執筆日 2023年4月15日
公開日 2023年4月16日
冒頭の写真は2023年3月31日(金)20時台に撮影したものです。
これを書いている今日から遡ること15日前、2023年3月31日、JR市川駅前にあった「学習交流施設」の「市本(いちぼん)」が、静かにその役割を終えました。
私は、幸運なことに、市本の最後を見届けることができたので、当日の様子を振り返ってみたいと思います。
市本とは何か?ということを、本稿に綴るには、私の体力、知力、というよりも、モチベーションが全く足りないので、それについては以下の3つの記事に譲ります。
1:市本が誕生した直後の2021年12月23日に開催された読書会の様子
2:市川文芸倶楽部の立ち上げの様子
3:寝耳に水だった市本終了の報を受けて嘆く私の様子
* * * * *
市本の最終日である3月31日(金)、終了する1時間ほど前の20時頃、JR市川駅に到着した私は、シャポーの「AOYAMA FLOWER MARKET」で選んだチューリップやカスミソウなどでつくってもらった花束を手に、市本に赴くと、最後を惜しむ人たちで溢れ返っていました。――この続きは、後掲します。
その前に、最終日の数日前に訪れた時のことを、少しだけ紹介しておきます。
市本終了の5日前――2023年3月26日(日)
4月9日(日)に市川駅の南口で行う予定だった――そして、実際に開催された――イヴェントに、司会として関わることになっていた私は、その2週間前に当たる3月26日(日)の夕刻、市川駅改札口外のコンコースで、イヴェントの主催者と立ち話という名の打ち合わせを行っていました。
後から知ったのですが、フリスタの代表理事の稲村さんが、話してる私たちふたりの近くを何度も通ったそうです。全く気付きませんでした!
打ち合わせを終え、主催者と別れた後、駅の北口にある市本を訪れました。カウンターで、スタッフの並木さんにご挨拶をし ――終わっちゃうんですね、そうなんですよ、とても残念です、そう言ってもらえると…。これまでお疲れさまでした、ありがとうございます――、二言三言の言葉を交わしました。
これまでの市本の記録をまとめた冊子をいただいたので、窓際の席に――といっても、全ての席が窓際なのですが――座って、カフェオレを飲みながら、それを読みました。毎日1冊の本を紹介してきた「いちにち、いちぼん」で取り上げた本のリスト、「市本ブックバトン」に登場した18人のゲストが選んだ本、読書会やレコード鑑賞会などのイヴェントなど。決して長くない期間ですが、濃い活動の記録がそこには刻まれていました。
壁には、市本の終了を知って訪れた人たちが書いたメッセージがたくさん貼られていました(写真を後掲)。私もカードを受け取り、ペンを走らせて、感謝の気持ちをしたためたことは言うまでもありません。
市本最後の夜――2023年3月31日(金)
3月26日(日)に市本を訪れ、並木さんとお話をし、メッセージ・カードに感謝の気持ちを書きはしましたが、できれば最終日にも足を運びたいと思っていました。
大小の壁を越えたり壊したりして、様々な条件を周到に整えることに成功した私は、万全を期して、40年間も続いた『タモリ倶楽部』の最終回が始まる約4時間前に、市本に到着、直前に購入した花束を、スタッフを代表して並木さんに受け取っていただいた後、購入したコーヒーを飲みながら、平台や棚の本を手に取ってはページをめくり、戻す、というワンセットの行為を延々繰り返しました。
市川駅南口図書館の館長、宮野さんと少しお話をしたり、本八幡botさんと閉鎖を嘆き合ったり、読書会を継承してくださることになったなかざわさんと言葉を交わしたりもして、終了までの時間を存分に満喫しました。
最後に何か一冊買いたいと思いましたが、その時間には、もう、買うことのできる本はかなり少なくなっていました。選べる本の中に、欲しいものが何冊かありましたが、5日前の来訪時に面白く読み、この日にも気になって手に取っていた、『見えないものを知覚する これからの生活哲学』という本を選び、これを買いました。
内容に惹かれたこともさることながら、この本が、市本が始まってから終わるまでの間(2021年11月3日~2023年3月31日)に発売されたことも、私が購入する決め手になりました。
『見えないものを知覚する これからの生活哲学』
阿部雅世 著、谷口真佐子 編
https://www.heibonsha.co.jp/book/b608392.html
21時になっても、まだ市本の室内にはたくさんの来訪者がおり、ここを出てしまうと、市本が終わってしまう、それを少しでも引き伸ばしたい、皆がそんな気持ちで名残惜しそうにしています。
しかし、さすがにもう閉めなきゃ、という時間になり、私を含む来訪者全員が退出しました。
そして、
遂に、その時が来ました。
慣れ親しんだ看板の灯が消され、市本は終了。
本八幡botさんと市川駅に向かい、総武線で本八幡駅に到着し、エスカレーターで下ったところで別れるまで、市本の終了を惜しむ言葉を交わしていました。
実に残念です。
市本さん、ありがとうございました!――メッセージ・カードより
最後に、市本が終了する5日前の3月26日(日)に、カードに記したメッセージを掲載します。
市本さん、ありがとうございました!
コロナ禍に市川駅前に現れた「市本」さんは、本好きな身、コーヒー好きな身からすると、これ以上望むべくもないサードプレイスでした。できてすぐに行われた読書会に参加したり、市川文芸倶楽部の会合に出たり、この場で本・読書にまつわる「コト」に加わることができたのは良い思い出です。
ノスタルジー鈴木出所:ノスタルジー鈴木「市本さん、ありがとうございました!」(2023年3月26日)
「市本」という空間がなくなっても、ここでまかれた種が、近い将来市川市内のいろいろな所で芽を出し、枝をのばし、花を開き、実をつけるはずです。
転んでもタダでは起きないというか、大いなる挑戦がもたらした影響は忘れずにいたいと思っています。
白か黒か、勝ちか負けか、ではないのが文化というもので、文化的な活動の起点となることをめざして立ち上がった「市本」さんの崇高な理念と、ここで活動されてきたスタッフの皆さんには、リスペクトと感謝の気持ちを示したいです。
紙の本が減っている時代に、それもコロナ禍に、ユニークな試みをした事実を忘れません。ありがとうございました!
市本は、もうありません。しかし、上のメッセージにもあるように、市本がきっかけとなって動き出した企画は、今も生き続けています。読書会然り、市川文芸倶楽部然り。他にも活動を継続するものがあると聞いています。それは、とても楽しみなことです。
私が今日参加した市川文芸俱楽部の活動再開ミーティングでは、この活動の目的が、「市川市を文芸を通じて盛り上げる」ということを確認しました。素晴らしいですね。市本がなくなったことは残念ですが、市本発の企画に関わることで、文芸、文学、文化、そういったものに、ここ市川市で力を注ぎたいと思う人が少なくないはずです。あの、壁一面に貼られたメッセージを目にしたら、そう思えます。
市本は消えど、市本によって心に灯された火は消えぬ――などとほざいてみたくなりました。
さようなら、市本!
ありがとう、市本!