト、作家の作品を販売しており、「異彩を放て」というキャッチコピーを掲げています。今回、ポップアップストア会場では、異彩作家の原画展示、販売や、豊富な「HERALBONY(ヘラルボニー)」の新作アイテムの展示、販売が行われます。作家によるライブペインティングも行われます。
ヘラルボニー公式Webサイト(2023年7月12日)
【NEWS】5周年を迎えるHERALBONY、日本橋三越本店にてポップアップストア「異彩の百貨店 2023 夏」を7/26(水)より開催
https://www.heralbony.jp/news/isai_no_hyakkaten
COHINA 5th ANNIVERSARY THANKS TOUR (COHINA)
小柄の女性向けのアパレルブランド「COHINA」は、今年(2023年)、ブランド立ち上げから5周年を迎えました。ネット通販専業の事業を行っていますが、全国の「コヒナ―さん」(COHINAブランドのファンの人たち)に直接会いに行き、これまでの感謝を伝えるという意図があるのだと推察します。今年に入り、全国各地でポップアップショップを展開するツアーを行っており、渋谷、梅田、名古屋、博多、表参道に続き、7月下旬に金沢、8月上旬に熊本に出向くそうです。
コヒナーさんはうれしいでしょうね。地元、または、その近くにお店を出してくれることで、ショップのスタッフさんと会話できますし、COHINA側も、実際にどのような人が自社ブランドを買ってくれているかを知ることができます。ネット通販だと、お客さんの声(意見)を知ることはできても、顔を見ることができないので、ポップアップショップ/ストアを出すことで、リアルな接点を持てることは大きな意義がありますね。
また、ネット通販のみで展開しているブランドゆえ、ポップアップショップの場で初めてCOHINAを知る人も少なくないでしょうから、これをきっかけに、認知を広げ、新規顧客の獲得にもつながります。
COHINA 5th ANNIVERSARY THANKS TOUR
https://cohina.net/collections/5th-pop-up-all
無印良品×@cosme
無印良品は、2023年年4月26日~5月2日に、原宿にある@cosme TOKYO ポップアップスペース1階に、スキンケアなど、約40のアイテムを展開、販売しました。スキンケアというカテゴリーに特化して、ポップアップストアを出したのです。会場には、植物が散りばめられ、ブランドの世界観が体験でき、無印良品専門のスタッフが肌質や悩みに合わせたスキンケア方法やアドバイスをしてくれたそうです。
最近、というか、かなり前から、無印良品の店舗では、エントランス付近にスキンケア商品を展開するケースがありますが、コロナ禍を経て、マスクを取って他者と対峙する機会が増えた人にとって、コロナ禍真っ只中の時期よりも、スキンケアの重要性が高まっていると言えます。そこで、無印良品では、スキンケアに関心が高い人が利用する、@cosmeの施設(店舗)内で、自社のスキンケアアイテムをアピールしようとしたのだと推察します。
@cosmeブログ(2023年4月17日)
無印良品のポップアップが期間限定で@cosme TOKYOに初登場!
https://www.cosme.net/beautist/article/2666927
JR総武線と都営新宿線の本八幡駅にもポップアップストアがあります
JR本八幡駅の改札外コンコースには、みどりの窓口がありましたが、2022年2月28日に閉鎖されました。その場所と、その隣の元・店舗(以前はITS’ DEMOがありましたが、2021年7月31日に閉店しました)だった場所は、現在、常設の施設や店舗はなく、ポップアップストアが出店する場所になっています。あくまでも暫定的な空間利用なのかなと思っていましたが、今や、ポップアップストア用スペースとして定着しています。ちなみに、そこからすぐ近く、シャポー本八幡内には「SWEETS BOX」があります。これはスイーツ販売店が期間限定で出店する場所で、シャポー市川、シャポー船橋、シャポーロコ平井にもあります。なお、西船橋には、「コレもう食べた?」があります。
シャポー本八幡の1階には、「匠の箱」というポップアップストア専用スペースもあります(クイーンズ伊勢丹を抜けて車道に出る手前)。
都営新宿線の本八幡駅改札外に、以前、コンビニエンスストア「生活彩家 都営本八幡駅前店」がありましたが、2020年11月30日に閉店しました。その跡地は、現在、ポップアップストア用のスペース担っています。
これまで、「都営期間限定shop本八幡店」という名称でしたが、投票の結果、新たな名称が「TOEI’S SELECTION」に決定したようです。
YouTuberのアイテムやアニメ関連商品のポップアップストアが大人気
最近では、YouTube配信者のポップアップストアや、アニメ関連商品を集めたポップアップストアが、大いに人気を博しているようです。市川市ではありませんが、市川市(本八幡駅や市川駅)から、遠くもない、秋葉原駅直結の駅商業施設アトレ2階には、ポップアップストア用の空間が確保されており、いつも何らかのアニメ関連商品のポップアップストアが出ています。以前は、帽子屋さんと時計屋さんがありましたが、それらが閉店した後、常設店舗が入るのではなく、イベントスペースと銘打たれた空間がある、というのが現在の状態です。
JR総武線本八幡駅の小さな改札口(下総中山方面)を出ると、ネイルケアのお店とドトールコーヒーがありますが、その近くに以前はスマホで撮った写真を現像したりでいる機械がありました。それらを扱う店舗が閉店し、機械も撤去されましたが、機械撤去後の空きスペースに、ポップアップストアが出ていたのを先日目にしました。
おわりに~あの日、あの時、あの場所で~
というわけで、ポップアップストア(あるいはポップアップショップ)の事例を10程度紹介しました。
飲食店の場合、間借り店もありますよね。メインで営業している飲食店の営業時間外や、休業日に、お店の設備を借りて店舗営業する方式です。設備を休眠させておくのはもったいない、それを誰かに貸すことで、貸し出す人は収入を得られ、借りる人は店舗営業を実現できます。
ポップアップストアや間借り店舗は今後も増えると思います。神出鬼没のお店とは、一期一会。偶然の出会いがその後の人生に何らかの作用をもたらす可能性があります。
あの日、あの時、あの場所で――
明日、ポップアップストアを見かけたら、ちょっと覗いてみてください。何か気になる商品と出会えるかもしれませんよ。あるいは、お店の販売員さんとの運命の出会いが…
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執筆日 2023年7月18日
公開日 2023年7月23日