【コラム】信号機のない横断歩道で歩行者が渡ろうとしている時、一時停止する車としない車

コラム

2023年10月3日の日本経済新聞(電子版)に掲載されていた『千葉県の「危ない交差点」、市川市などで目立つ』と題された記事を読んだことを契機に、こんなコラムを書きました。

このコラムの終わりの方の2文を引用します。

横断歩道は、歩行者優先であり、運転者には横断歩道手前での減速義務や停止義務があります――と、警視庁の公式Webサイトにも書かれています(出所:警視庁公式Webサイト「横断歩道は歩行者優先です」https://www.npa.go.jp/bureau/traffic/oudanhodou/info.html)。私が見る限り、コルトンプラザのダイエー側の出入口の近くにある横断歩道の手前では、今まさに横断歩道を渡ろうとしている歩行者がいても、アスファルト、タイヤを切りつけながら、暗闇走り抜ける車が、少なくないようです。

出所:特定非営利活動法人フリースタイル市川公式Webサイト「【コラム】千葉県の「危ない交差点」が発表されました~人身事故件数上位に、千鳥町・大野町・高浜町・鬼高~」(2023年10月5日)https://fs-ichikawa.org/traffic_safety/、2023年10月28日閲覧

どうでしょうか?

自動車を運転する方は、信号機のない横断歩道で歩行者が渡ろうとしている時に一時停止していますか?

JAFが今年(2023年)の8月から9月にかけて各都道府県2箇所ずつの信号機が設置されていない横断歩道で実施した調査によると、歩行者が渡ろうとしている場面で一時停止した車は、7,087台のうち、3,193台(45.1%)でした。止まる割合は年々上昇しているとはいえ、半数以上の車がノンストップなのですね。

都道府県別の一時停止率は下図の通りです。

出所:JAF「信号機のない横断歩道での歩行者横断時における車の一時停止状況全国調査(2023年調査結果)」より作成。

1位は長野県で、調査開始の2016年から8年連続で全国1位です。

首都圏(一都三県)はいずれの都県とも40%を下回っており、全国平均の45.1%に及びません。市川市のある千葉県は、31.9%という驚くべき低さで、全国37位でした。

一時停止率の全国平均が、毎年上昇しているにも関わらず、いまだに50%弱という低さであることに呆れてしまいましたが、千葉県では(この調査では県内の2箇所で調査をしたに過ぎませんが、それにしても)3台中2台は走る抜けるわけで、運転する人は歩行者にもなるわけですし、歩行者優先を遵守するよう、お願いします。

なぜ止まらないのか?と考えてみますと、

  • 歩行者の存在に気が付かなかったから
  • 歩行者を視認したが渡ると思わなかったから
  • 急いでいたので止まりたくなかったから
  • 横断歩道とはいえ車道なので歩行者優先でなく自動車優先だと思っていたから
  • 後続車がなく、通り過ぎれば歩行者は渡れると思ったから※2

といったことが思い浮かびますが、実際に走り抜けた車を運転していた人に聞いてみたいですね。そのわけを。本音を。本音を知ることで、単に「横断歩道は歩行者優先なので、渡ろうとする歩行者がいる時は止まりましょう」と、運転者に課す義務を直球で訴え続けるだけでなく、行動変容を促すための工夫を講じることができるかもしれない(と、書くまでもなく、そのような研究は進められているはずですよね)。

実際、色々な対策が講じられています(今、すかさずネット検索しました)。

 横断歩道を立体的に見えるようにする対策は、インドのデリーやアイスランドのイーサフィヨルズゥルの施工例が早い時期のものとして知られている。横断歩道は、歩行者が安全に道路を横断するための場所であり、渡ろうとしている歩行者がいるときには、自動車は一時停止をする義務がある。しかし、実際には一時停止義務が守られているとは言い難い状況にある。そこで、最近、横断歩道を目立たせるために、白線の間を緑や赤で塗装することが全国各地で行われている。横断歩道を立体的に見えるようにする方策は、横断歩道を目立たせるための別種のアプローチといえる。
 立体物と見せかける対策は見慣れてしまうと、効果は減少すると考えられるが、見慣れてしまっても、その場所は他よりも減速が必要な場所であるというメッセージをドライバーに伝えることができる。

出所:志堂寺和則「人間の心理特性に基づく交通行動改善」『国際交通安全学会誌』Vol.48、No. 1、pp.21-26、2023年6月(青文字太字、赤文字太字は筆者による強調)

ネットで「立体的に見える横断歩道」という語で検索すると、色々な対策が提案され、導入されていることがわかります。

ところで、市川市で交通事故は1年に何件ほど発生しているかご存知ですか?

出所:市川市公式Webサイト「市川市内の交通事故発生状況」(更新日 2023年8月17日、
https://www.city.ichikawa.lg.jp/roa01/1111000006.html、2023年10月28日閲覧)より作成

2016年から2019年まで、年間事故件数がグッと伸びていますが(2019年には1日当たりの平均発生件数が3件を超えました)、そこから2022年までは減少を続けています(高速道路での事故は集計対象外です)。

年間事故件数が729件になれば、これを365で割った1日当たり平均件数が2を下回る(1.997260274)ので、まずは2022年の件数から113件少ない729件を下回ることを目指したいところです(もちろん、実際にはこんな安易な目標設定で良いわけがありません)。理想は当然、年間件数ゼロ件ですけどね。

市川市が色々な施策(例えば交通安全や市民の健康寿命延伸のための施策)を講じていることは、多くの市民が知っていると思いますが、例えば、「健康寿命日本一」を目指すという場合、

  • 今の健康寿命が何歳(何年?)で、
  • その順位は全自治体のうち何位で、
  • 千葉県内では何位で、
  • どのような施策を講じて、
  • 健康寿命をいつまでに今よりもどれだけ延伸するのか?

を示してほしいですね。交通事故件数の減少についても、他のことについても言えることですが。

おっと、変な姿勢でこの文章を書いているので腰が痛くなってきました。そろそろ筆を(実際には筆で書いていませんが)置きます。またお目にかかりましょう!See Ya !

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〈注釈〉

※1:冒頭の画像は世界でもっとも有名な横断歩道の一つを渡る、THE BEATLES のメンバー4人(前から順に、ジョン、リンゴ、ポール、ジョージ)で、アルバム『Abbey Road』のジャケット写真として有名なものです。

※2:朝日新聞 「横断歩道、止まらない?」(2017年12月24日※3)に掲載された、一時停止をしない理由より。

※3:6年前のクリスマス・イヴ。

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執筆日 2023年10月28日
公開日 2023年11月2日