公開日 2023年3月1日
2023年2月25日(土)に千葉商科大学(市川市国府台)で開催された「第13回CUC地域連携フォーラム」で、フリースタイル市川のフードバンク事業の活動について報告しました。報告を担当したのはフリスタの野口淳さんです。
※CUCとは、千葉商科大学(Chiba University of Commerce)のことです。
このことについては、先日、速報記事を公開しましたが、本稿では、他団体の報告内容を含め、フォーラムを全体的に見渡してみたいと思います。題して、詳細レポート!
フォーラムは、市川市の国府台1丁目にある千葉商科大学のキャンパス(1号館1階)で開催されました。以降で、フォーラムで行われた報告の概要を紹介します。
千葉商科大学 地域連携推進センター
冒頭で、千葉商科大学の地域連携推進センター・副センター長の佐藤哲彰先生より、下記のような内容の話がありました。
1.地域連携推進センターの取組み
(1)地域志向活動助成金制度 ←フリースタイル市川が採択されているものです
(2)CUC市民活動サポートプログラム
(3)CUC地域交流会
(4)地域活動推進室
(5)キッズビジネスタウンⓇいちかわ
(6)キッズ大学
(7)学生ボランティア派遣
(8)公開講座
2.自治体との連携(市川市、江戸川区)
3.地域をつなぐコンソーシアム活動
(1)国府台コンソーシアム
(2)大学コンソーシアム市川 産官学連携プラットフォーム
地域連携推進センターのリーフレット(PDF)
https://www.cuc.ac.jp/social_contribution/reg_net_center/mstsps0000007h1l-att/reg_net_center_leaflet202202.pdf
いずれも興味深いものばかりでした。このフォーラムでは「地域志向活動助成金制度」で採択された団体が、活動報告をしました(概要を後掲します)が、「国府台コンソーシアム」、「大学コンソーシアム市川」にも、この地域をより良くする大きなポテンシャルを感じました。フリスタも重視している「つながり」を、活力に変える仕組みですね!
国府台コンソーシアム
国府台地区および近隣の教育機関と医療機関が連携して、相互の発展と地域活性化を目的として2017年12月に設立されました。
千葉商科大学、和洋女子大学、東京医科歯科大学教養部、千葉商科大学付属高等学校、和洋国府台女子中学校高等学校、千葉県立国府台高等学校、市川市立第一中学校、市川市立国府台小学校、筑波大学附属聴覚特別支援学校、国立国際医療研究センター国府台病院、市川市が参加しています。
大学コンソーシアム市川
市川市に所在する、千葉商科大学、和洋女子大学、東京医科歯科大学教養部、昭和学院短期大学、東京経営短期大学という、3つの大学、2つの短期大学が、教育資源や機能等の活用を図りながら相互に連携協力し、教育研究の質的向上を図って地域社会の発展に資することを目的として、2018年11月に設立されました。更に、地域課題の解決に対し協働して取組むため、市川市、市川商工会議所と産官学連携包括協定を締結し、大学コンソーシアム市川産官学連携プラットフォームを形成しました。
基調講演:シニア向けeスポーツの取り組み(リハライフ市川)
市川市鬼越の通所型リハビリデイサービス「リハライフ市川」では、シニアの方々は、身体の健康だけでなく、脳の健康も意識しなければ、楽しく過ごすことが難しいのではないか、と考えていました。そんな時、「高齢者の認知症予防・健康維持に期待されるeスポーツ」というセミナーに参加し、eスポーツの認知症予防効果や、交流のきっかけをつくることなどに注目したといいます。
そして、eスポーツの機材をそろえ、リハライフにeスポーツの会場を設営し、スタッフ(講演を行った宮﨑さん)が「健康ゲーム指導士」という資格を取得して、2022年6月に施設の利用者さんにeスポーツを行ってもらったということです(現在、リハライフ市川では、「太鼓の達人」、「ギア・クラブ」、「ぷよぷよ」の3種目を導入しています)。
参考:ぷよぷよeスポーツ
https://www.sega.jp/game/detail/puyopuyo_esports/
自社拠点でeスポーツをプレイする利用者さんの好評もあり、介護保険のサービスを利用していない人にもeスポーツを体験してもらいたいと考えるようになり、高齢者サポートセンターや昭和セレモニーの協力のもと、2022年の8月と10月に「eスポーツ体験会」を開催しました。ここでも、参加したシニアの皆さんに喜んでもらえたことで、手ごたえを感じました。
一方、課題も抱えています。
- 情報提供:体験会に参加したい人に対して、どのような手段(メディア)で開催情報を伝えれば良いか?
- 開催場所:開催場所が限られると参加者が一部地域の人に限られる。地域全体を巻き込むにはどうすれば良いか?
抱えている課題は、フリースタイル市川とも共通していました。
昨年の8、10月の体験会の開催前は、広報いちかわで告知をしたそうですが、その情報が届かない人もいます。シニアを対象としているので、SNSやWebサイトよりも、紙メディアの方が確実に伝わるように思うのですが、広報いちかわでリーチできない(しきれない)となると、さて、どのような手段で伝えればよいものか。
開催できる場所を増やしていくことも想定しているのであれば、活動に共感してくれる人を増やし、「ぜひ、うちの場所で開催してください」と、協力を申し出てくれる団体・個人の支援者を増やす、という道筋もありえるでしょう。
かまがや防災かるた(鎌ケ谷マネジメントラボ)
先日公開した「速報」でも紹介した、「かまラボ」(「かまらぼ」と表記する場合もあります)こと、「一般社団法人鎌ケ谷マネジメントラボ」は、助成金受給団体として活動報告をしました。
災害発生時、大事なのは、自助と共助で、中でも自治会は地域活動の中心的な存在です。しかし、最近は自治会への新規加入者が少なく、自治会が防災訓練を行っても子どものいる世帯は参加しないとの声もあります(他方、子育て中の主婦からは「防災訓練実施の情報が届かないので参加していない」との声があがっていました)。また、自治体では後継者(次期会長など)がいないとの課題もあります。
各種調査結果などを踏まえ、かまラボでは、「防災自助意識の向上と啓発」に着目し、子どもから大人まで参加しやすく、一緒に考えて実施できることとして、「かまがや防災かるた」を作ることにしました。自治会、少年消防クラブの保護者、子育て中の主婦たちに防災についてヒアリングし、得られた声をもとに、次のような課題を挙げました。
- どのような意識を喚起すると、かるたを通じて防災意識を高めることができるか?
- どのような防災の現状を振り返ることで、世代間の交流、地域の担い手を紡ぐかるたを構築できるか?
これらの課題をどのように解消すべきかを議論し、かるたの制作に着手、フォーラム当日(2023年2月25日)、できたてほやほやの防災かるたの実物を見せてくれました。それは、ヨシタケシンスケ氏の絵を彷彿とさせるような、親しみやすく、ユーモラスな絵柄の札は、とてもかわいいものでした(フリスタのJumpsこと村松さんは、ほしい!ほしい!と興奮気味に語っていました)。
ちなみに、市民に対するヒアリング調査、分析、キーワード抽出、読み札の作成は、千葉商科大学の戸川ゼミ、かるたデザイン全般・制作は、同大学の吉羽ゼミが、それぞれ分担しておこないました。
この地域志向活動助成金制度の特徴には、採択された団体に対して、千葉商科大学の先生がアドバイザーとして就いてくれて、学生さんとの協働も可能になる、というものがあります。これは非常に心強いですね。
今後、自治会でかるたを活用してもらい、防災意識の変化など、かるたの効果を調査により把握していく予定とのことでした。
第18回市川フォトフェスティバル(市川写真家協会)
市川写真家協会も、助成金受給団体として、活動内容を報告しました。
「市川フォトフェスティバル」は、「見つけた!私の市川」をテーマに、市川市内の小学生と一般から写真を公募して開催している写真展です。2022年度で18回目を迎えました。
今回は、開催告知ポスターとハガキのデザインを、千葉商科大学の吉羽ゼミによるコンペで選びました。当日の報告資料の中には、結果的には日の目を見なかった、不採用デザインも掲載されていましたが、採用作品に勝るとも劣らない力作揃いでした。採用された作品は、全作品の中で最も目を引く力強さを感じさせるもので、ハガキを見た人が思わず手に取りたくなるような、気になるデザインでした。
フェスティバルは、全作品が一堂に会した市川市文化会館の展示をメインとしながらも、サテライト的に市川市内各地の会場で、発表展と巡回展を開催しました。私も、コルトンプラザ会場で、小学生の作品を鑑賞しましたよ!
- 全作品展示:2022年11月2日~6日 @市川市文化会館
- 発表展:2022年11月28日~12月4日 @アイ・リンクタウン45階展望施設
- 巡回展(一般の部):2023年1月8日~27日 @道の駅いちかわ
- 巡回展(小学生の部):2022年12月21日~2023年1月11日 @ニッケコルトンプラザ日本旅行店内
- 巡回展(小学生の部):2023年1月13日~20日 @シャポー市川むすぶば
市民が撮影した市川市の写真を展示する、ということに留まらない、様々な波及効果も期待できるような取り組みでした。
たとえば、道の駅いちかわの利用者の多くは、市川市外からの来訪者です。そのような方々に、市川市の魅力的な場所やモノ、コトを撮影した写真を鑑賞してもらうことで、市川市への興味喚起、好意醸成などにつながりうると思います。
また、コルトンプラザの日本旅行はコロナ禍で旅行代理店の営業(に留まらず、旅行業界全体)が傷んだと思いますが、店舗に立ち寄ってもらうきっかけづくりになっていますね。
シャポー市川のむすぶばは、期間限定イヴェントが数多く行われる場所ですが、その空間の奥の壁際は階段状になっており、上手に使われていない、いわばデッドスペースになってしまっていることが少なくないそうです。今回の巡回展では、千葉商科大学の吉羽ゼミが、開催告知ポスター&ハガキのデザインをうまく階段状の場所に掲出し、迫力ある空間演出をしていました。これは、今後のむすぶばの空間演出にも有用な示唆を与えることでしょう。
写真と言えば、私が好きな写真家は、佐内正史さんや梅佳代さんで、おふたりの写真集(作品集)を何冊も持っています。が、自分自身では、スマホのカメラで撮影する以外、全く撮影していません。今回、市川写真家協会の発表を聴き、今年はカメラを首から下げて市川市内外を歩き回ったり、自転車で移動するのも良いな(自転車天国研究会 a.k.a.てんてんけん主催「自転車&写真ライド(仮)」があれば参加してみたいです)とも思うのでした。
ご当地アニメ制作・発信(できる街プロジェクト)
できる街プロジェクトは、2015年10月に活動を始めた市民公益活動団体で、地域活性化を目的に、アニメ・漫画を使った地域のPR活動、障害者支援、引きこもり支援、美化活動、演劇など多岐にわたり活動しています。今回は、助成金受給団体として、千葉県(主に東葛地区)のご当地アニメ10作品の制作を行い、作品の一部を柏駅前のデジタルサイネージや鎌ケ谷市のイヴェント時にデジタルサイネージで放送しました。
できる街プロジェクトが制作しているアニメ作品は話題になり、メディアでも数多く取り上げられています。
「できる街プロジェクト」は、自分たちの夢をかなえ、楽しみながら、柏を盛り上げていこうと、二〇一五年に結成された。
「百人ほどのメンバーのほとんどは『大好きな柏のために活動したい』と思っている。アニメを作るなど、夢をかなえるのはすごく大変なことと思われがちだけど、普通の人たちが力を合わせれば実現できる」。代表の楠本慶彦さん(32)は団体名や作品タイトルに込めた思いをこう語った。
楠本さんは熊本市出身。大学卒業後、放射線技師として、日立製作所に入社し、最初の職場が柏市。趣味の演劇を通じて知り合った脚本家、漫画家、音楽家らとともに「やりたいことを具現化し、柏の街おこしにつなげよう」と団体を発足させた。
「関心、共感を得られやすい」と考え、ご当地アニメの制作を活動の中心に据えた。
出所:東京新聞公式Webサイト、「カシワの魅力ゆる〜く発信 『超普通の街』をアニメの舞台に」(2020年8月3日)、https://www.tokyo-np.co.jp/article/46636、2023年2月26日閲覧
今年度の活動では、千葉商科大学の楜沢ゼミの学生と共にアニメ作品を制作し、発信しました。アニメ作品の制作は、ひとつひとつの作業を順番に行うため、ひとりの作業が遅れると全体のスケジュールに影響します。スケジュール通りに進まないこともあったそうですが、全員が力を合わせて期日までに作品を完成させることができたそうです。
いちかわフードバンクbyフリスタ(フリースタイル市川)
フリースタイル市川のフードバンク事業でおこなってきた活動について、フリスタの野口淳さんが紹介しました。
こちらの写真は壇上で話をしている野口さんの様子です。
福祉団体ではなく、食品関連団体でも、環境問題に取り組むために結成した団体でもない、まちづくりを行っているフリースタイル市川が――といっても、土木構造物をつくっているわけではなく、地域の人と人、団体と団体ををつなぎ、「ひとつひとつの想いをつないで市川に流れをつくる」ことをミッションとして活動しています――せっかく作られたのに、そして品質に問題がなく、まだ食べられるのに捨てられてしまう食品を、捨てるのではなく、集め、管理し、それを、様々な事情で必要な量の食品を手に入れることが難しい人に届ける「フードバンク」の活動をしていることの意味を、丁寧に説明しました。
余っている食品を集めるためには、活動をしていることを知ってもらい、共感を集める必要があります。そのため、当Webサイトや、Twitter、FacebookなどのSNSでの情報発信、リーフレット配布、イヴェント(ニューボロイチやICHI-ICHIマーケットなど)に出展して食品の寄贈を受け付ける、といった活動に注力しています。市川市を拠点に活動するデザイナー・ミカヅキデザインさん制作によるロゴを掲げて、ブランディングにも力を入れています。
また、集めた食品を保管するためには倉庫が必要ですが、倉庫の家賃が毎月発生します。フードドライブ用のボックス(2023年2月時点では、コープ市川店とkeiyoGAS CommunityTerraceの2箇所に設置しています)から、食品を倉庫に車で運ぶための運送費も必要です。
フリースタイル市川の既存メンバーだけではこの活動を支えられないので、ボランティアのスタッフに参加してもらっています。このように、時間のある人には、ボランティアとして倉庫で作業をしてもらっている他、資金面で活動支援したいと思ってくださる方からは寄付をいただいたり、食品を消費し切れずに余らせてしまったという人からは食品を寄贈(フードドライブ)していただいています。個人だけでなく企業、団体のご協力、活動への参加もあります。
各地でフードバンク団体や、子ども食堂団体などが活動しており、それぞれが課題を抱えていますが、活動領域の一部が重複していることから、共通する課題もあります。そこで、「フードバンク・シンポジウム」と銘打った集会を催し、各団体から活動報告をしていただくとともに、パネルディスカッションを通じて、今後の展望や課題解消に向けた動きについて話し合いました。
――などなど、まちづくりを行うフリースタイル市川が、フードバンク事業を通じて、地域の人たちに出番と役割があることを示し、できる人が/できる時に/できることをやり、つながりを生み出している、ということをお伝えしました。
地域のHUB(ハブ)になっている千葉商科大学
各団体の報告が終わり、室内ではeスポーツ体験会が行われていた時(太鼓の達人というゲームは楽しそうでした)、私は室外に設けられた各団体のポスターセッションのブースに立ち寄っていました。「速報」にも書いたように、鎌ケ谷マネジメントラボの甲斐さんには色々と質問を投げかけたりもして、鎌ケ谷市と市川市を相互に行き来して交流しましょう、という話もしました。
また、千葉商科大学の先生方ともお話をする機会がありました。お話をする中で、フォーラム冒頭で佐藤先生も紹介していましたが、千葉商科大学がは地域連携に力を入れているため、既につながっている地域の学校や個人、企業が多数あり、「千葉商科大学 with ○○」は魅力ある(問題解決力もある)組織連合体と見なされ、次々と新たな共感者を巻き込んでいく、渦のような、HUBのような存在たりえている、と感じました。
フリースタイル市川は、「千葉商科大学 with ○○」の「○○」の一員でもあります。互いに刺激を与えつつ、地域に好循環という渦を生み出していきたいですね!
このたびは、地域志向活動助成金制度に採用していただき、そして、フォーラムで報告や交流の機会をいただき、ありがとうございました!