公開日 2023年3月24日
2021年11月3日にJR市川駅前にオープンした「市本(いちぼん)」が、2023年3月末に閉鎖される――青天の霹靂とはこのことを言うのだと、2023年2月9日に第一報に触れた時、思いました。
「市本」は、
主に社会人や大学生の方を対象に、本を介した学びと交流を促進し、働きながらも学び続けていける環境の醸成や新たな交流の機会創出を目的とした施設です。気になる本を読んだり本に関するイベントに参加するなどの新たな学びと交流の機会を提供します。
出所:市川市公式Webサイト、「市川市学習交流施設 市本(いちぼん)」(2023年3月1日更新)、https://www.city.ichikawa.lg.jp/edu12/0000377465.html、2023年3月22日閲覧
という役割・性質を持つ施設です。
去る2月9日、次のようなニュースが報じられました。
本をテーマにした講演会が開かれるなどユニークな取り組みで注目を集めていましたが、市は、十分な効果が得られていないとして来月で廃止することを決めました。
出所:NHK WEB(千葉 NEWS WEB)、「千葉 市川市 本を通じた学びの施設『市本』 1年余で廃止へ」(2023年2月9日)、https://www3.nhk.or.jp/lnews/chiba/20230209/1080019937.html、2023年3月22日閲覧
施設の運営は年間およそ3000万円で民間に委託していますが、利用者が1日あたり20人ほどインスタグラムのフォロワー数が1300人ほどで高額な費用に見合っていないと判断したということです。
市川市は子育て支援として小中学校の給食費を新年度にかけて全額、無償にする取り組みなどを進めていて、財源を確保するため事業の見直しを進めていました。
市川市の田中甲市長は、「魅力的な取り組みだったが、市内には図書館もあるのでご理解をいただきたい。今後は、市民生活に直結する施設を作りたい」と述べています。
費用に見合う効果が得られていないことが、閉鎖(終了)の理由だということです。
確かに、安くはない、高い費用だとは思います。単年度で、この費用に見合う効果というのは、どのぐらいのものなのでしょうか。
1日の利用者が、現状は20人程度だったということですが、これが、2倍の40人ならば期待通りと言えたのかどうか。3倍の60人、5倍の100人ならば?
インスタグラムのフォロワー数が1,300人で、これも期待を下回る少なさだったようですが、どの程度の人数にフォローされれば期待通りと言えたのでしょうか。
成果指標が何だったのか、私たち一市民は知る由もないですが、費用が高いか低いか妥当であるかという評価は、効果との比較においてなされるべきだろうと思います。
図書館でもなく、書店でもない、カフェでもなく、ブックカフェのような‥‥市本という施設が、何なのか、既存の施設や店舗との相違点が、わかりづらいということは、確かにありました。
店構えならぬ、施設構え、特に、入口が醸し出すやや重い雰囲気が、入りづらさを感じさせたかもしれません。
施設内で陳列されている本は、立ち読みは可であるものの、購入は不可なのか、それとも可なのか?借りたり返したり、という本ではないことはわかりますが、ちょっとわかりづらかったですね。
施設内やWeb上に、この施設の使い方の説明が、あまりなかったようにも思います。SNSを通じて、イヴェント告知は、頻繁におこなわれていました。
私も、オープンしてすぐに開催された、第1回目の読書会に参加しました。その時のことを綴ったコラムはこちらです。
また、このコラムもそうですが、市川市にまつわる短文を毎日綴っている私のような人には、渡りに船、リスにクルミ、猫にチャオチュ~ル♪といった具合に、ピッタリの企画、市川文芸倶楽部も立ち上がりました。
他にも、日常記憶地図をつくるワークショップや、レコードを聴く市本金曜レコード倶楽部、市川市ゆかりの人物が、本を紹介する市本ブックバトンなど、様々なイヴェントを企画し、開催していました。
しかし、市本はその短い歴史に終止符を打ちます。この場所はなくなります。
場はなくなりますが、試み・企ては、継続してほしいと思います。別の施設に場を移して。
と、思っていたところ、嬉しいお知らせがありました。
みんなの読書会
毎回異なるファシリテーターを迎え、テーマや課題、形式を問わず開催してきた「みんなの読書会」は、今後、市民活動として継続するそうです。月に1回のペースで、市川市内のレンタルスペースなどで開催する予定とのこと。
市川文芸倶楽部
作家の石川智健さんが発起人となって始まった「市川文芸倶楽部」は、市川市内の施設と共催という形で、別の拠点で活動を継続するとのことです。
他にも、まだ発表されていないようですが、これまで市本で行ってきた活動を、別の場所で継続開催することを目指して調整中のものがあるとか。
将来、振り返った時に、市が立ち上げた「市本」は、短命に終わったものの、読書や本というものをベースに集まった人たちが交流して、施設が終了した後も、市内のあちこちで活動が継続し、更に発展し、市本がまいた種子が芽を出し枝葉を広げ、花開いて、果実をいくつもたわわに実らせることとなった――と言うことができれば素晴らしいですね。
面白い企画をいくつも同時並行で走らせてくれた市本に感謝を伝えたいです。そして、私自身は、文芸倶楽部に参加して面白い文を書き、発表したいと思っています。
月末まで営業(という言葉で良いのでしょうか?市の施設だと、このあたりの言葉づかいに迷いますね)している市本、何度も利用した人も、利用経験がない人も、是非、訪問してみてください。
私もあと1回、いや、2回、行ければ良いなと思っています。