チェーンストア理論により経済民主主義を掲げ発展するサイゼリヤ発祥の第1号店を保存し、その歴史と社会貢献企業としての未来を紹介し訪れたすべての人に感動を与え、社会貢献の価値とすばらしさの理解をより深めることを目的とする。
前期の目的にそって記念館の運営にあたり、営利目的の使用は認めない。
出所:サイゼリヤ1号店 教育記念館保存会「サイゼリヤ1号店 教育記念館保存目的」(サイゼリヤ1号店 教育記念館の入口に掲出されているプレート)
2022年8月の時点で、国内外に1,547店舗(国内1,069店舗 海外478店舗、連結)を展開するまでに成長しているイタリア料理店のチェーン、サイゼリヤ。千里の道は一歩から、千店への道は一店舗から。サイゼリヤの1号店は2000年に営業を終了していますが、2023年11月現在、上の写真および冒頭の画像にように、「教育記念館」として保存されています。
1967年に洋食屋「パーラーサイゼリヤ」☆として市川市の八幡一番街の青果店の2階(八幡2-6-5)にオープンしたものの、お客さん同士の喧嘩で石油ストーブが倒れ、店が全焼(!!)、一度閉店した後に、同じ場所でイタリア料理店「サイゼリヤ」として再スタート――サイゼリヤ伝説は、その始まりから波瀾万丈でした。
☆出所:サイゼリヤ公式Webサイト「サイゼリヤ歴史写真館」https://www.saizeriya.co.jp/1000shops/history/photo.html、2023年11月21日閲覧
その後、悪立地であるにも関わらず、繁盛店になり、複数店舗化、多店舗化に向かうことになります。
1号店は、20世紀最後の年に、現役生活に幕を下ろしましたが、〈地元の人たちが保存会を結成し、20年以上経った今も記念館として残されてい〉※ます。
※出所:オリコンニュース「閉店後も20年家賃払い続け… サイゼリヤ1号店を守り続ける地元の人たちの思い」(2021年3月11日)https://www.oricon.co.jp/special/56021/、2023年11月20日閲覧
今、引用した記事には、サイゼリヤ1号店を「教育記念館」として保存したいと地元の人たちが思うに至った経緯などが詳しく記されていますし、この場所は、他にも様々なところ(例えば、本店の旅「サイゼリヤ 1号店 教育記念館」https://1goten.jp/archives/52076701.html)で紹介されています。
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ちなみに、過日、兵庫県姫路市を訪問した際、大手前通り沿いに、西松屋の創業1号店の跡地が、この写真のようにモニュメンタルなかたちで残されていることを知りました。石碑を建てるよりも、あるいは創業者やウサギのミミちゃんの銅像を建立するよりも、店舗を思わせるこの大きな看板を設置するこのやり方が、西松屋らしくて良いですね。
サイゼリヤも、そして西松屋も、1号店は既に営業していませんが、「チェーン展開している企業の原点」がそこにあったという事実を、道行く人に伝えてくれています。サイゼリヤにおいては、創業者の意向ではないにせよ。
街・まち・町を歩くとき、ふと、ここは昔どんなだったのだろう、と思うことがあります。かすかな残り香のような形跡から過去を想像するのも楽しいですが、往年の姿のまま保管されていれば、あるいは、せめて、碑(モニュメント)があれば、当時のことを偲ぶのに良いですよね。
ここが昔どんなんやったか、知りたいねん――。28歳の歌ちゃんは、勤めていた会社が倒産し、カフェでバイトをしている。初めて参加したのに最低最悪だった合コンの帰り道、年下の良太郎と出くわした。二人は時々会って、大阪の古い写真を一緒に見たりするようになり――。過ぎ去った時間やささやかな日常を包みこみ、姿を変えていく大阪の街。今を生きる若者の日々を描く、温かな物語。
出所:新潮社公式Webサイト「その街の今は/柴崎友香」https://www.shinchosha.co.jp/book/137641/、2023年11月21日閲覧
さて、西松屋の話に戻ります――
イタリア料理店のチェーンとして、他の追随を許さない店舗展開をしているサイゼリヤと同様、西松屋は、2023年8月20日の時点で1,090店舗と、ベビー・子どものくらし用品専門店チェーンとして比類なき成長を遂げています(参考:アカチャンホンポの国内店舗数は2023年4月で125店舗)。
西松屋といえば、お店はいつも空いているのに業績が良いことや、お店の従業員が少ないこと、衣料品は全てハンガー陳列ということなど、店舗運営が注目されています。
サイゼリヤの店舗運営も注目されていますが、店舗のみならず、そこに至るまでのサプライチェーン全体で品質をコントロールしていることや、需要に応じて供給する体制を構築していることなどにも、熱視線が注がれています。それらの一端は、こちらの記事で紹介しています。
この記事には、サイゼリヤがいかに効率を高めることに注力しているかを載せていますが、創業者である正垣泰彦さんが著した『サイゼリヤ おいしいから売れるのではない 売れているのがおいしい料理だ』(日経ビジネス文庫)を読むと、経営者の主観でしか語れないものではなく、数値化された客観的な指標を計測することを経営のベースにおいていること、そして、それにより、効率を高め、大きな効果を上げる、という筋道を立てていることが、よくわかります。
この本には、不調の理由を外部要因に求めないで自社(内部)を見つめて探してこれを改善すべきということ、店舗視察(ストアコンパリゾン)で見るべき店と見るべき項目など、経営において重要な事項がシンプルに書かれているので、2011年に発売された本が元になっているのですが、今読んでも学びが多いです。
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サイゼリヤも西松屋も店舗数が増えています。また、売上金額や利益額の規模も大きくなっており、企業として「成長」を続けていると考えられます。が、46年前の1977年に発売された、この本のタイトル『成長と膨張』(田島義博著、産業能率短期大学出版部)にあるように、「成長」しているように見えて、実は「膨張」しているだけ、という企業もあります。
この本が著されてから、日本経済はバブル期を迎え、やがてそれは崩壊しますが、バブル期に「成長」に見えた企業の規模拡大が、実は「膨張」にすぎなかった、というケースを、いくつも思い浮かべることができるのではないでしょうか。
田島義博著『成長と膨張』が出版されてから、もうすぐ半世紀になりますが、目次を見ても、古さを感じません。
「矛盾の再生産」、「人材浪費的な大企業」、「実りは大地に返せ」――最近出た本の目次と言われても違和感はないのではないでしょうか。
今日、ご紹介した2冊は、「市本・みんなの読書会」では、なかなか紹介されないタイプの本かもしれませんが(それもまた偏見というものですね)、大変な名著です。
- 『サイゼリヤ おいしいから売れるのではない 売れているのがおいしい料理だ』(正垣泰彦著、日経ビジネス文庫)
- 『成長と膨張』(田島義博著、産業能率短期大学出版部)
機会があれば読んでみてください。
それでは、またお会いしましょう。Ciao !!
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執筆日 2023年11月20日、21日
公開日 2023年12月7日
更新日 2023年12月7日