「新湾岸道路」をご存知ですか?
「うん、知ってるよ。昨夜も走ってきたもん、ドライヴしたんだもん!」
と答える人がいたら、その人は勘違いしてるか、そうでなければ、妄想世界の住人であるか、もしかしたらホラ吹きかもしれません。と、いうのも、「新湾岸道路」は、まだ存在しない道路だからです。ルートも決まっていません。
なぜ、そんなことを私が知っているかというと、2023年11月末日、市川市役所第一庁舎の1階(ファンクションルーム)で行われていた「新湾岸道路のパネル展」に赴いて、展示されていたパネルを見たからです(冒頭の画像はパネル展示資料[PDF]の引用です)。
新湾岸道路は「千葉県広域道路交通ビジョン 千葉県広域道路交通計画(R3.6千葉県)」において、第二東京湾岸道路を軸とした新たな規格の高い道路ネットワークとして「高規格道路」に位置づけられており、外環高谷JCT周辺から蘇我IC周辺ならびに市原IC周辺までの湾岸部において、検討を進められているところです。
出所:市川市公式Webサイト「新湾岸道路パネル展示内容(PDF)」(2023年11月開催のもの)、https://www.city.ichikawa.lg.jp/common/roa01/file/0000440555.pdf、2023年12月4日閲覧
「新湾岸道路」と現在呼ばれているものは、以前は「新たな湾岸道路」という呼称でした。千葉県の「新湾岸道路」に関する情報を掲載しているWebページ(https://www.pref.chiba.lg.jp/doukei/shinwangan/shinwangan-top.html)を見ると、2021年7月時点(および、それより前)の資料では「新たな湾岸道路」、2023年5月時点(および、それより後)の資料では「新湾岸道路」が用いられていることがわかります。呼称も揺れ動いているような段階なのですね。
上の説明によると、「新湾岸道路」は、「第二東京湾岸道路」を軸とした「道路ネットワーク」であることがわかります。
「新湾岸道路」は、千葉県内の複数の自治体(市川市、船橋市、習志野市、浦安市、千葉市、市原市)を通る予定で、パネル展では、各自治体における「期待される効果」と「配慮事項」を記したパネルが展示されていました。下の写真は、市川市に関するパネルのうち、効果と配慮事項が書かれた箇所をズームアップしたものです。
先日、次のような、やや長い題を冠したコラムを公開しました。
「市川市民以外の自動車利用者が大きな利便を得るなら、市民は生活環境の損失を補償されねば不公平」という意見
https://fs-ichikawa.org/gaikan_expwy/
市川市を通る「東京外郭環状道路(東京外かく環状道路)」の建設は、地域内外に大きな便益をもたらした一方で、地域(市川市)が被った損害もあります。日々、通過する自動車から出される騒音や排ガスもあります。それ以外に、現状の地域の姿を見ただけではわかりづらいのですが、地域が分断される、商店街がなくなる、といった、損失、あるいは喪失があります。上のコラムにそのあたりのことを綴っています。
さて、パネル展では、「新湾岸道路」の建設に伴う市川市における配慮事項として、
○三番瀬への配慮
三番瀬の保全や生態系など広域的に配慮
○地域の利便性への配慮
原木・高谷地区のまちづくりを見据えた地域として利用しやすいようなアクセス位置に配慮
○地元への丁寧な説明
工業会や漁業組合などへの丁寧な説明に配慮
が挙げられていました。が、その地域で短くない歳月営まれてきた人々の暮らしの形が大きく変わってしまう可能性がある、ということには触れられていません。市川市内で「新湾岸道路」が通る可能性がある場所には、人の営みがないからでしょうか。どうなのでしょうか。まだ、コースは定まっていないので、人々が住む場所を変えざるを得ない可能性も、なきにしもあらずですよね。きっと。
展示されていた別のパネル(上の方に写真があります)、「千葉県湾岸地域における規格の高い道路計画の基本方針」に、「地域の生活環境に配慮した計画とすること。また、既存の都市計画や県の確保済用地を有効に活用すること」とあります。この部分が、地域の分断による生活の営みの喪失、といったことが生じないよう配慮すべし、という方針に相当するのかもしれません。さすがに配慮をしていないということはないですもんね、地域の分断は。
当サイトでは、以前に、「北千葉道路」についても綴っています。市川市域が未整備なのですよね。知っていましたか?私は知りませんでした。記事を書こうと思って調べる過程で知った次第です。
ところで、筆者は、都市の再開発や、幹線道路建設による道路ネットワークの整備に、何が何でも反対だというわけではありません。健全な地域計画において、必要なものだと認識してます。私はかつて civil engineering を大学で専攻し、道路交通に関する研究で修士号を取得してもいるので、多少なりとも理解をしているつもりです。
だからこそ、工事を行ない、地域を造り変える時、新しくてピカピカでモダンな施設が地域にもたらす便益だけに注目するのではなく、それによって損なわれるものを最小限にとどめること、残すべきものをきちんと残すことにも、生み出される新しい価値と同じくらい、あるいは、それ以上に、注目し、然るべき対応をすべきだと考えているのです。
そうそう、本稿では、道路建設により私たちにもたらされると考えられている便益には言及しませんでした。そのような情報は、例えば、千葉県公式Webサイトなどに、かなり詳しく掲載されているので、興味がある人はチェックしてみてください。
千葉県公式Webサイト
新湾岸道路
https://www.pref.chiba.lg.jp/doukei/shinwangan/shinwangan-top.html
それでは、近いうちに、市川市内のどこかでお会いしましょう。See Ya !!
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執筆日 2023年12月4日
公開日 2023年12月26日