【コラム】「i↑Step(あいステップ)」を忘れない。

コラム

執筆日 2023年5月18日
公開日 2023年5月21日
※冒頭の画像は「広報いちかわ」(2016年6月4日)からの引用(一部加工)です。

思わず、「ステップUP↑」を連想しました。

岡村靖幸さんおかむらちゃんの4枚目のアルバムにして名盤中の名盤『家庭教師』(1990年11月16日発売)の8曲目に収録されている「ステップUP↑」を。

『家庭教師』

  1. どぉなっちゃってんだよ
  2. カルアミルク
  3. (E)na
  4. 家庭教師
  5. あの娘ぼくがロングシュート決めたらどんな顔するだろう
  6. 祈りの季節
  7. ビスケットLove
  8. ステップUP↑
  9. ペンション

全9曲のうち、なんか様子がおかしいな、と感じる人が多いであろう名前を持つ曲が、4曲(1、3、5、8曲目)収録された怪作にして傑作です。

・・・失礼しました。そろそろ本題に入りますね。

* * * * *

本稿の本題、それは、ズバリ、「i↑Step」です。「あいステップ」と読みます。

これは何かというと、市川市が若者のために出会いの機会を提供することを目的として行っていた(既に終了した)婚活支援事業の愛称です、

  • i:結婚への最初の1歩となる出会いの場となりますように。
  • ↑Step:出会った2人が結婚まで一歩一歩ステップを進めていけますように。

以上、情報出所は「広報いちかわ」(2016年6月4日)より。

と、いうわけで、
「へ~、そんな事業やっていたんだね、市川市は」、あるいは、
「懐かしい!やっていたね、そういえば、市川市は婚活事業を」とか、さもなくば、
「i↑Stepのイヴェントで出会った人と交際したことがあったなぁ(別れたけど)」とか、
「i↑Stepのイヴェントで出会った人と交際したことがあったなぁ(その相手が今の配偶者)」、場合によっては、
「i↑Stepのイヴェントに参加したけれど、残念ながら交際することは叶わなかったんだ」
などと思うかもしれませんね。

記念すべき第1回目となる婚活イヴェントは、2016年8月6日(土)に行われました。どんなイヴェントだったと思いますか?

ヌ・アント!アイリンクの展望施設から「市川市民納涼花火大会」を眺望する、というものでした!45階から花火を見ることができるなんて、素敵ですね!

ちなみに、「i↑Step」のイヴェント参加条件は、25~45歳の独身者で、市川市在住・在勤などの条件はありませんでした。

事業開始から数か月後の「広報いちかわ」には、次のような文が載っていました。ここにもあるように、また、後掲する議会の答弁にもあるように、好評だったようですね。

昨年から開始した婚活支援事業「あいステップ」は、楽しく自然に交流を深められると好評で、予想以上の申し込み数と成果を上げています。今年も引き続き、結婚を希望する若い世代に出会いの場を提供します。

出所:広報いちかわ 2017年(平成29年)1月1日 No.1599

* * * * *

私の友人も婚活事業に参加して、見事めでたく成就しました。

出所:市川市公式Webサイト、市川市議会会議録(2018年2月28日)、https://www.city.ichikawa.lg.jp/cou01/kaigiroku1511000171.html、2023年5月1日閲覧

この発言は、2018年2月28日の市川市議会における、ある市川市議会議員のものです。この方の友人は「i↑Step」に参加して結婚したようですね(という理解で良いでしょうか。成就とあるので)。

なお、昨年(2022年)12月2日の市川市議会で、この事業の顛末てんまつについて質問があり、市川市の職員が次のような回答をしています。

 市川市婚活支援事業あいステップは、市川市まち・ひと・しごと創生総合戦略の策定を受け、平成28年度から令和元年度までの4年間で計17回開催し、延べ848名の方に御参加をいただきました。開催後のアンケートでは8割以上の方から満足したという感想をいただき、事業としてはおおむね好評であったと考えております。しかし、定性的な評価はできるものの、プライバシーへの配慮が必要なことから、何組のカップルが実際に結婚に至ったかといった定量的な評価が難しく、定住促進への効果が把握できない課題がございました。一方、婚活支援事業を実施した時期には、従来のお見合いや婚活パーティーなどの婚活事業への民間事業者の参入に加え、最近では、民間事業者においても利便性の高いインターネットを活用した様々なサービスが提供されております。

 令和3年の国立社会保障・人口問題研究所の第16回出生動向基本調査においても、異性の交際相手と知り合ったきっかけという質問で、男女ともに1割以上の人がインターネットで知り合ったと回答しております。このように、新たな出会いの創出に関しては、既に民間事業者が提供しているサービスを含め、SNS等を活用し、おのおのの生活様式や趣味など、多様な価値観に応じて相手を探す時代になっているものと考えております。このような背景から、婚活支援事業については令和元年度をもって終了したものでございます。

出所:市川市公式Webサイト、市川市議会会議録(2022年12月2日)、https://www.city.ichikawa.lg.jp/cou01/kaigiroku0000420743.html、2023年5月1日閲覧

何組のカップルがこの事業をきっかけに結婚したかはわからないということですが、先ほど、

「i↑Stepのイヴェントで出会った人と交際したことがあったなぁ(その相手が今の配偶者)」

と書いたように、この事業がきっかけで出会い、結婚に至り、市川市に住み、子を産んで育てている人たちが何組かいるわけで、少なくともその人たちにとっては、この事業がなければ――あの日、あの時、あの場所で、出逢っていなければ――全く違った人生になっていた可能性が高いのですよね。

事業をどのように評価すればよいか、私は詳しくないのでわかりません。費用対効果で評価すべきという考え方ももちろんあるでしょう。効果を定量的に測定できない、しづらいことは、事業にはなりにくいとも思えますし、必ずしもそうではないようにも思えます。

少し前に、「市本いちぼん」の閉鎖が突如発表され(それはまさに青天の霹靂でした)、私などは大いに嘆き悲しみました。

本をテーマにした講演会が開かれるなどユニークな取り組みで注目を集めていましたが、市は、十分な効果が得られていないとして来月で廃止することを決めました。
施設の運営は年間およそ3000万円で民間に委託していますが、利用者が1日あたり20人ほどインスタグラムのフォロワー数が1300人ほどで高額な費用に見合っていないと判断したということです。
市川市は子育て支援として小中学校の給食費を新年度にかけて全額、無償にする取り組みなどを進めていて、財源を確保するため事業の見直しを進めていました。
市川市の田中甲市長は、「魅力的な取り組みだったが、市内には図書館もあるのでご理解をいただきたい。今後は、市民生活に直結する施設を作りたい」と述べています。

出所:NHK WEB(千葉 NEWS WEB)、「千葉 市川市 本を通じた学びの施設『市本』 1年余で廃止へ」(2023年2月9日)、https://www3.nhk.or.jp/lnews/chiba/20230209/1080019937.html、2023年3月22日閲覧、太字は筆者

「市本」の閉鎖理由は、費用に対して効果が小さいことでした。

しかし、この事業がまいた種が、そこかしこで芽吹き、花を咲かせるということが現実に起こっています。終了した婚活事業ですが、それがきっかけとなって人生が大きく動き出した人たちも確実にいるのだ、ということを思った時、ああ、「市本」にも似たようなことがあるかもな、と思ったのでした。

思わぬところに着地しました。そもそも、この文章を岡村靖幸さんのソングから始めるつもりも毛頭ありませんでした。思わぬ始点から、思わぬ終点へ。不思議なものです。それもまた人生です。

「i↑Step」で出会って結婚した方で、これを読んでいる人がいたら、

「末永くお幸せに!市川市で出会ってくれてありがとうございます!」

と伝えたいです。もし、今、市川市外に住んでいても、たまに市川市に遊びに来てくださいね。案内しますよ、市内のおもしろいところ!昨年から始まったシェアサイクルで市内を巡るのもたのしいですよ!

それでは、また。ごきげんよう!

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