【コラム】映画『桐島、部活やめるってよ』を劇場鑑賞しました!

コラム

劇場公開から10周年を迎えた映画『桐島、部活やめるってよ』※1(以下、『桐島』)が、2022年11月25日(金)から全国の映画館で上映されています。10年前に劇場で何度も鑑賞し、その後もブルーレイを購入して繰り返し見ているほど『桐島』が好きな私は、10周年を記念した上映が発表された時、初日に映画館で鑑賞することを決め、実際に11月25日(金)に新宿ピカデリーで鑑賞しました。

冒頭の写真は、10年前の鑑賞時に映画館で買った『桐島』のパンフレット(表紙と裏表紙)です。11月25日(金)、これを持参して劇場に赴きました。

2022年11月25日(金)新宿ピカデリーのシアター③で19:20開始の映画『桐島、部活やめるってよ』の案内板。シアター③の入口に表示されていたものです。(撮影:2022年11月25日、場所:新宿ピカデリーのシアター③)

この映画では、1つのエピソードが異なる視点から何度も描かれますが、中でも執拗に繰り返されるのが「金曜日」で、この金曜日は、教室の黒板に書かれた日付から、「11月25日」であることが知られています。劇場公開10周年の今年、11月25日が「金曜日」だということに誰かが気付いたのでしょう、10周年記念上映の初日は「11月25日(金)」に決まりました。作中で登場人物の高校生たちを混乱に陥れる、衝撃の事実が明らかになる「11月25日(金)」に。

2022年11月25日(金)新宿ピカデリーのシアター③で19:20開始の映画『桐島、部活やめるってよ』の鑑賞チケット。「プレチケ】桐島、部活やめる」と書かれています。(撮影:2022年11月25日)

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この映画の主人公は、高校2年生の男子、映画部の部長、前田ですが、前田の成長譚というわけでも、青春の挑戦と挫折を描いた作品というわけでもありません(前田が成長したり、挑戦したり、思い通りに事が運ばず苦しむ場面もありますが)。では、どんな映画か、と言えば、こんな感じの説明はどうでしょうか。

バレー部のエース、桐島(2年生)が部活をやめるらしい――そんな噂が、金曜日の放課後、生徒たちの間を駆け巡り、心をかき乱される者がいる。その一方、そんな混乱とは無縁の者もいる。部活に熱中する者、クラスで「イケてる」と思われているグループにいることが自分のアイデンティティになっている者、かなわぬ恋をあきらめきれない者…。映画部、バレー部、バドミントン部、吹奏楽部、野球部の中での立場、部員間の力関係、実力差。「ダサい」と言われる者に宿る熱、「カッコいい」と言われる者の胸中で燻る何か。

240字。このくらいで留めておきましょう。

夕陽が射し込む教室。

色々な見方ができる作品で、学園が舞台の群像劇であるため、見るたびに、異なる人物の立場で作品に入り込むという楽しみ方ができます。野球部のキャプテン、吹奏楽部の後輩、前田を「巨匠」と呼ぶ教員など、強烈な存在感を放つ愛すべきキャラクターが多数登場します。何度も繰り返し(この作品が同じシーンを異なる視点から何度も描いているように、繰り返し、何度も、色々な人物の立場で)楽しめる、重層的な作品です。

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『桐島』では、イケてるグループに属する男子、帰宅部の友弘を演じた浅香航大こうだいさんが、次のように語っていました。

やりたいことやっている人たちいちゃもんをつけて格好だけ付けている人がいたりするのが、学校だし、それが青春だし。

出所:ABEMA TIMES、「浅香航大、『桐島、部活やめるってよ』を振り返る『忘れられない思い出』」(2019年4月27日)、https://times.abema.tv/articles/-/7001400、2022年11月29日閲覧(浅香航大さんのコメント)※赤太字、青太字は筆者による

学校だけでなく、会社でも同じことが言えそうです(会社が青春2、3かどうかはわかりませんが)

「やりたいことやっている人たちにいちゃもんをつけて格好だけ付けている人がいたりするのが、会社だし、それが青春だし」

誰かが好きでやっていることを嘲笑バカにしたり、他人が没入している趣味を否定することに注力する人がいますが、それは不毛ですね(不毛と言えば映画『桐島』で、映画部の武文たけふみが、前田との会話の中で、体育の授業のサッカーで活躍する「イケてる」グループのメンバーに対して、「体育のサッカーで何点取っても無意味。Jリーグに行くなら別だけど。不毛なことをさせてやる」というようなことを言い放つ場面があります)

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大人になっても、夢中になれることがあり、日々を楽しく暮らしている人がいます。また、地域で活動をしており、解決すべき課題に直面して、何とか打破しようともがいている人もいます。

他にも、次のような人がいることでしょう。

  1. 地域で何かしたいが、やりたいことがあるわけではなく、何から着手してよいかもわからない人。
  2. 市外で働いており、住んでいる地域ではほとんど活動をしていないが、何か始めたいと考えている人。
  3. 会社では重要な役職に就いており、仕事は充実しているものの、私生活の満足度は高くない人。
  4. 長年、市外で働いて活躍してきた自負があるが、定年退職した今は、毎日自宅ですることもなく過ごしている人。

職場とも自宅(家庭)とも違う、(住んでいる場所や職場がある)地域には、1~4のような人の活躍の場がたくさんあるはずです。ただし、その活躍の場が、あるいは人との出会いの場が、どこにあるのか、探そうとしても、どうやって探せばよいのかわからない人も、また多いということを感じています。

例えば、千葉県の市川市という地域で「まちづくり」に関する様々なことに取り組んでいる、特定非営利活動法人フリースタイル市川では、法人のヴィジョン、「ひとつひとつの想いをつないで 市川に流れをつくる」に共感してくれる仲間を求めています。

関わり方は様々です。

ちなみに、私は、2017年の夏に、いちかわTMO講座(市川市で毎年開講されている、まちづくりのリーダーを養成する講座)に申し込んだとき、上の「1.地域で何かしたいが、やりたいことがあるわけではなく、何から着手してよいかもわからない人」であり、かつ、「2.市外で働いており、住んでいる地域ではほとんど活動をしていないが、何か始めたいと考えている人」でした。

内発的動機があったわけではなかったのですが、学生時代から「まちづくり」というものには興味があり(土木工学で修士を取得したのですが、都市計画・交通計画を専門に扱う研究室に籍を置いていました)、いちかわTMO講座を受講し、様々な講義を聴いたり、ワークショップを重ねるうちに、自分がやりたいのはこんな感じのことかな、という方向性が、何となく見えてきました。ちなみに、同講座を受講していた時、同期のメンバーには、「地域で活動をしており、解決すべき課題に直面して、何とか打破しようともがいている人」も多かったですが、私のように「何か始めたいと考えている人」もそれなりにいて、内なるエネルギーのやり場がまだわからない人、というのは、どんな地域にもそれなりに存在しているはずだ、特に市川市にはこういう人、いわば潜在的なまちづくりの担い手が、とても多いに違いない!と思っています。

何かやりたいけれど、それが何かわからない、という人は、その何かの正体を見極めるまで動き出さないのも良いのですが、いちかわTMO講座を受講すると、良い刺激やインスピレイションを受けられ、やりたいことが見つかる可能性もあるので、「とりあえず、TMOへ!」というのもアリだと思います。

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フリスタのメンバーで『桐島』の上映会を開き、感想を述べ合いながら、まるやブルワリーのクラフトビールを飲みたいね!――そんなことを、かなり前から言っていますが、未だにかなっていません。誰か、上映会を企画してください!

注意:このシーンは『桐島』には登場しません。ただし、前田たちのクラスにこの人物がいて、作品では使われていませんが、こういう場面が存在した可能性は否定しきれません。ちなみにこの画像には、「推理に行き詰る名探偵」というおかしなタイトルが冠されています(画像出所:「ぱくたそ」)。

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〈注釈〉
※1:映画『桐島、部活やめるってよ』
監督:吉田大八
原作:朝井リョウ

脚本:喜安浩平、吉田大八
撮影:近藤龍人
主題歌 高橋優「陽はまた昇る」
キャスト:神木隆之介、橋本愛、大後寿々花、東出昌大、清水くるみ、山本美月、松岡茉優、落合モトキ、浅香航大、前野朋哉、高橋周平、鈴木伸之、榎本功、藤井武美、岩井秀人、奥村知史、仲野太賀(太賀)

公開日:2012年8月11日
※2:「春夏秋冬」の四季を、「青春、朱夏、白秋、玄冬」と称し、これが転じて、人生の前半、四季における春に相当する時期を「青春」と呼ぶようになったようです。
※3:石井竜也(a.k.a.カールスモーキー石井)さんは、卒業の寄せ書きに、「情熱は青春の証」と書いたそうです。(情報出所:TBSラジオ「コサキン快傑アドレナリン」1992年2月22日、ゲスト:カールスモーキー石井、Bon)