公開日 2023年1月27日
かつて子どもだった皆さん、あるいは、今まさに、子どもだという皆さん、こんにちは。あるいは、こんばんは※1。
2022年7月29日、子どもたちが夏休みを迎えた時期に、「【コラム】子ども、家庭、家族観。」と題した記事を公開しました。
このコラムの目次は次の通りです(太字は強調のために施したものです)。
- 夏休みの子どもの居場所
- 子どもを、個人を、社会が何とかしてくれる国、家族で何とかしろという国
- 「こども庁」か?「こども家庭庁」か?
- 自民党の憲法改正草案における「家族のあり方」
- おわりに ~蒸し暑さの中で~
このコラムを書きながら、子ども(こども)の居場所について少しだけ考えたのですが、日本政府も「こども家庭庁」(なぜ、「こども庁」ではないのか?という疑問を持つ人は、上のコラムを読んでみてください)をつくるにあたって、〈こどもの視点に立って国の政策をつくっていくためには、政府は何を大事にするべきか、どのような取組が必要なのかについて、こども・若者の意見を聴きたい〉と考えて、ユース政策モニターという若者から成るグループから意見を聴いているようなので、本稿では政府(内閣府)が聴取したこどもの意見を紹介したいと思います。
その前に、市川市で長年活動しているある団体のミッションとヴィジョンをみてみたいと思います。
NPO法人 市川子ども文化ステーション
「市川子ども文化ステーション」さんは、団体設立から約40年という長い歴史を有する団体です。
「子どもといっしょに『異年齢で見る、遊ぶ、話す、作ること』を通して、みんなの自己肯定感を育みます」をミッションとして、また、「全ての子どもとおとなが人と人の中で育ち合い、わくわくドキドキ笑顔があふれる社会の実現!」をヴィジョンとして活動しています。
NPO法人 市川子ども文化ステーション
https://www.kodomobst.org/
本日は紙幅(紙ではないですが)の関係で、市川子ども文化ステーションさんのことを詳しく説明することはできないのですが、いずれ当Webサイトで特集したいと思っています(市川市内のNPO法人などの市民団体の活動を紹介する連載を始めたいと前々から思っています)。
市川子ども文化ステーションの理事長を務めた経験をお持ちの渡慶次慶子さんへのインタヴュー記事「源流」はこちらです。
内閣府の「ユース政策モニター」とは
さて、ここから、内閣府の取り組みをみていきましょう。内閣府の「子供・若者社会参画推進事業」では、若い世代に関わりの深い様々な政策テーマについて当事者の意見を聴くために、「ユース政策モニター」を組織化しています。
内閣府の公式Webサイト内の「『ユース政策モニター』(令和4年度)募集要項」(https://www8.cao.go.jp/youth/youth-opinion/guidance/bosyu.html)によると、対象者は、小学校5年生から高校3年生までの360名(小学校5・6年生 60名、中学生 150名、高校生 150名)で、モニタには、意見の提出回数に応じ、謝礼として、1テーマにつき500円相当の電子ギフト券(予定)を提供するということです(2023年1月23日閲覧)。
以降では、ユース政策モニターを対象に実施された「令和4年度 第5回ユース・ラウンド・テーブル」(2022年11月19日)の結果を見ていきます。
令和4年度子供・若者社会参画推進事業
第5回ユース・ラウンド・テーブル実施結果について … 資料A
https://www8.cao.go.jp/youth/youth-opinion/report/pdf/r04/yrt-5.pdf
第5回ラウンド・テーブルでは、「こどもの居場所」、「こどもの意見」について、当事者の生の声を聴取しています。
なお、本稿のタイトルや、上のブロックでは「子ども」という表記を用いていましたが、内閣府の資料やWebサイトでは「こども」と記述されているため、内閣府の資料から引用するブロックでは「こども」という表記を用いています・
第5回ラウンド・テーブルの参加者は以下の通りです。
・ユース政策モニター:27 名(小学生4名、中学生9名、高校生7名、大学生・大学院生2名、正社員・正職員3名、専業主婦(夫)・家事手伝い1名、その他1名)
・内閣官房こども家庭庁設立準備室職員:7名
・内閣府青少年企画担当職員:2名(事務局対応)
また、論点は以下の通りです。
① こどもの居場所について
・学校や家以外に、「居場所」と聞いて想像する場所はどこか
・その場所にいるとどんな気持ちになるか
・もっとこんな居場所があったらいいなと思うのはどんな場所か
② こどもの意見について
・ふだん、どのようなツールから情報を得ているか
・ふだん、自分の気持ちや考えを伝えることはできているか。できている場合、どのように伝えているか
・ふだん、自分の気持ちや考えを伝えにくいと感じるときについて
・こどもや若者がもっと自分の意見を伝えやすくするためには、どんな仕組みやツール、環境があると良いか
次のブロックでは、①こどもの居場所について確認します。情報出所は資料A(前出)です。
こどもの居場所
まず、こどもに「学校や家以外に、『居場所』と聞いて想像する場所」という質問を投げかけて、帰ってきた答えから、幾つかを紹介します。
・公園
遊んだり、眺めたりできる。一人でも友達とも
・図書館
本を読んだり本を借りたりできる。週に1回行く
自分と同じような人がいて安らぐ
自習室がついている、自由な時間に勉強できる、他の人ががんばっている姿を見て元気をもらう
・部活
部活の吹奏楽は楽しい
・塾、習い事
習字の習い事や塾には同い年の子がいて、安心できる
塾の自習室
・交流館(児童館・公民館)
本を読んだり友達と遊んだりする。1週間に3回くらい行く
・地域センター
地域の人と話す、学校以外の人と話す
新たな発見がある、新たな意見を聞ける
小学生がメイン、高校生が小学生に勉強を教える、職員も教えている、学校後に立ち寄れる場所(楽しかった、同年代のこどもたち、おもちゃ、本もある)
・その他
友達の家
教会
カラオケ
フォートナイトなどのオンラインで友達と遊べるゲーム
無登校、フリースクールに小学3年生からいる
放課後等デイサービス(障害を持ったこどもたちが放課後に過ごすことができる居場所)
これらは、学校でもなく、家でもない、こどもの居場所、いわば「サードプレイス」と言えるような居心地の良い場所ですね。大人の皆さんにとってのサードプレイスは、どこですか?是非、おしえてください!
あなたのサードプレイスを教えてください
→ アンケートフォーム
さて、話を戻します。自身にとっての居場所を答えたこどもたちに、「その場所にいるとどんな気持ちになる?」と質問したところ、こんな回答が返ってきました。
・本を読んでいると気持ちよくなる
・また来たくなる
・落ち着いてリラックスができる
・走ったりすると頭に酸素が入って気持ちよくなる
・自然を眺めると落ち着く
・勉強をやろうという前向きな気持ちになる
・周りの勉強している子たちを見てやる気が出る
・お菓子がもらえたり教会の人と話せたりして楽しい
・楽しい。ストレス発散になる。もっと歌いたくて帰りたくない
・安心できる
・言いたいことがすぐ言える
・その場所だからこその友達がいる
・フリースクール:こどもの意見を大事にしている。こどもがいろいろ決めている。言いたいことをすぐ言えるから楽。他の場所、小学校ではみんなに流されることがあった
楽しい気持ちになる、落ち着く、安心できる、といった答えが見られます。自分らしくいられる場所、と言ってしまうと、家や学校(教室)での自分は、自分らしくない、ということになるかもしれず、このように考えるよりも、「居場所」にいる時の自分が好きな人が多そうだ、と言う方が実態を表しているようにも思います(学校での自分、居場所での自分、家の自分、それぞれの自分は全て自分そのもので、「キャラ」が異なる、あるいは、それぞれが違う「分人」※2である…)。なお、上の意見は一部を抜粋したもので、資料Aには、ここで紹介したもの以外にも様々な意見が載っています。
こどもが自分の気持ちを伝えづらいと感じる時
続いて、資料Aから、②こどもの意見に関することとして、こどもたちが「ふだん、自分の気持ちや考えを伝えにくいと感じるとき」として挙げたものを幾つか紹介します。
・親の機嫌が悪い時に言いにくいと感じる
・他の人が(先生とかに)話していて、無視されているのを見ると自分も無視されるかもと思って言いにくい
・授業中に静かな場面を壊して伝えるのもみんなの時間を壊しているようで、説明に時間がかかりそうでしにくい
・伝えた意見が相手と違ったり、嫌な思いにさせたりするのではないかと思って、伝えられないことがある
・言っても否定されたりきちんと考えてくれるのか分からない、先生の印象が悪くなったりするのではないかと思う
・相手から正面から全否定されると言いづらくなる
・相手が安心できない人だと言いづらい
・家の近所や他の場所で人に会うと、そこでの関係性を壊したくない。立場の違い、上下関係があると言えないなと感じてしまう
・先生に対して学校や先生の嫌なことは言いにくい。ママに言う。傷ついたとき。他の先生には言えるけど、やはり言いづらい
・集団生活。中学の学級の問題。立場が上の人、スクールカースト上位の人の話が強く出ると、自分の意見を言いづらい。中学生:人間関係が複雑。保育園や幼稚園から続いている
・先生:担任の先生は良いが、学年主任の先生が来ると、大人の間でも立場の違いがあるのだと感じる。校長と担任の違いなど。大人の立場も考えてしまう。大人の上下関係も気にする
・関係性の続く人の中
・一方的に伝えるのは言いにくい。反応があるほうが良い。対話形式が良い
・ネガティブなことは直接言いにくい。匿名、書面など感情が分からない方法が良い
先生には伝えにくいと感じているこどもが複数います。また、話す相手の立場を考えて、自分の本心を伝えることを躊躇してしまう、というこどももいます。相手に対する信頼感がないと、伝えづらいと感じるこどももいますね。
言いたいことも言えない
こんな世の中じゃ
ポイズン
出所:反町隆史「POISON~言いたいことも言えないこんな世の中は~」(作詞:反町隆史)
言いたいことを言える相手がいるのと、いないのでは、大違いです。次のブロックで紹介していますが、「一生に一度しか会わないくらいの相手」の方が、意見を言いやすい、との声もありました。
あったらいいなと思う場所&意見を言いやすくする仕組み
第5回ラウンド・テーブルの参加メンバーは、AからFまでの6つのグループに分かれてディスカッションをしています。各グループが発表に用いた資料より、「もっとこんな居場所があったらいいなと思う場所」と「どんな仕組みやツール、環境があれば意見を言いやすい?」という問いへの答えを引用します。これらは、こどもたちが考える、理想の場所であり、理想のツールといえます。
市川市でこども・若者の居場所づくりをしたいと考えている市民団体の方にとっても、以下に掲載するこどもの考える理想の居場所は参考になると思います。
田中甲現市長の子ども政策に対する考え方(2022年3月時点)
最後に、市川市のリーダー、田中市長は子どもを取り巻く現状について、どのような考えをお持ちなのか、どのような政策に力を入れたいと考えているのか、1年ほど前に述べていたこと(実際にはアンケートに対して書面で回答していました)を確認します。
2022年の市長選挙の前に、市川子どもわくわくネットワーク、市川子ども文化ステーション、いちかわ子育てネットワーク、市川子どもの外遊びの会が共同で、立候補者に、主に子どもに関連する質問を投げかけ、得た回答をFacebookページ(https://www.facebook.com/ichiwakunet/posts/4979060238837205)に公開していました(2022年3月19日公開。2023年1月23日時点で閲覧できました)。
田中甲現市長が市川市長選挙の前、候補者だった時代に、どのような回答をしていたかを見てみましょう。
(引用ここから)
質問
コロナ禍で、これまで当たり前にあった学びの機会が無くなることも少なくありません。子どもの学ぶ権利・学びの保障について今の現状をどのように見て、どのように変革させるか、お教えください。
回答
まずこの2年間、コロナによって、いつも以上に「学びの場」「気づきの場」が減ったことは言うまでもありません。
また、人との「交流」を直にする時間が極端に減り、子ども一人ひとりの「学び空間」が減ってしまいました。
私は今回の決戦において、どの政策よりも「子ども・教育」についての政策を充実させました。
まだまだ勉強不足のところもありますが、これからも皆さんと意見交換をさせていただき、切磋琢磨してまいります。
質問
多様な学び方として、例えば民間のフリースクールも選択肢の一つとして挙げられますが、費用面で保護者の負担もまだまだ大きいです。多様な学びの在り方、また行政として取り組んでみたい事など、お考えをお教えください。
回答
放課後クラブの抜本的改革!「量」と「質」を今以上に確保し民間(フリースクール)並に近づけていきたいと考えています。
そして、基本は地域で子どもを育てられる環境づくりを進めます。
また、行政として、LGBTQ、ダイバーシティなど、相互理解の基となる人権教育を推進できたらと考えています。
質問
学校教育に関しては教育委員会との連携が不可欠ですが、もし市川市独自の学校づくりに取り組まれるとしたら、どのように取り組み、どんな特徴を取り入れたいですか?
回答
都市型教育だからこそ、食べ物を大切する心を育む「食育」をしたい。
また、月並みになりますが、より前に進んだGIGAスクールの取り組み、これからの教育のあるべき姿を本気で模索します。
先進的なインクルーシブ教育システムの構築に着手。
発達に課題のある子どもと家庭への支援を手厚くしていきます。
質問
市川市は「文教都市」として知られており、多くの学校教育施設があります。更なる連携など、何かお考えはありますでしょうか?
回答
少し論点がずれるかもしれませんが、「文教都市」と言われている市川市は北部のエリアを指していると思われます。私は東京湾の海辺付近も含めて、これからも市内の学校誘致に尽力していきたいと考えています。
その上で、小学校・中学校・高校・大学等の連携ができればと考えます。
質問
子どもの環境改善など、子ども子育てに関わる施策へ、予算全体からどの程度の割り振りが適切、あるいは理想とお考えになりますか?
回答
現在、市川市は学校教育費と扶助費(子ども政策予算含む)を合わせると約400億円(令和3年度ベース)となっています。近隣他市と比べると予算規模としても大きなものとなっています。
この数年間、扶助費の多くは一年ごとに20園以上の新設保育園にあてられた予算です。市内待機児童が大幅減少している今、そちらの予算を学校教育費に充当できるものと考えています。
現在、約60億円程度の予算をもう10億〜20億程度増やしていき、より快適な教育環境を提供していきたいと考えております。
質問
例えば通学路の安全性や、LGBTQへの対応など、物理的にも心理的にも安心できる環境づくりが求められていると思いますが、「関心・安全」ということに関して、どのような施策・対応をお考えかお教えください。
回答
公約にもあげております。
通学路の安全を確保し、交通事故から子供たちを守ります。具体的には通学路をはじめ市内の各所の街路灯をカメラ付のものに交換することを考えています。それにより事故や犯罪の抑止を狙います。
上段でも書きましたがLGBTQ、ダイバーシティなど、相互理解の基となる人権教育を育むことを推進します。
また市独自のインクルーシブ教育システムの構築に着手していきます。
質問
子どもの意見を尊重し、その最善の利益を優先する、として「こども家庭庁」の設置について日々取り沙汰されています。現在の設置案について特にご意見はありますでしょうか? また「子どもの権利条例」の制定など、地方自治体としての独自の取り組みに関して、どのようにお考えでしょうか?
回答
「子ども家庭庁」についてここでお話をすることはありません。また違った機会にお願いいたします。
「子ども権利条例」については制定に向けていきたいと考えております。
先日、市川市議会で「手話言語条例」が議決されました。私たちの街(議会)はいま良い流れがあります。頑張りましょう!
質問
市川市でも「カーボンニュートラルシティ」が表明されていますが、そう言った事とのつながりで、未来をつくる子どもたちへの思いがありましたらお教えください。
回答
未来をつくる子どもたちへしっかりと繋げられるように、私たちが今できる全てを行うべきと考えます。理想は高みにあります!正解はどこにもありません!子どもたちに恥じないよう、私たち大人が規則正しいルールに基づいて生活をするべきと考えています。
質問
子どもの社会参画や、子どもの権利保証に関して、どのような政策をお考えでしょうか? また「子どもの権利条約」から、今の市川市の子どもたちにとって、特に何条が重要だと思われますか?
基本目標1の(1)として「子どもの権利保障のための取り組みの充実」が上げられ、子どもが自発的に社会参画できる仕組みづくりの推進として「子ども実行委員会設置事業」などの取り組みはありますが、更なる事業などお考えはありますでしょうか?
回答
市川市として4つの原則に基づいて、全ての子どもたちが「安心して成長できる環境」を確保し、「差別なく自由に表現できる環境」を作っていくことだと考えます。
私自身、勉強不足なところもありますが、今の子どもたち(市川市)にとって「子どもの権利条約」12条が非常に重要かと思っています。
「子どもの権利保障のための取り組みの充実」については、現行の広報啓発のやり方ではなくより一般市民を巻き込んだ方法を考えていきたいと思います。
例えば、今行われている市民まつりでのブース出店だけでなく、定期的な駅前等での街頭宣伝活動のような地道な活動を継続して行えるように努めます。
もちろんコロナの状況が落ち着いたらになります。
質問
子どもの放課後の活動、居場所としてどのような施策をお考えでしょうか?
基本目標1の(2)として「子どもの居場所の充実」が上げられています。令和4年度にはビーイング(子どもの居場所づくり事業)が全小学校に設置されるなど改善が見られますが、課題や更なる改善など、何かお考えはありますでしょうか?
回答
上段の2−2でも書かせて頂きました。 放課後クラブについては抜本的改革!「量」と「質」を今以上に確保し民間(フリースクール)並に近づけていきたいと考えています。そして、基本は地域で子どもを育てられる環境づくりを進めます。 問題点としては、市直営と業者委託との差がまだまだあるように感じます。利用者・職員・委託業者が一体となれるようにしっかりと管理・運営に努めます。
質問
虐待、貧困、里親里子等、子どもの社会的擁護に関してどのような施策をお考えでしょうか?
基本目標5には「配慮を要する子ども・子育て家庭への支援」とありますが、特に重点的に取り組む必要があると考える事がありましたらお教えください。
回答
SNSを活用した駆込み相談窓口の開設。その先のアフターフォローを各専門家とともにチームを編成して支援に努めます。
質問
子どもに関する政策で最優先の課題は何だとお考えになりますか?
保育園の増設など子育て支援事業ではなく、子どもが自立的に関われる政策に関してお願い致します。またその事を通じてどのような「未来の市川市」に変えたい、とお考えでしょうか?
回答
「子ども権利条例」の制定にできる限り努めたいと思います。
またそれと同時に、子どもが多くの大人と触れ合える環境づくりに努めます。
子ども一人ひとりが自立を促せる環境を目指します。
(引用ここまで)
「子どもの権利条約」の何条が市川市の子どもたちにとって特に重要か、との質問に対して、田中市長は12条と答えています。「子どもの権利条約」の第12条は、以下の通りです。
第12条
出所:ユニセフ公式Webサイト、「子どもの権利条約」全文(政府訳)、https://www.unicef.or.jp/about_unicef/about_rig_all.html、2023年1月23日閲覧
1 締約国は、自己の意見を形成する能力のある児童がその児童に影響を及ぼすすべての事項について自由に自己の意見を表明する権利を確保する。この場合において、児童の意見は、その児童の年齢及び成熟度に従って相応に考慮されるものとする。
2 このため、児童は、特に、自己に影響を及ぼすあらゆる司法上及び行政上の手続において、国内法の手続規則に合致する方法により直接に又は代理人若しくは適当な団体を通じて聴取される機会を与えられる。
また、最後の質問への回答で、子どもが多くの大人と触れ合える環境づくりに努めるとおっしゃっていますね。市川子ども文化ステーションのミッション「子どもといっしょに『異年齢で見る、遊ぶ、話す、作ること』を通して、みんなの自己肯定感を育みます」、ヴィジョン「全ての子どもとおとなが人と人の中で育ち合い、わくわくドキドキ笑顔があふれる社会の実現!」を思い浮かべました。
* * * * *
本稿では、内閣府の事業でこどもから聴取した生の声を紹介しました。また、市川市長が市長に就任する直前に質問に答える形で、子どもを取り巻く状況をどのように認識しているか、優先的に取り組みたいことは何か、などを述べた言葉を紹介しました。
国府台にある「ふくろうの森」では、「森でキッズ」なるイヴェントが開催され、子どもと、かつて子どもだった大人が思い思いに過ごし、食べ物を食べ、トランポリンで跳ね、森を歩き回り、喋り、何かをつくる、そんな時間が流れているそうです。市川市のキッズたちが、文字通り伸び伸びと育まれるために必要な環境を、大人たちは用意してあげられているでしょうか。「森でキッズ」のプロデューサーは、そんな環境を、奇跡という言葉を使いたくなるほど素晴らしい場を、生み出していると言えましょう。
今日の記事はちょっと長すぎましたね。素直にI’m Sorry。今後も機を見てキッズに関する記事を綴ろうと思います。
* * * * *
〈注釈〉
※1:「こんにちは。あるいは、こんばんは」は、漫画『SPY×FAMILY』で、西国情報局の対東課「WISE」の管理官がスパイに対してする挨拶です。
※2:「分人」は小説家の平野啓一郎さんが提唱している概念です。
「分人dividual」とは、「個人individual」に代わる新しい人間のモデルとして提唱された概念です。
「個人」は、分割することの出来ない一人の人間であり、その中心には、たった一つの「本当の自分」が存在し、さまざまな仮面(ペルソナ)を使い分けて、社会生活を営むものと考えられています。
これに対し、「分人」は、対人関係ごと、環境ごとに分化した、異なる人格のことです。中心に一つだけ「本当の自分」を認めるのではなく、それら複数の人格すべてを「本当の自分」だと捉えます。この考え方を「分人主義」と呼びます。職場や職場、家庭でそれぞれの人間関係があり、ソーシャル・メディアのアカウントを持ち、背景の異なる様々な人に触れ、国内外を移動する私たちは、今日、幾つもの「分人」を生きています。
自分自身を、更には自分と他者との関係を、「分人主義」という観点から見つめ直すことで、自分を全肯定する難しさ、全否定してしまう苦しさから解放され、複雑化する先行き不透明な社会を生きるための具体的な足場を築くことが出来ます。
出所:分人主義Webサイト、https://dividualism.k-hirano.com/?id=link-about、2023年1月23日閲覧