執筆日 2023年6月1日
公開日 2023年6月3日
異次元の(?)物価上昇
去年から、物価が随分上がっていますね。
総務省「2020年基準 消費者物価指数 全国 2023年(令和5年)4月分(2023年5月19日公表)」(https://www.stat.go.jp/data/cpi/sokuhou/tsuki/index-z.html)によると、
①総合指数
2020年を100とすると105.1
前年同月比は3.5%の上昇
②生鮮食品を除く総合指数
2020年を100とすると104.8
前年同月比は3.4%の上昇
③生鮮食品及びエネルギーを除く総合指数
2020年を100とすると104.0
前年同月比は4.1%の上昇
となっています。物価がかなり上がっていることがわかります。今年、2023年に入ってからの物価上昇が「パネェ」レヴェルになっていることは、過去3年と比較した下図を見るとよくわかります。
※グラフ出所は総務省「2020年基準 消費者物価指数 全国 2023年(令和5年)4月分(2023年5月19日公表)」です。
昨年、ロシアによるウクライナ侵攻をきっかけに、物価上昇の動きが強まりましたが、今年に入っても引き続き上昇を続けていることがわかります。異次元の物価上昇です。
日経新聞の記事を見てみます。
生鮮とエネルギーを除く総合指数は4.1%高まった。伸び率は11カ月連続で広がった。消費税導入時や増税時の伸び率を上回り、第2次石油危機の影響で物価が上昇した1981年9月以来、41年7カ月ぶりの上昇率となった。
品目別では生鮮食品を除く食料が9.0%上昇した。1976年5月(9.1%)以来46年11カ月ぶりの高い伸びだった。チョコレートやアイスクリームといった菓子類は11.0%、調理用食品は9.3%、飲料は7.3%と値上がりが目立った。
日用品も値上げが続き洗濯用洗剤が19.8%、トイレットペーパーは16.3%伸びた。交通・運賃は1.8%プラスだった。一部の私鉄の運賃上げを受けて交通が2.4%上昇した。
出所:日本経済新聞公式Webサイト、「4月の消費者物価3.4%上昇、伸び率拡大 食品値上げで」(2023年5月19日)、https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA189570Y3A510C2000000/、2023年6月1日閲覧、太字は筆者
第2次オイルショック(石油危機)以来、41年ぶりという表現に驚いてしまいます。同資料によるると、主な食品の物価指数の前年同月比は、次のようになっていました。
調理食品 9.3% ・・・・・ からあげ 12.7%
外食 6.6% ・・・・・ ハンバーガー(外食)18.2%
菓子類 11.0% ・・・・・ チョコレート 15.0%
肉類 8.4% ・・・・・ 鶏肉 11.5%
乳卵類 16.7% ・・・・・ 鶏卵 33.7%
生鮮魚介 14.3% ・・・・・ さけ 24.4%
穀類 7.5% ・・・・・ あんパン 10.2%
飲料 7.3% ・・・・・ 炭酸飲料 16.9%
私たちは様々な商品を買い、サーヴィスを利用していますが、中でも日々の食事(材料からつくる「内食」、出来合いの総菜や弁当などを買って食べる「中食」、飲食店で食べる「外食」)に関わる支出は、節約するにも限度があります。食べないわけにはいきませんからね。その食品の値段が上がっています。上で挙げたのは内食、中食に相当するものですが、外食の値段も上がっています。
もっとも、ここでは詳細には踏み込みませんが、例えば食品メーカーにおいて、その製造のための原材料そのたの物価が上がっていることから、価格に転嫁しないと利益が得られないのです。上記の通り、消費者物価指数は記録的な上昇を続けていますが、企業物価指数の上昇はそれを上回っています。多くの企業が材料などの値上がり分を製品の販売価格に転嫁できていないのですね。
冒頭で見た「総合指数」というのは、非常に雑に言ってしまえば、このような個々のカテゴリーの数字を合算して算出している、という「感じ」だと思うのですが、実際には相当複雑なモデル式を用いて求めているようですね。
BTW、先ほど、「総合指数」の他に、「生鮮食品を除く総合指数」と、「生鮮食品及びエネルギーを除く総合指数」を紹介しましたが、なぜ、生鮮食品やエネルギーを除いた指数を別に算出しているのでしょうか。総務省統計局の解説を確認しましょう。
消費者物価の基調をみるために、「生鮮食品を除く総合」指数や「生鮮食品及びエネルギーを除く総合」指数が用いられることがあります。「生鮮食品」は天候要因で値動きが激しいこと、「エネルギー」(ガソリン、電気代等)は海外要因で変動する原油価格の影響を直接受けることから、これらの一時的な要因や外部要因を除くことが消費者物価の基調を把握する上で有用とされています。このほか、アメリカ等諸外国で重視されている指標と同様のものとして「食料(酒類を除く)及びエネルギーを除く総合」指数が用いられることがあります。
なお、「生鮮食品を除く総合」指数は「コア」指数と呼ばれる場合があります。また、このほかにも、「コアコア」指数と言われている指標などがありますが、生鮮食品のほかにエネルギーなどを除く様々な指標に対して様々な名称が用いられているようですので、それらの指標を利用する際は、定義等を御確認ください。
出所:総務省統計局公式Webサイト、「消費者物価指数に関するQ&A(回答)」、https://www.stat.go.jp/data/cpi/4-1.html、2023年6月1日閲覧、黒太字・赤太字・青太字は筆者による強調
と、いうことです。
メディアは、よく「生鮮食品を除く総合」指数が、前年同月比でどうなったか、ということを報じていますね。
物価上昇に歯止めはかかる?
気になるのは、そろそろ物価上昇に歯止めがかかるのかどうか、ということですね。果たして、物価上昇は今後も続くのでしょうか。先日、東京商工リサーチが報じた内容を紹介します。
これまで値上げのピークは、品目数では2月、社数では4月だった。5月は、1月以来、4カ月ぶりに30社を切り、品目数も1,000品未満だった。だが、6月は51社、3,886品と2カ月ぶりに50社を超え、7月もすでに40社が3,356品を予定する。小麦粉やだしが原料の商品を中心に、値上げの波は下半期も収まりそうにない。
出所:株式会社東京商工リサーチ、「主要飲食料品メーカー200社の「価格改定・値上げ」調査 ~値上げの第2波 6月は50社超で約4,000品 累計は2万5,362品に 「調味料」が初のトップ~」(2023年5月30日)、https://www.tsr-net.co.jp/data/detail/1197688_1527.html、2023年6月1日閲覧、太字は筆者
月別の商品値上げは5月に一段落したものの、6月、7月は、再び値上げする企業、商品が多くなる見込みだということです。原材料、資源・燃料の価格が上昇していることが多くの企業の商品値上げ理由になっています(下記参照)。
値上げ対象の2万5,362品の理由別は、「原材料」が2万3,934品(構成比94.3%)でトップ。次いで、「資源・燃料」が2万1,304品(同83.9%)、「資材・包材」が1万6,509品(同65.0%)と続いた。
出所:株式会社東京商工リサーチ、「主要飲食料品メーカー200社の「価格改定・値上げ」調査 ~値上げの第2波 6月は50社超で約4,000品 累計は2万5,362品に 「調味料」が初のトップ~」(2023年5月30日)、https://www.tsr-net.co.jp/data/detail/1197688_1527.html、2023年6月1日閲覧
先ほど、非常に小さな字で、メーカー各社も値上げせざるを得ない状況にある、ということを書きました。消費者物価が上がることは不可避ですね。残念ながら。
物価上昇、インフレーション、このことが悪いこととは言い切れません。物価が上がり、消費者の所得も増えていけばよいわけです。物価高が異次元であっても、所得高がそれを超えるほどの異次元であれば救われます。
日本と各国の物価上昇の比較
BTW、日本とG7の国々、そして、韓国と中国の消費者物価指数の2019年1月から2022年12月までの推移をみると、下図のようになります。日本の消費者物価指数はG7の中では最も低く、韓国よりも低いですね。昨夏あたりから中国を上回るようになっています。
実質賃金が減っています
働いている人の賃金は増えているのか減っているのか、ということを、物価の変動を排除した実質の数で確認してみます。
実質賃金指数 = 名目賃金指数 ÷ 消費者物価指数
下の表は、この式で求められる「実質賃金指数」の2021年2月以降の動きを見たものです。
2023年3月まで、12か月連続で実質賃金が減っています。読売新聞オンラインによると、2021年の日本の実質賃金はG7の中で最低とのことです。
これまで日本の賃金は伸び悩み、世界から大きく引き離されていた。経済協力開発機構(OECD)によると、2021年の日本の実質賃金は3万9711ドルと、先進7か国(G7)の中で最も低い。注目すべきは時系列でみた実質賃金の変化だ。他国の実質賃金が上昇する中、日本の実質賃金は停滞が際立っている。米国やドイツには大きく引き離され、15年には韓国にも抜かれている。
では、今春闘での賃上げを契機に、日本の賃金は再び上昇基調に戻れるだろうか。結論から言うと、現状では賃上げは一過性のものに終わる可能性が高い。足もとの賃金上昇は、労働生産性の上昇が伴っていないからだ。
過去50年のデータをみると、賃金と労働生産性との間には強い相関が確認できる。労働生産性とは、従業員一人当たりが生み出した付加価値であり、賃金の原資とも言える。1970~80年代は労働生産性の上昇が続いていたため、賃金も上昇を続けていた。だが、90年代以降に労働生産性の上昇が止まると賃金の上昇も止まり、以降は横ばいのまま推移してきた。
出所:読売新聞オンライン、「実質賃金低迷に終止符を打つには」(2023年5月2日)、https://www.yomiuri.co.jp/choken/kijironko/ckeconomy/20230501-OYT8T50128/、2023年6月1日閲覧、太字は筆者
春闘での賃上げはみられましたが、この記事によれば、賃金の上昇は一過性のものに留まり、伸び悩みそう、との見方をしています。
なお、今後、しばらく物価上昇が続くインフレの時代となることが予想されていますが、年金受給者にとっても、厳しい時代は続きそうです。働いている人の賃金の動きと物価を踏まえて、年金額が改定されることがありますが、賃金が上がった場合でも、年金の上昇幅は賃金のそれよりも小さいからです。
フードバンクに対する需要が増加しています
本稿で語ってきたようなことが、フードバンクに対する需要の増加要因となっていることは間違いありません。もちろん、「いちかわフードバンクbyフリスタ」に対する需要も増えています。全国のほとんどのフードバンクで需要が増えていることでしょう。食品の入手に困っている人が増えており、フードパントリー(食品の無償でのおすそ分け)や、子ども食堂(最近では、大人食堂、みんなの食堂といった名を冠した、どのような人でも利用できることを謳っている場所も目立ちます)、福祉団体を頼る人が多くなっています。
食べ物のことでお困りの方へ
食品を手に入れることが難しいと感じている方は、私たちが毎月おこなっている「フードパントリー」のご利用をご検討ください。ご遠慮はなさらず、ご利用下さい。フードドライブ等を通じて、寄贈していただいた食品をおすそ分けします。
フードパントリー:食品のおすそわけ会(事前申し込み制)
https://fs-ichikawa.org/about_pantry/
何かできることを探している方へ
お困りの方が増えているこの状況で、何かできることはないか?と考えている方は、以下の活動をすることをご検討ください。
フードドライブ:食品の寄贈
https://fs-ichikawa.org/about_drive/
Amazonほしいものリスト:PCやスマホからの寄贈品注文
https://www.amazon.co.jp/hz/wishlist/ls/2WXUTJ22HEIZP?ref_=wl_share
フードバンクへの寄付:お金によるご支援
https://fs-ichikawa.org/ichikawafoodbank/donation/
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インクもかすれてきました
さて、長々と色々な数字を見ながら、物価が上がっている!賃金は増えていない!ということを語ってきましたが、紙面が尽きそうです。ペンのインクもかすれてきました。そろそろ、ペンを置こうと思います。
自分で記事を書きながら、気分がどんよりと重苦しくなってしまいました。まるで、憂鬱なるスパイダーです。
2023年3月18日に幕張メッセで行われた、|SPEEDSTAR RECORDS 30th Anniversary『LIVE the SPEEDSTAR』」というフェス、あるいは、イヴェントで、私は見ました、聴きました。「LADY MADONNA ~憂鬱なるスパイダー~」を。演奏はもちろん、LOVE PSYCHEDELICO です。初めて見ました、聴きました。LOVE PSYCHEDELICO の舞台を、生演奏を。
それでは、本日はこのソングでお別れしましょう。踊ってください!幕張メッセにおける私のように!