本八幡駅北口の再開発事業(本八幡駅北口駅前地区第一種市街地再開発事業)への注目が、徐々に高まってきている、そんな気がします※1。
本八幡駅周辺で最も高いビルは、ターミナルシティ本八幡(グランドターミナルタワー本八幡)で、地上40階(地下2階)、高さ144.2mです。
現在計画されている、パティオがある辺りに建設される可能性があるビルは、地上44階(地下2階)で、高さは、ヌ・アント!160mになるとか!市川駅南口のアイリンクのザ・タワーズ・ウエスト(東京側)が、地上45階(地下2階)で高さ160mなので、本八幡のタワマンの高さも、ついに市川のそれに肩を並べるということです(タワマンの「肩」はどの部分?)。
ところで、TBSテレビの「News23」で流れたと思われる、建築家・山本理顕氏のインタヴューの文字起こし記事がTBSのウェブページに掲載されていました。インタヴュー内で山本氏が、タワマン(記事の中では「超高層マンション」)に言及している部分があったので、紹介します。
建築家 山本理顕さん
「どうしたら地域社会がお互いに助け合うような社会を作っていけるのか。我々自身がそういうモデルになるような住宅を作っていきたい」1つの住宅に、1つの家族が当たり前とされている現代。プライバシーが尊重されるようになった反面、孤独死や虐待など、閉ざされた空間の中で起こる問題が深刻化しています。
建築家 山本理顕さん
「隣近所の人たちが助けられるような住宅のプランニングになっていないんです。その典型的なのは超高層マンションで、外との関係は一切作れないようにしている」そんな時代だからこそ、人々が集い、交流する機会を増やす住まいが必要だと考え、山本さんがつくる住宅には住民同士のコミュニティが活性化しやすくなるような仕掛けがさまざま施されています。
出所:TBS NEWS DIG「『あれほどひどい計画はあり得ない』大阪・関西万博に…、建築家・山本理顕さん(78)が“建築界のノーベル賞”プリツカー賞を受賞【news23】」(2024年3月6日)https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/1037298?display=1、2024年3月6日閲覧
「隣近所(となり・きんじょ)」という言葉が出てきます。近くに住む、あるいは、いる、顔の見える人同士の関係ですね。タワマン(超高層マンション)では、各戸の住民が、家の外の人=「隣近所」と関係を築けないか、築かなくても生活できてしまう構造になっていることが多いものと思われ、山本氏はそれを危惧しています。
「隣近所」については、2年ほど前に、この記事の中で取り上げました。
この記事に、
「地域」という語は、実際は共生していなくても、あたかも共生しているかのような印象を与えるマジックワードになりかねない
と書きました。書籍『まとまらない言葉を生きる』の著者、荒井裕樹氏の言葉です。「地域」には生々しい生活実感がなく、「隣近所」にはそれがある、そして、生々しさがないからこそ、行政文書の中で「地域」という語が使われるのだろう、と、荒井氏は語ります。気になる人は書籍『まとまらない言葉を生きる』を読んでみてください。名著です。
さて、山本理顕氏が懸念するタワマンの建設が、ここ、市川市内では、上述の本八幡駅北口以外の場所でも予定されています。お隣の自治体でも同様にタワマン建設の計画があります。
と、いうわけで、市川市および近隣自治体における、建設中か計画中の、高さ100m程度かそれ以上の高層ビルを確認してみましょう。
千葉県市川市
■本八幡駅北口駅前地区第一種市街地再開発事業 南棟
高さ約160m 地上44階 竣工2030年度 計画段階
■(仮称)市川南タワー計画新築工事
高さ104.15m 地上29階 竣工2026年9月 建設中
千葉県船橋市
■(仮称)船橋市本町1丁目計画新築工事
高さ193.00m 地上51階 竣工2028年3月 計画段階
千葉県習志野市
■津田沼駅南口地区
高さ?m 地上50階程度 竣工2031年 計画段階
東京都江戸川区
■プラウドタワー平井
高さ114.45m 地上29階 竣工2024年11月 建設中
■プラウドタワー小岩フロント
高さ114.99m 地上33階 2025年11月 建設中
■パークシティ小岩 ザ タワー
高さ114.90m 地上30階 2027年1月 建設中
■南小岩七丁目地区第一種市街地再開発事業
高さ約160m 地上?階 竣工2030年度 計画段階
■江戸川区役所新庁舎
高さ約99m 地上 21階 2031年1月 計画段階
■船堀四丁目地区第一種市街地再開発事業 南棟
高さ約99m 地上26階 竣工? 計画段階
東京都葛飾区
■新小岩駅南口地区第一種市街地再開発事業
高さ約160m 地上39階 竣工2032年度 計画段階
情報出所:日本の超高層ビル、https://skyskysky.net/index.html
総武線沿線の駅前再開発に伴うタワマン建設が目立ちます。
平井駅、新小岩駅、小岩駅、市川駅、本八幡駅、船橋駅、津田沼駅。ここでは紹介していませんが、千葉駅前にもタワマンが建設されるとか。総武線沿線の主要駅、互いにしのぎを削っているようにも見えます。タワマン建設で。しかしそれは、街の魅力を高め合うような競争とは違うようにも思えます。
総武線沿線でいえば、下総中山駅や西船橋駅、東船橋駅など、タワマンの建設予定がない駅の前に広がる街は、今後、むしろ「タワマンがない街」を売りにできるかもしれませんね。
タワマン建設に頼らない「まちづくり」ももちろんあります。タワマン建設に規制をかけている神戸市のような自治体もあります。
再開発に関するテレビ番組(2024年1月20日放送)を視聴した感想を、下記、2本の記事に分けて綴りました。全国各地のまちづくりの事例が登場します。タワマン建設を規制している神戸市の話も出てきますよ。
どのような街が出来上がるのか、計画段階から興味をもってウォッチし、言いたいことがあれば言う、仲間と話し合ってみる、調べてみる、現場を見に行くなど、自分にも関係があることとして、身近な場所で行われている再開発事業に向き合ってみてはどうでしょうか。
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執筆日 2024年3月6日
公開日 2024年3月9日
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〈注釈〉
※1:本八幡駅北口の再開発事業(本八幡駅北口駅前地区第一種市街地再開発事業)への注目が高まりつつあることを実感したのは、先日、地元に住む中学生からこの件について取材を受けた時でした。