【フードバンクにゅ~す】2023年3月27日

フードバンク

公開日 2023年3月27日

冒頭の画像は新潟県新発田しばた市にある「フードバンクしばた」が運営する「無料宿しばた寺子屋」です(画像出所:にいがた経済新聞、「注目の先進事例が新潟県に フードバンクしばたの包括的『貧困支援』」(2023年3月14日)、https://www.niikei.jp/659835/、2023年3月23日閲覧)。

3月4日以来、23日ぶり、通算25回目となる「フードバンクにゅ~す」です。

「<論戦 都議会>東京都がフードバンク助成 新年度予算案 食品ロス削減へ」(2023年3月21日)

 東京都は新年度、食品ロス削減を進めるため、小売店が未利用食品をフードバンク活動団体に寄付する際の配送費を助成する。二十日の都議会予算特別委員会の総括質疑で、公明党の小林健二議員の質問に答えた。

 フードバンクはNPO法人などが運営。賞味期限が近い食品や包装の印字ミスのため流通が難しい食品を個人・企業から譲り受け、福祉施設などに提供している。

 都は食品ロス削減の独自策として、陳列棚で賞味期限が近い商品から手に取って買う「手前どり」推奨の動画も制作する方針。フードバンクへの配送費と合わせ、関連経費約一億四千万円を新年度当初予算案に計上した。

出所:東京新聞公式Webサイト、「<論戦 都議会>東京都がフードバンク助成 新年度予算案 食品ロス削減へ」(2023年3月21日)、https://www.tokyo-np.co.jp/article/239246、2023年3月23日閲覧

「注目の先進事例が新潟県に フードバンクしばたの包括的『貧困支援』」(2023年3月14日)

新潟県にひときわ注目されるフードバンクがある。新潟県新発田市を拠点とする「フードバンクしばた」。フードバンクの先進事例として、NHKをはじめ数々のメディア露出がある。

日本のフードバンク団体の大部分が施設などにまとまって支援物資を降ろす方式をとっており、支援の必要な人は指定場所に足を運ぶ。一方でフードバンクしばたでは毎月1~2回、100%個人宅に届けている。支援回数に制限は設けていない。申請があったその日か翌日には届けているという。全国でもこのスタイルを成立させたのはしばたが初めて。そのためこの完全デリバリースタイルは「しばた方式」と名づけられた。

驚くのは、フードバンク事業自体がフードバンクしばたが手掛ける事業の、ほんの一部に過ぎないという事実。こども食堂、弁当配布事業、学校制服リサイクルバンク、訪問型病児保育、学用品リサイクル事業、生活用品リサイクル事業など12の事業で支援活動を行っている。もちろん国内のフードバンクでこうまで手広く展開している例はなく、赤字を出さずに事業を成立させているという点で刮目すべきだ。

その中で最も目を引くのは「無料塾しばた寺子屋」。小中学生対象の、文字通り授業料ゼロの学習塾。教えるのは新発田市役所の若手職員。もちろん無報酬のボランティア。

「優秀な大学を出た優秀な講師が無料で教えています。ありがたいことに喜んでやっていただいていますよ」と話すのはフードバンクしばたの土田雅穂さん。土田さん自身、新発田市役所退職後にフードバンクしばたを立ち上げたのだが、寺子屋の講師をしている若手職員とはほぼ入れ違いで重なっていない。

「多くのひとり親世帯が、世帯支出の中でどうしても切り詰めざるを得ないないのが教育費。日々の生活に追われる中でどうしてもそこは二の次に。でもそれでは次世代を担う子供たちのチャンスロスになってしまう。貧困の連鎖の出口が見つからない中でなんとかしたい」

生活保護世帯の子供は少なからずの割合で再び生活保護受給者になってしまうのだという。ひとり親世帯の生活支援を続けていく中で、教育費の問題は必ずぶち当たる課題。これがクリアされないと世代を超えて貧困の連鎖となってしまう。真の自立支援であればせめて次世代では貧困を抜け出してほしい、の思いがある。

そうした思いから令和4年5月に完全給付型の奨学金をスタート。貸与型でなくあくまで給付型にこだわった。一般財団法人・未来応援奨学金にいがた(愛称『しずくプロジェクト』)。土田さんは副理事長兼専務理事。給付額は高校生が1人月額5000円、大学生などそれ以上の学生には月額3万円。対象者は経済的に困窮する世帯で新潟県内に在住の学生、新潟県出身で県外在住の学生。審査基準は学力よりも「貧困状況」と「本人の勉学に対する姿勢」を重視する。

「大学生1人を支援するのに年間36万円かかる計算に。地元企業様に寄付をお願いする際には『大学生〇人の面倒を見てほしい』という言い方をしたら多くのご賛同を得られた」(土田さん)。

初年度は420人の応募(高校生180人、大学・専門学校生240人)があった。このうちなんとか支援にこぎつけたのは高校生70人、大学・専門学校生30人。実績といえる数字にたどり着いたが、先は長い。

「なんとかより多くの企業にご賛同をいただいて、学びたくても学ぶことができない子供を救ってあげて欲しい」と土田さん。

出所:にいがた経済新聞、「注目の先進事例が新潟県に フードバンクしばたの包括的『貧困支援』」(2023年3月14日)、https://www.niikei.jp/659835/、2023年3月23日閲覧、青字および青太字は筆者による強調

フードバンクしばたのWebサイトを見てみると、この記事にもあるように、たくさんの事業を実施していることがわかります。2023年3月23日時点で、下記12の事業を展開していました。

  1. フードバンク事業
  2. お弁当配布事業
  3. こども支援プロジェクト
  4. 就学支援事業
  5. 制服リサイクルバンク事業
  6. 学用品リサイクル事業
  7. 生活用品リサイクルバンク事業
  8. ママの休憩室 虹
  9. 訪問型病児保育 こころ
  10. 無料塾 しばた寺子屋
  11. ナプキン配布事業
  12. お母さんのそうだん室

「『こども食堂』は貧困対策ではない? 成人後も通い続ける女性の背景」(2023年3月16日)

「学校とは違う“居場所”の役割がある。7年目に入るが、当時小学3、4年生だった子供たちが今、高校生になってもなおいる」(田中さん)

 なかには、中学校時代からこども食堂を定期的に利用し、社会人になった今でもたびたび通っている女性もいる。樹里さん(20歳・会社員)だ。

 樹里さんが、こども食堂に通うようになったきっかけは何だったのか。

「先に通っていた先輩からの紹介だ。『食事をするため』が一番にあって、勉強、学習支援で毎週土曜日に通うようになった。地域の先生がボランティアで来ていて、数学や英語を教えてもらっていた。同い年の違う学校に通っている子、3歳ぐらいの子供もいて、親子で来ている人もいた。ご飯を食べるときは10人以上いて、本当にいろいろな層の人がいた」

 ネットでは、子ども食堂に通うことについて「貧乏な家庭というレッテルを貼られる」「近所にバレたら恥ずかしい」「こども食堂が増える社会にしている時点で間違っている」といった声もある。実際に樹里さんの親も、通うことを反対していた。

「両親にあまりいい顔はされなかった。両親からしたら『ご飯も食べれないような子』と、思われたくないという理由だった。うちで食べられるのに、食べられないように見えてしまうから。実際、食べられてないのは事実だった。親にも直接言えなくて、家に居づらかった。こども食堂さんが助けてくれた」

(中略)

 社会人になった今も通っている樹里さんは、改めてこども食堂をどういう場所だと思っているのか。

私にとって、もう一つの実家だ。好きで来ていたし、今は社会人になって、人間関係など子供の頃とは違う悩みが出てきた。家族じゃない人に相談したくて、やっぱりここに来てしまう。私が誰かの相談を受けることもある。通いづらいと思っている子や親御さんが、もっと気軽に行ける場所になってくれたら、すごいいいなと思う」

出所:ABEMA TIMES、「『こども食堂』は貧困対策ではない? 成人後も通い続ける女性の背景」(2023年3月16日)、https://times.abema.tv/articles/-/10071329、2023年3月23日閲覧、青太字は筆者による強調

子ども食堂が居場所として重要な役割を担っていることを物語る事例です。

自宅(第一の場所、ファーストプレイス)に居づらかった樹里さんに、学校(第二の場所、セカンドプレイス)とも異なる、子ども食堂(第三の場所、サードプレイス)があってよかったですよね。

参考記事

「『食料確保と食品ロス削減』両立を岡山県が支援  フードバンクと食品提供企業のマッチングサービスを 2023年4月3日より提供開始」(2023年3月22日)

自治体向けの業務支援を行う株式会社G-Place(本社:京都府長岡京市、代表取締役社長:綾部 英寿、以下「当社」)はフードバンクと食品提供企業のマッチングサービス「Foodeal」をリリースします。

同時に本サービスを利用し、岡山県は県内フードバンクと食品を提供したい企業をマッチングする事業を「おかやまフードトリップ」として2023年4月3日より開始します。またこれに先立ち、3月22日よりフードバンクと食品提供事業者の登録受付を始めます。なお本サービスは、フードバンク、登録事業者ともに無料で利用できます。

岡山県は本サービスの提供により、食料品の確保に取り組むフードバンクと、食料品を寄付したいが実施できていない事業者の双方の課題解決を目指します。

出所:@Press、「『食料確保と食品ロス削減』両立を岡山県が支援  フードバンクと食品提供企業のマッチングサービスを 2023年4月3日より提供開始」(2023年3月22日)、https://www.atpress.ne.jp/news/349675、2023年3月23日閲覧

徳島市「フードバンク事務所にロッカー設置 24時間受け取り可能に」(2023年3月19日)

 NPO法人フードバンクとくしま(徳島市)は、支援が必要な人が24時間、食料品などの物資が受け取れるロッカーステーションを事務所内に設けた。生活困窮者支援の一環で、県の助成金を活用した。フードバンクに利用を申し込み、支援が必要と判断された場合に使える。

 設置したのはダイヤル式ロッカー(幅90センチ、奥行き52センチ、高さ137センチ)で、六つの扉があり、一度に6世帯が利用可能。事務所が開いていない時間帯や休日でも受け取れるよう、建物の外から自由に出入りできるスペースに設けた…

出所:徳島新聞公式Webサイト「フードバンク事務所にロッカー設置 24時間受け取り可能に」(2023年3月19日)、https://www.topics.or.jp/articles/-/858509、2023年3月23日閲覧

「ネコ版フードバンク始動 浜松の団体、多頭飼育の崩壊防止へ 余った餌、必要な飼い主に」(2023年3月17日)

 浜松市の動物愛護団体「捨て犬!捨て猫!ゼロの会」が一般家庭で余った市販のキャットフードを募り、多頭飼育の飼い主や地域の野良ネコに餌を与えるボランティアに贈るネコ版フードバンクに取り組んでいる。支援をきっかけに、多頭飼育崩壊の未然防止につなげたり、飼い主のいないネコの不妊手術の協力を得たりする。

 「フードにゃんド」と銘打った事業で、2月からキャットフードの受け付けを始めた。同団体は過去の多頭飼育崩壊した家庭の支援を通じ、社会からの孤立や生活困窮との関わりを実感した。餌代の負担軽減とともに、早期に飼い主から助けを求められるような信頼関係を築き、飼育放棄による野良ネコの繁殖や殺処分を防ぐ。

 「餌やりさん」と呼ばれる地域ボランティアも支援対象にする。野良ネコの餌付けについては無責任との批判もあるが、同団体の成瀬正子事務局長(58)は「弱いものを助けたいと思うのは人間の本能。餌やりさんが社会的に弱い立場の人であれば、ネコに共感し、依存の関係になっていく」と説明する。

出所:あなたの静岡新聞(Yahoo!ニュース転載)、「ネコ版フードバンク始動 浜松の団体、多頭飼育の崩壊防止へ 余った餌、必要な飼い主に」(2023年3月17日)、https://news.yahoo.co.jp/articles/3a7f2dbf0494a319574c380f6c6b2da1a5e9e1e3、2023年3月23日閲覧、青太字は筆者による強調

こちらはネコ版フードバンクです。キャットフードの廃棄を減らし、必要としているところに届ける、ということに加え、多頭飼育崩壊を防いだり、野良ネコの増加や殺処分を防ぐことも目標にしています。

八王子市「2023年 子ども食堂見本市の開催!」(2023年2月28日)

 コロナ禍の真っ最中であるにもかかわらず、子ども食堂は増え続け、現在では、全国で7,000カ所を超え、八王子でも30カ所を超えました。これは驚くべきことだと思います。 

 このエネルギーは、一体、どこから来るのでしょうか? 

 今春、ようやくコロナ禍も(今度こそ?)峠を越えようとしています。

 この好機をキャッチして、八王子の皆様には既におなじみの「全国こども食堂支援センター理事長・湯浅誠氏」をお迎えして、子ども食堂の現在と未来を、皆様とご一緒に考える機会を作りたいと思います。

 今回は、丸三年ぶりの開催です。 

 八王子の子ども食堂の皆様には、それぞれブースを持って頂き、そこでの活動PRやバザーなど、自由に展示して、市民の皆様に向けて、その健在ぶりをアピールして頂きます。

 子ども食堂に関心のある皆様のご参加をお待ちしております。

【日時】4月1日(土)13時30分〜16時 
【場所】東京たま未来メッセ第一会議室・第二会議室(東京都八王子市明神町3丁目19-2) 
【定員】先着50名様 
【参加費】500円 

出所:フードバンク八王子公式Webサイト、「2023年 子ども食堂見本市の開催!」(2023年2月28日)、https://www.foodbank8.tokyo/post/2023%E5%B9%B4-%E5%AD%90%E3%81%A9%E3%82%82%E9%A3%9F%E5%A0%82%E8%A6%8B%E6%9C%AC%E5%B8%82%E3%81%AE%E9%96%8B%E5%82%AC%EF%BC%81、2023年3月23日閲覧 ※申し込みはフードバンク八王子市Webサイトより

「茨城・神栖『おんおくり』 困窮世帯に食材や文具 善意の品、無償配布」(2023年3月22日)

新型コロナウイルス禍や物価高騰で困窮する世帯に食料品を提供する「神栖おんおくり」が21日、茨城県神栖市溝口の市中央公民館で開かれた。昨年から始まった「全県一斉子どもフードパントリー」の一環で、訪れた市民ら100世帯に、白米やパン、子ども向け文房具などが無償配布された。

子どもフードパントリー茨城実行委員会によると、今年の取り組みは2~4月に県内20カ所で実施。同市では、NPO法人「あっとホームたかまつ」(根本紗千心理事長)が主催した。同市後援。

会場では、市内外の企業、団体など40以上の事業者から寄せられた白米、野菜、缶詰、調味料が並び、参加した市民は自宅に必要な物資を一つ一つバッグに詰め込んだ。同法人によると、開始の約2時間前から行列ができ、物資の配布が始まった直後に予定していた100世帯分のチケットを配り終えたという。

中でも、水戸市の事業者が寄贈し、事前に申し込んだ4世帯に無償配布されたランドセルは注目を集め、未就学児を持つ保護者から「来年も配布しますか」などの質問が飛んだ。

食材を受け取った60代女性は「電気料金から食材まで、何もかも価格が高騰して困っていたので、とても助かる」などと話した。

出所:茨城新聞クロスアイ、「茨城・神栖『おんおくり』 困窮世帯に食材や文具 善意の品、無償配布」(2023年3月22日)、https://ibarakinews.jp/news/newsdetail.php?f_jun=16793979392902、2023年3月23日閲覧

「親の虐待、夫のDV…物価高直撃でも『頼れない』ひとり親の女性たち」(2023年3月5日)

 この1年、コロナ禍や物価高が、ひとり親家庭の暮らしを直撃した。食品を無償で届ける「フードパントリー」の現場には、困難を抱えた女性や家族が足を運ぶ。主催団体は「少しでも笑顔になってもらい、明日の一歩を踏み出してほしい」と願う。

 2月下旬、名古屋市の金山駅南口。物販などがある「金山にぎわいマルシェ」の一角のテント前には列ができた。次々と、スタッフから袋を受け取っていく。

 「お米は助かります」「たくさん、ありがとう」

 子どもを連れた女性が多い。袋の中身は、米やレトルトのご飯やカレー、カップ麺など。

 「この1年、とにかく光熱費の値上がりが大変だった」。3歳の長女と来た愛知県長久手市の女性(46)は言う。母子2人暮らしで、女性は週6日、工場で働く。元夫からの養育費3万円も「いつまでもらえるか分からない」といい、実家の親とは、かつて虐待されたこともあって疎遠だという。

 「熱が出て2人で寝込んでも誰も頼れる人がいない。ただ生きるので必死」。ぐずる我が子を抱き上げて、会場を後にした。

 この取り組みは、社会福祉法人「愛知県母子寡婦福祉連合会」が昨年3月から始めた。「ひとり親家庭フードパントリー&無料相談会」と名づけ、この日は事前予約した計80組が訪れた。就労や健康、住まいに関する相談に専門家がのる。

 周囲に頼りづらい事情を抱えている女性は多い。

出所:朝日新聞デジタル Think Gender、「親の虐待、夫のDV…物価高直撃でも『頼れない』ひとり親の女性たち」(2023年3月5日)、https://www.asahi.com/articles/ASR3372X3R2XOIPE023.html、2023年3月23日閲覧

しばしば、親に頼ることができない子どもが抱える問題に注目が集まりますが、子育てにおいて親を頼りにできない若い親という人たちもいます。生きづらさを少しでも軽減できるような相談の場が、フードパントリー開催時に設けられているのは、悩んでいる参加者は、助かると思います。

以上、2023年3月27日の「フードバンクにゅ~す」でした。