【コラム】高校野球にも創造的破壊による大規模改革が必要

コラム

(序章)千葉商科大学で創造的破壊!大規模改革へ

市川市の国府台にキャンパスを置く千葉商科大学は、フリースタイル市川も大変お世話になっている大学で、先日、大規模な組織改革を行うことに関して会見を行った時の様子が多くのメディアで報じられたことも記憶に新しいですね。

スポーツ報知公式Webサイト(2023年8月3日)
千葉商大が「創造的破壊」による全学改組 常見陽平准教授「スラムダンク風に言うと『山王戦』」…教員の43%が人事異動
https://hochi.news/articles/20230803-OHT1T51081.html?page=1

東京新聞公式Webサイト(2023年8月4日)
千葉商大が「大規模改革」 教員43%が異動 25年度 4学部6学科体制に
https://www.tokyo-np.co.jp/article/267775

千葉商科大学付属高等学校の野球部が大躍進

その千葉商科大学の付属高等学校の野球部が、この夏、ハイレベルとして知られる千葉県の高校野球(硬式)の予選を、ノーシードから勝ち上がり、県ベスト4まで進んだのです。あと2勝で甲子園に行けたのです。

好成績を収めた部員の皆さん、おめでとうございます!

夏の風物詩、高校野球については、少し前にも(フードバンクについて綴った記事の中で)文章を書いています。その記事から引用します。

先日、高校野球の夏の千葉予選大会が行われ、市川市の千葉商科大学付属高等学校の野球部がノーシードから勝利を重ねて、ベスト4まで進みました。

1980年 ベスト8
1987年 ベスト8
1990年 ベスト4
1993年 ベスト8
1999年 ベスト8
2015年 ベスト8
2018年 ベスト8
2023年 ベスト4

おめでとうございます!選手の皆さんのプレイは素晴らしいものです!

そして、千葉日報さんのような県内メディアでは、各高校の試合結果を報じ、健闘を称えます。

一方で、各メディアでは、連日の猛暑に注意するように呼び掛けてもいます。不要な外出は避けましょう、と。

では、この炎天下でベースボールの試合をすることは、果たして健康に悪いことではないのでしょうか――という問題提起を、メディアはしているかというと、あまり目にすることはありません。

大手メディアでも同じです。

先程、NHKの報道を例に、共助が足りない、もっと共助を、と呼びかける一方で、公助を手厚く、とは書かない、と、批判しました。

高校野球を巡っても、試合結果や選手の活躍、汗と涙の美談を報じ、同じ会社が、炎天下に出るのは危険だと日々訴えているものの、高校野球を真夏の野外に連日行うことに対する疑問を呈することは少ないです。私はこれを批判せざるを得ません。

野球というスポーツが好きでも、高校野球のシステムは良くないから批判する、ということはありうる態度です。ジャニーズのグループや曲は好きでも、ジャニー喜多川さんの性加害問題について事務所の対応などを批判する、という態度も当然それは矛盾なく成立します。

出所:特定非営利活動法人フリースタイル市川公式Webサイト「【フードバンク】メディアは共助を呼び掛ける「だけ」で良いのか?(いや、良いはずはない)」(2023年7月31日)、https://fs-ichikawa.org/help20230731/、2023年8月17日閲覧

トーナメントという方式、補欠という存在は、部活動にふさわしくはない?

この夏の高校野球千葉県予選で、千葉商科大学付属高校の野球部は、

  • 7月9日
  • 7月12日
  • 7月15日
  • 7月17日
  • 7月19日
  • 7月21日
  • 7月25日

に、計7試合行いました。7試合も行えたことは、出場した選手にとっては本当に貴重な経験になったと思います。一方で、短期間にこれだけ多くの試合をこなさなくてはいけない、それも、歴史に残る暑さだった2023年7月の炎天下で、という事実を前にすると、冒頭の画像、岩波ブックレットのタイトル、『真夏の甲子園はいらない』を声高に主張したい気持ちも分かります。

ちなみに、このブックレットには、副題に「問題だらけの高校野球」とある通り、また、表紙の下部には「理由は猛暑だけじゃない!」とあるように、高校野球を巡る多くの問題が挙げられているので、興味がある人はチェックしてみてください。

岩波ブックレットは、昨年(2022年)5月31日に惜しまれつつ閉店してしまった、ときわ書房本八幡店さんで販売されていたな、と、今、この記事を書きながら思い出しました。

ちなみに、第105回全国高等学校野球選手権の千葉大会のトーナメント表https://chiba.hsbflash.jp/tournament.phpを眺めながら、出場した148校が、何試合行ったのかを目視で数えてみたところ、次のような結果になりました。

  • 1試合:71校
  • 2試合:44校
  • 3試合:16校
  • 4試合:7校
  • 5試合:6校
  • 6試合:1校
  • 7試合:3校

中央値は2試合、平均値は1.97試合です。

千葉商科大学付属高校は、3校しかない7試合行った学校のひとつです。ちなみに、現在、甲子園球場で開催されている全国大会に出場していた、千葉県代表の専修大学松戸高等学校は、土浦日本大学高等学校と対戦し、惜しくも逆転負けを喫しました。千葉県予選7試合、全国大会で2試合、計9試合、お疲れ様でした!

ところで、高校生が部活に入る理由、目的は様々でしょう。また、目指す目標も様々でしょう。野球のようにプロ選手になる道があるスポーツの場合は、それを目標にする人もいます。しかし、そのようなハイレベルな選手は一部で、多くはそのスポーツを仲間と楽しみたい、試合をしたい、上達したい、という理由で部活動を行っているのではないでしょうか。試合といっても、練習試合と公式戦があり、公式戦に出場することを目標とする人も多いと思います。その公式戦が(運営側の都合、つまり、大人たちの都合で)トーナメント形式で行われると、上述のように、約半数の高校は1試合しかできません。試合数が少ない学校の場合、出場できない選手もいるでしょう。高校野球の場合、全国では、約4千校が予選に出場し、そのうち約2千校は1試合しかおこなえないとのことです。

部活動なので、なるべく多くの高校の多くの部員が、多くの公式戦を経験できるようなルールや仕組みを大人が考えるべきだ、と、ブックレットの編著者のひとりでもある玉木正之さんは主張し続けています。

先程紹介した岩波ブックレットでは、勝ち進むことで多くの試合をおこなう強豪校であっても、3年間ずっと「補欠」で、1度も公式戦に出場できない、という人がいることを問題視してもいます。

メディアが高校生のスポーツ大会を主催するのはなぜOKなのか?

高校野球が抱えた問題をメディアが指摘することが少ない(と私には感じられる)理由として考えられることは、ジャーナリズムの担い手である、朝日新聞や毎日新聞というマスメディアが、高校生のスポーツ大会を主催していることで、これにより、メディアがジャーナリズムとして真っ当な判断ができないから、という、これも玉木さんの意見ですが、このようなことがあると思います。

玉木正之さんのコラムから、高校野球に関わる大人たちに問題があると主張している箇所を引用します。

大人たちが試合を楽しみ、試合に勝つことを競い合い、大会を盛りあげたい…と、大人たちが願っているから問題の本質――高校生の健康や勉学――という一番優先すべき大事なものが見えなくなっているのだ。

出所:カメラータ・ディ・タマキ「高校野球問題の本質を考えよ」(2014年12月17日)、http://www.tamakimasayuki.com/sport/bn_245.htm、2023年8月17日閲覧

ちなみに、玉木さんは岩波ブックレットの中で、東京オリンピックで、朝日、読売、毎日、日経、産経、北海道という大手新聞社がスポンサーとなったことを多くのジャーナリストが批判したと書いています。同じように、高校野球のあり方を再考すべき、という論調で、現在の実施方法の問題を指摘し、改善を提案するジャーナリストが多ければ良いと思います。なぜならば、現在の実施方法には問題が多いからです。

(余談)市川市で行われた高校野球部の試合で歴史が動いた!~サード長嶋の誕生~

1953年6月14日、市川市内のある場所で、高校の野球部同士の試合が行われました。その試合には、長嶋茂雄選手が出場していたのですが、大活躍と並んで失敗(エラー、三振、三角ベース事件など)も絵になる長嶋選手らしい「エラー」にまつわるエピソードが残されています。その「エラー」がなくても、長嶋選手は後にプロ野球選手となり、歴史に名を残す活躍をした可能性はありますが、しかし、「サード長嶋」は誕生しなかったかもしれないのです。

そのことについては、「市川ちょっと話」というシリーズの第1回で詳しく書いているので、読んでみてください。

というわけで、8月の風を両手で抱きしめ※1たいところではありますが、この熱風を抱きかかえると、流れ落ちる川※2ならぬ流れ落ちる汗の量が半端ないことになりそうなので、抱きしめることはしないでおきます。

最後に関連記事を1つ紹介しましょう。

それでは、健康第一で夏をお過ごしください!だるい、やる気が出ない、そんな時は無理せずに。水を飲み、栄養を摂りましょう。面白いドラマ※3でも見て気晴らしをしましょう。

* * * * *

〈注釈〉

※1、※2:いずれも、プリンセスプリンセス「世界でいちばん熱い夏」より。

※3:私はここ数日で、昨年放送されたドラマ『エルピス――希望、あるいは災い――』を全10話一気に鑑賞しました。また、現在放送中の『こっち向いてよ向井くん』というドラマも、ひょんとことから見始めています。