公開日 2023年3月10日
冒頭の画像はSergio Cerrato – ItaliaによるPixabayからの画像です。
3月8日は「国際女性デー」でした。この日、日経新聞に掲載された広告が話題になっています。一言で言えば炎上したということですが、ジェンダーギャップ指数の総合順位が低い(2022年の順位は146か国中116位。男女格差が大きい国である)日本の私たち(言うまでもなく筆者を含む男性たち)は、この広告の是非を問うことに留まらず、問題視されているのはどのような部分なのかを学びたいですね。
Twitterのこの投稿に対して、例えば、アカウント名「炎上チェック@広告」さんは連続投稿で、広告のダメなところを指摘しています。複数のポイントを指摘しているので、是非、連続投稿をチェックしてほしいのですが、私が最も考えさせられたのは、こちらの、〈「私たち(女)は」と強い、〉から始まる投稿でした。
女性たちを励まし、背中を押し、「変わろう、変われる」という前向きなメッセージを、あの広告から受け取る女性もいると思います。が、変わるべきなのはむしろ男性であり、その視点が欠けていることは問題だということ、そして、男性は変わらなくても良く、女性が変わるべきである、という誤ったメッセージを放つことにもなりうる、ということを言っています。
被差別者が変わるべきなのではなく、社会で力を持っている側、差別する側が変わるべきです。
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市川市の多様性社会推進課が2022年2月1日~2月14日に実施した「市川市e-モニター制度による男女共同参画に関するアンケート」の結果をみると、男女平等に関する市民の実感は以下の通りです。
男性のうち、
男性が優遇されていると感じている割合:56%
女性が優遇されていると感じている割合:17%
男女は平等だと感じている割合:17%
女性のうち、
男性が優遇されていると感じている割合:79%
女性が優遇されていると感じている割合:3%
男女は平等だと感じている割合:7%
また、市川市におけるDV相談件数は、2018年度以降、増加を続けています。
(ここでの相談件数は、警察への緊急的な相談を除き、市川健康福祉センター、こども家庭支援課、多様性社会推進課のいずれかに相談があった件数を指します)
詳しくは、2022年12月23日に公開した「【コラム】ジェンダー平等に関する市川市民の意識」をご覧いただきたいのですが、ジェンダーギャップは私たちにとって身近で、そして、大きな問題なのです。
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ところで、国際女性デーの3月8日(水)、TBSラジオ「アフター6ジャンクション」に、著述家のひらりささんが出演していました。
番組で、ひらりささんは、2月に発売されたばかりの新著『それでも女をやっていく』の紹介をしていました。
放送の翌日だった昨日、私はJR御茶の水駅前の丸善でこの本を購入しました。帯には、「実体験をもとに女を取り巻くラベルを見つめ直す渾身のエッセイ」とあり、佐野亜裕美さんから寄せられた推薦文も載っています。
肥大化した自意識、「女であること」をめぐる
出所:ひらりさ(2023). 「それでも女をやっていく」ワニブックス (帯の推薦文)
様々な葛藤との向き合い方。
自分の罪を認めて許していくこと。
その試行錯誤の過程がこれでもかと
いうほど切実に描かれていて、
読み進めるのが苦しくなる瞬間さえある。
それでもここで描かれているりささんの戦いの記録に、
私自身も戦う勇気をもらうのだ。
ひらりささんが居心地の悪さを感じたり、嫌な気持ちになった場面を読んで、ひとつも思い当たる節がない男性は稀なのではないでしょうか。私にもあります。「良かれと思って」発動した言動が、そのつもりはなくても、女性を下に見るような価値観に基づいていた――自分の過去の言動を振り返るのは、容易なことではないのですが、読み進めないわけにはいかず、たびたび立ち止まって我が身を振り返る、そんな読書体験を、今まさにしているところです。
この本を読んだ人は是非私と感想を言い合いましょう!そうですね、たとえば、カフェ・ミエーレ(南八幡)※1で。
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差別をされていない、あるいは、差別をしていない、そう思っていても、実際には差別をされていたり、しているということはあります。悪意があるとか意図があるとか、ないとか、そういうこととは別に、差別的な言動をしている人がいて、その言動を浴びせられる人がいます。浴びせられても、根深い差別構造があり、ずっとそのような言動をされてきたため、それが差別をされていることだと気付かないこともあります。
人には様々な属性があり、あらゆる面で常にマジョリティ、あるいはマイノリティ、という人よりも、この面ではマジョリティだけれど、こちらの面ではマイノリティだ、という人が多いと思われます。
自身にマジョリティ性が多いという人は、知らず知らずのうちに特権を獲得していて、そうではない人に対して差別的な言動をしているかもしれません。
- マジョリティ(多数派)
- マイノリティ(少数派)
- 差別
- 特権
そんなキーワーズが気になるという人は、是非、出口真紀子さんによる「マジョリティの特権を可視化する」と題された、こちらの記事を読んでみください。
ひろげよう人権
出口 真紀子:マジョリティの特権を可視化する~差別を自分ごととしてとらえるために~
https://www.jinken-net.com/close-up/20200701_1908.html
このWebページの図1で、自分自身のマジョリティ性とマイノリティ性をチェックできます。
マジョリティ性を多くもつ人たちは、マイノリティ性を多くもつ人と比べて何が違うのだろうか。マイノリティ側は差別や偏見の対象となっているが、マジョリティ側は日々そのような体験をせずに済んでいる。
差別されずに生きていけるということは、差別によって精神的にダメージを受けたり、自信を喪失したり、抗議の声を上げるといった行動にエネルギーを消耗したり、そうした行動をとったことで非難されたり、といった負のスパイラルに対処しなくても生きていける恩恵があるということだ。こうした恩恵こそが特権と呼ばれるのである。「特権」(Privilege)は、ある社会集団に属していることで労なくして得る優位性、と定義される。ポイントは「労なくして得る」で、努力の成果ではなく、たまたま生まれた社会集団に属することで、自動的に受けられる恩恵のことである。
(中略)
特権とは、ゴールに向かって歩き進むと次々と自動ドアがスーッと開いてくれるもの、と考えればわかりやすい。自動ドアは、人がその前に立つとセンサーが検知して開くが、社会ではマジョリティに対してドアが開きやすいしくみになっており、マイノリティに対しては自動ドアが開かないことも多い。マイノリティはドアが開かずに立ちはだかるため、ドアの存在を認識できるし、実際認識している。
出所:ひろげよう人権、「出口 真紀子:マジョリティの特権を可視化する~差別を自分ごととしてとらえるために~」、https://www.jinken-net.com/close-up/20200701_1908.html、2023年3月10日閲覧 太字は筆者
しかし、マジョリティ側はあまりにも自然に常に自動ドアが開いてくれるので、自動ドアの存在すら見えなくなってしまう。特権をたくさんもっていても、その存在に気づきにくいため、マジョリティ側は自分に特権があるとは思っておらず、こうした状況が「当たり前」「ふつう」だと思って生きているのである。
自動ドアのたとえはわかりやすいですね。
そして、記事では引用した上の箇所に続く部分「自分の特権に気づかないことがなぜ問題なのか」を、ジェンダーギャップという意味で言えば、特に男性に読んでほしいと思います。もちろん、女性にも。
この部分を読むと、冒頭で紹介した日経の広告から読み取れる「マイノリティの側が変わろう」というメッセージが、差別構造を温存し、場合によれば強固にしかねないものだ、と感じると思います。
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ところで、来月、2023年4月には、千葉県議会議員選挙と市川市議会議員選挙が行われますね。市川市議会にもジェンダーギャップがあることをご存知でしょうか。そのことについては、こちらの記事で取り上げました。
選挙に関連することでいうと、先日、投票率アップのために工夫している国分寺市や文京区、ノルウェーの事例を紹介する記事を公開しました。
この記事でも触れましたが、「iVotersさん」、別名、「市川市の投票率向上を目指すプロジェクト」が、「センキョ割」に取り組んでいます。
センキョ割とは
投票済証明書や投票所看板の写真を参加店舗で掲示するとお得なサービスが受けられる選挙期間限定のイベントで、主に学生が主体となり、「若者の社会参加と地域活性化」を選挙を通して育みます。(iVoters公式Webサイトより引用)
センキョ割に参加したいお店、施設の方は、公式Webサイトをチェックしてみてください。
https://ivotersichikawa.wixsite.com/ivoters
2023年4月1日から、南八幡のKeiyoGAS CommunityTerrace(てらす)で、センキョ割に参加している施設やお店の情報を掲載したり、センキョ割の学生の活動紹介をするそうです。
みなさん、選挙には必ず行きましょう!
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〈注釈〉
※1:カフェ・ミエーレは、南イタリアの居酒屋を思わせる素敵な飲食店です。これより下に掲載する写真は、2023年3月4日(土)に単独入店したカフェ・ミエーレにて撮影した数枚の写真です。