執筆日 2023年4月25日、26日
公開日 2023年4月29日
先日の選挙の盛り上がりの余韻も冷めやらぬ中、今回もまた選挙関連、議会関連の話題です。え~?またなの?と言わないで下さいよ!読んでみると意外や意外、面白いかもしれませんよ!
自分の一票で政治が変わる
「自分の一票で政治が変わるわけじゃない(だから、選挙に行かなくてもよい)」
こんな持論を開陳する人を稀にSNS上などで見ますが、これは誤った考え方です。つい先日、こんなことがありました。
新宿区選挙管理委員会が発表した区議選の開票結果によると、共産党の現職・高月真名氏が1569票を獲得し38番目で当選。次点は共産党の新人・中村尚之氏で1568.701票。わずか0.299票差で明暗を分ける形になった。
中野区議選では、選管が発表した開票結果によると、共産党の現職・井佐哲郎氏が1585票で42番目で当選。次点は参政党公認の新人・田中裕史氏で得票数は1584.585票だった。
出所:スポニチアネックス「これが1票の重み…東京の区議選『0.299票差』『0.415票差』で明暗 按分票で当落分かれる」(2023年4月24日)、https://www.sponichi.co.jp/society/news/2023/04/24/kiji/20230424s00042000601000c.html、2023年4月25日閲覧
按分票というものがあるため、得票数に小数点以下の数字が付いている候補者がいるのですが、新宿区、中野区で、「当選と落選」(天国と地獄)を分けたのは、1票未満の差だったわけです。
ね、「自分の一票で政治が変わる」でしょう。だから、行きましょう、選挙には。
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投票率が上がれば政治が変わる
さて、2023年4月の統一地方選は見どころがたくさんありましたが、4月23日(日)に東京都の杉並区で行われた区議会銀選挙は、「投票率が上がれば結果が変わる」ということを、鮮やかに示してくれました。投票率は前回の39.47%よりも4.19%ポイント高い43.66%でした。
▼杉並区議会議員選挙で起きたこと
- 当選上位4人を女性が独占、しかも全員新人
- 当選上位10人は、女性が6人(新人が5人)、男性は3人(全員現職)、性別非公表が1人(新人)
- 定員48のうち女性が24人、男性23人、性別非公表1人
- 自民公認の現職候補が16人中7人落選
- 新人15人(元職は除く)が当選し、現職12人が落選
杉並区では、去年(2022年)の夏に行われた区長選挙で、岸本聡子さんが僅差で当選し、杉並区で初の女性区長ということで大きな話題となりましたが、2年連続で選挙結果が驚きをもたらしましたね。杉並区政が変わるという実感もあり、ひいては、各自治体で投票率が上がれば結果は変わる、政治が変わる、という期待を抱かせてくれます。
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市川市議会におけるジェンダーギャップ
今回の市川市議会議員選挙(2023年4月23日)の結果、女性議員が2人増加し、9人になりました。議員42人中、女性は9人、女性議員比率は21.4%です。正直、少ないですよね、女性議員が。
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女性は11人が立候補して、9人が当選しています。男性と比べて、立候補者に占める当選者の割合(当選率)は高いです。このことは、女性議員が少ないこと(議会のジェンダーギャップが大きいこと)を良しとしない有権者が、女性候補者に投票する、という行動をとる傾向にある、ということを想像させます。
女性の立候補者は11人でしたが、男性は54人もいました。候補者のうち女性は16.92%でしかありません。が、実は、市川市は(というか、地方公共団体は)、男女の候補者数が均等になるように取り組んでいかなくてはいけないことになっているのです。法律で定められているのです。
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男女の候補者数ができる限り均等となることを目指す法律があります
2018年に「政治分野における男女共同参画の推進に関する法律」が公布・施行されたことをご存知でしょうか。この法律は、男女の候補者の数ができる限り均等となることを目指すもので、国と地方公共団体が負う責務や、政党やその他の政治団体が取り組むべき努力について書かれています。
地方自治体の責務については、「政治分野における男女共同参画の推進に関して必要な施策を策定し、及びこれを実施する責務を有する」と記されています(第3条)。
ちなみに、2021年6月16日に、法律が改正されましたが、改正前は「政治分野における男女共同参画の推進に関して必要な施策を策定し、及びこれを実施するよう努めるものとする」でした。「努める」だけでは足りない、「責務を有する」のだ、ということです。
法律ができて4年が経ち、杉並区では議員の半分以上が女性になるなど、成果が出てきていますね。市川市ではまだまだ議会におけるジェンダーギャップが大きいですが、他自治体で女性候補者および議員が増えている状況を知った市は、一層の取り組み強化を図るものと思います。
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女性候補者、女性政治家が増えることで期待できること
女性議員が少ないことについて、立憲民主党の大河原雅子衆議院議員は、次のように述べています。
子育て支援や介護といった問題は、全て政治につながっているのに、そのルールを決めている国会や地方議会に、実感を持った女性の視点が足りない。虐待や貧困など困難を抱える女性の声を形にするためにも、女性議員が必要だが、女性には、資金面や家族の反対などあらゆる壁が立ちはだかる。
出所:NHK公式Webサイト、増田剛 解説委員「女性議員 どうしたら増えるの?(くらし☆解説)」(2019年5月23日)、https://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/700/367844.html、2023年4月25日閲覧
では、女性政治家や女性候補者が増加すると、どのような社会的影響が期待できるのでしょうか。
この問いに対して、参考となる国外の先行研究をレビューした報告書があるので、この中から押さえておきたいポイントを紹介します。
社会調査支援機構 チキラボ
「女性政治家」「女性候補者」が増えることの社会的影響に関する調査報告(2022年7月18日)
https://s3.ap-northeast-1.amazonaws.com/data.wan.or.jp/data/2022/07/23/3e0c3eba10210280c7e95ba1cfeb83e7.pdf
レビューした結果、女性政治家の増加によるポジティブな「議会影響」「社会影響」が示唆されています。ただし、国外のさまざまな先行研究に基づくもので、直ちに現代の日本に当てはまるとは限らない、とも記されています。
報告書の内容をまとめると、次のようになります。
■女性議員の増加が、女性に関わる政策に与える影響
・社会の育児環境や女性就労環境の改善につながっている
・議会の質的な向上にもつながっている
・議会全体の合意形成において、「女性」当事者の主張が重視されるようになる
・「これまで焦点化されにくかった論点」への積極的な取り組みにつながる
■女性議員の増加が社会に与える影響
・女性主権者の活発な政治議論につながっている
・汚職などの減少につながっている
■女性議員の増加による資金配分への影響
・医療、対外援助、公衆衛生への積極度が増す
・国防支出や紛争発生率が下がる。ただし、女性閣僚となった場合、その逆となる
■女性議員の増加にまつわるその他の論点
・保健・教育などへの支出を増やし、各種パラメーターを上昇させている
・女性議員だからといって「リベラル」「保守」いずれかに分類されるわけではない
・女性有権者の政治参加を促す可能性がある
以上、報告書の内容を紹介しました(緑の太字は今の私が特に注目したものです)。大変興味深いですね。女性議員が増えることで、「議会の質的な向上にもつながっている」という研究知見もあるとは。驚きですね。でも、当たり前のことかもしれません。
フリスタのメンバーにも女性比率が低いという課題があるので、女性の増員を図る構えです。
続いて、2022年12月発行のPwCのレポートの内容も見てみましょう。
PwC
「政治分野における女性のさらなる活躍に向けて~日本の社会がより強く、優しく、しなやかであるように~」(2022年12月)
https://www.pwc.com/jp/ja/knowledge/thoughtleadership/women-in-politics.html
このレポート、目次は、このようになっています。
- 第1章 女性の政治参画における動向
- 第2章 女性の政治参画を阻む原因・理由
- 第3章 女性の政治参画が進むことで生まれるポジティブインパクト
- 第4章 女性議員によりもたらされた実績
- 第5章 女性政治家比率が高い諸外国の分析
- 第6章 示唆・提言
いずれも興味深い内容でした。本稿では、第3章、第4章の内容を紹介します。ここでも、緑太字は、私が今特に注目すべきと思ったものです。
■第3章「女性の政治参画が進むことで生まれるポジティブインパクト」
・男女で政策選好が異なる傾向がある
・議論に女性が参加することは、多様な政策立案につながると言われている
・女性は、「子ども・教育」、「人口問題」、「家族」、「社会福祉」、「震災復興・防災」、「雇用・就職」等の政策テーマへの関心が強い傾向がある
・男性は、「外交」、「防衛」、「経済・産業政策」等の政策テーマへの関心が強い傾向がある。
・女性比率が高い議会ほど、法案の提出件数、法律の成立件数が多い傾向がある
・「出産・育児」、「病気・介護」等が女性だけにおとずれるライフイベントではないという意識改革につながる
・女性だけでなくあらゆる議員がワーク・ライフ・バランスを保ったかたちで務めることが可能になるという効果がある
・女性の政治参画が進むことで、女性を含む少数派の課題としてとらえられがちな社会課題が注目を集めるようになり、国民全体で解決しようという機運が高まる
・結果として女性だけでなく、男性を含む社会全体にとってポジティブな影響が生じるものと考えらる
■第4章「女性議員によりもたらされた実績」
女性議員が中心となって整備した日本の法律として、以下のようなものがある。
・配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律(DV防止法)(2001年施行)
・刑法の性犯罪に関する規定の大幅な改正(2017年)
・税制改正(2019年)
これらの法律は、いずれも女性議員が集まって推進したことによる実績で、女性議員一人では成しえなかった功績でもある。女性の政治参画が増えることで、女性に関する政策提言のみならず、多様な視点が盛り込まれた政策提言につながることが期待できる。
以上、PwCのレポートの一部を紹介しました。
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政治におけるジェンダー不平等解消を目指す「FIFTYS PROJECT」
ところで、「FIFTYS PROJECT」を知っていますか?この記事を、ちゃんとここまで読んでくれているあなたなら、知っているかもしれません。
FIFTYS PROJECT
https://www.fiftysproject.com/
政治分野のジェンダー不平等の解消を目指して、
出所:FIFTYS PROJECT 公式Webサイト、https://www.fiftysproject.com/、2023年4月25日閲覧
ジェンダー平等実現を目指して地方議会議員に立候補する
20代・30代の女性(トランス女性を含む)やノンバイナリー、
Xジェンダー等の方を増やし、横に繋ぎ、一緒に支援するムーブメントです。
選挙に立候補する女性やノンバイナリー、Xジェンダー等の人数を増やしていこうという活動です。アクションというと、1回きりのものも含むためか、大きなうねりを起こしていこうという意味を込めてのことなのか、ムーブメントという言葉を使っていますね。
今月の統一地方選にも、多数の候補者が FIFTYS PROJECT から出ていました。
29名が立候補して、24名が当選した、という結果だったそうです(情報出所:YouTube「統一地方選挙2023!FIFTYS PROJECT選挙報告ライブ」概要文章、https://www.youtube.com/watch?v=1WJ3o7iQ7aU、2023年4月25日閲覧)。
- 都道府県議会議員選挙 2人挑戦、当選0人
- 政令指定都市議会議員選挙 2人挑戦、当選1人
- 一般市区町村議会議員選挙 25人挑戦、23人当選
個人、個人、想いを持った人たちが立候補して選挙戦を戦うのとはまた違う、みんなで盛り上げていこう、社会を変えていこうよ、というムーブメント。目が離せません。
FIFTYS PROJECT のステイトメントの一部を紹介します。是非、全文を読んでほしいです。
初めて女性が国会議員になった1946年、466人中39人の女性が衆議院議員になった。
2021年の衆院選、当選した女性は465人中45人、比率はわずか9.7%。
この75年で増えた女性衆議院議員はわずか6人ということになる。
政治のジェンダーギャップ146ヶ国中139位、日本が極端に遅れているという現実。女性も投票、立候補できるという男女平等実現への一歩に心を躍らせた人たちは、 こんな75年後を想像していただろうか。
選択的夫婦別姓、同性婚はまだ実現していない。性教育、緊急避妊薬、人工妊娠中絶へのアクセスは限られる一方、性犯罪に関する刑法では被害者の立場が圧倒的に弱い。男女の賃金格差、セクハラ、根強い性別役割分業・規範も解消されていない。個人の選択と権利が守られ、自分らしい人生を歩める社会には程遠い。ここからの75年、次の世代に、もっとフェアで平等な、生きやすい社会を残したい。
出所:FIFTYS PROJECT 公式Webサイト「STATEMENT」、https://www.fiftysproject.com/、2023年4月25日閲覧
そのために政治分野のジェンダーギャップをわたしたちの世代で解消を。
まずは女性の地方議員を増やすこと。
その先に、女性の国会議員が増え、女性総理大臣の誕生がある。
現在、地方議員の女性比率は14%
20・30代の女性比率を見ても18%に過ぎず、
このままいけば、私たちの時代に、ジェンダー平等は実現しない。
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思いの外、長く綴ってしまいました。最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。
こういった話は、カフェでコーヒーでも飲みながら、カジュアルにお喋りしたいものですね。
最後に一つ、関連記事を紹介して、本稿を締めくくりたいと思います。また明日、お会いしましょう!