本稿は、2023年4月16日に公開したコラム「『安全・安心』?『安心・安全』?」の続編です。
今から数時間前(2023年9月20日)、市川市公式Webサイトを閲覧していたところ、「第2次市川市住生活基本計画(素案)について」という記事が公開されていることを知りました。公開日は2023年9月20日なので、公開直後に記事の存在に気付いたわけです。
市川市公式Webサイト
第2次市川市住生活基本計画(素案)について(更新日: 2023年9月20日)
https://www.city.ichikawa.lg.jp/cit01/0000437335.html
このWebページには、次のような説明が掲載されています。
少子高齢化の進展、DXやコロナ禍を契機とする新たな生活スタイルの浸透、災害リスクの高まり、脱炭素化の動き等の社会変化に対応し、魅力ある住まいづくりの推進を図るため、「第2次市川市住生活基本計画」の作成を進めています。 この案をお知らせするとともに、広く意見の募集を行います。
出所:市川市公式Webサイト「第2次市川市住生活基本計画(素案)について」(更新日: 2023年9月20日)https://www.city.ichikawa.lg.jp/cit01/0000437335.html、2023年9月20日閲覧
いわゆる「パブリックコメント」(通称パブコメ)ですね。パブコメは、市川市が何らかの条例や計画を策定する際に、案を公開して、意見を募集し、寄せられた意見を考慮しながら案を決定する制度です。ちなみに、ラブコメは「ラブ・コメディ」の略です。市川市はラブコメの募集はしていません。
早速、『第2次市川市住生活基本計画(素案)』の内容を見てみました。
まだ「素案」なので、表記の揺れはいくつかありました(例:「障害」と「障がい」、「続けられる」と「つづけられる」)が、それを指摘するのはヤゴ、否、野暮というもの。
今回は、ここに注目してみました。
- 〈安心安全に住み続けられるいちかわの住まい〉
- 〈安全で安心して住みつづけられる いちかわの住まい〉
- 〈安全・安心な住環境の形成〉
上から順に、目次の1ページ前に記された【基本理念】、P19に記された【基本理念】、P37に記された【基本目標4】です。
1つ目と3つ目、「安心安全」と「安全・安心」は、「安全」と「安心」という2語を連結していますが、「・」の有無が異なり、2語の順も異なります。あえて別の表現にしているのか、本来はどちらかに統一すべきところ、統一しそびれただけなのか、私にはわかりません。
なお、1つ目と2つ目はともに【基本理念】ですが、「安全」が先か、「安心」が先か、2語の順番が異なります。
本稿の前編にあたるコラム「『安全・安心』?『安心・安全』?」で、詳しく、というか、しつこく、「安全」と「安心」をつないでイチゴのように、否、一語のようにすることを批判しているので、未読の方は是非読んでみてください。
1つ目の「安心安全に」は、かなり変です。3つ目も、まぁ変です。2つ目は、かなりマトモです。「環境が安全だから、人が安心して、住みつづけられる」という意味に受け取れるからです。
1つの資料の中に、今取り上げた3つの似て非なる表現が同居しているのは、「素案」段階であるからで、いずれこれを統一していくのだろうとは思います。
が、前編で指摘したように、
- 安全・安心
- 安全安心
- 安心・安全
- 安心安全
の、いずれの表現も使わない方が良いと私は思います。
ちなみに、Googleトレンドで「安全・安心」のGoogle検索件数の推移を見てみたところ、下図のようになりました(Googleトレンド出力結果を加工)。2004年からの長期間で最も検索件数が多かったのは2021年11月でしたが、このピーク時の件数を100とすると、2005年11月に75を記録するなど、この語はかなり前から多く検索されていることがわかります。
いくら一部の人が、このような言葉の使い方は間違っていると主張しても、行政文書内などであたりまえのように用いられることで、どんどん普及し、多くの人が目にし耳にする言葉になっています。いずれ、辞書に載るかもしれません。そうなったら嫌ですね。
* * * * *
ところで、肝心の『第2次市川市住生活基本計画』における主な施策は、以下の5つです(出所:『第2次市川市住生活基本計画(素案)の概要』)。
❶ (災害の頻発・激甚化を踏まえ) 安全な住まいと市街地の形成
全国的に水害・土砂災害といった自然災害の頻発・激甚化、大規模地震の発生リスクが指摘される中、「住宅の安全性」は、市民の関心が特に高い項目となっている。
このことから、既存住宅の耐震改修や浸水・火災対策に係る支援、崖地の崩壊対策、治水・排水対策の推進、既成市街地の更新、ハザードエリアにおける開発抑制など総合的な取り組みにより、住宅及び市街地の防災性向上を図っていく。
❷ (カーボンニュートラル実現に向け) 環境性能に優れた良質な住まいづくり
災害が激甚化する背景には、温室効果ガス排出とそれに起因する地球温暖化がある。住宅分野において、二酸化酸素の排出量を抑制するためには、世代を超えて取引されうる良質な住宅ストックの形成や創エネ/省エネ設備の導入が重要となるものの、本市住宅の省エネ設備設置率や中古住宅の流通割合は比較的低い水準である。
このことから、長期優良住宅・低炭素建築物の周知・啓発、既存住宅等の省エネ化や創エネ設備設置に係る支援、住宅等の緑化に係る支援などにより、環境性能に優れた良質な住まいづくりを進める。
❸ 高齢者等が安心して暮らせる住まいづくり
高齢者数は増加傾向にあるところ、本市の高齢者の居住する住宅は、バリアフリー化率が低いことに加え、断熱性不足が惹き起こすヒートショックなどの健康被害が懸念されている。
また、自宅で住み続けることが困難になった場合でも、適切なサービス等が受けられ、安心して暮らすことができる高齢者向け住まいの整備とそこへの円滑な住み替えが求められている。
このことから、既存住宅のバリアフリー化等に係る支援、リフォームに関する相談窓口の開設、高齢者向け住まいの適切な供給等、高齢者向け住まいに関する情報提供などにより、高齢者等が安心して暮らし続けられる住まいづくりを進める。
❹ 子育てしやすい住まいづくり×既存戸建住宅(空き家)の利活用
本市で子育て世帯の市外転出が見られる理由として、地価・家賃水準が高く、住宅が狭小であることが挙げられる。また、住宅ストック数は世帯数を上回り、空き家は増加傾向にある。
このことから、新築と比較して安価な既存住宅(空き家)の活用を図りつつ、子育てのしやすさに配慮したリフォーム支援や住み替え支援、三世代同居・近居支援策の検討などを通じて、子育てしやすい住環境の形成を誘導する。また、空き家の利活用に際しては、関連団体との連携強化を図っていく。
❺ (GX、新たな日常への対応を踏まえ) 緑の潤いある住環境の形成
GX、グリーンインフラの活用といった考えが全国的に広まりつつあるが、本市では市民一人当たりの公園面積が比較的小さく、生産緑地は減少傾向にある。また、新たな日常としてのテレワークの普及や高齢化の進展に伴い、「余暇の充実」・「身近な生活圏の魅力・利便性向上」が、さらに重要性を増すものと考えられる。
このことから、屋上緑化、花壇・生垣設置に係る支援、緑化協定・景観協定の活用促進、魅力ある公園等の整備、樹林地や農地の保全などにより「緑の潤いある住環境づくり」を進める。
――と、いうわけで、『第2次市川市住生活基本計画』では、これらの施策を実行していきたいということで、素案を作って市民等に公開し始めたところです。この5つの他にも、こういう施策を実施してほしい、など、ご意見があれば、是非、市川市に伝えてください。
〈市民一人当たりの公園面積が比較的小さく〉との説明がありますが、本八幡駅北口で今後行われる再開発により、新たに870戸が増加する可能性があり、仮に1世帯当たり人員が1.2人だとすると、1,000人以上増加する計算になります。
これだけ人口が増えるのであれば、公園面積も増やさないといけませんよね。市民一人当たりの公園面積を増やしたいのであれば。
住まいづくりという観点とは異なりますが、国府台公園(国府台スポーツセンター)で、大量の樹木が伐採されたことを知り、数日前に書いたコラムがあるので、こちらも是非お読みください(明治神宮外苑の樹木伐採計画が問題視されていますが、全国で樹木の伐採は行われており、市川市でも少し前に・・・という話です)。
そういえば、上で引用した『第2次市川市住生活基本計画』における施策に、「GX」なる語があったことに気付きましたか?「DX」は、デジタル・トランスフォーメーション。これに対し、「GX」は何かというと・・・
- ゴールデン・トランスフォーメーション
- グリーン・トランスフォーメーション
- ガイナックス
- ギャラクシー
のいずれかです。わかりますか?正解は後日お知らせします!
それでは、See Ya !!!!
* * * * *
執筆日 2023年9月21日
公開日 2023年9月21日