今から2か月ほど前の2025年5月18日、市川市のカーボンニュートラル推進課の主催によるイヴェント「アシタノイチカワVol.2」が、南行徳市民談話室で開催されました。筆者は、このイヴェントに参加し、ゲスト・スピーカーの話を聴き、参加されていた方々と会話して、色々なことを考えました。考え、そして、調べたことを、記事にしました。
この記事の中で、ニューヨークの「座れる」まちづくりに言及しています。引用しますね。
○街中にあふれる「座れる場所」
ニューヨーク市には公的にベンチが設置されており、セントラル・パークだけでも約9,000脚あります。2009年にはタイムズスクエアやヘラルドスクエアが歩行者用のプラザとして整備され、誰でも利用しやすい屋外空間が広がりました。○ウォーカブルシティ=休める力
ニューヨークでは歩道が市面積の約25%を占める公共空間です。途中で自由に休憩できる場所があることで、都市の「歩きやすさ(ウォーカビリティ)」が高まります。○店舗側からの“勝手な”公共空間提供
コーヒーショップなどが店頭に置く椅子は、たいてい余っていたり古くなったりしたものを転用したものです。リーマンショック後の時期には、人を呼び込み、街に活気を取り戻すための「賑わい演出」の手段として使われました。○サードプレイスとしての効果
歩道のベンチは、人と人をつなぐ「第三の場所(サードプレイス)」として機能します。特にコーヒーショップの前では、偶然の会話やつながりが自然と生まれます。○ジェーン・ジェイコブスの都市論とのつながり
小さな区画や用途混在、古い建物の活用、適度な密度といった条件がそろうことで、都市は人の行き交いや偶然の出会いに満ちた場所になります。歩道にあるベンチは、その象徴とも言える存在です。○“見る・見られる”という都市文化
出所:フリースタイル市川「【コラム】「都市緑化」や「歩きやすい都市」について考える(アシタノイチカワVol.2の残響の中で)」(2025年6月20日公開、2025年6月23日更新、2025年7月28日閲覧)https://fs-ichikawa.org/urban_greening_examples/、元の情報出所:アクロス「レポート ■都市のコード論:NYC編 vol.02; “Sittable City”」(2014年6月3日公開、2025年6月20日閲覧)https://www.web-across.com/todays/srnrj2000002doc0.html
外で座る人々は、街を行き交う人たちを観察し、また観察される存在になります。都市の歩道は、“見る・見られる”という「ソーシャルなバレエ」が繰り広げられる舞台であり、公共的な交流の場として重要な役割を果たしています。
国土交通省では、中心市街地の活性化などの目的で(だと思うのですが)、「『居心地が良く歩きたくなる』まちなかづくり~ウォーカブルなまちなかの形成~」ということを打ち出しています。
参考:https://www.mlit.go.jp/toshi/toshi_machi_tk_000072.html
歩きたくなる、歩きやすい、そんな意味の言葉として、ウォーカブル(walkable)が使われています。
歩きたくなるまちなかであるためには、段差が少ない舗装された道が整備されていることなどはもちろんですが、街路樹があったり、ベンチがあって、座りやすい/シッタブル(sittable)で、休みやすい/レスタブル(restable)なことも求められます。
先に紹介した記事(【コラム】「都市緑化」や「歩きやすい都市」について考える(アシタノイチカワVol.2の残響の中で))では、「街路樹が多いまちって良いですよね」ということを述べています。
冒頭の画像は、「杉並区まちなか木製ベンチ等設置補助金交付事業」のチラシ「まちなかに木製ベンチを置きませんか」 https://www.city.suginami.tokyo.jp/documents/1649/benchi_chirashi_202503.pdf から引用した画像を加工したもので、令和5年度(2023年度)の区民参加型予算事業の区民投票で選ばれて始まった当該事業で、実際にまちなかに設置された木製ベンチです。
良いですね。この事業は、区民がベンチを設置する際の費用として、上限5万円を補助するというものです。
まちなかに、ちょっと座って休憩できる場所があると、安心して出かけられるようになります。気軽にお出かけしようという気持ちになれます。
「ベンチが多いまちって良いですよね」
「ですよね~。ベンチの近くには街路樹があって、紫外線を遮ってくれたらうれしいですよね」
「ですねッ!さらに、水飲み場か給水スポットが近くにあれば、汗をかきそうな陽気の日でも安心です」
「ですよね~」
この記事で紹介した給水スポットは、屋内の物が念頭にありますが、ストリートにも、ベンチと街路樹とともに。給水スポットが設置されるようになれば、実にウォーカブルな町になるのではないかとも思うのです。
書きながら、「あ!そういえば!」と思い出したことがありました。下のベンチの写真は、筆者が今年の春に市川市内のストリートで撮影した1枚です。

このベンチの座面と背もたれは、7枚の細長い板から成りますが、全て色が異なります。虹を思わせますね。そして、背もたれの一番売れの赤色をした板の右端には、小さなパネルが貼られており、「〈街かどベンチ事業〉市川南自治会 2021・市川市地域活性化補助金対象」と書かれていました。
市川市に「街かどベンチ事業」というものがあった(ある?)ことを、寡聞にして存じ上げませんでした。
調べてみると、「街かどベンチ作り隊」という「隊」の存在が明らかになりました!
コロナ禍におきましても少人数で感染予防対策を十分に取った上で、地域の活力を取り戻そうと新たな事業を実施した2つの自治会がございました。この2つの事業は、令和2年度に新設された自治会等提案地域活性化事業補助金を活用して実施したもので、地域の歴史や文化、伝統を伝える取組など、地域を活性化する自治会の事業に対し、市が補助金を交付して支援しているものでございます。
(中略)
2つ目として、今年度は市川南自治会が街かどベンチ作り隊と名づけて、地域の子どもたちとともにベンチを作成し、自治会区域内の複数箇所に設置いたしました。ベンチを設置することにより、高齢者や子どもたちに利用してもらい、世代間の交流や地域住民とのつなぎの場として効果が期待できることや、子どもたちと協力して作成することによって、子どもたちが成長したときには自治会活動に興味を持ってくれることも期待して実施したものでございます。自治会には、地域住民、そして子どもたちの協力の下、事業が進められ一体感が深められた、ベンチの設置により地域住民から感謝の言葉を贈られたなどの声が寄せられております。本市はこのようにコロナ禍の状況でも取り組むことができる事業を応援して、自治会活動の活性化を通じ地域のつながりの強化を図ってまいりたいと考えております。
出所:市川市公式ウェブサイト、市川市議会令和4年2月定例会における小沢俊也企画部長の答弁(2022年2月18日。創生市川の代表質問に対する回答)、https://www.city.ichikawa.lg.jp/cou01/kaigiroku0000405025.html
2021年度に、市川南自治会が「街かどベンチ作り隊」を編隊し(?)、自治会と地域の子どもたちで複数のベンチをつくって自治会区域内に設置していたのですね。
各自治会でどんどんやってほしいですね。各自治体ごとに、「街かどベンチ作り隊」を編隊してほしいです。私も某自治会の「街かどベンチ作り隊」に(それが編隊されし暁には)参加したいものです。
国松ひろき議員のように、自治会に限らず、市として、座れる、休めるベンチを、たくさん設置した方が良いとの意見を述べている市川市議会議員もいます。
自治会を応援する条例の2つの補助制度を除いて、大体の補助金の制度はどの会長さん、役員さんも理解していると思います。自治会コミュニティ活動支援補助金、自治会等提案地域活性化事業補助金においては、長年役員をやられている方でも理解されている方はそれほど多くないのかなと認識しております。先ほど実施例で、街角にベンチを設置したと聞きました。私も市川駅南口を見てまいりましたが、大変すばらしい取組だと思いました。少子・高齢化の折、市民の方が、いつ、どこでも座り、休憩ができるベンチの設置は、自治会だけでなく本市として、たくさん置いていったほうがいいと思いますが、自治会の話からそれますので、またの機会にいたします。このような自治体を支援する補助金制度を新設しているのにもかかわらず、自治会長が知らなかったという事例があります。
出所:市川市公式ウェブサイト、市川市議会令和4年12月定例会における国松ひろき議員の一般質問(2022年12月12日)、https://www.city.ichikawa.lg.jp/cou01/kaigiroku0000420848.html
私も賛成です。ベンチをたくさん設置することに。
その際(ベンチを設置する際)座面の中ほどには、不必要な金属製の肘置きは絶対に設けないでほしいです。
こういうベンチや、

こんなベンチは、

嫌です。勘弁です(筆者の個人的な想いです)。
ベンチについては、以前にもこんな記事を書いたことがあります。
今、これは市川市に限らず、ですが、まちなかで、ちょっと座りたいなと思った時、色々な選択肢があるはずですが、まず想起されることが「カフェに入ること」である、という人が多いのではないかと想像します。筆者の場合はそうです。カフェではないとしても、それに準ずる、軽食を食べるための飲食店ですね、想起するのは。まず最初に想起されること、それを第一想起などとも言いますが、「座って休みたい」と思う時、「ベンチ」を探すのではなく、「カフェ」を探す人が多いのだとすると、それは、カフェでお金を払って快適な時間を過ごしたいと思う人が多い、というよりも、無料(タダ)で座って休めるベンチが少ない、ほとんどない、全然ないことを知っている(ベンチで休むことなんて無理だとあきらめてしまっている※1)人が多いからではないでしょうか。
筆者は、まちなかに、座れるベンチが(たくさん)あり、自転車を停められる場所が(たくさん)ある、そんな状態が望ましいと思っています。
というわけで、「ベンチ、何といってもベンチです!」※2
というお話でした。
* * * * *
〈注釈〉
※1:「あきらめという名の傘じゃ雨はしのげない」という歌詞をいつも思い出します。米米CLUB『浪漫飛行』2番の。
※2:「ローマ!何といってもローマです(Rome! By all means, Rome.)」(映画『ローマの休日』)を意識した一節。
* * * * *
執筆日:2025年7月28日
公開日:2025年7月28日
執筆者:ノスタルジー鈴木