千葉県が主催する子ども食堂ネットワーク会議にフードバンク団体として参加しました。
会議には千葉県内から子ども食堂を実際に運営している団体やそれをまとめている各市のネットワークも参加していて100人以上の会議となりました。
市川市からは私達の他に、市川子ども食堂ネットワークの代表や市川社協の職員の方、こども家庭支援課も参加していました。
県から子ども食堂への給付金の説明があったり、各市の子ども食堂ネットワークの取り組みについて事例発表がありました。
そこでは子ども食堂団体だけでなく、行政や地元企業との連携、つながりが大切であるということを再認識しました。
また、千葉県子ども食堂連絡会の代表である高橋亮さんによる「私達は子ども食堂を通じて”子どもが真ん中”という社会を作っていくんだ」という力強い(それでいて穏やかな)コメントが印象的でした。
出所:特定非営利活動法人フリースタイル市川公式Facebookページ(2023年11月9日投稿)
上の青色文字の文章は、フリースタイル市川のFacebookページに投稿されたもので、2023年11月8日に開催された「令和5年度千葉県子ども食堂ネットワーク会議」に参加した野口淳さんが著したものです。
会議の中で、千葉県内の各市にある、子ども食堂ネットワークの活動発表があったとのことですが、このような「ハブ」の役割を担う存在は重要ですよね。
例えば、ある自治体に8つの子ども食堂団体があったとします。各団体が運営のノウハウなどの情報を共有することは、その地域の子ども食堂全体の運営レベルの向上に寄与しますよね。これが、通常の食堂(営利目的の飲食店)であれば、互いは強敵ないし好敵手ですから、運営のノウハウの共有はあまり行われないでしょうが、子ども食堂ひとつひとつは、互いに補完し合うこともあります。
さて、仮に8つのこども食堂のひとつひとつが、他のこども食堂と情報交換をしているとすると、1団体あたり7つのこども食堂と情報交換をすることになります。この地域内では計56種の情報交換のチャネルが存在することになります(下図の上の絵)。1対1の関係を築くことの意義もありますが、各団体は相当の手間をかけて情報の授受をおこなうことになります。また、1対1の関係が良好であるとは限りません。
もし、「ハブ」の役割を担う団体がある場合はどうでしょうか。単純化すると、下図の下の絵のようになります。
「ハブ」があれば、各子ども食堂は、「ハブ」に情報を提供し、「ハブ」から情報を受け取れば、他の7つのこども食堂と情報交換ができることになります。ちなみに、この図では単純のために各主体間の情報交換チャネルは存在しないことになっていますが、現実には存在していることが多いでしょう。が、「ハブ」の存在を前提とすることで、子ども食堂間の情報交換が安定的に行えるようになります。
また、子ども食堂同士や子ども食堂ネットワークと各子ども食堂の関係構築だけでなく、行政や企業との関係も大事であると改めて認識した、という野口さんの言葉がありますね。
下図は、「いちかわフードバンクbyフリスタ」の活動が、食品の流れの中にあり、団体や個人、行政、企業、学校など、様々な主体との関係があって成立するものである、ということを示しています。
食品の流れ(授受)で、各主体がつながっているわけですが、今どこでどのような食品の需要があり、それに対して供給は足りているか、余っているのか、など、食品だけでなく情報も、フードバンクを中心として流れていくのですね。情報は「→」方向と「←」方向、両方あります。
また、市内の大学の学生さんがこの活動に関わろうとしている、といった人に関する情報も流れます。フードバンクが、積極的に情報を得て、流すこと、また、このような記事やSNSを通じて、そして、十分にはできていませんが、フードバンクの認知を高めるべく紙のリーフレットを配布すること――それが、地域のセーフティネットをしなやかで強いものにすることに寄与するはずです。
が‥‥
子ども食堂(こども食堂という表記も多用されます)を巡っては、「困窮している子ども」を、「共助」で支援していることを問題視し、本来は「公助」の領域であるし、困窮している人が増えていること自体が国の経済政策の失敗ではないか、政府は何をやっているのだ!という批判が絶えません。子ども食堂には地域のコミュニティという側面もあるんだよ、というような話もありますが、その話をここに持ち込むとゴチャゴチャしてしまいます。
彼らが批判しているのは子ども食堂ではないはずで、公助を厚くしない(共助に任せきり、と彼らが思っている)政府に批判が向けられるのです。
コロナ禍の真っ只中、2021年に厚生労働省の広報誌に掲載された、NPOなどの支援や特例貸付業務を担当しながら、生活困窮者にかかわる活動にも取り組む、根本真紀さん(東京都文京区の社会福祉協議会)の言葉を紹介します。
公助がしっかりしてこそ自助・共助が生きます。困窮者に対して、公助より先に自助・共助を求め続けることに大きな疑問を抱かざるを得ません。
出所:厚生労働省公式Webサイト「Approaching the essence─『社会のリアル』に学ぶ─」(元の資料: 厚生労働省広報誌『厚生労働』2021年2月号)、https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou_kouhou/kouhou_shuppan/magazine/202102_00002.html、2023年11月10日閲覧、赤色太字と青色太字は筆者による強調。
政府(国)、都道府県、地方自治体には、共助の後方支援(子ども食堂を支援すること、フードバンクを支援すること)だけでなく、公助自体を厚くしてほしいです。
2023年8月11日には「【自助・共助・公助】『共助』の限界と『公助』の必要性」と題した記事を公開しました。
この記事で私はこう訴えました。
「共助」の担い手に対し、利用者を選別することのリスクを伝え、警鐘を鳴らしてくれることはありがたいことです。ですが、その伝え方によっては分断を生みかねないとも感じます。「共助」には限界があります。それは想定内の限界です。「共助」の問題点を指摘することも必要ですが、それにとどまらず、「自助」や「共助」に頼りすぎる、依存しすぎること自体が危険なのであり、「公助」の充実を私たちは今求めるべきだと思います。
「もっと公助を」と、政府、行政に、訴えたいです。
出所:特定非営利活動法人フリースタイル市川「【自助・共助・公助】『共助』の限界と『公助』の必要性」(2023年8月11日)https://fs-ichikawa.org/help20230811/、2023年11月10日閲覧、青色太字と赤色太字は筆者による強調
最後に、市川こども食堂ネットワークのサイトを紹介して、この記事を締めくくりたいと思います。
市川こども食堂ネットワーク公式Webサイト
https://ichikawa-kodomosyokudounw.jimdofree.com/
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Psotscript(略してPS.)
最初に引用した野口淳さんが書いた文章に「千葉県子ども食堂連絡会の代表である高橋亮さん」とあります。高橋亮さんは、「とうかつ草の根フードバンク」事務局長を務めています。2016年に松戸市でスタートした「こがねはら子ども食堂」では小中学生らに食事を提供しつつ、学習支援も行っています。
フリースタイル市川がフードバンクの活動を始める直前に、「こがねはら子ども食堂」と「とうかつ草の根フードバンク」の見学をさせていただき、高橋さんに丁寧にご説明いただいたことは、とてもありがたかったです。フードバンクの倉庫って、こうなっているんだ!と感心したものです。
その後、活動を進めていったわけですが、高橋さんたちの活動は、灯台の光のように、私たちの進むべき方向性を示してくれている、というか、「あれ?今、どっちに向かって歩んでいるんだっけ、私たち」、と思うような時に、メンバーで話し合いをしながらも、「こがねはら子ども食堂」と「とうかつ草の根フードバンク」の見学をした時のことを思い出したりもして、少しでもこういう地域にしていきたいんだよね、そのためにやれることをやっていこうよ、できれば関わる人が多くなるようなやり方で、そして関わった人たちが、今までよりも少しでも地域のことに関心を持ったり、友達ができたり、楽しい気持ちになれるようなことをね――と思うわけです。高橋さんたちが明るく楽しそうに子ども食堂の利用者さんと話をしているところを今も思い出しながら書いています。
また高橋さんとお会いしてお話したいですね!
フリスタのみんな、フードバンクに参加している皆さん、今度、「こがねはら子ども食堂」に行きませんか?
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執筆日 2023年11月10日
公開日 2023年11月15日