【コラム】寝に帰るだけの「ベッドタウン」からの脱却

コラム

フリースタイル市川(千葉県市川市で「まちづくり」を行っているNPO)のWebサイトに、ようこそ、いらっしゃいませ。

早速ですが、次の2文を読んでみてください。

東京のベッドタウンとして繁栄してきた市川市は、現在、「市内で楽しむ場所がない」「家があるだけでまちに愛着がない」「職場も買い物する場も遊ぶ場もすべて市外」という住民が少なくなく、『寝に帰るだけのまち』になってしまいました。

『寝に帰るだけのまち』としての市川市は、「市民間、世代間、市民と学生におけるコミュニティの不足」「公共不動産の利活用の必要性」「都市型産業の不足」「寝に帰るだけのまち」といった、様々な課題を抱えています。

出所:ここに書いてしまうとバレてしまうので出所は後でお伝えします。

読んでみて、どのような感想を持ちますか?

東京のベッドタウンとして繁栄してきた市川市の課題として、次のようなことを挙げています。

  • 市内で楽しむ場所がないという住民が少なくない
  • 家があるだけでまちに愛着がないという住民が少なくない
  • 職場も買い物する場も遊ぶ場もすべて市外という住民が少なくない
  • 寝に帰るだけのまちになってしまった
  • 市民間、世代間、市民と学生におけるコミュニティの不足

すべて同意するという人もいれば、「そんなことはないさ!」※1と思っている人もいることでしょう。私はどちらかというと、「そんなはずはないさ!」派ですね。でも、それは、市川市でまちづくりを行うNPOで理事を務めているという立場であり、市川市の埋もれている魅力の欠片を発掘し、付着している泥を洗い流し、丁寧に磨き上げ、様々な角度から※2光にかざしてみる、という行為を習慣的にしていることも影響していると思います。

さて、実は、先ほど読んでみてくださいと言って(書いて)、提示した2文ですが、あんな文はこの世に存在しません。厳密には、先ほど私が書いたので存在はしていますが、私が書くまでは存在しませんでした。実際に存在していたのは、以下の2文でした。

東京のベッドタウンとして繁栄してきた草加市は、現在、「市内で楽しむ場所がない」「家があるだけでまちに愛着がない」「職場も買い物する場も遊ぶ場もすべて市外」という住民が少なくなく、『寝に帰るだけのまち』になってしまいました。

『寝に帰るだけのまち』としての草加市は、「市民間、世代間、市民と学生におけるコミュニティの不足」「公共不動産の利活用の必要性」「都市型産業の不足」「寝に帰るだけのまち」といった、様々な課題を抱えています。

出所:埼玉県草加市公式WEBサイト「そうかリノベーションまちづくり事業とは」(2023年2月14日更新)https://www.city.soka.saitama.jp/cont/s1403/020/010/050/PAGE000000000000043247.html、2024年1月19日閲覧、緑色太字は筆者

実は、埼玉県の草加そうか市の公式WEBサイトに掲載されている2文なのでした。冒頭の2文は、草加の2字を市川に置き換えたものです。でも、市川市にもかなりの部分が当てはまっているとは思いませんか?

さて、こうした課題を抱えている草加市では、2015年度(平成27年度)から、「そうかリノベーションまちづくり」をスタートしました。

「そうかリノベーションまちづくり」の特徴は次の通りです。

まちが抱える深刻な都市・地域経営課題を解決し、地域を再生させるために、「現代版家守」と呼ばれる民間のまちづくり会社(家守会社)が主導するかたちで、補助金に頼らず、自らの資金で遊休不動産をリノベーションし、再生することで都市型産業の集積を行い、新しいまちのコンテンツ(産業)を生み出し、雇用を創出させる取組みです。

出所:埼玉県草加市公式WEBサイト「そうかリノベーションまちづくり事業とは」(2023年2月14日更新)https://www.city.soka.saitama.jp/cont/s1403/020/010/050/PAGE000000000000043247.html、2024年1月19日閲覧

遊休不動産、すなわち、空き家、空き店舗。これを民間のまちづくり会社が中心となってリノベーションし、新たな価値を創出し、新たな風を吹き込むことで、まちを盛り上げようという試みですね。エクセレント!スクラップ&ビルド(そこにあるものを破壊して除去して更地にした後、そこに新しい建物を築く)による再開発とは全然違うやり方です。

そういえば、本稿が公開される2024年1月21日の前日、1月20日に、NHK総合テレビで『まちづくりの未来 〜人口減少時代の再開発は〜』と題された番組が放送されました。見ましたか?見逃しちゃいましたか?見逃してくれよ※3?再放送も予定されていますよ(1月24日、午前0:35~1:31)。

人口減少が進む時代、私たちはどんな「まちづくり」の未来を描けばいいのか。いま、東京や福岡といった都市部だけでなく福井など地方都市でも、高層ビル建設を柱にした再開発が急速に進む。しかし、想定外の財政リスクや地域の個性を奪うという批判に直面するケースも。番組では、まちの個性を生かしながら若い世代の呼び込みに成功している自治体なども紹介しながら、縮小社会における豊かな暮らしとは何か、識者とともに考える。

出所:NHK公式WEBサイト、NHKスペシャル、「まちづくりの未来 〜人口減少時代の再開発は〜」https://www.nhk.jp/p/special/ts/2NY2QQLPM3/episode/te/QNYKVX1M54/、2024年1月19日閲覧

さて、「そうかリノベーションまちづくり事業とは」のWEBページによると、更新日が2023年2月14日なので、約1年前の時点で、ということですが、これまでに10の新規ビジネスが誕生したそうです。同WEBページ(https://www.city.soka.saitama.jp/cont/s1403/020/010/050/PAGE000000000000043247.html)より引用します。

(引用ここから)

野菜とお酒のバル スバル
草加市住吉1-3-26-1F
野菜料理を楽しめるバル。
草加産野菜を中心に地場のおいしい野菜料理を提供。
メニューは入荷した野菜次第で変化する。まちを照らす提灯のような場所。

キッチンスタジオ アオイエ(株式会社aoie)
草加市高砂2-20-7
『食卓を共にすること』に重きを置いた料理教室。
繋がりや交流を意識した料理教室やイベントを運営。
レンタルスペースとして借りることもできる。

洋食屋 a Table(アターブル)
草加市住吉1-11-66
都内のホテルで20年以上修行したシェフによる子連れ家族でも楽しめる王道を極めた本格洋食屋さん。
こだわりのデミグラスソースをベースにしたハンバーグやオムライスは絶品。

シェアアトリエつなぐば(つなぐば家守舎株式会社)
草加市八幡町935-4
1階は子連れで働けるシェアアトリエと子どもスペースのあるカフェ。
2階は木のおもちゃと託児室、美容室、設計事務所、展示室を併設。目の前には公園が広がる。
「仕事につながる/母親につながる/地域につながる」の3つを軸に運営している。

ecoma coffee(株式会社カフェイネイチュー)
草加市住吉1-13-2
スペシャルティコーヒーの専門店。産地にもこだわり選び抜いた豆を丁寧に自家焙煎している。
店主夫婦の人柄の良さと笑顔が魅力で近所の常連さんも多く、地域の方と挨拶を交わす様子がよく見られる。

SOSOPARK(株式会社奏草舎)
草加市高砂2-20-35
常設店にコロネカフェ「SOSOCAFE」、焼売と焼鳥の「つつみ家 なすび」、
そしてキッチンカーやポップアップストアが日々入れ替わる参画スペースが併設。
人々がふらっと立ち寄れる小さな公園のような空間。

Coworking space Torino’s(ネスティング株式会社)
草加市高砂1-10-3-1
現役の行政書士が運営する草加市初のコワーキングスペース。
地域の人が新たに何かを始めようとする時に、仲間と出会え、気軽に相談できる場所。

おーぐぱん
草加市神明1-2-31
かつて地域の人が集まる店があった場所に、パン屋として新しい命を吹き込む。
目指すのは、人と人を繋ぐ「まちのパン屋さん」。
埼玉県産小麦ハナマンテンを使用したパンもあり、砂糖は本和香糖、ビートグラニュー糖を使うなど、素材にもこだわったパン作りをしている。

PAKAN
草加市中央2-2-20-002
やさしいおやつとコーヒーを提供するカフェ。
放課後に、仕事帰りに、ちょっと一息休憩に。
あらゆる年代の地域の人が自然と集まるような場所。

草加宿 今様本陣(NPO法人今様草加宿)
草加市神明1-6-18
1階には草加の名産品を中心に新鮮な野菜等を扱う物産店。2階はワークショップや会議等に使えるレンタルスペース。
旧道と草加松原の結節点から歴史と伝統を紡ぐ場所。

(引用ここまで)

それぞれ、とても興味深いものばかりです。一度、フリースタイル市川のメンバーで草加市に視察ツアーに繰り出してみたいですね。バルでお酒を飲むもヨシ、カフェでコーヒーを飲むもヨシ、パン屋さんで買ったパンをムシャりながら(むろん、ストリートで!)まち歩きを楽しむもヨシ。

市川市でも空き家(空き店舗)の物件をリノベーションした例があります。国府台共栄会で営業していた精肉店「肉のこばやし」の味のある(などという陳腐な表現で片付けたくないほど、歴史の厚み、人の営みが染み込んだ)建築の要素をなるべく生かして、リノベーションし、ギャラリー併設シェアハウス「アトリエ029」として再生した件は、もっと広く知ってもらいたいです。

冒頭の画像は、「そうかリノベーションまちづくり」公式ロゴを加工したものです。ちなみに、草加市の木「マツ」を連想させるようなデザインにしているそうです。市川市の木は「クロマツ」ですが、マツを市の木にしているベッドタウンには、類似した課題がある・・・というのは、さすがに言いすぎですね。素直にI’mSorry※4

それでは、また、お目にかかりましょう。フリースタイル市川の鈴木雄高(a.k.a.ノスタルジー鈴木)でした。See Ya !

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〈注釈と言う名の音楽紹介〉

※1:「そんなことはないさ!」は、今から29年前の1995年に発売された福山雅治氏の初マキシシングル『HELLO』の冒頭の歌詞の引用です。あれ?冒頭ってそんな歌詞だった?と半信半疑タイガースな方は、この動画でチェックしてみてください。

※2:「様々な角度から」は、Mr.Childrenが、今から30年前の1994年に発売したシングル『innocent world』(初期案では『innocent blue』)の2番の歌詞へのオマージュです。

※3:「見逃してくれよ」は、小泉今日子氏が34年前の1990年に発売したシングル『見逃してくれよ!』のタイトルとサビの歌詞の引用です。

※4:「素直にI’mSorry」は、チェッカーズが36年前の1988年に発売したシングル『素直にI’mSorry』のタイトルとサビの歌詞の引用です。

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執筆日 2024年1月18日、19日
公開日 2024年1月21日