【ローカルメディア漫遊記】『原木中山マニアックス』のクールな熱さ

コラム

(ほぼ)市川市のローカル・メディアを、読者視点、視聴者視点でひたすら紹介する連載、「ローカルメディア漫遊記」の第9弾は、市川市における路上観察学の旗手、Twitterアカウント『原木中山マニアックス』さんです。

原木中山マニアックス
https://twitter.com/b_maniacs

「原木中山マニアックス」さんのTwitterトップに表示されている画像と概要です。原木中山駅周辺の不要不急な話題を届けることを宣言しています。

原木中山マニアックスさんの紹介をする前に、『美術手帳Webサイト』より、「路上観察学」なるものの説明文を引用します。

赤瀬川原平、藤森照信、南伸坊、林丈二、松田哲夫、杉浦日向子、荒俣宏らにより、筑摩書房『路上観察学入門』の出版を記念した記者発表会に合わせ1986年に結成された。

(中略)

通常は見過ごされた都市の建築、看板、トマソン物件、建物のカケラ、マンホールなどを観察・収集の対象とするその行為は、彼らが自認していたように、今和次郎の考現学を源流とする。その意味で路上観察学会は、現代の考現学として都市のフィールドワーク、すなわち「路上観察」を行なった。

赤瀬川はトマソンを、人間の人為や意図に依らない、芸術の外側にある「超芸術」として発見し、また、藤森は、当時建築史的な関心の外側にあった「看板建築」をフィールドワークにより見出していった。彼らにとって「路上」とは、従来的な芸術や建築の「外」を意味した。

出所:美術手帳Webサイト、「路上観察学会」、https://bijutsutecho.com/artwiki/46、2022年6月24日閲覧(太字は筆者)

これから紹介する、原木中山マニアックスさんの路上ストリートでの行為(Twitterで投稿されている写真とそれに添えられた短文から推測しうるもの)は、「通常は見過ごされた原木中山の建築、看板、トマソン物件、建物のカケラ、マンホールなどを観察・収集の対象とする」ものだと言えます。

ちなみに、原木中山マニアックスさんにとっての原木中山エリアは、次の通りです。

原木中山駅からワタクシの散歩圏内。市川市の原木、田尻、高谷、高谷新町、二俣、上妙典、鬼高、稲荷木。船橋市の本中山、本郷町、二子町。ここら辺を勝手に「原木中山エリア」と呼ばさせていただいております。

出所:原木中山マニアックスTwitter(2022年6月5日、20:52)https://twitter.com/b_maniacs/status/1533416390816071680、2022年6月28日閲覧(太字は筆者)

それでは、ここ最近の原木中山マニアックスさんの投稿から、20弱を一挙に紹介します。

蓮田は、市川市ではかつて東西線の南側に相当する地帯に広がっていたものの、東西線が開通した昭和44年(西暦1969年)頃を境に減少したそうです※1。マニアックスさんは、かつて栄華を誇った蓮の末裔を発見したわけですね。

全角140字というTwitterの字数制限を軽く下回る、31字の短歌による表現です。

歩道橋から撮影したものでしょうか。この角度から撮影したことがある原木中山パースンは他にいないかもしれません。

太平洋戦争末期(1945年)の東京大空襲の際の痕跡が狛犬の背に。今年(2022年)2月、ロシアがウクライナに侵攻し、現在(同年6月28日)も停戦、終戦には至っていません。来月には参議院選挙があり、自民党は防衛予算の拡大を目指しています※2

マンホールとしてデビューする直前の構造物に、社会人の先輩としてエールを送るマニアックスさん。

デビューする物(者)あれば、役割を終え、引退した物(者)あり。世代交代が進む原木中山です。

これは、容器の補強をしつつ、植物の栄養にもなるという、貝殻の一石二鳥ですが、2つの実用的な価値だけでなく、見た目の面白さという情緒的な価値までも有しています。貝殻活用としては類まれなる総合力の高さですね。

連絡先は昼でも夜でも同じ番号であるにも関わらず。「バラキの真摯」は、「バラキの紳士」でもあります。

衝撃!バラキにサメ、出現!

バラキの王(キング)とバラキの女王(クイーン)でしょうか。

先に、今まさにデビューせんというフレッシュな新人に向けた、社会人の先輩としてのマニアックスさんのエールを紹介しましたが、こちらは社会人の手慣れた手仕事への称賛です。

言及されているのは、アンパンマン、ショクパンマン。ハッシュタグは、カレーパンマン。作者の意図によらず、鑑賞者が自由に味わえばよいと思います!

「ポイ捨て」と書かれた貼り紙が剥がれたところを逃さず捉えるマニアックスさん。剥がれた場所に現れた衝撃の事実!不思議、大好き※3

道路境界杭の頭部ヘッドの一文字、「建」。地表に出ている部分は、ほぼ立方体です。シャープな書体を評価するマニアックスさん。

撤去されることが予想されたブロック塀が、ある日、圓福寺※4の案内板の設置に用いられていたことを知ったマニアックスさんの気持ちは、安堵だったでしょうか。素敵な投稿です。

ーー以上、一気に16個の投稿を紹介しました。原木中山エリアを主たるフィールドとするTwitterアカウントとしては、バラキーナ香山さん※5と双璧をなすのが、原木中山マニアックスさんです。いつか、おふたりのコラボレイションを見てみたいです。

原木中山マニアックスさん、抑制の効いたクールな文体の中に、熱が感じられる、そんな「バラキ路上観察」の投稿を、これからも楽しみにしています。

* * * * *

〈注釈〉
※1:かつて存在し、今はもう存在していない『市川ジャーナル』という雑誌があります。ありました。その雑誌のWebサイトが今(2022年6月28日)も残っており、そこに市川市内の(かつて存在し、今はもう存在していない)蓮田に関する記述があるので、引用します。〈市の農水産課で毎年発行されている『市川市農林水産業の概要』に中の農業生産地分布地を見ると、昭和43年頃までは地下鉄東西線(昭和44年開通)の南側に当たる地帯一帯に蓮田が広がっている。それが昭和44年頃を境として大きく減少し、特に減少の波は南部から北部へと進んできている。かつての蓮田の上には家々が立ち並び新しい街をつくり出している。〉(出所:市川ジャーナルWebサイト、「『いちかわ史発掘』を再刊 【123】民具再見 手暖め」、http://www.posso.ne.jp/journal/hakkutsu.html、2022年6月28日閲覧。太字は筆者)
※2:自民党は防衛費を増やしたいと考えています。〈日本の防衛費は、国内総生産(GDP)比1%が事実上の目安となっている。2022年度予算は約5兆4000億円で、GDP比で0・96%。最近はイージス艦や最新鋭のF35戦闘機など高額の装備取得が優先され、弾薬や装備の修理に必要な部品への支出などは抑制されている。折しも、ロシアのウクライナ侵攻は長期戦の様相を呈しており、政府内では自衛隊が戦闘を続ける上で欠かせない弾薬の不足を懸念する声が高まっている。河野克俊・前統合幕僚長は「島国の日本は援軍が来るまでに時間がかかる。持ちこたえる『継戦能力』の整備は急務だ」と指摘する。ウクライナ危機をきっかけに、安全保障問題への関心は高まっている。参院選では、防衛費のあり方が争点の一つだ。自民党は、北大西洋条約機構(NATO)が加盟国に国防支出をGDP比2%以上とするよう求めていることも念頭に、「来年度から5年以内に、防衛力の抜本的強化に必要な予算水準の達成を目指す」と打ち出した。〉(出所:読売新聞オンライン、「参院選2022 [政策分析 参院選]<2>防衛費…増額の是非 世論二分」2022年6月27日、https://www.yomiuri.co.jp/election/sangiin/20220627-OYT1T50010/、2022年6月28日閲覧)
※3:「不思議、大好き」は、糸井重里氏が手掛けた西武百貨店の1981年のキャッチコピー。糸井氏による、1980年のキャッチコピーは「じぶん、新発見」、1982年~1983年のキャッチコピーは「おいしい生活」。(情報出所:Wikipedia)
※4:圓福寺(円福寺)は、〈慶長15年(1610年)のいにしえから、この地をあたたかく見守り続ける当寺は400年以上の歴史を持つ日蓮宗のお寺です。〉(出所:圓福寺Webサイト、https://enpukuji-ichikawa.jp/、2022年6月28日閲覧)
※5:バラキーナ香山さんは原木中山の貴公子を自称するTwitterユーザーです。https://twitter.com/BarakeenaKAYAMA

バラキーナ香山さんのTwitterトップ画像(2022年6月28日)。