フリースタイル市川の公式ウェブサイト(当サイト)では、本八幡駅北口で計画されている再開発の状況に関する記事を何度か公開しています。と、いうのも、フリースタイル市川は、「ひとつひとつの想いをつないで、市川に流れをつくる」ことをミッションとする、市川市でまちづくりを行うNPOだからです。
本八幡北口の再開発については、既にかなりの本数の記事を公開しています。その中でも、こちらのコラム「知っていますか?本八幡駅北口の再開発計画を」は、かなり初期のものです。
このコラムの中で、再開発に伴って「八幡一番街」がどうなってしまうのか、危惧しているということを書きました。
市川市の2018年度の資料「本八幡駅北口再開発基本構想~歴史と未来をつなぐ行政・文化中心地の創造~」には、再開発後の八幡一番街について、「八幡一番街の空間継承」、「商店街を継承した歩行者導線を確保」という記述がありました。
この「継承」というキーワードは重要です。
「本八幡駅北口再開発基本構想」の副題にある「歴史と未来をつなぐ」、そして、この構想に記されている「街づくりの目標」の1つである「歴史の積み重ねにより形成された街の背景を尊重する空間づくり」に沿ったもので、この地区の再開発を考える上で欠かせないものです。
再開発に伴い、2棟の高層建築が建てられる(一番街を挟んで南北に2棟建つうちの南側、JR総武線の線路に近い棟は、JR市川駅前の、45階建てのアイリンクと同程度の高さになる)予定ですが、2棟の間に、八幡一番街が伸びる(というか、横たわる)ことになります。
さて、2018年度に公開された「本八幡駅北口再開発基本構想」の中には、あくまでもイメージという位置づけではありますが(とはいえ、イメージは侮れません。メージは強烈な印象を人に与えます。「たかがイメージ、されどイメージ」です)、およそ現在の八幡一番街の雰囲気を感じられないような将来像(下図のうち矢印の上の画像)が描かれていました。
これに対し、昨年、つまり、2023年の7月28日に行われた市川市景観審議会で使用された「本八幡駅北口駅前地区第一種市街地再開発事業について」という説明資料では、「八幡一番街」は「にぎわい通路」という名称になっており、将来のイメージ(下図のうち矢印の下の画像)に「八幡一番街を継承する新たなにぎわいの形成」という言葉が添えられていました。
2つのイメージのうち、下の図が、現在の八幡一番街を継承するものと言えるかどうかは、関係者の意見を聞いてみたいとは思いますが、少なくとも上の図よりは「継承」していると言えそうです。いや、言えます。上の図ははっきり言って八幡感ゼロ、一番街感ゼロです。
Ver.2018からVer.2023にアップデートバージョンアップされた八幡一番街の将来イメージに、正直、少しだけホッとしました。
いやいや、これは安心できませんよ、という意見をお持ちの方もいることでしょう。
このコラムを肴に、再開発について興味を持つ人同士で議論していただければ幸いです。
ちなみに、私は、「八幡一番街」の名を遺すのかどうか気になっています。わざわざ改名して、「にぎわい通路」という、どこにでもありそうな名にするよりも、現在の名を残す方が「継承」という意味では良いと思います。
* * * * *
専門家の意見を1つ紹介します。
2023年7月28日に行われた「令和5年度 第1回市川市景観審議会」における、山﨑誠子委員の発言からの引用です。なお、冒頭で触れられている「先に行われた本八幡の再開発の地上部」というのは、おそらく、ターミナルシティ本八幡を指しているのではないかと予想しますが、どうでしょうか。
先に行われた本八幡の再開発の地上部は賑わっているでしょうか。綺麗になりましたが、人が居つきにくい空間だと感じます。ネット通販などの広がりで、お店を運営することは非常に難しく、賑わいを作ることができるお店は飲食しかないという状態です。そうするとコロナのようなことが起こった時に、途端にゴーストタウンのようになってしまいます。 このにぎわい通路の周辺については公共施設が肝になると思います。賑わいの創出をお店に頼むと、お店に人が入らなかったので倉庫になりましたとなりかねません。お店に賑わいづくりを強いることは酷な環境です。 例えば、イベント時の賑わいでも良いと思いますが、何か本八幡らしいにぎわい空間というものを見極めて、公共施設、子供のためのスペース、病院など、必ず人が来るところ、人がいつもいる場所を低層部に作らないと、市川駅のように再開発したけど寂しくなったというようになってしまうのではないでしょうか。その時の検証をしっかりして、再開発をしていだきたいと思います。
出所:市川市公式ウェブサイト「令和5年度 第1回市川市景観審議会」(2023年7月28日開催分)https://www.city.ichikawa.lg.jp/common/cit01/file/0000438902.pdf、2024年3月18日閲覧、太字は筆者。
鋭い意見だと言わざるを得ません。お店だけに「賑わい創出を任せてしまう」のはいけないよ、という注意喚起というか、警鐘を鳴らすコメントだと思います。
市川駅のように、というのは、アイリンクのウエスト棟の2階に空きテナントがあるというようなことを指しているのではないかと思います。
なお、山崎委員の発言を受け、市川市の街づくり整備課長は、次のように応答しています。
にぎわい通路についてですが、どこでもあるような景観になってしまうことが危惧されていますので、現在地元の準備組合では、商業に特化して、勉強会、商業コンサルを入れて、検証しているところでございます。 市もその勉強会に同席しておりますが、地元の方もいかに寂れが解消できるかというのは、検討しているところでございます。 先ほど、幅員の説明が漏れてしまいましたが、7メートルで配置を検討しております。7メートルとした理由が二つございます。1点目が今の道路が概ね7メートルであるため、元々の幅員を確保するということです。2点目は歩行者専用道路となりますので、両側に賑わいを演出するため、張り出してベンチを置いたり、縁日のようなことができる場所として1.5mずつを確保し、歩道の幅員としては4メートルの合計7m配置しております。東側との連続性も含めて、寂れることのないように地元とともに検討していきたいと思っております。
出所:市川市公式ウェブサイト「令和5年度 第1回市川市景観審議会」(2023年7月28日開催分)https://www.city.ichikawa.lg.jp/common/cit01/file/0000438902.pdf、2024年3月18日閲覧、太字は筆者。
地元の準備組合としては、商業に特化して、にぎわい通路が(ありふれた景観にならないように、また、その名に反して――皮肉なことに――さびれた通路になってしまわぬよう)専門家の意見を参考にしながら「検証している」とのことです。検討ではなく、検証。何を、でしょうか。気になります。どこにでもあるような景観にならないように、何かを検証している、と読み取れます。
山崎委員は商業特化だと集客力が読み切れないなど、問題があるという風に言っているので、公的な施設と商業施設をミックスした場にするなど、常時、人が往来するようなストリートになると良いのかな、とも思います。
* * * * *
以下、参考までに、「本八幡駅北口駅前地区第一種市街地再開発事業について」(市川市景観審議会、2023年7月28日)より、
- 八幡一番街こと、にぎわい通路の位置(平面図)
- 2棟の高層建築物(タワーマンション、いわゆるタワマン)とにぎわい通路の位置関係(断面図)
- バス通りのやや上空から眺めたにぎわい通路(イメージ図)
を紹介します。
画像3枚の出所:「本八幡駅北口駅前地区第一種市街地再開発事業について」(市川市景観審議会、2023年7月28日)https://www.city.ichikawa.lg.jp/common/cit01/file/0000435926.pdf、2024年3月15日閲覧。冒頭の画像の出所も同様。
このコラムを肴に、再開発について興味を持つ人同士で議論していただければ幸いです(reprise)。
* * * * *
執筆日 2024年3月18日、19日
公開日 2024年3月19日