公開日 2023年1月17日
更新日 2023年1月18日
2011年の東日本大震災とそれに伴って生じた福島第一原子力発電所事故。
2020年以降の新型コロナウイルス感染症の爆発的な拡大による世界的なパンデミック。
2022年2月に勃発したロシアによるウクライナへの侵略による死者・難民の発生。
その前から続く世界的な物価上昇。
冒頭から、近年発生した、国家レベル、あるいは世界規模の大惨事などを列挙してしまいましたが、これらの事象について分析するのが本稿の目的ではありません。タイトルに、「【小学生向けイヴェント】捨てない社会をつくろう!(2023.1.29)」とあるように、これからの社会を担う子どもたちに向けて開催されるイヴェントを紹介します。
VUCAな時代の到来
先程挙げたように、近年、事前に発生を予測することが困難な、そして、ひとたび発生したら、過去からの延長線の上であれこれ考えているだけでは、対応しきれない事象がいくつも発生しています。
ところで、VUCA(ヴーカ)という言葉をご存知でしょうか?
「VUCA」をご存知でしょうか。ヴーカと発音することが多いようです。
変動が大きく、不確実性が高く、より複雑で、曖昧さが増している。今はそんな時代で、そんな世界である――というようなことを言う場合に、VUCA時代やVUCAワールドなどの表現をするようです。
これまでは過去の成功・失敗に基づいて未来を予測し、意思決定をしていくことが求められていた。しかし、いまや確実にわかっているのは、「確実にわかる未来などほとんど存在しない」ということぐらいだ。世界の経済人が集まるダボス会議(世界経済フォーラム)では、このような世界を指して「VUCAワールド」という言葉が聞かれるようになった。これは、Volatility(変動)、Uncertainty(不確実)、Complexity(複雑)、Ambiguty(曖昧)の頭文字をつなぎ合わせた造語である。
出所:佐宗邦威『直感と論理をつなぐ思考法―VISION DRIVEN』ダイヤモンド社、2019年
これから先のVUCA時代において、変化の波に翻弄されるだけでなく、ビッグ・ウェイヴを乗りこなし、さらに自分でオリジナルの流れをつくっていくような、逞しさ、しなやかさを身に付けたいものですね。
参考記事: VUCAについて、シナリオプランニグについて
これからの時代を担っていく子どもたちに向けて、こうすれば良いんだよ、と、大人が考える正しい、または模範の回答を教えるのではなく、子どもたちが自ら課題について考え、アイディアを出して、愉しみながら課題を解決するために必要な、「創造的課題解決力」や、「モノコトをゼロから生み出す力」を育む場があります。
どこに?市川市に!
というわけで、今日は「ゼロから創る力を育むプログラム」を提供している、「やわたの森Kids
」さんが主催する1月29日(日)のイヴェントを紹介します。
「やわたの森Kids」とは
不安な将来をワクワクの未来に変える ~ やわたの森Kidsは、「こども達に自ら豊かな人生を創る力を贈りたい」との思いから、2児を育てるワーママが仲間と創ったソーシャルビジネス(の芽)です。いつかみんなで開発した「ゼロから創る力を育むプログラム」が日本中で広まったら最高!
出所:やわたの森Kids公式インスタグラム、https://www.instagram.com/yawatanomorikids/、2023年1月13日閲覧(太字は筆者)
やわたの森Kidsを主宰する三浦雅代さん(第2回いちカイギで登壇いただきました)は、過去の経験から「生き抜く力を持つ子供」の教育に着目し、コロナ禍真っ只中の2020年に「やわたの森Kids」を立ち上げました。「やわたの森Kids」では、「デザイン思考」と「あそび」を取り入れたプログラムを開発しているとのことです。
【1月29日開催】廃材でヌイグルミ作り+ロゴデザイン=捨てない社会を創る!
1月29日(日)にやわたの森Kidsさんが開催する小学生向けのイヴェントの概要は下記の通りです(やわたの森Kids公式Instagramの情報をもとに作成。https://www.instagram.com/p/CnIhDYMP64B/)。
イヴェント名
廃材でヌイグルミ作り+ロゴデザイン=捨てない社会を創る!
ごみを宝に変えるアップサイクルで「捨てない」をみんなの暮らしに広げるため、今回の「モリノテ探究隊」では、次のことに挑戦します!
- アパレル産業のごみ問題について調べ考える。
- 地域の方々から頂いた家庭で眠っていた廃材でオリジナルのヌイグルミをつくる。
- ヌイグルミを売るとしたらどういうブランド名・ロゴがいいか考え、デザインする。
先行き不透明な答えのない時代。子どもたちが幸せに生きられるために育むべき能力は何でしょう?「モリノテ創造隊」では、子どもたちが自ら愉しみながら、自由な創作や社会に貢献するデザインに取組み、どんな状況でも自分や周りを幸せにできるような創造的課題解決力やモノコトをゼロから生み出す力を育みます。
- 日時:2023年1月29日(日)10:30~16:00
- 場所:KeiyoGAS Community Terrace(てらす)(JR本八幡駅南口の近く)
- 料金:5,800円
- 対象:小学生(午後のロゴデザインは保護者の参加も可能です)
- 申込み:専用LINEに1/21(土)までに「参加者のお名前」、「参加者の学年」、「緊急連絡先」をご連絡下さい
市川市の鬼越を拠点に活動し、活躍の幅を広げているミカヅキデザインさんが講師をつとめるというのも、この講座の特徴であり、魅力だと思います。何を隠そう、フリースタイル市川のロゴや、いちかわフードバンクのロゴも、ミカヅキデザインさんにお願いして制作していただいたものなのです!
2022年11月にやわたの森Kidsさんが開催した同種のイヴェントに関する記事もご参照ください。アップサイクルとは何か?という疑問をお持ちの方は必読です!
「FREITAG(フライターグ)」や「BEAMS COUTURE(ビームスクチュール)」、「KAFFEE FORM(カフェ フォルム)」、そして、市川市で学生服・学用品のリユース&アップサイクル事業を手掛ける「ゆずりばいちかわ」さんを取り上げています。
なお、「OUI OU(ウィ・ユー)」というアップサイクルブランドがありますが、このブランドは、「創作あーちすと」としも知られる「のん」さんがプロデュースしています。
アパレル産業に関する環境問題について
上で紹介した、やわたの森Kidsさんによるイヴェントでは、アパレル産業のゴミ問題に着目し、服などを捨てるのではなく、別のもの(今回は「ぬいぐるみ」)に生まれ変わらせるということを考えます。
アパレル産業、つまり、衣料品の製造・販売に関わる産業(ファッション産業という言い方もします)は、人々の日常生活と切り離せないわけですが、実は、この産業は地球環境に様々な影響、負荷をもたらしている、ということをご存知ですか?
環境省のWebサイトより、ファッション産業が環境に与えている影響についての記述を引用します。
ファッション産業では、原材料の調達、生地・衣服の製造、そして輸送から廃棄に至るまで、それぞれの段階で環境に影響を与えています。現在、企業においては環境負荷を少しでも低減させるための様々な取り組みが図られていますが、衣服は色々な素材が混合されてできており、また海外における生産段階は、数多くの工場や企業によって分業されているため、環境負荷の実態や全容の把握が困難な状態となっています。
(中略)
私たちが店頭で手に取る一着一着の洋服、これら服の製造プロセスではCO2が排出されます。また、原料となる植物の栽培や染色などで大量の水が使われ、生産過程で余った生地などの廃棄物も出ます。服一着を作るにも多くの資源が必要となりますが、大量に衣服が生産されている昨今、その環境負荷は大きくなっています。
出所:環境省 サステナブルファッション、https://www.env.go.jp/policy/sustainable_fashion/、2023年1月13日閲覧(太字は筆者)
上の図が示すように、服をつくる過程で、二酸化炭素が多く排出され、水を多く使っています。その他、原材料を調達する段階では、コットンなどの天然繊維を栽培する時に化学肥料を使用することで土壌汚染が起きたり、ポリエステルなどの合成繊維の製造に石油資源を使用するなど、環境に負荷がかかっています。
また、服がそれを必要としている人の手元に行き渡った後、使用され、やがて不要になると、それを手放すことになります。不要になった服を人が手放す方法は、3つに分けられます。
- 古着として譲渡・売却(リサイクルショップやフリマアプリ)
- 資源回収、地域・店舗回収
- 可燃ごみ・不燃ごみとして廃棄
現状は、ごみとして出される服の割合が高いですね。リユース、リサイクルにより、再活用される割合は34%で、徐々に高くなっているということですが、1日にどれだけの衣服が焼却・埋め立てされているかを知ると、ごみとして出す衣服をなるべく減らそう、減らさなくては、減らさなくちゃ!という意識が強くなるはずです。
1日で大型トラック130万台分に相当する衣類が、焼却・埋め立ての対象となっているのです。想像もできません。1年間、365日分に換算すると、4億7,450万台分です。想像できません。
衣類だけでこの量です。日本全体で考えると、日々、排出されるごみの量は天文学的な数字にのぼり、やがて日本の国土はごみで埋め尽くされてしまうのではないか?という気さえしてきます。
そういえば、「フランス人は10着しか服を持たない」という書籍がありますね。私は読んだことはないのですが、書店で一時期平積みにしてあるのを目にしました。服を見ると、「あれもほしい」「これもほしい」「もっとほしい」「もっともっとほしい」※1と思ってしまい、色々と買いたくなる私ですが、買いすぎないように気をつけます。
そういえば、先日私の家族が某チェーン店に、もう着ない服を持参し、回収してもらっていました。話によると、大々的に回収していることを告知はしていないが、店員さんに伝えると受け取ってもらえるらしいです。
参考:コットン製の衣料品にまつわる深刻な問題
それにしても、服を1着つくるのにも、環境に負荷がかかっていて、しかも、製造現場では人権問題があるということを聞くと、じゃあ私たちはどこで(どの店で)、どの服を(どのブランドの品を)買えばよいのだろう?と悩んでしまいます(悩んでも先に進めないので、悩むのではなく、考えよう――これは、高校時代に家の本棚にあった、亡き父の所持品、哲学者・池田晶子さん※2の著書で読んだフレイズです)。
アパレル業界を揺るがしている、新疆綿の問題について、いくつか、記事を紹介します。
「Tシャツ1枚500円」と聞いても驚かなくなってしまったほど、私たちの生活には安価な海外コットン製の衣料品や生活用品が広く浸透している。しかし、その海外コットンの多くには大量の農薬や遺伝子組み換え品種が使用されており、問題視されている。中国・新疆ウイグル自治区での強制労働のニュースも世界中を駆けめぐった。
出所:ダイヤモンドチェーンストアオンライン、「めざすは最高級ブランド!環境、人権問題背景に脚光、国産オーガニックコットンの挑戦」(2022年5月16日)、https://diamond-rm.net/management/158618/、2023年1月13日閲覧
セレクトショップ大手のユナイテッドアローズは2023年の秋冬向け商品から、全ブランドで中国の新疆ウイグル自治区で生産された綿花の使用を中止することを決めた。今年の秋冬商品から一部ブランドで先行して使用をやめる。ウイグルでは強制労働の疑いがあり、消費者や投資家の視線が厳しさを増していることに対応する。
出所:日本経済新聞公式Webサイト、「ユナイテッドアローズ、新疆綿の使用停止 人権問題で」(2022年7月14日)、https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC30BLB0Q2A630C2000000/、2023年1月13日閲覧
中国のウイグル地区で生産されている“新疆綿”を巡って、世界が揺れている。ウイグル地区での人権問題を発端に、昨年8〜9月にかけて「H&M」や「パタゴニア」などの企業が新疆綿の取り扱いを止めると発表したこと。最近になって中国の国営メディアや政治団体などが激しい非難を行ったことで、中国でECサイトなどで「H&M」が検索できなくなるなどの大騒動に発展している。新疆綿は綿製品の原料である綿花の一品種を指しているため、特定の綿製品の扱いをやめればいいだけのように思えるが、実際には「中国で生産される綿花のうち、実に90〜95%が新彊綿で、実際には中国で生産される衣服の大半に新疆綿が使われている。現実問題、多くのアパレル企業が新疆綿を使わないということは非常に難しい」(商社関係者)ことが、事態をより複雑にさせている。衣料品の約7割を中国生産に依存する日本は難しい局面に立たされることになる。
出所:WWD、「『新疆綿』の大き過ぎる存在感 不使用ならアパレル生産は大混乱か」(2021年3月27日)、https://www.wwdjapan.com/articles/1198795、2023年1月13日閲覧
中国の北西部にある新疆ウイグル自治区で起きている問題については、報道などで見聞きしたことがあるかもしれません。本稿では詳しく触れることはしませんが、経済がグローバル化するということは、外国で発生している問題(例えば人権問題)と、自分自身の日常的な消費活動(コットンの服を買い、それを着るといような行動)を関連付けて考えざるを得ない、というか、その関係に向き合って考える必要が出てくるということでもあるのかな、と、思います。
2009年に新疆ウイグル自治区のウルムチで暴動が起こって以来、中国政府はウイグル族への規制を強化し続けてきた。何百もの検問所、そして何百万ものカメラと最先端の顔認識技術により、住民たちは日々、追跡・監視された生活を余儀なくされている。
警察はほぼ毎日のように、ウイグル族の家々で家宅捜索を行う。そして、海外の親戚とのコミュニケーションや、イスラム教徒である彼らの身なり(ヒジャブの着用や長いあごひげ等)、宗教書やウイグル語の本を所持しているなどの理由で、彼らを逮捕する。
英公共放送「BBC」によれば、新疆の強制収容所には、ウイグル族をはじめとする100万人以上の少数民族が拘束されているとみられ、施設内では組織的に性的暴行や拷問がおこなわれているという。
出所:クーリエジャポン、「いつか故郷に帰るその日のため 中国での迫害から逃れ、トルコの『ウイグル学校』に通う子供たち」(2023年1月6日)、https://courrier.jp/news/archives/311794/、2023年1月13日閲覧
おまけ:「戦おう。ここが俺たちの世界だ。俺たちはこの世界で生きていかなければならないのだから」
今回はアパレル業界の話が出てきましたが、これを書きながら、私の頭の中には、
- ブロイラーの飼育ってどうなっているのだろう?
- 肉牛を1頭育てると、地球環境にどのような負荷がかかるのだろう?
- サラダチキンをたくさん食べるということは、地球に対してどのような影響を間接的にもたらすことになるのだろう?
という疑問が、次々と浮かんでいたのでした。
グローバル化の進んだVUCAな世界で、私たちは、当事者として、あるいは共事者(小松理虔さんによる造語で「当事者ではないけれど、その“事”を共にしている感覚は持ち合わせている者」という意味※3)として、遠い世界の問題にも、市川市内で起きている問題にも、同時に対峙していく必要があるのだろうと思います。
なぜならば、「俺たちはこの世界で生きていかなければならないのだから」(「桐島、部活やめるってよ」より)。
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〈注釈〉
※1:THE BLUE HEARTS「夢」の歌詞です(作詞作曲は真島昌利)。「夢」は、1992年10月25日に発売された、THE BLUE HEARTS 10枚目のシングル。
※2:哲学者・池田晶子さんは2007年に現在の私の年齢の時に病気で亡くなりました。池田さんがリスペクトしていた作家は、私の父がリスペクトしていた作家で、父はその作家の名を子につけました。その子とは、他ならぬ私のことです。
※3:共事者の意味の出所は次の通りです。ハフポスト、「『当事者』以外、苦しみを語ってはいけないのか?福島の地域活動家は問いかける」(2019年9月16日)、https://www.huffingtonpost.jp/entry/yosomono-event_jp_5d4d0ae4e4b0066eb70f6e0e、2023年1月13日閲覧