【コラム】市川市議会におけるジェンダーギャップ

コラム

2022年版のジェンダーギャップ指数が発表されました。これは、世界経済フォーラム(World Economic Forum)が2006年から毎年公表している指数で、各国の男女差を表す指標として注目されています。ジェンダーギャップ(男女格差)の是正は、SDGsの5番目の目標「ジェンダー平等を実現しよう」を持ち出すまでもなく、重要な課題です。

Global Gender Gap Report 2022 – World Economic Forum
https://www3.weforum.org/docs/WEF_GGGR_2022.pdf
※208~209ページに日本の分析結果が掲載されています

日本の2022年版のジェンダーギャップ指数は、後掲するように総合スコアが前年より0.5ポイント悪化しており、ランキングは、146か国のうち116位と下位グループに甘んじています(前年の120位よりも順位が上がっていますが、対象国数が10か国減少しているため、ジェンダーギャップが解消されているわけではありません)

世界経済フォーラムのレポートでは、小項目を、「経済的参加と機会」、「教育達成度」、「健康・生存」、「政治的エンパワーメント」の4分野に分け、ジェンダーギャップをスコア化しており、各分野のスコアの平均値を総合スコアとしてランキングがつくられています。スコアが1に近いほど、男女格差が小さい(男女平等に近い)ことを表します。

2020年~2022年の日本のジェンダーギャップ指数(総合スコアと順位)を確認してみます。

年ごとの対象国数が異なるため、順位の変動でジェンダーギャップが小さくなったかどうかを評価することは避けておきます。スコアをみると、ほとんど変動していません(2022年は、前年、前々年よりもスコアがわずかに低くなっています。スコアは、1に近いほどジェンダーギャップが小さいことを意味するため、このスコアの変化をいると、少なくともギャップが解消される方向には進んでいないと言えるでしょう)

続いて、2022年の4分野のスコアと順位を確認します。

  • 経済的参加と機会 0.564(121位)
  • 教育達成度 1.000(1位)
  • 健康・生存 0.973(63位)
  • 政治的エンパワーメント 0.061(139位)

特にジェンダーギャップが大きいのは、「経済的参加と機会」と「政治的エンパワーメント」です。「経済的参加と機会」は、就業人口、賃金格差、役員や管理職などに占める女性比率で、「政治的エンパワーメント」は、国会議員の女性割合、女性閣僚の比率、過去50年の女性首相の在任期間で測られます。

特に日本が低スコア・低順位である「政治的エンパワーメント」に注目し、先ほどと同じように2020年から2022年までのスコアと順位の変化を確認します。

2021年は2020年と比べてスコアが高くなっていますが、2022年は2021年と同スコアでした。全146か国中139位、つまり、ワースト8位なので、日本の国政における男女格差の大きさが際立っていることがわかります。参考までに、「政治的エンパワーメント」を構成する3つの小項目のスコアと順位を紹介します。

  • 国会議員の女性割合 0.107(133位)
  • 女性閣僚の比率 0.111(120位)
  • 過去50年の女性首相の在任期間 0(78位)

特に国会議員の女性割合が低いですね(スコアの算出には衆議院議員の女性割合が用いられています)

「政治分野における男女共同参画推進法」(2018年成立)では、選挙における候補者の男女比をなるべく均等とすることを掲げており、各政党に男女の候補者数について目標を定めるよう努力義務を課しています。しかし、法律の成立後、初となる衆議院選挙(2021年)では、当選者の女性割合は9.7%と、前回(2017年)を下回りました。国政選挙の候補者に占める女性割合を、2025年までに35%にする目標を掲げていますが、衆議院選挙で女性候補者が35%に達していたのは、共産党と社民党だけでした。また、先日(2022年7月10日投開票)の参議院選挙では、女性候補が181人(33%)で、当選したのは35人(28%)と、過去最多でした。ただし、衆議院選挙と同様、政党間で差があり、候補者に占める女性割合が35%以上だったのは、立憲民主党、国民民主党、共産党、れいわ新選組、社民党で、与党(自民党、公明党)は低水準でした。
情報出所:ハフィントンポスト、「ジェンダーギャップ指数2022、日本は116位。政治・経済分野の格差大きく、今回もG7最下位」(2022年7月13日)、https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_61c2aaebe4b0bb04a62b19cd、2022年7月14日閲覧

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続いて、ジェンダーギャップ指数をG7の各国と比較してみましょう。

ジェンダーギャップの是正についていうと、日本はG7の中で圧倒的に遅れていますね。G7各国の「政治的エンパワーメント」のスコアと順位は下表の通りです。

「政治的エンパワーメント」のジェンダーギャップは、総合スコア以上にG7の各国に大きく水を空けられています。スコアも順位も桁が違いますね…。

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それでは、市川市議会議員の女性比率はどの程度でしょうか。それを確認する前に、まずは、前回の市川市議会議員選挙(2019年)の候補者に占める女性比率を確認しましょう(前述の通り、市議選が行われた2019年の前年に成立した「政治分野における男女共同参画の推進に関する法律」では、候補者の男女数が均等となるよう目指すことが謳われています)

冒頭の円グラフは、2019年に実施された市川市議会議員選挙の56人に占める女性候補者と男性候補者の割合を示しています。女性が6人で10.7%、男性が50人で89.3%でした。

市川市でも女性候補者の割合が低いですね。ちなみに、この時の選挙では、女性候補者は全員当選しているため、市議会議員に占める女性比率は10.7%よりも高くなっています。

市川市議会議員に占める女性比率を、同じ千葉県内の市町村と比較します。2022年3月時点における、千葉県の54市町村の議会における女性議員比率は下表(上位1/3、中位2/3、下位3/3)の通りです。なお、2022年3月2日時点で、千葉県内の市町村議会議員1,133人のうち、女性は212人で18.7%となっています。

出所:NHK首都圏ナビ、「国際女性デー 女性議員が増えると何が変わる? 千葉県の現状は」(2022年3月7日)、https://www.nhk.or.jp/shutoken/chiba/article/002/55/、2022年7月14日閲覧

はじめに、表1/3で上位の自治体をみてみます。市川市のお隣、浦安市は40%と、白井市と並んで県内で最も女性議員比率が高い自治体です。また、市川市に隣接しており、何かとライバル視している(される?)船橋市松戸市、そして、大規模な商業地を擁する柏市は、いずれも約25%(8~10位)と、千葉県の中では女性議員比率が高い方です。

NHK首都圏ナビ、「国際女性デー 女性議員が増えると何が変わる? 千葉県の現状は」(2022年3月7日)、https://www.nhk.or.jp/shutoken/chiba/article/002/55/、2022年7月14日閲覧

続いて表2/3で中位の自治体をみてみます。23位の市原市の女性議員比率は、千葉県の市町村議会議員に占める女性比率とほぼ同水準です。24位以下の自治体は、千葉県平均を下回ることになります。

市川市は、全54市町村のうち33位で、女性議員比率は14.63%で、野田市や八千代市と同水準です。千葉市の自治体の中では「中の下」に位置しています。なお、市川市よりも下位の自治体は、県南部の人口が少ない町が多く、市川市の近隣にある、県内北西部の自治体の多くは、市川市よりも女性議員比率が高くなっています

NHK首都圏ナビ、「国際女性デー 女性議員が増えると何が変わる? 千葉県の現状は」(2022年3月7日)、https://www.nhk.or.jp/shutoken/chiba/article/002/55/、2022年7月14日閲覧

表3/3には南部の町が多く含まれます。千葉県唯一の村である長生村は女性議員が1人もいません。なお、北西部の自治体である鎌ヶ谷市がここに含まれています。

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日本では、国会でも地方議会でも、男性議員比率が高く、年齢層は高くなっています。社会は多様な人で構成されていますが、その多様性が議会構成に反映されていないですね。女性、若者が少ない議会では、育児支援などの論点が取り上げられづらいと思われます。

日本は、他国と比べて、特に「経済的参加と機会」と「政治的エンパワーメント」においてジェンダーギャップが著しく大きい状況が続いています。政治主導で女性の働き方の改革を進める面があることからもわかる通り、日本においてジェンダーギャップを縮小するためには、国会および地方議会で、女性候補者比率、女性議員比率を高めることが重要だといえます。

内閣府が、女性の政治参画への障壁についてアンケート調査を実施しているので、以下で紹介します。日本の(もちろん市川市も含みます)政治分野におけるジェンダーギャップの是正を考える上で、ヒントになると思います。

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以降では、内閣府男女共同参画局推進課「令和2年度 政治分野・経済分野における調査研究~女性の政治参画への障壁等に関する調査研究~」の結果を確認します。なお、調査概要は注釈に掲載します※1

以下の情報は、「共同参画」2021年6月号からの引用です。

【1】立候補を断念した理由

上位3項目は男女共通で以下の通りでした。

  • 立候補に係る資金の不足
  • 仕事や家庭生活のため、選挙運動とその準備にかける時間がない
  • 知名度がない

上位10項目の中で、男女差が大きい項目、すなわち、女性にとって立候補障壁となっている項目は、次の通りです。

  • 自分の力量に自信が持てない
  • 当選した場合、家庭生活との両立が難しい

【2】地方議会議員が立候補を決める段階から選挙期間中の課題

女性の上位3項目は次の通りです。

  • 知名度がない
  • 仕事や家庭生活(家事、育児、介護等)のため、選挙運動とその準備にかける時間がない
  • 選挙運動とその準備の方法が分からない

上位10項目の中で、男女差が大きい項目、すなわち、女性にとって立候補を決めてから選挙期間障壁となっている項目は、次の通りです。

  • 性別による差別やセクシャルハラスメントを受けた
  • 自分の力量に自信が持てない
  • 知名度がない
  • 地元で生活する上で、プライバシーが確保されない

【3】地方議会議員が議員活動を行う上での課題について

女性の上位3項目は次の通りです。

  • 専門性や経験の不足
  • 地元で生活する上で、プライバシーが確保されない
  • 性別による差別やセクシャルハラスメントを受けることがある

上位12項目の中で、男女差が大きい項目、すなわち、女性にとって議員活動を行う上で障壁となっている項目は、次の通りです。

  • 性別による差別やセクシャルハラスメントを受けることがある
  • 議員活動と家庭生活との両立が難しい

青太字の箇所が、
【1】女性が立候補することに対する障壁(立候補を断念せざるをえない事項)
【2】女性が立候補してから選挙期間における障壁
【3】女性が議員活動を行う上での障壁
として、明らかになったことです。

いずれも取り除くべき障壁ですが、立候補者の男女比を均等に近づけていくには、「自分の力量に自信が持てない」、「当選した場合、家庭生活との両立が難しい」と思わずに済むような状況を、日本社会がつくっていくことが有効だと言えます。

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上述の通り、市川市における市議会議員に占める女性比率は約15%と、かなりの低水準です。近隣の自治体である、浦安市(千葉県の市町村でトップの40%)に追いつくことを目標としていただきたいですが、まずは、船橋市、松戸市、柏市(いずれも約25%)と同水準まで引き上げてほしいですね。

ちなみに、市川市の女性議員比率が25%になるには、女性議員数が現在の6人から、5~6人増加の10~11人になる必要があります。ほぼ倍増ですね。候補者数でいえば、少なくとも女性候補者が5~6人以上、できれば10人以上増えることが望まれます。
※なお、「議員の女性比率を高めることが、議会の質の向上につながるとは言えない」、「女性比率の目標を掲げて、その達成を目指すのは、単なる数字合わせではないか」といった批判や疑問を目にすることがあります。これについては改めて言及したいと思います。

本稿では、最近発表されたジェンダーギャップ指数の話題から、市川市議会議員および選挙における候補者に占める女性割合の低さを確認しました。今回は切り込みませんでしたが、若い年代の議員も少ないので、女性と若年層の候補者が増えること、立候補の障壁となっていることを除去することが求められます。フリースタイル市川がこの障壁除去に直接関係する活動をできるかどうかは、わかりませんが、まずは、議会での女性議員、若い議員の発言や、議会外での情報発信などを注視してみようと思います。

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〈注釈〉

※1:内閣府男女共同参画局推進課「令和2年度 政治分野・経済分野における調査研究~女性の政治参画への障壁等に関する調査研究~」の調査概要は次の通りです。
〈本調査では、①立候補を検討したが断念した者に対するアンケート調査と、②男女の地方議会議員に対するアンケート調査の2種類の調査を実施しました。
①立候補を検討したが断念した者に対するアンケート調査では、インターネットモニターの中から、選挙に立候補しようと考え、具体的な行動を起こしたが断念した者を抽出して調査を実施しました(回答者994人(男性500人、女性494人))。
②地方議会議員に対するアンケート調査では、地域や議会の種類等を考慮して抽出した男女の地方議会議員を対象として調査を実施しました(回答者5,513人(男性3,234人、女性2,164人))〉(出所:内閣府男女共同参画局「共同参画」2021年6月号、https://www.gender.go.jp/public/kyodosankaku/2021/202106/202106_03.html、2022年7月14日閲覧)