ご存知ですか?パブコメ、すなわち、パブリックコメントを。
パブリックコメント手続とは、市が条例や計画などを策定するときに、案の段階で公表し、その案に対する意見などを募集し、寄せられた意見などを考慮しながら案を決定するとともに、意見などに対する市の考え方をあわせて公表する制度のことです。
出所:市川市公式Webサイト、「パブリックコメント(令和5年度)」(2023年7月5日)、https://www.city.ichikawa.lg.jp/new01/0000432748.html、2023年7月5日閲覧(太字は筆者)
パブコメのことを取り上げた記事があり、ここ数か月はほとんど誰の目にも触れることなく、この広大なインターネットの海のどこかを漂っているのですが、本稿を読んでいる方には、今こそ、昨年(2022年)11月に著した文章を読んでいただきたいのです。
この記事では、令和3年度、すなわち、西暦2021年度までの4年間で意見を募ったパブリックコメント対象政策案34つについて、集まった意見の件数を確認しています。本稿は、これに続くもので――それゆえ、記事のタイトルに「その後の仁義なき※1」が添えられています――昨年度(令和4年度、2022年度)のパブリックコメントについて見るものです。
では、早速見てみましょう。昨年度のパブコメに寄せられた意見の数を!
https://www.city.ichikawa.lg.jp/new01/0000402936.html
掲載情報(2023年7月5日閲覧)を基に作成。
上の表における、青地白抜き文字は、意見が10件以上寄せられたことを、クリーム色地は意見が皆無だったことを意味します。
昨年度の1年間、パブコメは21回も実施されました。これより4年度前の平成30年度は8件、翌令和元年度は10件、令和2年度は7件、令和3年度は9件だったことを考えると、昨年度は令和元年度の2倍以上、令和2年度の3倍もの回数、実施されたということになりますね。
パブコメというものが多く行われるということは、行政プロセスの過程(プロセスの過程?)で、市民の目に触れ、声が発せられ、行政職員が市民の声に耳を傾ける回数が多いことを意味します。対応する市の職員の皆さんは、多くの意見が寄せられると対応に追われて大変だと思いますが、市民の意見に触れる良い機会ではありますよね。一方で、意見が1つも寄せられなかった場合は、政策の決定はスムーズに進むわけですが、市民の関心が薄いのではないか、という気持ちを抱きながら仕事に向き合う職員もいると思われ、それはそれで虚しいものです。
さて、昨年度実施されたパブリックコメントの1つ(意見募集期間は今年の2月18日から3月19日までの30日間)、「第2期市川市スポーツ推進計画(案)に関するパブリックコメント」に寄せられた1つの意見を紹介します。予めお伝えしておくと、意見の主は私です。
「第2期市川市スポーツ推進計画(案)」の33ページ、「第3章 計画の基本的な考え方」の「1 基本理念」の内容に注目して読みました。
出所:市川市公式Webサイト「第2期市川市スポーツ推進計画(案)に関するパブリックコメント実施結果」https://www.city.ichikawa.lg.jp/common/pub06/file/0000423955.pdf、2023年7月5日閲覧、太字は筆者
「基本理念」は、この計画の根底にある、根本的な考え方なので、極めて重要なものだと考えます。
33ページに、このような記述があります。
(引用ここから)
スポーツは、からだ・健康づくりに加え、体を動かすという人間の欲求を満たすことで、心身の健康・豊かさの増進に寄与します。さらには、スポーツを通したコミュニティの創成、スポーツ団体やスポーツイベントを通した人材育成、交流など、人やまちづくりにも寄与するものです。このことから、スポーツには生涯をとおして自身の望む活動ができる「健康なからだづくり」や、夢や目的を持ち、生き甲斐や感動を感じることで、生き生きと暮らす「明るい人間をつくる」力があり、市川市総合計画第三次基本計画に掲げる、基本目標「真の豊かさを感じるまち」の達成に向けた重要な役割を担っております。
(引用ここまで)
この中に、スポーツには、夢や目的を持ち、生き甲斐や感動を感じることで、生き生きと暮らす「明るい人間をつくる」力がある、という記述があり、括弧で括られた「明るい人間をつくる」は、この計画の基本理念、「健康なからだと明るい人間をつくるスポーツのまち いちかわ」に含まれています。ただし、引⽤した箇所、および、その上の部分を読んでも、「スポーツに明るい人間をつくる⼒がある」、ということを裏付ける内容や、何らかの研究知見が示されていることは確認できませんでした。
穿った見方かもしれませんが、基本理念が先にあり、「明るい人間をつくる」という文言を基本理念に含めるための文章を書いたのではないか、と思えてなりません。
以上を踏まえ、この基本理念に「明るい人間をつくる」が含まれる理由を文章内に含めていただくか、基本理念の文言の再考をお願いしたいと思います。
「明るい人間をつくる」という言葉がひっかかったので、このような意見を提出しました。
そもそも、「明るい人間」とは何でしょうか。「性格が明るい人間」ということでしょうか。「明るい人間」は「良い人間」である(反対に、「暗い人間」は「明るい人間」よりも「良くない人間」である?)ということでしょうか。「とにかく明るい安村」さんは、「明るい人間」でしょうか。「とにかく明るい安村」さんにも、「明るくない時」はあるはずです。
ひとりの「人間」には、「明るい気持ちの時」もあれば、「暗い気持ちの時」もあるのではないでしょうか。スポーツをプレイしているその瞬間、「明るい人間」になれるかもしれません。しかし、例えば相手チームの選手から悪質なファールをされて怪我をしたら?監督からレギュラーを剝奪されたら?部活で先輩から理不尽な暴力を浴びせられたら?ボール拾いばかりさせられたら?
上の意見に対する、市川市からの返答は以下の通りです。
スポーツ基本法においてスポーツは、心身の健康の保持増進や健康で活⼒に満ちた長寿社会の実現に不可欠であり、夢や感動を与えることなどを通じて、我が国社会に活力を生み出すものとされています。また地方公共団体の責務として、スポーツに関する施策による、「心身の健全な発達」、「明るく豊かな国民生活の形成」に寄与することが定義されております。このことから、スポーツを通じ、⽣涯を通して⾃⾝の望む活動ができる「健康なからだづくり」や、夢や目的を持ち、生き甲斐や感動を感じることで、生き生きと暮らす「明るい人間をつくる」ことが、市川市総合計画 第三次基本計画に掲げる、基本目標「真の豊かさを感じるまち」の達成に向けた、スポーツの役割と考えて、このような基本理念といたしました。
出所:市川市公式Webサイト「第2期市川市スポーツ推進計画(案)に関するパブリックコメント実施結果」https://www.city.ichikawa.lg.jp/common/pub06/file/0000423955.pdf、2023年7月5日閲覧
この回答は、上で紹介した私の意見(質問)に呼応していると言えるでしょうか。
私は、言葉の使い方の細かいところに固執しすぎですか?しかし、行政というものは言葉の定義を明確にした上で、おこなうものではないでしょうか。違いますか。違うのですか。違わない?違う?そうじゃない?
違う、そうじゃない?
書いていて気分が沈んできました。早く「明るい人間」になりたい!スポーツでもして、「明るい人間」になりたい!
今からフットベース(フットベースボール)でもしてきます!あるいは、ウォーキングフットボールに参加します!
参考:ウォーキングフットボール(市川市内などで活動中)
https://jerry-w.com/
* * * * *
〈注釈〉
※1:「その後の仁義なき」は、映画『仁義なき戦い』シリーズ最終作である『その後の仁義なき戦い』、あるいは、このタイトルを模した小説『その後の仁義なき桃尻娘』(橋本治著)に対するお饅頭、否、オマージュです。
* * * * *
執筆日 2023年7月5日
公開日 2023年7月8日