【コラム】人口と世帯からみる市川市の姿

コラム

まちづくりという観点でも、それを含む市政という観点でも、これらに取り組むにあたっては、市川市の人口や世帯数などの現状を把握することは必要不可欠です。

全国的に人口が減少している日本において、市川市は最近まで人口の増加傾向が続いており、今後も人口増を目指して、様々な施策を講じることでしょう。

さて、人口の増減は、次の2つに分解できます(人口の増減は次の2つの合計です)

  • 人口の自然増減(出生数から死亡数を引いた数)
  • 人口の社会増減(市内からの流入人口から市外への流出人口を引いた数)

冒頭からあまり聞き慣れないかもしれない言葉を連発してしまいましたが、本稿では、これら(人口の自然増減、社会増減)についてはこれ以上触れません。「人口の自然増減」さん、「人口の社会増減」さん、また別の機会にお会いしましょう!

さて、まずは、シンプルに市川市の人口がどれくらいなのかを確認しましょう。と、書いておいていきなりこれを反故ほごにするのですが、「国勢調査」に基づく人口と、「住民基本台帳」に基づく人口には差があります。

「国勢調査」は、5年に1度、外国籍の人も含むすべての人を対象に実施されている調査で、これに基づく人口というのは、この結果を集計したものです(例えば、調査時に出張や旅行で日本にいない人は対象外です)

「住民基本台帳」に基づく人口というのは、「住民登録」のデータを集計したものです(例えば、「住民登録を実家のある北海道札幌市でしていて、現在市川市に住み千葉商科大学に通学している学生」は含まれません)

つまり、データの種類として、調査データか、登録データか、という違いがあります。ここで、これらの違い、具体的には、住民基本台帳登録数が国勢調査人口を上回る市町村が多いことや、その理由として考えられる、

  1. 日本人が住民登録を残したまま他の地域や海外に出て居住している事例が数多くあること、
  2. 特に若年層で、広い範囲の地方都市から、少数の特定の都市に、大学進学や就職などで住民票を移さず移動しているケースがあること

出所:総務省統計局、會田雅人「統計Today No.87『国勢調査と住民登録』(2014年12月5日)、https://www.stat.go.jp/info/today/087.htm、2022年8月3日閲覧

については深く掘り下げません(興味がある方は「統計Today No.87」をご覧ください)

前置きが長くなりました。ようやく本題に切り込むことができるということで、誰よりもホッとしているのが、今これを著している私です。

* * * * *

市川市の「人口」と「世帯数」の推移

まず、各年10月1日の市川市内の「人口」と「世帯数」の推移を1枚のグラフで同時に確認します。棒グラフが「人口」(左軸)、折れ線グラフが「世帯数」(右軸)です。

出所:市川市公式Webサイト掲載の「月別世帯数および人口の推移(各月1日現在)」(元資料は「総務部総務課」)より作成
注意1:国勢調査データを基準とした数値で、住民基本台帳の数値とは異なります。
注意2:縦軸(左軸:人口、右軸:世帯数)の最小値は0ではありません。

注意3:凡例がありませんが、棒グラフが人口、折れ線グラフが世帯数です。

衝撃の事実が明らかになりました!

というほど大袈裟な表現をすることはないのですが、これまで順調に「右肩上がり」で人口が増加してきた市川市の2021年10月1日時点の人口は、前年同時期と比べて少なくなっています

人口減少の理由はわかりませんが、コロナ禍が影響しているのでしょうか。仮説ですが、

  1. 東京都内の職場に勤務する上で便利な市川市に住んでいた
  2. コロナ禍において、職場が在宅勤務を推奨した
  3. 通勤の利便性で選択した市川市にこだわる必要がなくなった
  4. 住環境などを考慮して、市川市外に転居した

という考えをし、こういう行動をとった人が多かったのかもしれません(もっとも、このような行動をとった人の存在を私自身は認識していません仮説にすぎません。仮説というよりは、妄想かもしれません

2021年、上のグラフのように人口は減りましたが、世帯数は増えています。世帯人員の多い世帯が流出し、世帯人員の少ない世帯(主に「単独世帯」、いわゆる「一人暮らし世帯」)が流入した可能性がありますが、これについては十分に考察できていないので、本日は言及せず、データをみることに徹します。

人口の増加がストップし、減少に転じた2021年。今後の動向が気になりますね。人口の減少が、一時的な現象なのか、それとも、2020年をピークに、市川市内で人口の減少が始まるのか。注目しましょう。

次に、市内の人口の細かい変動、具体的には、月ごとの人口の変化をみてみます。これは、あくまで参考まで、という位置づけで、とりあえず確認しておこう、という程度のものです。
上で確認した通り、10月1日時点の人口は、これまで順調に増加してきましたが、2021年は2020年と比べて減少していましたね。これを、月ごとにみていくと人口の増減はどのような推移になっているでしょうか。

市川市公式Webサイト掲載のデータから、毎月1日時点の人口について、1~12月を横軸にして、1年ごとに1本の折れ線グラフを作りました。

出所:市川市公式Webサイト掲載の「月別世帯数および人口の推移(各月1日現在)」(元資料は「総務部総務課」)より作成
注意1:国勢調査データを基準とした数値で、住民基本台帳の数値とは異なります。
注意2:縦軸(人口)の最小値は0ではありません。

ここでは2016年から2021年にかけて、毎月1日の市川市の人口を確認しています。

入学、進学、入社のある4月に人口の増加分が他のタイミングより大きいことがわかります。当然ですね。誰もが当然だと思うことを、しっかりとデータで確認することは重要です。

2020年の6月に498,069人という最高値(ピーク)に達しましたが、2020年の10月に顕著な人口減少が生じていることがわかります。図中には数値をほとんど記載していませんが、元データを確認すると、2020年7月から、2021年3月まで、前月比で減少を続け、2021年4月、5月は前月比で増加を記録したものの、同年6月から12月までは、またしても前月比で減少を続けています。

このことから、市川市の人口は、ゆるやかな減少局面に入ったということができます。

コロナ禍で最初の「緊急事態宣言」が出されたのは、2020年4月7日で、対象となった都府県は、千葉県、東京都、神奈川県、埼玉県、大阪府、兵庫県、および福岡県の7つでした。市川市の人口が2020年7月以降に減少し始めたのは、人口密集地の市川市から、(いわゆる三密を避けやすい)人口密度が低い場所などに転居した人が一定数存在したことが考えられます。もちろん、これも、上に書いたものと同じく、仮説にすぎません。

しかし、理由はさておき、市川市の人口が減少していることは事実です。今後の市の政策や、市民活動などにも、少なからぬ影響があると思います。

市川市における「1世帯当たり人員」の推移

続いて、各年10月1日の市川市における「1世帯当たり人員」の推移を確認します。市内の人口を世帯数で割ったもので、1世帯当たりの人員は平均何人か、ということを表す指標です。

出所:市川市公式Webサイト掲載の「月別世帯数および人口の推移(各月1日現在)」(元資料は「総務部総務課」)より作成。数値は筆者が手計算で算出したものを使用しています。
注意:縦軸(人口)の最小値は0ではありません。

「1世帯当たり人員」は、2020年を除き、年々低下していますね。「家のドアを開けると、そこに住んでいる人が平均2.028人」というイメージです。

ちなみに、千葉県が作成・公表している、「令和3年 千葉県毎月常住人口調査報告書 年報」
https://www.pref.chiba.lg.jp/toukei/toukeidata/joujuu/nenpou/2021/documents/nenpou_2021.pdf
によると、市川市は千葉県で「1世帯当たり人員」が最も少ない自治体です。

この数値は小さい方が「良い」という性質のものではなく(「悪い」わけでもありません)、世帯サイズの平均値とでも呼びうるものです(個人的に、世帯サイズという語は使い勝手が良いように思いますが、他で目にしたことはありません)

プロ野球で最優秀防御率のタイトルを争う投手の防御率のような数値ですね。

市川市 2.03
勝浦市 2.05
浦安市 2.12
松戸市 2.13
千葉市 2.15

出所:千葉県「令和3年 千葉県毎月常住人口調査報告書 年報」(データは「1世帯当たり人員」)

これが防御率※1ならば、ハイレベルなタイトル争いといえますが…

(話が脱線)セ・パ投手成績

ここで、日本プロ野球(NPB)の現役投手の防御率を確認してみましょう。「SportNavi」というWebサイト内の、「プロ野球 個人成績」掲載データを用いて、下の2表を作成しました。

上2表の出所:SprotsNavi Webサイト、プロ野球「個人成績」、2022年8月3日閲覧。投手成績表より特定の項目(列)を抜粋。また、規定投球回数未達の「佐々木朗(ロ)」を比較のために「パシフィック・リーグ投手成績」の表に追加しています。

セ・パ、両リーグとも防御率トップは1点台という凄まじい成績です。今シーズンは、4月10日に千葉ロッテマリーンズ佐々木朗希投手が完全試合を達成し※2、その後、5月11日に福岡ソフトバンクホークスの東浜巨投手、6月7日に横浜DeNAベイスターズの今永昇太投手、6月18日にオリックスバファローズの山本由伸投手がノーヒットノーランを達成するなど、両リーグで投手の活躍が目立っています(この他にも、佐々木投手は完全試合の翌試合も8回を投げ、1人の走者も許さない「完全投球」を披露したことは記憶に新しく、5月6日の阪神戦で9回まで完全投球を続けたものの、延長10回に安打を許した大野雄大投手や、7月20日にプロ入り後2試合目の登板で9回2アウトまでヒットを許さなかったオリックスの新人、椋木蓮(むくのき・れん)投手も、真に称えられるべきだと思います!※3)。

阪神タイガースの青柳投手は、昨年、最多勝と最高勝率のタイトルを獲得し、今年の開幕投手を任されるはずでしたが、3月中旬に新型コロナウイルスの陽性判定が出たため、出遅れてしまいました。その間、チームは悲惨な負けっぷりを続け…(以降、今シーズン前半の阪神タイガースの戦いについての記述が続きましたが、本題からあまりにも逸脱するため、削除しました)

佐々木朗希投手の奪三振率が突出していることを見逃すことはできません!

野球の話をこれ以上すると、本題に戻るための道が閉ざされてしまうので、この辺で終了します。なお、当サイト内には、長嶋茂雄さんの運命を変えた市川市での練習試合について筆をふるった記事などもあるので、是非読んでみてください。

市川市の全世帯の45%が「一人暮らし」

さて、こういうときに「閑話休題」という言葉を使うのだろうと思うのですが、打者が打った白球がフェンスに当たって戻ってきた!という感じで、何もなかったかのような表情で、先ほどの続きを書き連ねたいと思います。

冒頭で、市川市の行政やまちづくり団体などが活動をする上では、市川市の人口や世帯について知っておく必要があると書きました。

市政においても、市民団体の活動でも、高齢化への対応や障害を持つ人への対応などの他、子育て世代への支援の必要性が訴えられることが多いと思います。私自身、子育て世帯を手厚く支援することが極めて重要だと考えています。子育てがしやすい環境を整備することで、市の人口が増えることが期待できる他、子供が成長することに伴う消費活動の拡大(消費金額の増加)が、市内の商業などの活性化(いわゆる「地域経済の活性化」)をもたらしうる、と思います。

一方、高齢者でもなく、子育て世代でもない(あるいは子育て世代ではあっても、未婚であるなど出産や育児の予定がない)という人に関する施策、何らかの対応策は必要がないのか?というと、そうとも言い切れません。

先ほど、ちょっと気になる数字がありましたね。

市川市の「1世帯当たり人員」が非常に小さい値で、県内で最低であり、しかも年々その数値が低下している、という話でした。これは平均値なので、ピンとこないかもしれません。そこで、具体的に、どのような世帯が多いのかを確認することにします。

まず、国勢調査データをもとに、「世帯人員別一般世帯数」が5年毎にどのように変化してきたかをみてみましょう。

出所:市川市「世帯人員(7区分)別一般世帯数および一般世帯人員の推移(各年10月1日現在)」( 市川市が「国勢調査結果」(総務省統計局)を加工して作成したもの)をもとに筆者が作成しました。なお、「7区分」となっているのは、資料上は「1人世帯」、「2人世帯」…、「5人世帯」、「6人世帯」、「7人以上世帯」という区分だったからで、これをもとに筆者が「5人以上世帯」という区分を設けた上でグラフを作成しています。

グラフの5分類の中で一貫して増加しているのは、「1人世帯」だけで、2020年の「国勢調査」によると、市川市の全世帯のうち45.2%を占めています。

次に、家族類型別一般世帯数の推移を確認します。なお、上図で「1人世帯」と呼んだものは、下図では「単独世帯」となっています。

出所:市川市「世帯の家族類型別一般世帯数の推移 (各年10月1日現在)」( 市川市が「国勢調査結果」(総務省統計局)を加工して作成したもの)をもとに筆者が作成しました。
注意:図中の5分類の他、「その他の親族世帯」、「非親族世帯」などが存在します。5分類以外の分類は、世帯数が少ないため掲載していません。

子育てをしているかどうかは別にして、子ども(図中の表記では子供)がいる主な家族類型は、「夫婦と子供」、「女親と子供」、「男親と子供」の3つの分類で、2020年のデータでこれらを合計すると、32.4%(3世帯に1世帯程度)となります。

高齢化対応や子育て世代支援などが重要であることは言うまでもないのですが、「1人世帯」(「単独世帯」)が全世帯の半分近くもいる市川市では、「一人暮らしをしている人たち」が生活しやすいようなまちづくりをすることが非常に重要なのだと思います。

よく、「一人暮らしだと、風邪をひいて寝込んだ時に、食事や着替えなどにも苦労する」ということが言われますが、今のこのコロナ禍において、一人暮らしをしている人が、新型コロナウイルスに感染し、発症した場合、大いに苦労すると思います。近所づきあいがあれば、食料を買ってきてもらって玄関の前に置いておいてもらうことなどが可能かもしれませんが、例えば、地元である北海道札幌市から大学進学をきっかけに市川市に引っ越し、一人暮らしを開始したばかりの大学1年生が、まだ学校で友人ができる前に、新型コロナウイルスに感染してしまったら?

一人暮らしであっても、生活における「防御力」を高められる(防御率を限りなくゼロに近づけられる)、そんな市川市であってほしいありたいですね。

本稿を綴りながら、フリースタイル市川の活動を通じて、「一人暮らしの人」が暮らしやすいまちづくりをしていきたいという想いが、高まってきました。

それでは、最後にこの歌をお届けします。

森高千里 / ひとり暮らし

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〈注釈〉

※1:「防御率」は、野球の投手の能力を表す代表的な指標で、9回を投げた時に何失点するかという数値です。小さければ小さいほど優れた投手だといえます。

※2:佐々木投手の完全試合を現地(ZOZOマリンスタジアム)で観戦した幸運な観客がフリースタイル市川には複数名おり、うち1名は、その日が人生初のプロ野球観戦だったというのだから、本当に幸運中の幸運ですね!

※3:好投を続けながら、大記録達成とはいかなかった今シーズン前半の大野雄大投手、椋木蓮投手ですが、1人で、大野投手の「9回まで完全投球を継続するも、延長戦で安打を許す」と、椋木投手の「9回2アウトまでノーヒットノーランだったが2アウトから安打を許す」の両方を経験した不運な投手のことも忘れられません。

西武ライオンズの西口文也投手の悲劇
1. 2002年8月26日のロッテ戦:9回2アウトから被安打
2. 2005年5月13日の巨人戦:9回2アウトから被安打
3. 2005年8月27日の楽天戦:9回まで完全試合、10回表に被安打