【コラム】人口50万未満都市、市川市と松戸市

コラム

公開日 2022年12月25日
更新日 2023年1月11日

市川市民に、市川市のライバルの市はどこだと思いますか?と質問したら、多くの人が「船橋市!」と即答するのではないでしょうか。また、「浦安市」を挙げる人も多いと思われます。

今挙げた、船橋市、浦安市、そして市川市の3市は、いずれも、東京のベッドタウンであり、東京湾に面しているなど、共通点が少なくないのですが、人気のテーマパーク/アミューズメント施設があるという特徴も共通しています。

魅惑の遊戯場「大慶園(DAIKEIEN)」

浦安市には、東京ディズニーリゾート(東京ディズニーランド、東京ディズニーシー)が、船橋市にはアンデルセン公園があります。そして、市川市には、魅惑の遊戯場、大慶園(DAIKEIEN)があります。この3つの中で、最も夜のイメージが強いのが大慶園でしょう。

大慶園 公式Webサイト
http://www.daikeien.jp/

デイリーポータルZ
ヘリポートがあるゲームセンター(ほそいあやさんによる記事)
① https://dailyportalz.jp/b/2010/08/10/a/
② https://dailyportalz.jp/b/2010/08/10/a/2.htm
③ https://dailyportalz.jp/b/2010/08/10/a/3.htm
④ https://dailyportalz.jp/b/2010/08/10/a/4.htm

画像出所:大慶園公式Webサイトより(2022年12月25日閲覧)

おっと、今日はその話をするのではありません。

冒頭の話に戻りますが、市川市の人がいくら船橋市がライバルだと思っても、人口では大きく水をあけられているのです。少し前に公開したコラムの中で、千葉県の自治体別人口の上位4市を確認していますが、船橋市の人口は約65万人で、市川市の約50万人を上回ります。

市川市のライバルは松戸市(人口において)

人口だけに着目すると、市川市のライバルは松戸市だと言えます。

市川市と松戸市について、2020年10月の国勢調査人口と、それを基に毎月の人口動態(出生、死亡、流入、流出による増減)を反映させた人口の推移を確認してみます。

出所:千葉県毎月常住人口調査のデータ(https://www.pref.chiba.lg.jp/toukei/toukeidata/joujuu/index.html)を用いて作成

2020年10月の人口(住民票の有無によらない実績値)は、市川市が496,676人なのに対し、松戸市はこれより1,556人多い、498,232人でした。

2020年10月から2022年3月までの推移を見ると、進学や就職などで上京する人が市内に転居することによる人口増が反映される2021年4月を除き、ほとんどの月で前の月よりも人口が少なくなっていることがわかります。この時期は、現在も続いているコロナ禍の真っ只中で、これが理由となり、市川市でも松戸市でも人口流出が多かったものと考えられます。

ちなみに、2021年4月、そして、2022年の4月に注目すると、いずれの年とも、市川市の人口増加幅が松戸市のそれより大きいことがわかります。両市とも東京のベッドタウンですが、松戸市を走るJR常磐線よりも、市川市を走る東京メトロ東西線、JR総武線の方が、都心に出やすいため(その他、京成線や都営新宿線もあり、都内へのアクシビリティは高いです)、入社や転勤のタイミングで新たに住み始める人数は、市川市の方が松戸市より多いと考えられます。

さて、上のグラフから、以下の2つのことがわかります。

  • 2020年10月以降の2年強の間、松戸市の人口が市川市を上回っていたが、2022年4月にその差が縮まり、同年11月に市川市が逆転した
  • 両市とも人口が50万人に肉薄しているが、なかなか到達できずにいる

このグラフには数値を載せていないので、改めて数表で両市の人口の推移を確認します。

松戸市と市川市の月別人口の推移、人口の差、および、市川市の人口50万人に対する不足分

出所:千葉県毎月常住人口調査のデータ(https://www.pref.chiba.lg.jp/toukei/toukeidata/joujuu/index.html)を用いて作成

2020年10月に松戸市は前月から5,039人も増え、市川市では前月から1,164人も減少していますが、これは、2020年10月に、5年に1度の国勢調査が行われ、その調査結果により、両市の人口が明らかになったので、それが反映されたことが影響しています。

毎月の人口は、5年に1度の国勢調査の人口データを基に、各市における毎月の自然増減(+出生数-死亡数)、社会増減(+転入数-転出数)を加味して作られているデータなのです。

各市では住民基本台帳に基づく人口も公開していますが、なぜ国勢調査データに基づく人口を計算し、それを公表しているのでしょうか。それは、住民票をその市に移していないけれど市内に住んでいる人や、その市に住民票はあるけれど今はその市に住んでいない人の存在を考慮して、住民票の有無によらない、実際にその市にいる人口に近い数値だからです。

国勢調査で、(ほぼ)真の人口を調べるので、毎月人口はそのタイミング(2022年10月。その次は、2017年10月ということになります)で修正がなされます。

さて、本題に戻ります。グラフでは重なってしまって、どちらの市の人口が多いのかわかりづらかったと思いますが、数表をみると、2022年11月、つまり、今(2022年12月25日)から見て最新のデータでは、市川市の人口が496,922人、松戸市の人口が496,884人と、市川市が松戸市を逆転していることがわかります。

2020年9月までは市川市の人口の方が多く、同年10月から2022年10月までの25か月は松戸市の人口が多い状態でしたが、2022年4月以降は差が小さくなっており、ついに11月に市川市が逆転したわけです。

その差はわずか38人!

この、市川市と松戸市の人口のデッドヒートについて、取り上げている人がいるので次のブロックで紹介します。

(2023年1月11日加筆 ここから)

本日(2023年1月11日)、「千葉県毎月常住人口調査」(2022年12月28日更新版)を確認したところ、2022年12月1日現在の千葉県内各自治体の常住人口が掲載されていました。それによると、市川市と松戸市の人口は、それぞれ、以下の通りでした。

市川市 496,588 人 (前月から334人減少)
松戸市 496,954 人 (前月から70人増加)

松戸市が市川市を再逆転!その差は366人。

(2023年1月11日加筆 ここまで)

国際不動産エージェント・鈴木さんによる予想

「国際不動産エージェント」を名乗るYouTubeアカウントの方で、鈴木さんといいます。チャンネル登録者数は、2022年12月25日時点で8,780人もいます。

【市川vs松戸、人口50万目前の超絶デッドヒート!熱すぎる千葉県No.3都市対決】(鈴木ソロ343号)
2021年9月26日公開

この動画は非常に面白いので(松戸市のまちづくりに対する辛辣な意見と、今後の人口増の余地に関するコメントにも注目です)、本稿の話題に興味がある人であれば、ウォッチしてみると良いと思います。

この動画の中で、国際不動産エージェント・鈴木さんが説明していたことを少し紹介します。

  • 1971年に松戸市が市川市の人口を逆転
  • 2015年頃から市川市でタワーマンション建設や外国人の増加があった
  • 2017年に市川市が松戸市の人口を逆転
  • 2020年に国勢調査結果が反映された
  • 住民基本台帳に反映されない人口が、松戸市に5,100人いたことがわかった
  • 市川市も松戸市も少子高齢化で、出生数が死亡数を下回っている
  • 市川市も松戸市もベッドタウンで人口流入があることが人口増加に寄与していた
  • しかし、2020年春以降、コロナ禍でその流入が減った

鈴木氏は次のような予想をしていました(動画公開日は2021年9月26日)。

  • 市川市、松戸市ともに、一時的に人口50万人に到達する
  • 50万人到達は市川市が2023年4月、松戸市はそれより後
  • 2025年以降、市川市、松戸市ともに人口50万人を割り込み、その後、緩やかに人口減少が続く

国際不動産エージェント・鈴木さんの「読み」は面白いですね。

今後、両市は人口50万人に到達するのか、到達するとしたら、どちらの市が先なのか、今後も引き続き人口の推移をウォッチしていきます。

市川市の人口は、2020年6月の498,069人がピークでした。2022年7月に、497,077人に達しましたが、それ以降は下り坂になっています。国際不動産エージェント・鈴木さんは、来年、2023年4月に市川市の人口が50万人に達すると予想していましたが、果たしてどうなるでしょうか。

今回は市川市の人口を、松戸市と比較しながら見ていきましたが、世帯数に注目すると、市川市という自治体の特殊性がよくわかります。以前に書いたこちらの記事で詳しく見ているので、チェックしてみてください。

回転木馬のデッド・ヒート

市川市が松戸市と人口のデッドヒートを繰り広げていることを扱った本稿の最後に、この本を紹介します。といっても、人口統計学や人口社会学の本ではありません。定住人口でも交流人口でもない、関係人口について書かれた一冊でもありません。

村上春樹『回転木馬のデッドヒート』(講談社文庫)。この作品は阪神タイガースが日本一に輝いた1985年10月に単行本として発売されました。

『回転木馬のデッド・ヒート』目次

  • はじめに・回転木馬のデッド・ヒート
  • レーダーホーゼン
  • タクシーに乗った男
  • プールサイド
  • 今は亡き王女のための
  • 嘔吐1979
  • 雨やどり
  • 野球場
  • ハンティング・ナイフ

我々は我々自身をはめこむことのできる我々の人生という運行システムを所有しているが、そのシステムは同時にまた我々自身をも規定している。それはメリー・ゴーラウンドによく似ている。それは定まった場所を定まった速度で巡回しているだけのことなのだ。どこにも行かないし、降りることも乗りかえることもできない。誰をも抜かないし、誰にも抜かれない。しかしそれでも我々はそんな回転木馬の上で仮想の敵に向けて熾烈なデッド・ヒートをくりひろげているように見える。

出所:村上春樹「はじめに・回転木馬のデッドヒート」『回転木馬のデッド・ヒート』(講談社、1985年)

市川市の人口が松戸市のそれを先月上回ったことは、果たして市川市民にとって喜ばしいことなのでしょうか?デッドヒートに意味はあるのでしょうか。勝ちや負けに何か意味が?そもそも人口が多い方が勝ちで、少ない方が負けという考え方をしている人がいるのでしょうか?

松戸市や船橋市の人口が増え続けているにも関わらず、市川市の人口が増えていない、そういうことがあれば、それは市川市の施策に問題があるかもしれず、大いに議論すべきでしょう。でも、現実にはそういうことはありません。

期せずして、話題が再び人口に戻りましたが(回転木馬のように)、もう少しこの話を続けたいと思います。

市川市の全世帯のうち45%は単独世帯(一人暮らし世帯)

人口や世帯の話題で、私が注目すべきだと思っているのは、

  • 市川市の出生数が少ない、出生率が低いこと 詳しくはこちら
  • 市川市には一人暮らしの人(単独世帯)が多いこと 詳しくはこちら

という2つです。

単独世帯が多い自治体(2020年の国勢調査によると、市川市の全世帯のうち45.2%が単独世帯)である、という点に注目すると、一人暮らしの人たちが過ごしやすい地域づくりは行われているのか?ということが気になります。

普段は不自由を感じていないとしても、災害時などに近隣の人(市川市内の人)と情報交換をしたりできる人間関係は築けているか、日常の行動範囲の中で、自然にそういうつながりができるような、そんなコミュニティをつくれないものだろうか?

例えば、妙典のgate.で開催される「スナックえみり」のような場を、特に知り合いがいなくても、ひとりでふらっと訪れて、そこで自然に交流した近隣の人とつながりを持つ(縁ができる)ことが、一人暮らしのひとにとってはセーフティネットになりうるとも思います。

スナックを研究対象にしている学者もいます。法哲学の専門家で、東京都立大学の教授、谷口功一氏がその人で、読みやすい記事があるので紹介します。

デイリーポータルZ
学者が本気でスナックを研究してわかった10のこと(2017年7月5日)
https://dailyportalz.jp/kiji/170705200066

谷口功一氏は、図書館や公園などが「昼の公共圏」だとすると、スナックは「夜の公共圏」だと言います。そして、スナックは地方創生の鍵を握っていると力説、駅前の商店街が衰退しても社交の場として残るスナックを拠点に地域活性化を図れる、とも。

また、谷口氏によれば、スナックが、自宅と仕事場に続く、心の落ち着く第3の居場所となることで、個人が社会から孤立せず、心理的に安心できる状態(社会的包摂)となるということです。

出所:特定非営利活動法人フリースタイル市川公式Webサイト、「【スナックえみり】知らない人と出会い、知らない自分と出会う夜」(2022年11月13日)、https://fs-ichikawa.org/snack_emiri20221118/、2022年12月25日閲覧

約50万人もの人が暮らしている市川市の片隅で、今夜もペンを握り、言葉を綴っています。今日も読んでいただき、ありがとうございました。

次回、gate.で「スナックえみり」が開催されることがあれば、赴く予定なので、もしそこでお会いしたら、「記事、読みましたよ」とこっそりお知らせください。

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