2002年に日本初のフードバンク「セカンドハーベスト・ジャパン」を立ち上げたマクジルトン・チャールズさんは、貧困に苦しむ人たちのことを理解するために、路上生活をしたというから驚きです。当初は3か月の予定だったそうですが、5倍の長さに当たる、1年3か月も路上で生活をしたチャールズさんは、その経験で得たものについて、次のように話しています。
おかげで見えてきたことがたくさんあります。たとえば『助けてあげる』という気持ちはおかしいのではないか、ということ。
(中略)
だから私は、食べ物で困っている人たちのことを“助けている”つもりはないんです。
(中略)
大切なのは、貧困で困っている当事者が『自分たちにもできることがあるんだ』と意識を持つこと。それによって豊かな循環が生まれ、受け身ではない、貢献につながっていきます。
出所:松屋フーズ公式note、「貧困当事者だって提供者に。『フードセーフティネットを作りたい』日本初のフードバンクが目指す、豊かな社会の在り方」(2021年11月29日)、https://note.com/matsuyafoods/n/ne3d427fff2de、2022年6月24日閲覧 ※太字は筆者
私たちも、フードバンク活動をする中で、「助けてあげる」という気持ちはおかしいよね、ということを、よくメンバー間で話します。もともと、フードバンクを始動した時から、この活動の特徴を、次のように捉えています。
本事業には、「支援する⇆支援される」という二元論を超えて、地域のすべての人たちが「出番」を持てるように、「つながり」を創出し、社会的関係性を構築する地域活動、という特徴があります。
出所:フリースタイル市川Webサイト、「いちかわフードバンクbyフリスタ」、https://fs-ichikawa.org/ichikawafoodbank/、2022年6月24日閲覧
「支援する人」が「上の立場」で、「支援される人」が「下の立場」なのではありませんよね。もちろん、「いちかわフードバンクbyフリスタ」のスタッフにおいても、フリスタのメンバーズと、メンバーズ以外の間に、一切の上下関係はありません。
と、思っていても、人は、ふとした言動で、自分と他者の関係を「上と下」であるように感じる可能性はあります。関わる全ての人が、そのように感じることがないように、「常に研究」(RHYMESTER『K.U.F.U.』※1)が必要ですね。以前、このことを考える上で、参考になるディスカッションがあったので、それを紹介する記事を書きました。
再び、マクジルトン・チャールズさんの言葉を紹介します。
私たちは最終的に、病院、交番、図書館のような、食にまつわる“公共資産”になりたいと思っているんです。図書館を利用するときに『あなたは借りた本を最後まで読みますか?』、『感想文を書かなければ本は貸せません』などと条件をつけることはないじゃないですか。フードバンクもそうあってほしい。“希望すればどんな人でも食品を手に入れることができる場所”として、フードバンクを作っていきたい。
出所:松屋フーズ公式note、「貧困当事者だって提供者に。『フードセーフティネットを作りたい』日本初のフードバンクが目指す、豊かな社会の在り方」(2021年11月29日)、https://note.com/matsuyafoods/n/ne3d427fff2de、2022年6月24日閲覧 ※太字は筆者
フードバンクを「食にまつわる公共資産」にする、すなわち、所得の条件や属性などのあらゆることを度外視し、「来る人、拒まず」の精神で、フードバンクを「誰にでも食品を提供する場所」にすることが、チャールズさんにとっての究極の目標ということです。すごいことを考えているなぁ、と思いますが、そんな社会であれば、皆が安心して暮らせますよね。
昨日(2022年6月23日)の夜に、明日(同年6月25日)に開催する、『第19回いちカイギ~いちかわフードバンクbyフリスタ 第1回シンポジウム&報告会~』のことを、メンバーズで話し合っていた時にも、私たちのフードバンクが目指す姿は、「誰にでも食品を提供する場所」(誰でも望めば食品の提供を受けられる場所)になることだね、それが理想だよね、という意見が出ました。
遠大な目標かもしれませんが、理想のフードバンクを仲間たちと一緒につくっていきたいと思います(これを今読んでくれているあなたともぜひ一緒に取り組みたいです)!
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〈注釈〉
※1:『K.U.F.U.』は、日本のヒップホップ・グループ、RHYMESTER(ライムスター)の楽曲。
常に研究
常に練習
知恵を結集し
君をレスキュー
武器はたゆまぬ「K.U.F.U.」
出所:『K.U.F.U.』RHYMESTER (作詞:宇多丸・Mummy-D)