【コラム】あなたが知らない梨にまつわるエトセトラ

コラム

当サイトでは、これまでも市川市の梨の話題を取り上げてきました。

本稿でも市川の梨について書くのですが、その前に、日本全国で見たときの梨のポジションを俯瞰しておこうと思います。市川の梨は美味しい、市川の梨は味自慢、梨は市川の誇り、そんな風に思っている市川パースンも少なくないと思いますが、梨そのものについて、これから記すことについても知っておいて損はないと思います(得もないとは思いますが)。

1世帯当たりの「梨」に対する消費支出金額は2,000円弱

初めに、消費者視点で梨のポジションを見てみましょう。梨への思い入れや、好きなフルーツランキングといったものではなく、総務省家計調査の最新の年報、2022年版から、2人以上世帯を対象としたデータで、主な果物(フルーツ)への1世帯当たりの年間消費支出金額を確認します。

出所:総務省「家計調査(年報)」より作成。

平均消費支出が5,000円を超えているのはバナナだけです。4,000円台が、りんご、みかんです。3,000円台が、いちご、ぶどう。2,000円台はキウイフルーツ。梨は2,000に少し届かない、1,881円でした。

みかんの半分程度で、メロンの2倍程度――それが、1世帯当たりの梨への支出金額です。

高齢の人ほど「梨」の購入にお金を多く支払っている

2人以上世帯における世帯主年齢別に、梨に1年間でいくら支出したかを見ると、下図のようになります。世帯主が60歳以上だと、平均で年間に2,000円以上支出しています。50代以下では支出金額がぐっと少ないですね。

出所:総務省「家計調査(年報)」より作成。

なお、この、高齢であるほど支出金額が大きいという傾向は、梨に限らず、他の多くの果物や、それ以外の品目に見られる特徴です。

注意すべきは、「高齢になると(=加齢すると)梨に対する消費支出が増える」とは言い切れないということです。このグラフは、2022年時点における各年代の消費支出を比較したものです。いわば、「2022年時点」の一瞬を切り取ったスナップ・ショットとでも言いましょうか。

時間の経過とともに支出金額がどのように変化したか、ということは、この次のパートで見ます。

「梨」や「りんご」、「みかん」への支出金額が減り、「バナナ」への支出金額が増えている

先ほど、2022年における主な果物の年間消費支出を確認しました。それでは、過去20年程の間に、それぞれの果物に対する支出金額は、どのように変動してきたのでしょうか。

先程と同じく、2人以上世帯の年間消費支出金額を確認します。ここでは、バナナ、りんご、みかん、そして、梨、これら4種の果物を比較します。

出所:総務省「家計調査(年報)」より作成。

2000年の時点では、みかんが6000円強、りんごが6000円弱、そして、バナナは4000円弱、梨が3000円弱でした。この時点で、梨はみかんやりんごの半分程度でしたが、バナナとは(僅差とは言えないまでも)約1,000円の差でしかありませんでした。

ここから、時系列でみてみると、みかんに対する支出金額が大きく減少し、りんごも(2015年にかけての数年間、大きく金額を伸ばしましたが)22年間でかなり減少しています。梨も1,000円以上、減少しました。一方、バナナは大きく伸長しました。

▼みかん
6,249円から2,155円減少して4,094円に(マイナス34%)

▼りんご
5,694円から1,125円減少して4,569円に(マイナス20%)

▼梨
2,924円から1,043円減少して1,881円に(マイナス36%)

▼バナナ
3,865円から1,489円増加して5,354円に(プラス39%)

どうですか?バナナに対する支出金額が増えていますか?みかんに対するそれは減少していますか?

ちなみに、フレッシュ・フルーツ、いわゆる生鮮果物の全体で見ると、下図のような変化を辿っており(これもやはり同じく2人以上世帯を対象としています)、生鮮果物に対して支払う金額が減少していることがわかりますね。

出所:総務省「家計調査(年報)」より作成。

▼生鮮果物
42,544円から6,099円減少して36,445円に(マイナス14%)

2000年から2022年までの期間における、2人以上世帯の年間消費支出の変化率に着目すると、上で確認した、「生鮮果物(全体)」、「みかん」、「りんご」、「梨」、「バナナ」のうち、変化率が最も小さい(=減少率が最も大きい)のは、マイナス36%の「梨」でした。22年間で4割弱も減少しているのです。

生鮮果実(全体)がマイナス14%なので、このジャンル(カテゴリーと言うことが多いです)全体の支出金額の減少傾向よりも、梨のそれは顕著である(下落の角度が急である!)と言えましょう。

と、いうことで、「な、なにぃッ?!」「ショック!」「衝撃の事実!」と思った人もいれば、「何も今さら」「んなこと知っていましたぜ」と、余裕をかましている人もいることでしょう。

ここまで、事実を淡々と粛々と並べてきましたが、ここからは「梨」のことだけを考えたいと思います。梨のことだけを見つめていてくださいね。

「梨といえば、千葉県」と言いたい!日本なしの出荷量ナンバーワン、千葉県。

梨、ここでは参照する資料の関係上、日本なしと表記されていますが、その結果樹面積(果樹面積ではなく結果樹面積で間違いありません。実を結ぶ果樹の畑の面積と言う意味でしょうね、多分)および出荷量について、都道府県別に見てみましょう。ここでは結果樹面積が広い方から15県を抜き出して、下図のように表現してみました。

出所:農林水産省「作況調査(果樹)」より作成。
出所:農林水産省「作況調査(果樹)」より作成。

日本なしの結果樹面積と出荷量で千葉県は全国1位です。千葉県民、なかでも、梨の産地として知られる北部の自治体に住んでいる人は、このことを良く知っていると思いますが、千葉県以外の地に住む人は、ほとんどこのことを知らないと思われます。

例えば、

「りんごといえば、青森県」

というような一般常識と言いうるような基礎知識として、国民に広く知られているわけではないですよね。

「梨といえば、千葉県」

と言う程には、他県を出荷量などで圧倒しているわけではないのは事実です。

とはいえ、出荷量ナンバーワンの県ということを、千葉県もアピールし始めていて、「千葉自賛」として「千葉の梨は日本一」なるキャンペーンを実施しています。このキャッチコピーは、おそらく、打首獄門同好会の代表曲「日本の米は世界一」を意識して/念頭に置いて考案されたものでしょう。

打首獄門同好会には「千葉の梨は日本一」なるソングも作ってほしいですね。あるいは、市川市の小さな楽団、ノスタルジー&ルミエールが近々そんなソングを作るかもしれません。

市川市は千葉県ナンバー2の梨の産地

全国トップ、ナンバーワンの梨の産地たる千葉県の中で、最も梨の産出額が多いのは白井市、そしてこれに次ぐのが市川市です(2021年)。下のグラフ(書きそびれましたが、梨の産出額の比較です)を見てわかる通り、1位の白井市、2位の市川市だけが10億円超で、3位以下に大きく水をあけている状況です。

出所:農林水産省「市町村別農業産出額(推計)(令和3年)」より作成

と、いうわけで、色々見てきましたが、

  • 梨の消費支出金額(2人以上世帯)は年々減少しており、生鮮果物フレッシュ・フルーツ全体と比べても減少率が大きい
  • 千葉県は全国1位の梨の生産地
  • 市川市は千葉県2位の梨の生産地

という3点はしっかり押さえておきましょう。「梨検定」で出題されますよ。もし、そういったものが存在するのであれば。

(おまけ)市川産の梨を使った飲み物といえば・・・

最後に、市川産の梨を使った飲み物を紹介して、本稿を締めくくりたいと思います。

市川産の梨を使用した飲料「梨ウォーター」は市役所内でも買えます。
2023年8月26日(土)にシャポー市川(たべるば)で販売された4種のドリンクのうちの1つ「梨メモリーズ」には、市川市大野の重田辰雄梨園さんの梨が使われていました。

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執筆日 2023年9月3日
公開日 2023年9月3日