執筆日 2023年5月27日、28日
公開日 2023年5月29日
更新日 2023年5月30日
国際的な社会問題には、政治でしか解決できないものがあると思います。
出所:セイジドウラク「G7広島サミット取材報告『C7が首脳宣言を論評!市民セクターから見たG7とは?』」におけるひろしまNPOセンター松原樹裕さんのコメント(2023年5月23日)、太線は筆者による強調
一方で、市民の力でしか解決できない問題もあります。
あとは、政府や市民が、共に力を合わせて歩んでいかないと解決できない問題もあります。
いきなり、ポッドキャスト番組「セイジドウラク」で語られた言葉を紹介しましたが、後程、この言葉に言及します。是非、そこまで辿りついてくださいね。
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G7とは何か
BTW、G7はご存知ですよね。先日、広島市でG7サミットが開催されたばかりです。
G7と言いますが、
- G7のGって何?
- 以前、G8って言ってなかった?
- G20という言葉も聞くけど、どう違うの?
などの疑問を持っている人もいるはずです。
これらの問いに簡潔に答えると、
- G7は Group of 7 のことなので、GはGroup(グループ)を表すよ!
- 言っていたよ!G7(カナダ、フランス、ドイツ、イタリア、日本、英国、米国)にロシアが加わってG8になったけど、ロシアがクリミアを侵攻したことで、参加資格を停止されて、今はG7になっているんだ。
- G7の7か国に、アルゼンチン、オーストラリア、ブラジル、中国、インド、インドネシア、韓国、メキシコ、ロシア、サウジアラビア、南アフリカ、トルコ、欧州連合・欧州中央銀行という、13の国・地域を加えたグループのことさ!
となります。
G7サミットというのは、7か国による首脳会議で、つい先日、5月19日~21日に、広島市で行われました。7か国の首脳以外にもゲストが参加していましたね。最も注目されたのは、ウクライナのゼレンスキー大統領でした。他にも、オーストラリア、ブラジル、コモロ、クック諸島、インド、インドネシア、韓国、ベトナムの首脳と、国連の事務総長、国際エネルギー機関の事務局長、国際通貨基金(IMF)の専務理事、経済協力開発機構(OECD)の事務総長、世界銀行の総裁、世界貿易機関(WTO)の事務局長、世界保健機関(WHO)の事務局長が招かれていました。
ちなみに、G7サミット(首脳会議)は、5月19~21日に開催されたわけですが、その1か月ほど前から、日本各地でG7の国々の大臣たちによる会合が行われていました。
- 気候・エネルギー・環境大臣会合(4月15~16日)@北海道札幌市
- 外務大臣会合(4月16~18日)@長野県軽井沢町
- 労働雇用大臣会合(4月22~23日)@岡山県倉敷市
- 農業大臣会合(4月22~23日)@宮崎県宮崎市
- デジタル・技術大臣会合(4月29~30日)@群馬県高崎市
- 財務大臣・中央銀行総裁会議(5月11~13日)@新潟県新潟市
- 科学技術大臣会合(5月12~14日)@宮城県仙台市
- 教育大臣会合(5月12~15日)@富山県富山市/石川県金沢市
- 保健大臣会合(5月13~14日)@長崎県長崎市
- 首脳会合(5月19~21日)@広島県広島市
さらに、サミットが終わった後も、日本国内で次のような会合が予定されています。
- 交通大臣会合(6月16~18日)@三重県伊勢志
- 男女共同参画・女性活躍担当大臣会合(6月24~25日)@栃木県日光市
- 司法大臣会合(7月7日)@東京都
- 都市大臣会合(7月7~9日)@香川県高松市
- 貿易大臣会合(10月28~29日)@大阪府堺市
- 内務・安全担当大臣(12月8~10日)@茨城県水戸市
※各会合の開催場所などは東洋経済オンラインの記事などを参考にしました。
7か国の各分野の閣僚クラスが、日本各地で会議を行っているということは、意外と知られていないのではないでしょうか。ちなみに、「交通大臣会合」と「都市大臣会合」には、日本からは恐らく国土交通大臣が参加するものと思われます。
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C7とは何か
BTW、G7には、政府とは独立したステークホルダーによって形成された「エンゲージメント・グループ」というものがあり、G7で議論される関心分野について、G7の成果文書に影響を与えることを目的として、政策対話や提言を行っています。
この「エンゲージメント・グループ」のひとつに、Civil Society 7(通称「C7」)があります。G7ならぬ、C7です。
C7は、市民社会により組織されており、毎年、議長国の市民社会が中心となって、G7国のみならず、G20諸国や開発途上国等の市民社会と協働しながら提言をまとめ、G7に向けて発信しています。(情報出所:「【プレスリリース】G7広島サミットは『雨』市民社会が総括」(2023年5月21日)、https://g7-cso-coalition-japan-2023.mystrikingly.com/blog/230522-ngospace-c7-pressconference、2023年5月28日閲覧)
ちなみに、「エンゲージメント・グループ」には、C7の他に、次のようなものがあります。
Business 7 (B7)
B7はG7と連携する公式プラットフォームを目指しており、G7各国の経済団体が集まり企業活動及びグローバルな貿易活動に影響を及ぼす包括的なテーマに関して勧告を作成します。
Labour 7 (L7)
L7は労働者の利益を代表し、G7に先立ち労働組合運動の主要メッセージを伝えるエンゲージメントグループで、G7各国の主要な労働組合の集まりとなっています。
Science 7 (S7)
G7各国の科学アカデミーが毎年集まり重要課題に関する共同声明を準備するエンゲージメントグループです。
Think Tank 7 (T7)
G7諸国の研究機関が集まり主要なテーマに関する分析と提言を表明するためのエンゲージメントグループです。
Women 7 (W7)
W7は女性および少女の権利問題に取り組むG7諸国と途上国の市民社会組織の集まりで、ジェンダー平等が一般市民にとり目に見える課題となることを目標として掲げています。
Youth 7 (Y7)
Y7はグローバルガバナンスに関する課題への取り組みを希望する、主にG7諸国出身の若者が集まるエンゲージメントグループです。
※B7からY7までの情報出所は以下の通りです。JPNICブログ、「G7・G20エンゲージメントグループについて」(2019年9月9日)、https://blog.nic.ad.jp/2019/2935/、2023年5月28日閲覧。
冒頭で紹介した言葉を市川市に当てはめる~政治の力、市民の力、政治と市民の協力~
ところで、冒頭で紹介した言葉ですが、これは、C7が、G7広島サミットに対する評価を発表した際に、C7のメンバーである松原樹裕さんが発したものです。
再度、確認してみましょう。
国際的な社会問題には、政治でしか解決できないものがあると思います。
出所:セイジドウラク「G7広島サミット取材報告『C7が首脳宣言を論評!市民セクターから見たG7とは?』」におけるひろしまNPOセンター松原樹裕さんのコメント(2023年5月23日)、黒色と青色の太字は筆者による強調
一方で、市民の力でしか解決できない問題もあります。
あとは、政府や市民が、共に力を合わせて歩んでいかないと解決できない問題もあります。
そういう視点からすると、今回の首脳宣言は、私たち市民と、政府との間に、距離感であったり意識のギャップがあるように感じますので、そういう意味ではとても懸念を感じています。
青色の太字で強調した箇所は冒頭で引用した部分には含まれていませんでしたが、今回の首脳宣言に対する、C7の期待外れという感想であり、C7からの警鐘でもありますね。市民社会に、もっと機会を与え、期待し、共に力を合わせて課題解決のために歩むようなことを声明として打ち出してほしかった!ということだと思います。
これは、国際的な社会問題の解決を目指して議論が行われたG7サミットの成果を受けての、松原さんの発言なので、「政府と市民」の関係となっています。規模の違いこそあれど、地域社会の問題を解決しようとする場合も、同じようなことが言えますね。市川市に当てはめれば、こういう風になるでしょうか。
- 市川市の問題には、政治(市長、市川市議会)や行政(市役所)でしか解決できないものがあります
- 市川市の問題には、市民(民間、NPO、任意団体、個人など)の力でしか解決できないものもあります
- 市川市の問題には、政治と市民が連携しないと解決できないものもあります
市民と行政の連携
私たち、フリースタイル市川は、「ひとつひとつの想いをつないで、市川に流れをつくる」というミッションを掲げて、市川市で、かなり広義の「まちづくり」を行っています。行き当たりばったりとも、飛んできたボールに思わず飛びついちゃった!とも言えるような始め方をした「フードバンク事業」に特に顕著ですが、私たちのような市民団体と、行政が連携することで、市民団体だけでは課題解決に至るまでの動きがどうしても鈍くなってしまいがちなところを、円滑に進めることができ(たり(も)し)ます。
連携には色々なレヴェルのもの・ことがありますが、情報共有・情報交換をするだけでも、問題や課題そのものや、その所在を、相互に認識でき、その後の課題解決に向けた動きが強まることが期待できるのですよね。
フリースタイル市川も参加しましたが、2023年4月4日に、
- 「市川市生活サポートセンターそら」さん
- 「市川こども食堂ネットワーク」さん
- 「社会福祉法人 市川市社会福祉協議会」さん
- 「市川市こども家庭支援課」さん
- 「市川市地域共生課」さん
が参加した会合が開かれました。
官と民の各活動主体が、それぞれの課題意識のもと、最適と思われる行動をしていると、部分最適化を図れたとしても、俯瞰して見ると、近接する福祉の領域で、重複があったり、漏れがあったり、非効率や無駄が生じてしまうものです。
そこで、そらさんが呼び掛けて、福祉的な活動をしている市川市の各主体が、活動の概要や直面している問題や悩みを共有することで、地域福祉の質の向上に資する(先ほどの部分最適という語に呼応する表現にするならば、全体最適を目指す)ために、取り組むべき課題を明らかにしよう、議論を重ねよう、ということで、会合を開いた、というわけです。
出所:特定非営利活動法人フリースタイル市川公式Webサイト、「【開催報告】目指すは全体最適、そのためには情報共有が必要。」(2023年5月1日公開)、https://fs-ichikawa.org/summit2023april/、2023年5月28日閲覧、太字は筆者
横のつながり(水平連携)と縦のつながり(垂直連携)
個別最適の限界を超えて、全体最適という視点で、課題を解決して事態を改善させるためには、「横のつながり」、いわゆる、業界内で似たような活動をしている組織・団体同士のつながり(水平連携)と、「縦のつながり」、例えば、指示する/されて動く、依頼する/依頼を受ける、民間企業であれば、発注する/受注する、売る/買う、といった、取引相手のような組織・団体同士のつながり(垂直連携)は、いずれも大事ですね。
例えば、「物流の2024年問題」の解決のために、ビジネスの観点では競合となる企業同士が連携しているケースがあります(首都圏に店舗を展開しているスーパーマーケットの、「マルエツ」、「ライフコーポレーション」、「サミット」、「ヤオコー」が連携したり、日用品メーカーの「花王」と「ライオン」が連携しています)。
※物流の2024年問題については、この動画の開始から9分30秒当たりから私が解説しているので、興味がある人はご覧ください。
マクロな出来事をミクロな自分事に結び付ける
本稿は、私が時折、というよりも、最近はかなり頻繁におこなっている、「マクロな出来事をミクロな自分事に結び付ける」というやり方で強引に書きました。
「ここで言われていることは、自分の話に置き換えると、こういうことだ」という強引な発想です。野蛮に思われるかもしれませんね。野蛮。
そういえば、かつて、「野蛮」と「アバンギャルド」を融合させた造語、「野蛮ギャルド」なる言葉を発明した詩人がいましたね。確か、長嶋茂雄さんが最初に読売ジャイアンツの監督をしていたとき、このチームの野球というか、長嶋監督の采配などについて、「野蛮ギャルド(ヤバンギャルド)」というキャッチコピーをつけた、という記憶があります。
(曽谷ではなく)粗野で粗暴な発想法かもしれません。が、この方法によって、何というか、目の前や足元の問題に取り組んでいる時に陥りがちな視野狭窄から解放されることもあります。この方法を続けているうち、外側にある色々な出来事に目を向けた時に、他人事として見るだけではなく、少し自分事としても考えられるようになります。
というわけで、最後は、マクロをミクロに強引につないで考えるという、私が尊敬している大先輩から学んだ発想法を紹介しました。
強制発想法とも呼ばれるこの思考法、おもしろいので、使ってみたいという人は、是非どんどん使ってみてください!